不動産投資が相続税対策に選ばれている理由は?5つの節税対策も紹介

2023.01.24

不動産投資は「相続税対策」としても多くの方に選ばれています。節税対策と合わせて将来の収入を増加するために不動産投資を始める方が多いだけではなく、相続税の大幅な節約につながることをキッカケに不動産投資を行う事例も少なくありません。

そこで今回の記事では、相続税対策に不動産投資が選ばれる理由について、解説します。

不動産(土地・建物)には相続税評価額が下がる可能性がある

不動産投資が相続税対策として選ばれる最大の理由に、不動産は相続税の評価額を実際の資産価値より低く抑えられることが挙げられます。例えば、現金1億円を相続する場合、相続税の対象となる評価額は1億円のままです。ところが、市場での評価が1億円の土地を相続すると、相続税の評価額は時価の8割程度、約8,000万円ほどの課税対象額に抑えられます。

相続税の評価額を抑えられる理由は、不動産の課税対象資産としての評価方法にあります。一般的に、国が実施する土地や建物への評価は市場での「時価」を基準とせず、各市町村が定める「固定資産税評価額」や国税庁の定める「相続税路線価」をベースに行います。

「固定資産税評価額」や「相続税路線価」は地域によって基準が異なるものの、土地はおよそ時価の8割程度、建物は6割程度の評価額に落ち着くことがほとんどです。

評価額を抑えられる仕組みはまだあります。例えば、評価額の算定では土地の形状や奥行きの有無によって「補正率」がかかり、道路から距離のある土地や、不整形の土地であればさらに低い評価額となります。さらに賃貸経営に利用する不動産に対しては、「借地権割合」や「小規模宅地の特例」といった税制上の優遇措置も適用可能です。

このような各制度を利用することで、現金資産の相続では数百万円から数千万円以上かかる相続税額が、賃貸アパートの相続というかたちで数十万円ほどまでに節約できることも少なくありません。賃貸経営は数ある土地活用の中でも相続対策に向いた方法といえます。

【相続税】不動産投資による5つの節税対策

相続財産を不動産投資の対象となるアパートやマンションなどにすることで、相続税の大幅な節約になる点をふまえたうえで、不動産投資にはどのようなパターンがあるのか、代表的なケースを5つ具体的にご紹介しましょう。

相続に備えて投資物件を購入する、もともと保有している不動産を賃貸経営に活用するなど、オーナー様の状況に適した節税対策になる不動産投資を選択しましょう。

相続物件を活用した賃貸経営の節税対策

相続した物件を賃貸に出す方法です。ワンルームマンション投資(区分所有マンション)や戸建て投資などが代表的な事例となるでしょう。親の持ち家に今後誰も住む予定がない、といったケースが典型例です。

戸建て投資の場合、土地の広さは30~40坪程度の広さでも一軒家として十分始められます。アパート一棟やマンション一棟といった大規模な賃貸不動産と比べて将来的な転用、売却が簡単なことも魅力のひとつでしょう。持ち家を活用する賃貸経営は、土地勘があるケースも多く、はじめての方にも取り組みやすい不動産投資といえます。

このケースで活用できる制度が「小規模宅地等の特例」です。戸建てやマンション一室を賃貸に出す場合、200㎡までの土地については「貸付事業用宅地」の扱いとなり、相続税の評価額は50%減となります。相続開始前、あるいは相続税の申告期限までに土地を貸付けていることが条件ですが、アパートや戸建てに限らず、駐車場なども制度対象という点で適用範囲が広いです。

ただし、相続開始前3年以内に貸付け事業を始めた土地は対象外となっていますので、なるべく早めに相続を見据えた賃貸経営を始めておく必要があるでしょう。

新たに賃貸経営を事業として始めることになるため、バリアフリー工事や水回りの改装などで、初期費用が掛かることがあります。賃貸に活用できる不動産があり、なおかつある程度の自己資金を用意できる方にとっては、検討価値の高い方法です。

アパート・マンションを建築して賃貸経営を始める節税対策

賃貸需要が見込める広い土地を保有される方にお伝えしたい手法です。特別な理由や将来的に利用する予定がない場合はご検討ください。

更地を保有しているだけでは、固定資産税や都市計画税を支払い続ける赤字の資産になります。いざ相続が発生したときも、固定資産税評価額をベースに算出される相続税評価額も高額となり、相続されるご遺族に大きな負担が生じてしまいます。

そこで、土地にアパートやマンションを新たに建築して「貸屋建付地(かしやたてつけち)」に変更して税制上、相続税の評価額を軽減します。

「貸家建付地」とは、賃貸用の建物が建っている土地を指します。賃貸用としてのアパート・マンション・戸建てや、テナント・オフィスビルなどが建っている「土地」が貸家建付地に該当します。

更地や居住用の建物がある場合は、所有者が土地を自由に利用できますが、他人に賃貸することで、所有者の利用が当然制限されます。賃借人が存在することで土地活用に制限や制約が生まれるため、貸家建付地の評価額は所有者のみで土地を使用している場合と比べて評価額が下がります。

もちろん、アパート・マンションを建てることになるため初期投資が必要です。ただし、賃貸経営を行う場合は、金融機関からの融資を受けることになります。

建築用の手持ち資金が不足していても、建築した金額を減価償却することで初期費用を抑えられるなど、融資を利用すれば結果的にレバレッジ効果の高い土地活用となるでしょう。現金資産が多い方の場合は、資産の一部を購入資金として使用するので、さらに相続財産自体を小さくすることも可能です。

このようにアパート・マンションを相続した土地に建てることは、相続税の節税につながるだけでなく、将来的な収益を期待できる点でもきわめて効果的な相続税対策といえるでしょう。

賃貸物件(収益物件)を相続し、事業を継続する節税対策

元々アパート経営やマンション経営をされている不動産を相続するパターンです。預金などの金融資産と比べて不動産は軽減措置や評価額の算定で優位性があるため節税対策による効果が高くなります。しかし、収益性の高い不動産の相続・事業承継では相続人に対して多額の相続税が課税されるため、収益物件を相続する場合に気をつけたいのが、「不動産は資産分割が難しい」という点です。

相続での不動産の分割問題は、相続人同士で揉めやすい事案です。相続財産の中身や相続人の経済事情などのバランスを見て、相続する方、賃貸経営を引き継ぐ方をしっかり事前に決定するなど、事業の引継ぎの準備をする必要があります。

スムーズな相続と節税対策を兼ねた最も有効な方法は、賃貸経営事業を法人化しておくことです。法人化によってアパートやマンションなどの不動産は法人所有となるため、課税対象ではなくなります。法人化する場合は株式が相続対象となるため、現オーナー様(被相続人)が亡くなった場合でも個人間で土地や建物の相続が発生しません。

相続人が法人の役員となっていれば、相続発生前から賃貸経営で得た収益を分配することが可能で、実質的に生前贈与のようなかたちで家族に資産を分配することができます。

政府は「生前贈与」について、相続税がかかり始める時期を現行の死亡「3年前」から「7年前」に広げることを、2023年度の税制改正大綱で盛り込む方針です。

贈与に関する法改正も行われたため、一定規模以上の資産を保有する場合は、経営の効率化も含めた「法人化」を検討されることをおすすめいたします。

不動産購入・売却の節税対策

不動産は相続税の評価額が時価よりも低くなるため、同じ価値であれば現金で保有するよりも相続税対策で有利です。さらに購入にかかる費用として不動産ローンで借入れをした場合、借入れ分がプラスの相続財産から差し引かれる「債務控除」の対象となるなど、相続財産の縮小に活かせる制度が豊富にあります。

大きな現金資産がある方は、その一部分でも不動産投資というカタチに変えたほうが資産活用としても有効です。

また、相続後に相続した不動産などを売却したほうがいいケースも考えられます。例えば相続したお家が空き家になってしまい維持費だけかかりそう、あるいは不動産の分配方法をめぐって相続人同士で揉めそう、といった事例です。このような場合は不動産を売却します。

相続する不動産を売却する場合に注意したいのが「譲渡所得税」です。相続税とは別に課される新たな税金で、給与所得など、ほかの所得と分けて別建てで計算される「分離課税」です。課税対象となるのは不動産を売却して得た「収入」から、購入時にかかった「取得経費」を差し引いた金額になります。

ここで押さえておきたい点が「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」での税率の違いです。

譲渡所得税は売却した土地建物の所有期間によって課税率が変わる仕組みになっています。相続の発生した土地・建物について、売却した年の1月1日現在で被相続人が購入してから所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。

長期譲渡取得は所得税率15%(住民税5%)、短期譲渡取得は所得税率30%(住民税9%)となっており、なんと税率が2倍も違います。一般的な相続では長期譲渡取得になることがほとんどですが、不動産の売却をご検討の方は念のため購入時期を確認しておきましょう。

収益物件の建て替え・リフォーム工事による節税対策

所有する収益物件の築年数が経過している場合、リフォームや建て替えが必要なケースも考えられます。経年変化による老朽化をそのまま放置しておくと、予期せぬ大型コストが発生するリスクや、入居率の低下や賃料下落スピードを高め、結果として肝心の収益も低下します。

しかし、建て替えや大規模修繕には多額の費用がかかるため、計画的に積み上げた以上の大型投資を決断するのは難しいものです。そこで、近い将来に相続が発生することを見据えた「相続税対策」を兼ねて大規模修繕工事を実施するパターンがあります。

工事費用を必要経費化することで相続税の評価額を小さくする発想を基本軸にして検討してみましょう。例えば保有資産の規模が大きいオーナー様であれば、工事費用を自己資金から捻出することで、会計上、相続税の評価額を大幅に縮小できます。

物件の価値を上げる工事内容であれば、工事費を減価償却費として計上することも可能です。新たに借入れをするのであれば、借入れ分の利息分を「必要経費」として計上することもできます。

工事費のためのローン返済に負担を感じる方には、家賃収入から管理費用のような感覚でローン返済費用を充当する「割賦払い」方式などを利用する手もあります。効果的なリフォーム工事によって、従来よりも高額な家賃を収受できる可能性も高いため、資金面の問題さえクリアできれば非常に効率のいい先行投資となるでしょう。

【贈与税】不動産と相続時精算課税制度の関係は?

これまでは、現オーナー様(被相続人)がお持ちの不動産をいかに相続人へ承継するか解説しましたが、ここからは生前に相続人に対して不動産を贈与する方法についてご紹介します。不動産の生前贈与により節税効果が高くなるケースも押さえておきましょう。

相続時精算課税制度の仕組みについて

贈与税は個人から一定の財産をもらうと課税される税金になります。相続予定の不動産の地価が高騰している、将来的に有望な資産であるケースではあえて生前贈与を選択して制度を利用する方がお得になることがあります。

利用する制度は「相続時精算課税制度」です。

相続時精算制度とは、2,500万円までの生前贈与に関して贈与税を非課税とするかわりに、相続発生時には生前贈与分も含めた相続財産として相続税を計算する仕組みになります。一言でいえば、贈与分2,500万円に課税される分を、相続時まで先送りできます。基礎要件については下記をご参照ください。

生前贈与分の税金も相続時に納税することになるため、免税や減税効果はありません。しかし、不動産投資においては、相続不動産の評価額が決定する時期が「贈与時」である点に最大のメリットがあります。

相続時精算課税制度を利用して生前贈与財産を含めた評価額を計算する際、贈与財産となった土地・建物の評価額については「贈与時」のものが採用されます。例えば、時間が経つにつれて評価が上がった不動産の場合、相続が発生した時点よりも評価額の低かった「贈与時」の評価額で決まる、ということです。

特にアパート一棟、マンション一棟など、相続税の各種控除だけではカバーできない不動産をお持ちの方は、相続時精算課税制度を利用した「生前贈与」も検討してみてください。高い節税効果につながる可能性があります。

出典相続時精算課税の制度の基礎要件(国税庁のHPより)

原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳(「18歳」とあるのは、2022年3月31日以前の贈与については「20歳」となることを指す)以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる

生前贈与と遺産相続はどっちがお得?

生前贈与と遺産相続、どちらを選択するべきか、財産状況や賃貸経営の方針、相続人によっても異なりますので、一概にどちらがいいかは判断できません。資産価値の上昇を期待できる不動産をお持ちであれば、生前贈与を検討する価値はあります。

一方、それほど高額ではない不動産を相続する場合は、相続を選択したほうがお得になることがほとんどです。相続では基礎控除額(3,000万円 + 600万円 ×法定相続人の数)までの承継資産は非課税になるうえ、各種の控除(配偶者控除、未成年控除など)も利用できます。さらに、戸建てやマンションでは「小規模宅地等の特例」もあるので、相続を選択した方がお得になるケースが圧倒的に多いです。

オーナー様の保有資産の状況などによって生前贈与と相続、どちらがお得かは違ってきますので、気になる方は専門家に一度相談してみましょう。自分の状況に合った選択肢を知ることができるはずです。

不動産投資による相続税対策をする際の注意点

それでは不動産投資において相続対策を講じる場合に、どのようなポイントに注意すべきなのかまとめます。あからさまに相続税対策とみなされるような不審な動きをしたり、相続税対策を急ぐあまり「経営」としての賃貸経営を軽く見たりすると、本末転倒の結果になる恐れがあるので、注意したいところです。

脱税とみなされかねない相続税対策

税務署から見て、明らかに脱税とみなされかねない相続対策を取った場合に、各種控除などの適用を無効とされた事例も過去にみられます。相続税申告後あまりの短期間に売却しているなど、あからさまに節税対策と分かる取引行為は要注意です。

税務署の判断基準に明確な線引きはないため、万全の対策は難しい面がありますが、とりわけ「文書」の扱いには注意したいところです。銀行の記録や売買取引に関する契約書といった重要な書類で相続税対策が感じられる記載があると、税務署からのチェックが入ることがあります。

遺産「争族」に?相続人同士のトラブル

相続全般にいえることですが、相続財産の分配をめぐって相続人同士で揉める事態も想定されます。特に収益不動産に関しては分配方法が難しいうえに、誰が賃貸経営を引き継ぐのか、売却益を取り決めした比率で分配するのかなど、資産配分で争いになることも少なくありません。

相続発生後に遺産が確定すると、各遺産について評価額を確定させる必要があります。そのうち、不動産の評価額については、確定方法をめぐって意見の対立が衝突するケースが多く見られます。

例えば同一の不動産でも「固定資産税評価額」、相続税を計算するための「相続税評価額」、不動産会社が算出する「査定金額」、不動産鑑定士が算出する「鑑定評価額」など、さまざまな評価基準が存在します。あらかじめどの基準を元に遺産総額を決めるか定めておかないと、遺産分割協議すら始められない事態になりかねません。

相続人同士のトラブルを避ける最も有効な方法は、分配内容を細かく定めた「遺言書」を作成しておくことです。もし遺言書がない場合は、相続人同士で遺産分割協議をし、できるだけお互いの不満のない状態で決着をつける必要があるでしょう。

賃貸経営がうまくいかず、財産を減らしてしまうリスク

遊休地に賃貸アパートを建てたり、相続した不動産で貸付事業を始めたりなどで節税することも大事です。しかし、それ以上に重要なのは、賃貸経営は「事業≒ビジネス」であることです。相続税対策が主な目的であっても、ビジネスとしての土俵はほかの不動産投資家と同じ賃貸経営になります。

不動産投資や賃貸経営についての知識が不足した状態でスタートした場合、運用をフォローしてくれていた賃貸管理会社の実績が芳しくないと、赤字が膨らむ可能性が高まります。赤字に耐えられなくなり、あわてて売却する羽目になれば、相続税対策としては本末転倒の事態を引き起こします。

相続に関することとは別に、収益化できる 目途とタイミングを考えた出口戦略をたてることが重要です。不動産の購入時期、予算規模、売却時期、運用コスト、設備や工事コストなど、パートナーとなる賃貸管理会社からのアドバイスを受けながら、「経営者」としての準備を整えておくことが大切です。

不動産投資による相続税対策は【リロの不動産】の無料相談へ

不動産投資がなぜ相続税対策に役立つのかを理解するポイントは、不動産は現金資産と違い、課税評価額を低く抑えられる税法の仕組みにあります。賃貸不動産は景気にも左右されにくく、収益化に成功すれば長期間利益も生みだし、売却によるまとまった金額も残せるため、受け継がれる方が相続財産として得られるメリットは非常に大きいでしょう。

実際に相続税対策として不動産投資や賃貸経営を考えると、不動産に関係する会計や税法はもちろん、賃貸経営に関する専門知識まで、膨大な分野を深くカバーする必要があります。

はじめて不動産投資をやってみたい方にとって、自力で知識を1から身につけるのは大変なので、できるだけ早めに専門家や不動産会社にご相談されることをおすすめします。自分の個人的な疑問点なども、あっさり解決できるかもしれません。

【リロの不動産】では、賃貸経営全般に限らず、相続や節税に関する資産運用のご相談についても多数お受けしております。不動産の購入から運用、工事や売却も見据えた相続税対策について、オーナー様の立場に立って一気通貫でサポートしておりますので、相続税対策でお悩みの方は一度ぜひ【リロの不動産】までご相談ください。オーナー様のご要望に合う最善のプランをご提案いたします。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。