不動産を相続するには誰に相談すればよいのか? 相続手続きの期限も解説

2023.01.20

所有資産に不動産がある方や、親などから不動産の相続を予定している方のなかには、相続について誰に相談すればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。思い浮かぶのは、弁護士や司法書士、税理士などですが、相続の範囲は広いため何を誰に相談するのが一番いいのか悩む方も多いでしょう。

今回は相続にはどのような手続きがあり、いつまでに何を提出しなければならないのか、そして、それぞれの手続きを誰に相談したらいいのかについて解説します。

相続の悩みはどの専門家に何を相談・連絡したらよいのか? 窓口はどこか

不動産の相続が発生した場合、手続きに関する悩みはどの専門家に相談したらよいのでしょうか。一番に思い浮かぶのは、弁護士や司法書士といった士業の方々でしょう。実際、相続の手続きは多岐にわたるため、手続きごとに弁護士や司法書士、税理士といった士業の方に相談し、連携して業務を行う必要があります。

そのため、士業の方々とのネットワークや、必要に応じてコーディネーターの役割を担う人の存在も考えておいたほうがいいでしょう。

弁護士

弁護士は、直接相続の手続きを行うことはありません。そのため、弁護士に依頼するケースとしては、「相続に関して相続人間でトラブルがある」場合や、「トラブル解決にあたって、調停や裁判が予想される」場合が当てはまります。紛争解決を法律にのっとって行えるのは弁護士のみで、弁護士以外の人が行うと、非弁行為となり、法律に抵触しているとみなされます。

ただし、相続に関する手続きには、「相続税の申告」や「相続財産の評価」、「相続不動産の所有権移転登記」などが発生します。これらの業務については、ほかの士業の方々に依頼する必要があります。

普段から弁護士の方と交流がある場合は、その弁護士の方にトラブルの解決を依頼できますが、私たちが日常生活を送るなかで弁護士にお世話になる場面は少ないのではないでしょうか。そのため、いざ弁護士に依頼しようと思っても、どこに依頼したらいいのか分からない人も多いでしょう。

弁護士を探す手段としては、弁護士事務所のサイトから依頼する方法や、最初は行政が行っている無料相談を利用し、問題点を理解した上でその問題解決に強い弁護士を探す方法もあります。

司法書士

司法書士の主な業務は、登記関係です。そのため、「相続不動産の所有権移転登記」については、司法書士にお願いしなければなりません。また、ほかにも「遺言書の検認」や「相続放棄」、「成年後見」の手続きも司法書士が行えますので、相続の手続きのなかで遺言書の検認や相続放棄などが必要になった際には、司法書士に業務を依頼することになります。

相続手続きには、「遺産分割調停申立書の作成」など、不動産を含む相続財産全体に関する手続きも発生しますが、司法書士のなかには、不動産に関係する手続きのみを行う方もおられますし、不動産以外の遺産整理業務など幅広い業務を手がける方もおられます。

司法書士に業務を依頼する際には、まず必要な相続手続きの内容を把握し、該当するものがあれば不動産以外の財産に関する手続きについても対応してくれる方を探すといいでしょう。

税理士

「相続財産の調査」や「相続財産の評価」、そして「相続税の申告」などの手続きが必要な場合は、税理士に相談します。相談する際には、相続財産の評価額が基礎控除額の範囲内に収まるかどうかも合わせて相談するようにしましょう。

相続財産の評価額の計算は複雑ですので、自己判断で申告不要と判断するのは危険です。必ず、相続財産の調査および評価までは税理士に依頼し、申告が必要かどうかを判断するようにしてください。ちなみに、相続時の不動産評価については、不動産鑑定士に依頼することもあります。

また、相続の手続きには、「準確定申告」が必要になる場合もあります。その際には必要に応じて税理士へ相談しましょう。

相談内容には、相続手続きに関するもののほか、「相続不動産売却時の確定申告」が必要になることもありますし、不動産を相続した場合には、「小規模宅地等の特例」などの税額軽減措置の申請が必要になることもありますので、依頼する業務の範囲をしっかりと見極めてから依頼することも大切です。

行政書士

行政書士に依頼するのは、相続に直接関わる手続きではなく、戸籍調査を行って相続人関係説明図を作成する業務や、遺産分割協議書の作成業務といった代書業務になります。

行政書士の業務は、主に「官公署に提出する書類の作成」や「権利義務に関する書類の作成」、「事実証明に関する書類の作成」と該当書類の作成に関する相談業務です。

多くの業務は他の士業でも行えますが、行政書士に依頼することで費用を抑えることができます。相続において発生する手続きの内容に応じて、依頼先を分散させてもいいでしょう。

銀行・信託銀行

銀行や信託銀行は、相続に関する手続き全般や、相続税の申告をサポートしてくれる、いわば窓口的な存在です。手続き全般を一括して依頼できる手軽さはあるものの、実際に業務を行うのは、銀行や信託銀行と提携している弁護士や司法書士、税理士、行政書士のため、仲介費用が発生し、相続手続きの費用が最低でも100万円以上必要になるなど、高額になる可能性があります。

自分で士業の方々を探さなくていい点は、メリットですが、手続き上のトラブルが予想される案件だと、受け付けてくれない銀行や信託銀行がありますので、事前に相談し、見積りをもらって検討するなどの対策をとっておきましょう。

不動産会社

不動産の相続においては、相続後にその不動産を売却する必要が生じるなどで、不動産会社(宅地建築物取引業者)への依頼が必要になるケースがあります。

さらに、相続不動産が賃貸アパート・マンションなど収益物件の場合、相続人が賃貸経営を引き継ぐのか、もしくは売却するのかの判断を下さなければなりません。そのような時には、物件の運営を管理している賃貸管理会社や収益物件の売買に強い不動産会社の専門的なアドバイスがあると、安心でしょう。

場合によっては買取を行ってくれる不動産会社もあります。もし、相続に精通した不動産会社なら、コーディネーター的な存在にもなり得ます。

ちなみに相続不動産の登記は義務ではありません。しかし、そのため、登記の内容が古く、所有者が誰か分からない、いわゆる「所有者不明土地」の増加が問題視されています。国は問題を重視し、解決策として2024年から相続不動産の登記を義務化することを決定しています。

相続不動産の登記は、相続から3年以内に行わなければならず、正当な理由なく登記を放置した場合は、10万円以下の過料が科せられることを知っておきましょう。

市区町村

相続手続きについて、市区町村が無料で相談会を開催していますので、それを利用する方法もあります。ただし、市区町村はあくまでも相談窓口という立場であり、実際の手続きは士業の方々を紹介する形です。

無料相談会は相談時間が短く、詳細まで理解するには何度も足を運ばなければならず、手続き着手までに時間がかかる可能性があります。相続手続きにはそれぞれ期限が定められているので、期日に間に合うよう手続きを進めなければなりません。

無料相談所を利用する際は、手続きの期限から逆算し、余裕をもった利用を考えることが大切です。

法テラス(日本司法支援センター)

国が設置している法テラス(日本司法支援センター)も、相談窓口を無料で案内しています。現在、法テラスで行われている業務は以下のとおりです。

・情報提供業務:利用者からの問い合わせ内容に応じ、法制度に関する情報と相談機関や団体に関する情報を無料で提供しています。
・民事法律扶助業務:経済的に余裕のない方などが法的なトラブルにあった際、無料で法律相談を行うほか、必要に応じて弁護士費用や司法書士費用の立て替えを行います。
・犯罪被害者支援業務:犯罪被害の被害者やその家族の方などに対し、最も必要な支援を受けられるよう、刑事手続きへの関与や支援に関する法制度の情報提供を行います。
・国選弁護等関連業務:国選弁護人候補の指名や裁判所への通知、国選弁護人への報酬支払い業務などを行います。
・司法過疎対策業務:身近に法律家がいないなど、司法過疎地域の解消を目的とし、法テラスの地域事務所の設置を行います。

このなかで、相続に関する手続きとして関係が深い業務は、「情報提供業務」そして「民事法律扶助業務」でしょう。特に「民事法律扶助業務」は、弁護士や司法書士に依頼したいけれど、経済的に余裕がない人にとっては非常に助かる業務といえます。

相続の手続きの期限

相続の手続きは複雑で、かつ、必要な書類の準備にも時間がかかります。さらに、それぞれの手続きごとに期限があるので注意が必要です。以下に相続手続きの項目ごとに定められている期限について解説します。

相続方法の選択は3ヶ月以内

相続をするかしないかを決めるのは、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内です。相続の方法には、3種類あり、それぞれで手続き方法が異なります。

相続する(単純承認)

相続財産には、プラスの財産もあれば、借金(債務)のようなマイナスの財産もあります。プラスの財産もマイナスの財産も全て相続すると決めた場合は、特に手続きは必要ありません。逆に相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に手続きを行わなかった場合には、単純承認したとみなされます。

相続しない(相続放棄)

相続財産を全て相続しないと決めた場合は、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して、相続を放棄する旨の申し立てが必要です。この申し立ては単独で行えます。

財産の範囲内で債務を引き受ける(限定承認)

相続財産の中にマイナスの財産(債務)がある場合に、プラスの相続財産の範囲内でマイナスの財産を相続することもできます。このことを限定承認といい、相続放棄と同様に相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てなければなりません。また、相続放棄と異なり、限定承認の申し立ては相続人全員の合意が必要になるため、単独では行えない点に注意が必要です。

相続放棄および限定承認の申し立てが期間内に行われなかった場合は、単純承認したとみなされます。また、相続放棄や限定承認を行うつもりであったとしても、相続財産の一部もしくは全部を処分した場合は単純承認したとみなされます。

準確定申告は4ヶ月以内

被相続人が亡くなった年に所得があり、所得税を申告しなければならない場合、相続人は相続があったことを知ってから4ヶ月以内に被相続人の「純確定申告」を行う必要があります。仮に4ヶ月を過ぎて申告することになった場合は、延滞期間に応じた延滞税がかかります。

準確定申告は、亡くなった被相続人の死亡時の住所を管轄する税務署に対して行います。また、相続人が複数いる場合は、原則として各相続人の連署が必要ですが、ほかの相続人の名前を記入して、それぞれの相続人が別々に提出してもいいことになっています。ただし、この場合は、ほかの相続人に対し、申告内容を知らせなければなりません。

相続税申告は10ヶ月以内

各相続が相続した財産の額に応じて課税される相続税の申告および納税は、相続の開始があったことを知ってから10ヶ月以内に行わなければなりません。もし、この時までに遺産分割協議が終了していない場合は、いったん各相続人が法定相続分で相続したと仮定して相続税を計算し、申告および納税を行います。

相続税の申告および納税は、相続人の住所地を管轄する税務署ではなく、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に対して行います。相続税は現金で一括納付することが原則ですが、申告し、認められた場合は延納や物納という方法もあります。

相続税の延納とは、相続税額が10万円超で、納期限までに金銭での納付が困難な場合に申請し、担保を提供することで、納付期限を延長できます。ただし延長期間には利子が発生しますので、注意が必要です。

物納とは、金銭および延納によっても納付が困難な場合に、申請することで一定の相続財産での納付が可能となる制度です。こちらも納付する日までの利子税が発生するほか、申請してから結果がでるまで3ヶ月程度の審査期間が必要になりますので、早めに手続きを開始するようにしましょう。

遺留分侵害額請求は1年以内

相続には、「法定相続よりも遺言による相続が優先される」という原則がありますが、法定相続人が相続できる最低限度の「遺留分」が認められています。仮に、ほかの相続人の相続分が、自分に認められている遺留分を侵害している場合、それを主張することで遺留分を金銭で支払うよう請求することができます。

この手続きを「遺留分侵害額請求」といいますが、相続開始および遺留分の侵害を知った日から1年以内に行わなければなりません。相続の開始および遺留分の侵害を知っていたにもかかわらず1年以上放置した場合は、遺留分侵害額請求を行えなくなります。

ちなみに相続の開始および遺留分の侵害を知らなかった場合、遺留分侵害額請求権は10年で消滅します。

遺留分侵害額請求は、昔は「遺留分減殺請求」という名前でしたが、2019年の制度改正により、内容が変更されています。遺留分減殺請求では、いったん財産を共有する必要がありましたが、トラブルが長期化するケースが多かったため、遺留分侵害額請求として、金銭で解決できるようになったという経緯があります。

死亡一時金の受取請求は2年以内

国民年金の制度には、一定の条件を満たした遺族に対して、「死亡一時金」が用意されています。

死亡一時金とは、死亡した日の前日の時点で第1号被保険者として、保険料納付月数が36ヶ月以上ある人が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らないまま亡くなった場合、その人によって生計を一にしていた遺族に支給されるもので、保険料を納めた月数に応じて金額が異なります。

受け取る人は、優先順位の高い順に「配偶者」、「子ども」、「父母」、「孫」、「祖父母」、「兄弟姉妹」ですが、請求しなければ受け取ることはできません。さらに、死亡一時金の受給権には「死んだ日の翌日から2年」の時効が設けられており、請求手続きを行わないまま2年を経過してしまうと、受け取れない点に注意しておきましょう。

死亡保険金の受取請求は3年以内

被相続人が生命保険(死亡保険)に加入していた場合、死亡後に保険会社に請求することで死亡保険金を受け取れます。しかし、この死亡保険金の請求にも時効が設けられており、その期間は3年です。つまり、死亡した日の翌日から3年以内に請求を行わなければ、死亡保険金を受け取れなくなります。

死亡保険金の請求の際には、死亡診断書など一定の書類が必要ですので、保険会社に確認し、書類を揃えて請求するようにしてください。

信頼できる不動産会社に依頼して相続をサポートしてもらうのがおすすめ

相続の手続きは、複数の士業の連携によって行われます。手続きをスムーズに進めるにあたって、相続人同士の合意をはじめ、複雑な取り決めなど、手続きのコーディネーター役が必要になります。

さらに、相続不動産の売却や、相続した賃貸不動産の経営を継続する際には、相談できる心強いパートナー選びも大切です。そのためにも、相続に不動産が絡んでいるのならば、信頼できる不動産会社及び賃貸管理会社に相談してみるとよいでしょう。

相続不動産に関する手続きを誰に相談したらよいか悩んでいる方は、相続対策と資産活用をトータルに伴走する【リロの不動産】にご相談ください。税理士や弁護士など各分野の専門家と一緒に伴走いたします。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。