相続税対策に不動産投資が選ばれる理由!節税対策の理由とリスクを解説

2026.02.28

不動産投資は、資産運用としてだけでなく有効な相続税対策としても多くの方に選ばれています。現金を不動産に換えることで相続税評価額を大幅に圧縮できるほか、将来の家賃収入を納税資金の確保につなげられるメリットがあるためです。一方で、不動産投資ならではの注意点も存在します。

そこで本記事では、不動産投資が相続税対策に選ばれる具体的な理由とその仕組み、そして事前に知っておくべきリスクについて解説します。

▼この記事の内容

●不動産投資が相続税対策になる理由は、相続税評価額を下げることができる、収益物件はさらに評価額が低くなる、相続後は家賃収入を得られる、がある。

●不動産投資による5つの相続税対策として、実需として区分マンションを購入する、所有地に賃貸アパート・マンションを建てる、中古の収益物件を購入する、収益物件購入のために融資を受ける、資産管理会社を設立する、がある。

●不動産投資と生前贈与を組み合わせる方法がある。収益物件を生前贈与するメリットとしては、贈与する相手を選べる、贈与する時期を選べる、家賃収入を受贈者が得られる、がある。

●収益物件を生前贈与するデメリットとしては、不動産の名義変更に費用がかかる、贈与加算がある、「定期贈与」と見なされるリスクがある、がある。

目次

不動産投資が相続税対策になる理由

不動産投資がなぜ有効な相続税対策となるのか、その具体的な仕組みについて詳しく見ていきましょう。

相続税評価額を下げることができる

不動産投資が相続税対策に有効な最大の理由は、現金を不動産に換えるだけで、資産価値を維持したまま相続税評価額を大幅に引き下げられる点にあります。

現金や預貯金は額面金額そのものが課税対象になりますが、不動産は「路線価」や「固定資産税評価額」といった国の基準に基づいて評価されるため、一般的に時価の7割〜8割程度にまで評価額が圧縮されます。

この圧縮効果は、税率の低下にもつながります。日本の相続税は遺産総額が増えるほど税率が高くなる超過累進税率を採用しているため、不動産活用によって課税対象額全体を小さくできれば、適用される税率の区分そのものを引き下げられる可能性があります。この「評価額の減少」と「適用税率の低下」というダブルの効果により、最終的な納税額を大きく抑えることが可能になるのです。

土地は路線価により評価

土地の相続税評価額は、市街地においては路線価を用いて算出されます。路線価とは、道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことで、毎年国税庁から発表されます。

路線価は、土地取引の目安となる公示地価の約80%程度を目安に設定されているため、現金で土地を購入した場合、その評価額はおおよそ購入価格の8割程度になります。

特に、再開発が進む都心部や人気の高いエリアでは、実勢価格(時価)が路線価を大幅に上回って高騰しているケースが多く見られます。このような時価と路線価の乖離(かいり)が大きい場所ほど、現金を土地に変えた際の評価圧縮効果、つまり節税効果は高くなります。

なお、郊外や地方などで路線価が定められていない地域の場合は、「倍率方式」という方法で土地の評価額を算出します。倍率方式は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出する方法で、こちらも時価より低くなるように設定されています。

建物は固定資産税評価額により評価

一方、建物の相続税評価額は固定資産税評価額が用いられます。固定資産税評価額は、実際にかかった建築費より低く算定されるのが一般的で、再調達価格(現在、同じ建物を建てるのに必要な費用から、経年劣化分を差し引いた建物の価値)のおよそ5〜7割程度になることが多いとされています。

収益物件はさらに評価額が低くなる

アパートやマンションなどの賃貸不動産は、自宅用の住宅や更地とは異なり、相続税の評価額が下がる仕組みがあります。これは、第三者に貸している不動産は、所有者が自由に使えない分、財産としての評価が低く算定されるためです。

土地は貸家建付地(かしやたてつけち)として評価され、自用地の評価額から借地権割合、借家権割合、賃貸割合に相当する部分が差し引かれます。計算式は次のようになります。

自用地評価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

例えば、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合、土地の評価額は21%減額されます。建物も同様に、借家権割合と賃貸割合に応じて評価額が下がります。計算式は次のようになります。

自用家屋価額 ×(1-借家権割合×賃貸割合)

さらに、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」が適用され、賃貸用の土地については200㎡まで評価額を50%減額できます。ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた場合は原則対象外となるなど条件があるため、事前の計画が重要です。

これらの仕組みを組み合わせることで、現金のまま保有する場合より評価額を大きく抑えられる可能性があります。

相続後は家賃収入を得られる

不動産投資のメリットは、相続税の評価額を抑えられる点だけではありません。相続後も家賃収入という継続的な収益が得られることは、遺族にとって大きな意味を持ちます。

相続税は原則として、相続発生から10ヶ月以内に現金で納付する必要があります。不動産など換金に時間がかかる資産が多い場合、納税資金の準備は大きな負担となりますが、収益物件を引き継いでいれば、家賃収入を納税資金の準備や納税後の家計の補填に充てることができます。

また、不動産投資は賃貸管理会社に運営業務を委託することで、入居者対応や建物管理の負担を軽減できます。相続人が本業を持っている場合や、不動産の運用に慣れていない場合でも、収益を維持しやすい点は現実的な利点といえるでしょう。現金のように取り崩せば減っていく資産とは異なり、収益物件は家賃収入を得ながら保有を続けられるため、長期的な生活資金の支えとなる可能性があります。

不動産投資による相続税対策に関しては、以下の事例もご参照ください。

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不動産投資による5つの相続税対策

不動産投資による相続税対策には、物件の種類や購入方法によって様々なアプローチがあります。手法によって、得られる節税効果の大きさや、運用時のリスク、資金の流動性が異なりますので、ご自身の資産状況に合った方法を見極めていくことが重要です。

実需として区分マンションを購入する

都心部など資産価値が維持されやすい区分マンションを購入し、現金を不動産に換えることで、相続税評価額を抑える方法があります。

土地の相続税評価額は路線価などにもとづいて計算されますが、区分マンションは、戸建て住宅や一棟アパートなどに比べて敷地全体に対する所有権(敷地権)の持ち分が小さいため、資産価値に占める建物の割合が高くなります。

建物は固定資産税評価額(再調達価格の約50〜70%)で評価され、さらに賃貸に出すことで借家権割合等の控除が適用されるため、購入価格(時価)と相続税評価額の差が生じやすく、結果として課税対象となる評価額を抑えられる点が特徴です。

また、区分マンションは流動性が比較的高い資産でもあります。相続税は原則として現金一括納付が必要であり、納税資金が不足した場合には不動産を売却して現金化する場面も想定されます。このとき、数千万円から数億円規模の一棟収益物件は買い手が限られ、売却まで時間を要することがありますが、区分マンションは比較的少額で売買されるため、早期に現金化しやすいというメリットもあります。

ただし、注意が必要なのはタワーマンションなどの高層マンションです。これまで高層階は、市場価値が高いにもかかわらず評価額が低すぎることが問題視されていました。これに対し、2024年(令和6年)1月以降、新たな評価ルールが導入され、市場価格と評価額の乖離率にもとづいて評価額を補正する仕組みになっています。

高層マンションに関しては、以前のような節税効果は薄れましたが、それでも現金で持つよりは有利な状況は続いています。

所有地に賃貸アパート・マンションを建てる

すでに土地を所有している地主の場合、その土地に賃貸アパートやマンションを建てることは、相続税対策として広く行われている方法です。

最大のメリットは、土地の評価区分が自用地(更地)から貸家建付地へと変わり、評価額が下がる点です。自用地は所有者が自由に使える土地ですが、賃貸用住宅が建つと、入居者様の権利があるため自由に処分できなくなります。その分が評価に反映され、更地として評価した場合に比べて、一般的には約2割程度評価額が低くなります。

さらに、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)を適用できれば、節税効果を大きく高められます。一定の要件を満たすと、賃貸経営を行っている土地のうち200㎡までの部分について、評価額を50%減額できます。貸家建付地による減額と組み合わせることで、土地の相続税評価額は、更地の評価に比べて半分以下、場合によっては3〜4割程度まで下がることもあります。

中古の収益物件を購入する

新築ではなく中古の収益物件を購入する方法も、相続税対策として有効な選択肢です。中古物件は、相続税の圧縮だけでなく、運用期間中の所得税対策にもつながります。

相続税の観点では、中古物件は新築に比べて実勢価格(時価)と相続税評価額の差が安定しやすい点が特徴です。新築物件は購入直後にいわゆる新築プレミアムが剥落し、市場価格が下がることがありますが、中古物件は価格がある程度落ち着いているため、資産価値の変動を抑えながら相続税評価額との差を活用できます。

運用の実績がある物件であれば、想定賃料だけでなく実際の収益状況を確認できるため、収支の見通しを立てやすい点も利点です。

所得税の面で重要になるのが減価償却です。建物の減価償却費は構造と築年数に応じた法定耐用年数をもとに計算されますが、中古物件は耐用年数の一部または全部を経過しているため、新築より短い期間で償却できるケースがあります。償却期間が短いほど年間の減価償却費は大きくなり、不動産所得で生じた赤字を給与所得などと損益通算できるため、所得税や住民税の負担軽減につながることがあるのです。

収益物件購入のために融資を受ける

不動産投資では、自己資金だけでなく金融機関の融資を利用することで、相続税対策の効果を高めることができます。ポイントは、借入金が相続財産の計算で債務として差し引かれる点にあります。

相続税は、現金や不動産などの相続財産から、借入金などの負債を差し引いた金額に対して課税されます。たとえば1億円を借りて収益物件を購入した場合、借入金1億円はそのままマイナスの財産として評価されます。

一方、購入した不動産は時価ではなく相続税評価額で計算されます。土地は貸家建付地として減額され、建物も固定資産税評価額や借家権割合などをもとに評価されるため、結果として時価より低い評価額になるのが一般的です。

その結果、不動産の評価額より借入金の方が大きくなり、差額分だけ相続財産を圧縮できます。もともと保有している現預金などがあれば、その分と相殺され、全体の相続税額を抑えることにつながります。

資産(不動産)を増やしながら負債(ローン)で相殺することで、正味の相続財産を効率よく圧縮できるということです。自己資金を大きく取り崩さずに資産規模を広げつつ、評価額を抑えられる点は、融資を活用する大きな利点です。

資産管理会社を設立する

個人で不動産を所有するのではなく、資産管理会社(法人)を設立して不動産を所有・管理させる方法もあります。所得税と法人税の税率差を利用した節税メリットに加え、資産を不動産から株式に変えることで、次世代への資産承継や遺産分割を非常にスムーズに進められるという利点があります。

非上場株式の評価を下げられる

資産管理会社が所有する不動産は、相続時には不動産ではなく、その会社の非上場株式として評価されます。一般に、非上場株式としての評価額は、個人が不動産を直接所有する場合より低くなる傾向があります。

その理由は、資産管理会社の株式評価において「純資産価額方式」が採用される点にあります。純資産価額方式では、会社が保有する不動産などの含み益を計算する際、将来発生すると見込まれる法人税等に相当する金額をあらかじめ差し引いて評価額を算出します。

個人で不動産を保有している場合は、含み益も含めた価値が評価額に反映されます。一方、法人を通じて保有している場合は、将来の税負担を見込んだ調整が入るため、株式としての評価額が抑えられ、結果として相続税や贈与税の負担を軽減しやすくなります。

遺産分割が容易になる

不動産は現物資産のため物理的に分割しにくく、相続人の間で誰がどの不動産を取得するかをめぐって意見が対立し、いわゆる「争族」に発展することがあります。一方、資産管理会社を設立して不動産を法人名義に集約すると、相続財産は会社の株式という形になります。

株式であれば1株単位で分けることができるため、法定相続分に応じた分割や、遺言に基づく配分にも対応しやすくなります。不動産が一つしかない場合でも、株式として保有しておけば、複数の相続人に対して公平に資産を配分することが可能です。

このように、分割しにくい不動産を分割しやすい株式という形に変えることで、遺産分割の場面で起こりがちなトラブルを未然に防ぐことにつながります。

事業承継にも有効

資産管理会社の活用は、資産を分ける目的だけでなく、経営権を特定の人に集中させたい場合の事業承継対策としても役立ちます。

例えば、賃貸経営を長男に継がせたい場合、長男には議決権のある普通株式を相続させ、経営に関与しない次男や長女には、配当は受け取れるものの議決権を持たない無議決権株式(種類株式)を相続させる、といった使い分けが可能です。経済的な価値は兄弟間で分けながら、会社の意思決定は後継者が担う形にできます。

不動産を共有名義にすると、売却や修繕の判断で意見が分かれることがありますが、株式の種類を使い分ければ、経営の安定と円満な相続を両立しやすくなります。

不動産投資による節税方法については、以下の記事もご参照ください。

知っておくべき相続税対策! 不動産を活用した節税の仕組みを解説

不動産の活用で相続税対策! 賃貸経営・アパート経営が効果的な理由と注意点

不動産投資と生前贈与を組み合わせる相続税対策

不動産投資による相続税対策の効果をさらに高める手段として、生前贈与との組み合わせが挙げられます。不動産を所有している段階で次世代へ資産を移転させることで、将来の相続財産を圧縮しつつ、収益を早期に移転させることが可能です。

暦年贈与とは

暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額を基準に課税される、一般的な贈与の方式です。受贈者1人につき年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかからず、原則として申告も不要です。

この控除枠を活用すれば、現金だけでなく不動産の持分や購入資金を少しずつ移転し、時間をかけて資産を次世代へ引き継ぐことができます。子どもが2人いれば、年間合計220万円まで非課税で贈与することが可能です。

一方、110万円を超えた部分には贈与税がかかり、税率は金額に応じて段階的に上がります。父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与は、一般の贈与より税率が軽減される「特例税率」もあります。長期的に資産を移す方法として有効ですが、生前贈与加算の期間延長など制度改正の内容は事前に確認しておく必要があります。

出典:国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)

相続時精算課税制度とは

「相続時精算課税制度」とは、原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度です。累計2,500万円までの贈与は贈与税がかからず、超えた部分には一律20%の税率が適用されます。一般の贈与に比べて、まとまった資産を移しやすい点が特徴です。

この制度で贈与した財産は、将来の相続時に他の相続財産と合算して相続税を計算します。合算される金額は贈与した時点の評価額であるため、将来的に値上がりが見込まれる不動産や収益物件を早い段階で移しておくことで、結果として相続税の負担を抑えられる場合があります。

さらに、令和6年(2024年)1月以降の贈与からは、年間110万円の基礎控除が新たに設けられました。この範囲内の贈与は申告が不要で、相続時に持ち戻す必要もありません。ただし、一度制度を選ぶと暦年課税へ戻れないため、適用するかどうかは資産状況や将来の相続を見据えて判断することが大切です。

出典:国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

収益物件を生前贈与するメリット

収益物件を生前贈与することは、単なる資産の移転以上に複合的なメリットをもたらします。将来のトラブル防止や、贈与税と相続税の評価差額を利用した節税、さらには所得の分散効果まで、不動産ならではの利点を見ていきましょう。

贈与する相手を選べる

相続が発生した場合、遺言書がなければ相続人全員による遺産分割協議が必要となります。しかし、不動産は物理的に分けることが難しいため、「誰が実家を継ぎ、誰が収益物件を継ぐか」で意見が対立する可能性があります。また、遺言書を用意していたとしても、遺留分の問題などで完全にトラブルを防げるとは限りません。

一方、生前贈与であれば、贈与者と受贈者の合意のみで契約が成立するため、財産を渡したい相手を確実に選ぶことができます。例えば、「家業を継いでくれる長男に収益物件を集約させたい」「介護をしてくれた長女に報いたい」といった想いを、確実な形で実現可能です。

事業承継を考えている場合、早めに後継者に資産と経営権を移譲することで、後継者は時間をかけて賃貸経営のノウハウを学ぶことができます。親が元気なうちに資産管理をバトンタッチできるため、認知症による資産凍結リスクの回避や、スムーズな事業継続にもつながります。

贈与する時期を選べる

相続はいつ発生するか予測できませんが、生前贈与は「いつ実行するか」を自分たちで自由に決めることができます。不動産の価格(時価)はつねに変動しているため、市場動向を見極め、評価額が下がったタイミングを狙って贈与すれば、税負担を最小限に抑えられます。

例えば、再開発の予定や新駅の開業などによって、将来地価が上がる可能性がある土地を所有している場合は、値上がりする前の段階で相続時精算課税制度を利用して贈与しておくという考え方があります。相続時に合算されるのは贈与した時点の評価額であるため、その後に価格が上昇しても、値上がりした分が相続税の計算に上乗せされない点が特徴です。

受贈者のライフステージに合わせて資産を渡せる点もメリットです。子どもがマイホームを購入する時期や、孫の教育資金が必要な時期など、資金需要が高いタイミングで不動産を贈与することで、次世代の人生設計を早期に、かつ直接的に支援することができます。相続まで待つことなく、資産の有効活用を促せるのは生前贈与ならではの強みです。 

家賃収入を受贈者が得られる

収益物件を生前贈与するメリットは、贈与した後の家賃収入が受贈者(子や孫)の所得になる点にあります。親が物件を持ち続けている場合、毎月の家賃収入は親の財産として蓄積され、現預金などの形で相続財産を増やしていく要因になります。収益が安定している物件ほど、この影響は時間の経過とともに大きくなります。

物件を早めに子どもへ贈与しておけば、その後に得られる家賃収入はすべて子どもの所得となり、親の相続財産の増加を抑えることにつながります。同時に、所得を次世代へ移す形になるため、家計全体で見た資産の配分を調整しやすくなる点も特徴です。

子どもは家賃収入を貯蓄して将来の相続税の納税資金に備えたり、自身の資産形成の原資に充てたりすることができます。特に利回りの高い物件であれば、時間の経過とともに移転される所得額も大きくなります。収益物件の贈与は、相続財産の増加を抑えながら納税準備を進められる方法の一つです。

収益物件を生前贈与するデメリット

高い節税効果が期待できる不動産の生前贈与ですが、実行にあたってはコストや法的なリスクも存在します。相続で引き継ぐ場合と比較して税金が高くなるケースや、税務署から否認されないための手続きなど、事前に押さえておくべき注意点を解説します。

不動産の名義変更に費用がかかる

不動産を生前贈与する場合、相続で取得する場合と比較して移転コストが高くなる傾向にあります。まず、所有権移転登記にかかる登録免許税の税率が異なります。相続登記の場合は固定資産税評価額の0.4%ですが、贈与による登記の場合は2.0%と、税率が5倍になります。

さらに、贈与の場合は不動産取得税が課税されます。相続による取得であれば不動産取得税は非課税ですが、贈与の場合は土地や住宅用家屋であっても固定資産税評価額の3%(軽減措置あり)程度の税金がかかります。評価額が数千万円の物件であれば、これらの諸費用だけで数百万円の差が出ることも珍しくありません。

また、贈与税自体の税率も、一般的に相続税率より高く設定されています。節税のつもりで贈与したのに、登記費用や取得税を含めたトータルのコストで考えると、普通に相続したほうが安かったというケースもあり得ます。実行前には必ず税理士によるシミュレーションを行い、コスト対効果を慎重に比較することが重要です。

贈与加算がある

生前贈与を行ったとしても、相続が発生した時期によっては、その贈与が「なかったもの」として相続税の計算に含まれてしまうルールがあります。これを「生前贈与加算」と呼びます。

被相続人が亡くなる前の一定期間内に行われた暦年贈与については、その贈与財産の価額を相続財産に持ち戻して(加算して)相続税を計算しなければなりません。これまでは「死亡前3年以内」の贈与が対象でしたが、2023年度の税制改正により、この期間が段階的に「死亡前7年以内」へと延長されました。

亡くなる直前に慌てて駆け込みで贈与を行っても、その多くは相続財産として足し戻されてしまい、節税効果が薄れてしまうのです。不動産のような高額資産の贈与は影響が大きいため、この7年ルールの適用を見据えて、できるだけ早い段階から計画的に贈与を開始することが重要です。

「定期贈与」と見なされるリスクがある

暦年贈与の基礎控除を活用し、不動産の持分や現金を数年にわたって少しずつ贈与する方法は有効ですが、やり方を間違えると「定期贈与」とみなされ、多額の贈与税が課されるリスクがあります。

定期贈与とは、例えば「総額1,000万円を10年間に分けて毎年100万円ずつ贈与する」というような約束(取り決め)を最初から交わしている状態を指します。この場合、税務署からは「毎年100万円の贈与」ではなく、「1,000万円を受け取る権利(有期定期金)を最初の年に一括で贈与された」と見なされてしまいます。その結果、基礎控除の範囲内で贈与していたつもりでも、初年度に総額に対して高額な贈与税が課税される可能性があります。

これを避けるためには、「最初からまとまった額を贈与する意図があった」と疑われないような実務的な配慮が不可欠です。具体的には、

●贈与を行うたびに、その都度「贈与契約書」を作成する
●毎年、贈与を行う時期や金額をあえて変える
●通帳への振込など、資金の移動記録を確実に残す

といった対策が必要です。特に不動産の持分贈与などは登記記録が残るため、契約書を作成し、その都度単発の贈与契約であることを客観的に証明できるようにしておくことが重要です。

生前贈与と相続はどっちがお得?

生前贈与と遺産相続、どちらを選択するべきか、財産状況や賃貸経営の方針、相続人によっても異なりますので、一概にどちらがいいかは判断できません。資産価値の上昇を期待できる不動産をお持ちであれば、生前贈与を検討する価値はあります。

一方、それほど高額ではない不動産を相続する場合は、相続を選択したほうがお得になることがほとんどです。相続では基礎控除額(3,000万円 + 600万円 ×法定相続人の数)までの承継資産は非課税になるうえ、各種の控除(配偶者控除、未成年控除など)も利用できます。さらに、戸建てやマンションでは「小規模宅地等の特例」もあるので、相続を選択した方がお得になるケースが圧倒的に多いです。

オーナー様の保有資産の状況などによって生前贈与と相続、どちらがお得かは違ってきますので、気になる方は専門家に一度相談してみましょう。自分の状況に合った選択肢を知ることができるはずです。

生前贈与による相続税対策については、以下の記事もご参照ください。

ご生前に行う相続税対策とは? 賃貸不動産の認知症・遺産分割・節税・納税資金対策

不動産投資による相続税対策で考えられるリスク

それでは不動産投資において相続対策を講じる場合に、どのようなポイントに注意すべきなのかまとめます。あからさまに相続税対策とみなされるような不審な動きをしたり、相続税対策を急ぐあまり「経営」としての賃貸経営を軽く見たりすると、本末転倒の結果になる恐れがあるので、注意したいところです。

税務当局に否認されるリスク

税務署から見て、明らかに脱税とみなされかねない相続対策を取った場合に、各種控除などの適用を無効とされた事例も過去にみられます。相続税申告後あまりの短期間に売却しているなど、あからさまに節税対策と分かる取引行為は要注意です。

税務署の判断基準に明確な線引きはないため、万全の対策は難しい面がありますが、とりわけ「文書」の扱いには注意したいところです。銀行の記録や売買取引に関する契約書といった重要な書類で相続税対策が感じられる記載があると、税務署からのチェックが入ることがあります。

相続人同士のトラブルが発生するリスク

相続全般にいえることですが、相続財産の分配をめぐって相続人同士で揉める事態も想定されます。特に収益不動産に関しては分配方法が難しいうえに、誰が賃貸経営を引き継ぐのか、売却益を取り決めした比率で分配するのかなど、資産配分で争いになることも少なくありません。

相続発生後に遺産が確定すると、各遺産について評価額を確定させる必要があります。そのうち、不動産の評価額については、確定方法をめぐって意見の対立が衝突するケースが多く見られます。

例えば同一の不動産でも「固定資産税評価額」、相続税を計算するための「相続税評価額」、不動産会社が算出する「査定金額」、不動産鑑定士が算出する「鑑定評価額」など、さまざまな評価基準が存在します。あらかじめどの基準を元に遺産総額を決めるか定めておかないと、遺産分割協議すら始められない事態になりかねません。

相続人同士のトラブルを避ける最も有効な方法は、分配内容を細かく定めた「遺言書」を作成しておくことです。もし遺言書がない場合は、相続人同士で遺産分割協議をし、できるだけお互いの不満のない状態で決着をつける必要があるでしょう。

賃貸経営が失敗してしまうリスク

遊休地に賃貸アパートを建てたり、相続した不動産で貸付事業を始めたりなどで節税することも大事です。しかし、それ以上に重要なのは、賃貸経営は「事業≒ビジネス」であることです。相続税対策が主な目的であっても、ビジネスとしての土俵はほかの不動産投資家と同じ賃貸経営になります。

不動産投資や賃貸経営についての知識が不足した状態でスタートした場合、運用をフォローしてくれていた賃貸管理会社の実績が芳しくないと、赤字が膨らむ可能性が高まります。赤字に耐えられなくなり、あわてて売却する羽目になれば、相続税対策としては本末転倒の事態を引き起こします。

相続に関することとは別に、収益化できる 目途とタイミングを考えた出口戦略をたてることが重要です。不動産の購入時期、予算規模、売却時期、運用コスト、設備や工事コストなど、パートナーとなる賃貸管理会社からのアドバイスを受けながら、「経営者」としての準備を整えておくことが大切です。

不動産投資による相続税対策は【リロの不動産】の無料相談へ

不動産投資がなぜ相続税対策に役立つのかを理解するポイントは、不動産は現金資産と違い、課税評価額を低く抑えられる税法の仕組みにあります。賃貸不動産は景気にも左右されにくく、収益化に成功すれば長期間利益も生みだし、売却によるまとまった金額も残せるため、受け継がれる方が相続財産として得られるメリットは非常に大きいでしょう。

実際に相続税対策として不動産投資や賃貸経営を考えると、不動産に関係する会計や税法はもちろん、賃貸経営に関する専門知識まで、膨大な分野を深くカバーする必要があります。

はじめて不動産投資をやってみたい方にとって、自力で知識を1から身につけるのは大変なので、できるだけ早めに専門家や不動産会社にご相談されることをおすすめします。自分の個人的な疑問点なども、あっさり解決できるかもしれません。

リロの不動産】では、賃貸経営全般に限らず、相続や節税に関する資産運用のご相談についても多数お受けしております。不動産の購入から運用、工事や売却も見据えた相続税対策について、オーナー様の立場に立って一気通貫でサポートしておりますので、相続税対策でお悩みの方は一度ぜひ【リロの不動産】までご相談ください。オーナー様のご要望に合う最善のプランをご提案いたします。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。