土地の相続手続きの流れとは? 遺産分割の方法と相続税節税の仕組みを解説

2023.01.24

相続が発生すると、さまざまな手続きが必要になり、それぞれ期限が設けられています。手続きの抜け漏れを防ぎやすくするためにも、相続の流れをある程度把握しておくことが大切です。相続人が複数いる場合は、財産をどう分け合うかも問題になりがちです。特に不動産は簡単に分割できないため、揉めてしまうケースが少なくありません。

一方で、土地や建物などの不動産には相続税の負担を軽減する効果があります。どのような仕組みでどのくらい節税できるのか、気になる方も多いでしょう。この記事では、相続手続きの流れや相続の注意点を紹介するとともに、不動産を活用した相続税対策について解説します。

土地の相続手続きの流れ

相続手続きの中には同時平行して対応することもあり、スムーズに進めるためにも全体の流れを把握しておきましょう。まずは土地を含む財産を相続するときの流れをご紹介します。

遺言書の有無を確認する

相続発生時にまずやるべきことは、亡くなった方(被相続人)が遺言書を残していないかを確認することです。遺産相続は、原則として遺言書の内容が優先されます。遺言書には有効期限がありません。すでに遺産分割が終わっていたとしても、遺言書が発見されればあらためて協議や手続きが発生します。故人の遺志を尊重するため、また二度手間を省くために、まずは遺言書の有無を確認しましょう。

なお、遺言書には「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」などの種類があります。自筆証書遺言は本人が自由に作成できるものですが、民法に定められた要件を満たしていない場合には無効になることに注意してください。

遺言を確実に実行してほしいと考える場合は、公正証書遺言をおすすめします。公正証書遺言とは、証人2名の立会いのもと作成される公正証書です。費用はかかりますが、形式不備などで遺言書が無効とされる心配がいりません。

自筆証書遺言も公正証書遺言も保管場所は法的に定められていませんが、自筆証書遺言は金庫や机の引き出しに置かれるケースがあります。慎重な人は、弁護士や法務局に預けることもあります。

公正証書遺言では、原本が公証役場に保管されるケースが多くなります。

遺言書の検認を行う

自筆証書遺言を見つけたときに注意したいのが、「その場で開封しない」ということです。すぐにでも内容を確認したいところですが、自筆証書遺言には家庭裁判所の「検認」が必要です。検認とは遺言書の存在を明確にすると同時に、偽造・変造などを防ぐための手続きです。

法律上は「遺言書は家庭裁判所で相続人などの立会いのうえ開封」と定められていて、違反した場合は5万円以下の罰金が科されることもあります。

とはいえ、知らずに開封してしまったということは珍しくありません。そもそも封がされていないというケースもあります。その場合も速やかに家庭裁判所に検認の申し立てを行うようにしてください。検認前に開封したからといって、遺言書の内容は無効にはなりません。なお、公正証書遺言の場合は検認不要です。

相続人を特定し、本人確認書類を準備する

遺言書の有無を確認すると同時に、相続人を調査・確定し、本人確認書類を準備します。なぜ同時に進めるかというと、検認申し立ての際に相続人全員の戸籍謄本が必要になるためです。また、遺産分割協議では相続人全員の参加・合意が求められます。後になって相続人が見つかった場合は協議のやり直しになるため、ていねいに調べるようにしましょう。

相続人を調べるには、まず被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を入手します。相続人が判明したら、それぞれが自分の戸籍謄本を準備します。検認申し立てに提出する場合、状況によってはすでに亡くなった方の戸籍も確認する必要があるため、事前に確認してください。

参考:最高裁判所 遺言書の検認

戸籍謄本は検認のほか、不動産など相続財産の名義変更にも使用します。提出した原本は返却されるので、準備するのは各1通で構いません。ただし、返却されるまでに日数がかかるため、法務局で「法定相続情報一覧図」を発行してもらうと便利です。

参考:法務局 法定相続情報証明制度について

相続財産の目録を作成する

次に、相続財産が一目で確認できるよう「財産目録」を作成します。作成は義務ではありませんが、遺産分割について調停の申し立てをする際は、家庭裁判所へ提出する必要があります。資産のみならず負債もすべて洗い出さなくてはならず、非常に手間のかかる作業です。遺言書の作成を考えている場合は、同時に財産目録をまとめておくことをおすすめします。

財産目録に決まった書式はありませんが、すべての資産と負債をもれなくリストアップすることが重要です。具体的には次のようなものが挙げられます。

資産(プラスの財産)現金、預貯金、不動産、有価証券(株式や債券など)、生命保険、自動車、美術品、貴金属、ゴルフ場の会員権など
負債(マイナスの財産)借金、ローンの残債、未払いの税金など

品目だけでなく、次のように内容を特定できる情報も記載します。

預貯金金融機関名、支店名、種別、口座番号、名義、残高 など
不動産種類、地目、所在地、面積、持分、用途 など
生命保険保険会社名、保険の種類、証券番号、保険金額 など
貴金属保管場所、メーカー、品名 など
負債債権者、金額、残債、月々の返済額 など

財産目録を作成すると、誰に何を譲りたいのかが明確になるはずです。遺言書の作成もスムーズになるため、一度すべての財産を整理してみてはいかがでしょうか。

遺産分割協議を始める

遺産分割協議とは、相続人が全員集まり、どの財産を誰が相続するかを話し合って決めることです。遺言書があればその内容が優先されますが、ない場合は遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議は法律上の手続きのため、必ず全員参加しなくてはなりません。相続人の中に判断能力が十分でない方がいる場合は、代理人の選出が必要です。未成年者の場合は家庭裁判所に選任された「特別代理人」、認知症などで意思表示が難しい方については「成年後見人」がこれにあたります。

話し合いの結果、全員の合意が得られたら「遺産分割協議書」を作成します。書き方に決まりはなく、手書きでもパソコンで作成しても構いませんが、内容に不備があると協議書として認められません。不安がある場合は、司法書士や弁護士などに作成を依頼することをおすすめします。

相続登記(名義変更)を行う

不動産を相続する場合は所有権移転登記、つまり相続登記(名義変更)を行います。相続登記にはいつまでに行うといった期限がありません。しかしながら近年、所有者不明の土地が増え続けていることから、2024年4月1日以降は「相続登記の義務化」が施行されることになりました。内容は以下のとおりで、罰則があるため注意してください。

 期限罰則
相続登記相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内10万円以下の過料
住所変更登記所有者の氏名・住所の変更から2年以内5万円以下の過料

義務化以前に相続した不動産も対象で、施行日から3年以内に相続登記を完了させる必要があります。なお、遺産分割協議が長引く場合は、新設される「相続人申告登記(仮称)」を利用するようにしましょう。「登記名義人に相続が発生したこと」「相続人が判明していること」を登記簿に記載しておくことで、罰則の適用を暫定的に避けられます。

被相続人の準確定申告を行う

準確定申告とは、被相続人が行うはずだった確定申告を相続人が代行することをいいます。通常の確定申告は例年2月半ばから3月半ばに行いますが、準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に行わなくてはなりません。自営業者やフリーランスなどのほか、会社員でも確定申告が必要なケースがあるので注意してください。

本来は1月1日から12月31日までの1年分の所得について計算しますが、準確定申告の場合は控除も含め、1月1日から亡くなった日までに確定した所得で計算します。申告・納税は被相続人の納税地の税務署で行います。通常の確定申告とは違い、「準確定申告書の付表」や「委任状」などの添付書類が必要です。手続きに不安がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。

相続税の申告・納税を行う

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎてしまうと相続税の特例が適用できなかったり、延滞税が発生したりするため、早めに手続きを行うようにしてください。

なお、税金は現金納付が原則ですが、相続税については特別に「延納」と「物納」が認められています。延納とは何年かに分けて納税する方法、物納は相続財産そのもので納税する方法です。延納・物納を希望する場合、申告書の提出期限までに税務署の許可を得る必要があります。

申告書の提出と納税を行う場所は、被相続人の死亡時における住所地の税務署です。死亡時の住所が海外の場合は、相続人の住所地を管轄する税務署で手続きを行います。

相続財産を分ける3つの方法(遺言書・法定相続・遺産分割協議)

相続人が複数いる場合は、次のいずれかの方法で相続財産を分け合います。

・遺言書
・法定相続
・遺産分割協議

ここからは、それぞれの内容について解説します。

遺言書が優先される

先述のとおり、相続では遺言書の内容が優先されます。しかしながら全財産を他人に譲ったり、どこかの団体に寄付したりなどの内容では、故人の遺志とはいえ遺された者にとっては納得しがたいものにもなりえます。また、ある相続人には1億円、そのほかの相続人には100万円ずつといった内容にも不満が生じがちです。

遺言書の内容が遺留分を侵害している場合は、「遺留分侵害額請求」を申し立てるという方法があります。遺留分とは「一定の法定相続人に最低限保証されている相続権(相続割合)」のことです。

遺留分の割合は法定相続分の半分で、請求権があるのは配偶者、直系尊属(親、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)に限られます。遺留分侵害額請求はまず相手との話し合いから始まり、話がまとまらない場合は訴訟にまで発展するケースもあります。

請求できるのは、相続開始と遺留分侵害の2つの事実を知ってから1年以内です。相続開始から10年が経過すると請求権そのものが自然消滅してしまうので、十分注意してください。

法制度にもとづく法定相続

法定相続とは、民法で定められている相続割合にもとづいて相続財産を分ける方法です。法定相続人となるのは被相続人の配偶者と血族で、配偶者以外は次のように順位が決められています。

第1順位:子ども、代襲相続人(直系卑属)
第2順位:親、祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)

法定相続分は以下のとおりで、ケースによって異なります。

ケース配偶者子ども両親兄弟姉妹
配偶者・子ども2分の12分の1
配偶者・両親3分の23分の1
配偶者・兄弟姉妹4分の34分の1
1

子どもや兄弟姉妹が複数いる場合は、法定相続分を人数で割ります。なお、被相続人が離婚した配偶者との間にもうけた子や、認知している非嫡出子も法定相続人に含まれます。はじめに「相続人の調査をしっかり行うこと」と説明したのはそのためです。

兄弟など相続人で話し合う遺産分割協議

遺言書がない、あるいは遺言書に記載のない財産が見つかった場合には、遺産分割協議を行います。相続人全員の話し合いによって分割を決める手続きで、相続割合や財産の分け方を自由に決められるのがメリットです。

相続財産が現金のみであれば法定相続分に従って分割できますが、実際には不動産など簡単に分割できない財産が含まれています。そのため、柔軟な分割が可能な遺産分割協議を選択するのが一般的です。

ポイントは2つ。遺産分割協議を行う前に相続財産と相続人が確定していることと、協議には相続人全員が参加していることです。相続人が1人でも欠けた状態では、参加者の合意が得られたとしても無効になります。先述のとおり、代理人選出が必要なケースもあるので注意してください。

相続財産の具体的な分け方

相続財産の分割方法には次の4つがあります。

・現物分割
・代償分割
・換価分割
・共有分割

具体的にはどのような方法なのか、解説します。

現物分割

現物分割とは、不動産を含む財産をそのままの形で分割する方法です。例えば、自宅は配偶者に、長男に事業用の賃貸アパート、長女に株式などの有価証券といった具合です。現物が残ることや比較的手続きが簡単なことがメリットですが、必ずしも公平に分割できるとはかぎりません。評価額が大きく異なる場合、評価額の低い財産を相続したほうは不満を感じることが多く、揉めごとにつながることもあります。

代償分割

代償分割とは、現物で相続財産を取得した相続人がほかの相続人に対して代償金を支払う方法です。例えば、評価額5,000万円の不動産を子ども2人で相続した場合、1人が不動産を所有し、もう1人に代償金2,500万円を支払います。

このケースでは不動産が現物で残るうえ、公平な分割が可能です。ただし、不動産を所有した相続人に代償金の支払いができるかどうかが問題となります。なお、当事者間の話し合いで合意が得られれば、代償金の額は均等でなくても構いません。

換価分割

換価分割とは、土地などの相続財産を売却して金銭に換えてから相続人間で分割する方法です。公平な分割が可能になるため、全員が不動産の相続を希望しない場合にはスマートな方法といえます。

ただし、当然ながら現物は残りません。売却する不動産が自分たちの生まれ育った実家の場合は、手放すことに寂しさや抵抗を感じることもあるでしょう。そのため、相続人全員の合意がなければ換価分割は成立しないことに注意してください。

共有分割

共有分割は、相続した不動産を2人以上の相続人の共有持分で分割する方法です。不動産を共有名義にする場合、各相続人の持分割合を登記する必要があります。公平な分割が可能であり現物も残りますが、後になってトラブルになることも…。

例えば、「売却したい」「賃貸物件にしたい」と思っても、1人で勝手に実行するわけにはいきません。また、共有名義人が亡くなってその子どもが相続した場合は権利関係が複雑になり、ますます管理が大変になります。共有分割の選択は、後々のことも含めて慎重な検討が必要であることに注意してください。

相続したくないときは

相続では、被相続人の財産をプラス・マイナス含めてすべて引き継ぐことになります。もし相続したくないときはどうしたらいいでしょうか。相続には次の3つの選択肢があります。

・単純承認
・相続放棄
・限定承認

相続してから後悔しないように、それぞれのポイントを押さえておきましょう。

単純承認

自分が相続人だと知ってから3ヶ月が経過すると、自動的に単純承認をしたと見なされます。単純承認では、負債も含めて被相続人が残した財産のすべての権利と義務を引き継ぎます。仮に借金があった場合、相続人が返済義務を負わなくてはなりません。そうした事態を避けるには、3ヶ月以内に限定承認または相続放棄の手続きを取る必要があります。

また、被相続人の財産を勝手に処分した場合も単純承認と見なされます。後で相続放棄を希望しても認められないため、注意してください。

では、3ヶ月以上経過してから借金が発覚した場合はどうなるでしょうか。過去の判例では次のようなケースで相続放棄が認められています。

・相続財産が全くないと信じて手続きをしなかった
・相続財産があることは認識していたが、多額の借金があることまでは認識していなかった

ただし、状況にもよるため、必ず認められるとはかぎりません。こうしたトラブルを防ぐためにも、財産目録をきちんと作成することが大切といえます。

相続放棄

相続放棄は「相続を辞退したい」「拒否したい」という場合の選択肢です。資産を受け取ることはできませんが、負債を引き継ぐこともありません。自分が相続人になったと分かったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立て、受理されれば相続放棄が認められます。

ただし、一度認められると撤回できないので注意してください。後になって多額の資産があることがわかったとしても、相続放棄を取り消すことはできません。一見マイナスのようでも、財産を整理した結果プラスになる可能性もあります。プラスとマイナスのバランスを把握してから放棄するかどうかを決めることが大切です。

なお、被相続人が連帯保証人になっていた場合、その債務は取り消すことができません。連帯保証債務が発覚した際は、弁護士に相談するとよいでしょう。

限定承認

限定承認とは、プラスの財産の範囲内で債務の弁済を引き継ぐ方法です。例えば資産2,000万円・負債5,000万円といったケースでは、資産も負債も2,000万円ずつ相続します。差し引きゼロということになりますが、被相続の借金返済に自分の財産を使わずに済みます。

また、限定承認では「先買権(さきがいけん)」という制度が利用できます。先買権とは優先的に買い受けることができる権利のことで、実家を相続財産として残したい場合に有効です。限定承認の手続きの期限は、単純承認や相続放棄と同じく自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内です。

なお、限定承認を申し立てるには相続人全員の合意が必要になります。手続きが複雑になりがちなので、家庭裁判所に「熟慮期間伸長」の申し立てをすることをおすすめします。どの方法を取るべきか選びかねる際も同様です。3ヶ月を過ぎれば自動的に単純承認になってしまうため、まずは熟慮期間伸長を行うようにしましょう。

参考:最高裁判所  相続の承認又は放棄の期間の伸長

土地は相続税の節税に有利

土地を含めた不動産は分割が難しく、複数の相続人がいる場合は悩ましい相続財産といえるかもしれません。しかしながら、不動産は相続税の負担軽減に効果を発揮します。ここからは、不動産相続による節税の仕組みについて解説します。

相続財産の評価額が圧縮される

相続税を計算するには、まず相続した財産すべての評価額(時価)を調べる必要があります。現金や預貯金、株式などは時価の100%、つまり額面そのままが相続税評価額です。例えば現金1億円を相続した場合は、1億円を評価額として相続税が計算されることになります。

不動産については、固定資産税評価額や路線価によって評価が行われます。固定資産税評価額は公示地価の70%程度。単純に計算すると、1億円の価値がある建物でも課税対象になるのは7,000万円ということです。これだけでも不動産による相続の節税効果がおわかりいただけると思います。ちなみに、第三者に貸し出している賃貸不動産の場合はさらに評価額が減額されます。

土地の相続税評価額

不動産のうち、建物部分は固定資産税評価額が評価額になるのに対し、土地部分は「路線価方式」または「倍率方式」で評価額を算出します。

路線価とは、土地が面する道路ごとに設定された土地の価格です。ほとんどの市街地に設定されていますが、路線価の設定がない土地には倍率方式を用います。倍率方式では、固定資産税評価額を基準に、その土地に設定された倍率を掛けて評価額を算出します。路線価方式・倍率方式ともに評価額は時価の80%程度になり、相続税の課税対象額が下がるというわけです。

路線価や倍率は国税庁の「財産評価基準書」で確認できます。1平方メートルあたりの価格が1,000円単位で記載されており、「200A」であれば1平方メートルあたり20万円です。これに面積を掛けたものが路線価方式での評価額になりますが、実際には土地の形状や道路からの奥行きなどに応じた補正があり、計算は簡単ではありません。

アルファベットはその土地の借地権割合を示すものです。借地権割合については後ほど詳しく解説します。

小規模宅地等の特例

土地の相続税評価において、特に節税効果が高いのが「小規模宅地等の特例」です。小規模宅地等の特例とは、相続した土地について評価額を最大80%減額できる制度のことをいいます。

対象は被相続人の自宅がある土地(特定居住用宅地等)のほか、事業を行っていた土地(特定事業用宅地等)、賃貸アパートなど貸付をしていた土地(貸付事業用宅地等)が含まれます。それぞれの限度面積と減額割合は以下のとおりです。

 特定居住用宅地等特定事業用宅地等貸付事業用宅地等
限度面積330平方メートル400平方メートル200平方メートル
減額割合80%80%50%

小規模宅地等の特例の適用を受けるには、相続税申告時に以下の必要書類を添付して申請します。

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・遺言書または遺産分割協議書(写し)
・相続人全員の印鑑証明

なお、ケースに応じて上記以外にも提出する資料があります。

小規模宅地等の特例は減額割合が大きく、節税効果が高いだけに要件が厳しめです。空室の多い賃貸アパートなどは「相当の対価が得られていない」と見なされて、適用が認められないケースもあります。また、被相続人が亡くなる前の3年以内に貸し付けた土地は、特例の対象にはなりません。

いろいろと複雑な制度ですが、相続税の課税対象額を大幅に減らせるとなれば利用しない手はありませんよね。相続した土地が特例の対象になるかどうか、弁護士や税理士などの専門家に相談してみましょう。

賃貸不動産を活用すると相続税はさらに節税できる

これまでにも簡単に触れてきましたが、相続した不動産が賃貸用だった場合はさらに相続税を減らせます。ここからは、賃貸不動産についての財産評価について解説します。

相続税評価額をより圧縮できる

賃貸不動産については「借家権割合」「借地権割合」が適用されます。借家人の権利は法律で保護されているため、簡単に立ち退きを要求することができません。相続した不動産を自由にできないとなれば相続人の不利益が大きく、相続財産としての価値が下がるという考え方に基づきます。

借家権割合とは、アパートなどの入居者がその建物を借りる権利を示す割合です。全国一律で30%と設定されており、賃貸不動産を相続した場合には、その物件(建物)の相続税評価額の30%を減額できます。

借地権割合とは、土地を借りている人が持っている権利の割合を示すものです。割合は地域によって異なり、都市部など利用価値が高いとされる土地ほど高めの傾向にあります。先述の路線価で見たアルファベットが借地権割合を示すもので、A(90%)~G(30%)まで10%刻みでそれぞれの土地に設定されています。

相続税は評価額が大きいほど税額が増える累進課税です。実際の価値は同じでも、評価額を下げられれば相続税の負担軽減につながります。現金よりも不動産、特に賃貸不動産が相続税対策になるといわれるのは、こうした仕組みがあるためです。

土地部分の相続税評価額

賃貸不動産の土地部分(貸家建付地)は以下の計算式で評価されます。

相続税評価額=更地としての評価額×(1-借家権割合×借地権割合×賃貸割合)

賃貸割合とは、家屋の床面積合計に対する賃貸部分の床面積合計の割合です。1棟アパートの場合は100%、1階部分(建物全体の50%)が自宅で2階部分(建物全体の50%)を貸し出している場合は50%ということになります。実際には相続時の状況で判断され、空室分が差し引かれることもあるので注意してください。

では、現金と建付地(賃貸物件が建っている土地)で相続税評価額にどのくらいの違いが生じるのか、ざっくりと比較してみましょう。

【現金】
時価:1億円
評価額:1億円

【貸家建付地】
時価:1億円
評価額:1億円×80%=8,000万円
貸家建付地としての評価額(借家権割合70%・賃貸割合100%の場合):8,000万円×(1-0.3×0.7×1)=6,320万円
小規模宅地等の特例を適用:6,320万円×50%=3,160万円
最終的な相続税評価額:3,160万円

このように、賃貸不動産には劇的に相続税評価額を下げる効果があります。大切な財産をより多く残すために、賃貸経営(不動産投資)を検討してみてはいかがでしょうか。また、賃貸経営には所得税・住民税を減らす効果もあります。所得が多いほど効果が期待できるので、現時点での節税を考えている方にもおすすめです。

まとめ

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。悲しみも癒えないうちにさまざまな手続きを行わなくてはなりません。資産や負債が一目で分かる財産目録を作っておくと、遺族の助けになるでしょう。また、少しでも多くの財産を残すために不動産を活用するのもおすすめです。

現金よりも不動産で残すほうが相続税を少なく抑えられます。特に賃貸不動産は大幅な節税が可能になるうえ、家賃収入で現在の生活をより豊かにするのにも役立ちます。ただし、収益性の低い物件では、安定した家賃収入も十分な節税効果も期待できません。収益性の高い物件とは、人気があって入居者様が途切れない物件のことをいいます。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。