不動産売却の見積もりとは? 査定のポイントと注意点を徹底解説!

2023.04.19

不動産を売却しようとする際、通常はまず見積もりをしてもらいます。不動産がどのくらいの価格で売れるのか算出することを、不動産の用語では「査定」といいます。

この記事では不動産売却で必ずといっていいほど行われる査定について、仕組みや方法はもちろん、チェックされる箇所や依頼するときの注意点についても詳しく解説します。

不動産の売却でなぜ査定が必要なのか

不動産の売却で必ず査定というプロセスがあるのは、価格の決まり方に特性があるからです。まずはその理由を把握しておきましょう。

不動産には一つとして同じものがない

不動産を売却する際、物件ごとに査定を行うのは、不動産には一つとして同じものがないからです。同じ地域に建っている戸建て住宅でも、建てたハウスメーカーや間取り、方位などが全く同じものはないでしょう。

たとえ同じハウスメーカーが建築した建売住宅であっても、土地の形や面積、接する道路の状況などが少しずつ違っています。間取りが同じマンションでも、階数や部屋の方位で査定価格は異なるのが一般的です。

また、戸建て住宅かマンションかにかかわらず、建物や管理状況も査定に影響をおよぼします。長年きれいに使用していた物件と損耗が酷い物件では、査定価格が同じであるわけがありません。

経済学の概念では同じ商品やサービスなら、価格は一つであるという「一物一価の法則」がありますが、それぞれの物件に個性がある不動産では成り立ちません。実際に不動産の売却を行う場合は、立地条件や物件自体の特徴を踏まえ、物件ごとに売出価格の設定をする必要があります。

取引時点が変わると価格も変わる

不動産価格の相場は常に変動する流動的なものです。そのため、同じ物件であっても、売りに出す時期が違えば、価格が大きく変わることがあります。個別の要因のほか、経済的な環境の変化や需要と供給のバランスなども不動産の価格に影響を与える要因です。

建物は築年数が経過するほど価格は下がり、逆に築浅であればあるほど高くなるのが一般的です。ただし、人気のあるエリアや汎用性の高い間取りや設備など、物件に強みがあれば査定価格が高くなる可能性はあります。

公示地価など土地の価格の指標となる価格や金利の動向、景気動向のような経済環境も変動の要因になるため、同じ物件であっても取引の時期がズレると価格が上下するのも不思議ではありません。また、都市開発が行われて生活の利便性が高まると、不動産の価格は上昇します。

人口の減少は不動産が供給過多になりますが、逆に人口が増加すると不動産の需要が高まります。物件自体は変わらなくても、取引時点で価格が変わることを理解しておきましょう。

相対取引で価格が決まる

不動産の価格は相対取引(あいたいとりひき)で決まるのも理由の一つです。証券取引所に上場されている株式の場合は市場で価格が決まり、取引も取引所を通じて行います。上場株式のように不特定多数が市場で取引する方法は市場取引と呼ばれます。

しかし、不動産取引は株式売買のように、市場で決まるものではありません。売主様と買主様が個別に価格交渉を行い、合意したときにはじめて価格が確定します。

不動産の売却を行うときは、近隣の似たような物件がどのくらいで売れているのか、相場を参照するとよいでしょう。あまりにも相場とかけ離れていると買主様が見つからない可能性も考えられます。しかし、当事者同士で価格を自由に決められる相対取引では、絶対的な価格が存在しません。買主様からの値引き交渉が入ることも想定されますが、最終的には買主様と売主様の合意で価格が決定されます。

査定価格は売出価格の根拠になる

相対取引が一般的な不動産売買では、市場で自動的に価格が決まるわけではありません。不動産の売却では、まず売主様が売出価格を決めます。しかし、決まった価格があるわけではないため、どのくらいの価格で売り出すのが適切なのか把握するのは難しいでしょう。

そこで売出価格の根拠となるのが、不動産仲介会社の算出する査定価格です。不動産仲介会社の出す査定価格は、実際に売りに出したときに売れる価格を想定しています。

売主様によって所有している不動産を売却する理由はさまざまですが、どのくらいの金額で売れるのか知っておくことは、その後の資金計画を建てるうえでも重要です。住宅ローンが残っている場合は、売却した代金で残債を返済できるかどうか把握しておく必要があります。

住み替えを検討し、新しい物件を購入するための頭金にしようと考えているケースもあるでしょう。具体的に売却できそうな金額を知っておくことで、無理のない資金計画を建てることが可能です。

不動産査定と不動産鑑定の違い

不動産の見積もりでは、不動産査定とは別に不動産鑑定もあります。両者がどう違うのか、どう使い分けされるのかも知っておいてください。

不動産査定は「無料見積もり」・不動産鑑定は「有料見積もり」

不動産査定は不動産仲介会社が仲介業務の一環として行っているもので、不動産を売却するときには必ず実施されます。不動産仲介会社がそれぞれ独自に行うほか、一括査定サイトで複数の不動産仲介会社の査定価格を確認できるサービスも増えてきました。一般的な不動産の売却で活用するのは、これらの不動産査定でしょう。

買主様を探してもらうために媒介契約を結ぶと、不動産仲介会社は販売活動を行ってくれますが、報酬が発生するのは売買契約が成立したときの仲介手数料だけです。不動産査定は契約を成立させるために必要な営業業務であり、見積もりは原則として無料で行われます。

査定の方法はいくつか種類がありますが、具体的な算出の根拠はそれぞれの不動産仲介会社によるため、査定価格にはバラツキが出る可能性があります。

一方で、不動産鑑定は10万円以上のコストがかかる有料の見積もりになります。土地や建物などの不動産の適正な価格を評価するもので、後述する不動産鑑定士にしかできません。

不動産鑑定は不動産鑑定士による独占業務

不動産鑑定と不動産査定は同じ不動産にまつわる業務で、しかも名称が似ているため、詳しい違いが分からないという方もいるでしょう。しかし、両者には明確な違いがあります。不動産鑑定では不動産鑑定士による土地や建物などの不動産について経済価値の判定や適正な地価の判断を行い、最終的に結果を不動産鑑定評価書として提示します。不動産鑑定士は国家資格者で、不動産鑑定は独占業務です。

同じ不動産にかかわる仕事ですが、不動産の売買や賃貸の業務を行う不動産仲介会社の仕事とは異なります。不動産鑑定は「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて行われ、結果が分かるまで早くても2週間、遅くとも1ヶ月程度かかります。

一方、不動産仲介会社による不動産査定は、書類をもとにした机上査定なら早ければ当日、遅くても数日で結果がでます。担当者が現地調査をする訪問査定でも、期間は長くて2週間ほどです。

また、不動産査定は公益財団法人不動産流通推進センターが提供する「価格査定マニュアル」に沿って行われることが多いものの、不動産鑑定ほど厳格なルールがあるわけではありません。不動産会社が独自に持っている取引事例やルールが反映される余地があります。

不動産鑑定はどんなときに必要か

一般的な不動産の売却では、不動産仲介会社による不動産査定で相場を把握し、売却価格を決定することが多いでしょう。しかし、公的に適正な評価額が求められる以下のようなケースでは、不動産鑑定を依頼します。

その一つが裁判所に対して不動産の適正な評価額を提示する必要があるときです。例えば相続や離婚の際の財産分与などで不動産が絡んでくる場合、不動産仲介会社によって幅がある不動産査定は公的な証明にはならず、きちんとした権利の調整ができません。

調停や裁判などに発展したとしても、不動産鑑定評価書があれば不動産鑑定士によって適正な価格を調査したという根拠を持って臨めます。反論があったとしても対処が可能です。

不動産を担保として金融機関から融資を引き出したい場合も、適正な担保価値を提示する資料として有効です。法人と経営者の間、または法人間での不動産売買などでも、適正な評価額を提示するために不動産鑑定が行われるケースがあります。

不動産査定の3つの方法

不動産価格を評価・査定する方法は主に以下の3種類です。それぞれ算出の仕方を解説するとともに、採用される場面も紹介します。

取引事例比較法

取引事例比較法は、査定する不動産に条件が近い物件の取引事例を集め、その取引価格をもとに評価する方法です。比較に使われる取引事例は、基本的に近隣地域にある物件が選ばれ、土地の形状などの条件や日当たりなどの個別的要因を比較できる必要があります。多少離れている場所でも、類似した特性の地域であれば採用されることがあります。

ただし、条件が近いとはいえ、全く同じとはいかないため、事情補正や時点補正を加えたうえで比較します。売り急いで取引された、特殊な使用方法が前提で取引されたなど、個別の事情が取引価格に影響をおよぼしていると考えられる場合に、増額補正や減額補正を加えるのが事情補正です。

時点補正は事例が古い場合、取引時点までの価格変動を修正することを指します。以上のように条件が近い物件を選び、必要に応じて補正を加えたうえで、地域要因や個別的要因も含めて比較し、評価するのが取引事例比較法です。

取引事例比較法は不動産の取引自体が少ない地域や、事例がほとんどない学校や神社仏閣など特殊な取引には適用するのが困難です。一般的な不動産では全般的に適用できますが、特に土地や戸建て住宅の土地部分、マンションなどの売買でよく用いられています。

原価法

原価法は、査定する不動産の再調達原価をもとに評価する方法です。原価法では、まず対象の物件をもう一度造成したり建築したりするのにかかる再調達原価を割り出します。そのうえで建築後の経年劣化で価値が低下する分については減価修正を行い、現在の価値を推定する方法です。建築資材や工法が当時とは変わっていることも考えられますが、同等のものに置き換えられる場合は再調達原価とみなされます。

原価法で求められる試算価格は土地の価格と建物の価格をそれぞれ計算し、合計して評価額を算出するため積算価格と呼ばれます。建物の再調達原価は使用可能な状態で引き渡されることを想定して支払う標準的な建設費に通常の付帯費用を加算した価格です。土地の再調達原価は建物とは別に計算し、標準的な取得原価に造成費と付帯費用を加算して求めます。

原価法は戸建て住宅の建物部分の査定によく採用されます。また、再調達原価の割り出しや減価修正を適切に行えれば採用できるため、造成地や埋立地などの土地の査定にも有効な方法です。ただし、すでにある市街地では現実的に再調達原価を把握するのが難しいこともあり、市街地にある土地では原価法が採用されることはほとんどありません。

収益還元法

収益還元法は査定する対象の不動産が将来生み出すと予測される純利益をもとに、現在価値の総和を求めて評価する方法です。原価法で算出される価格が積算価格といわれるのに対し、収益還元法で算出される価格は収益価格と呼ばれます。

具体的に収益価格を求める方法には「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。直接還元法は、1年間などの一期間の純利益を還元利回りで割って求める方法です。不動産の種類や条件により異なりますが、還元利回りの目安は一般住宅で5~7%、事業用では8~10%とされています。例えば1年間の純利益が100万円、還元利回りが5%だった場合、「100万円÷5%」で収益価格は2,000万円です。

DCF法は連続する複数の期間に発生する純利益と、期間満了時点に得られると予測される価格(復帰価格)を現在価格に割り引いて総和を求めることで収益価格を算出します。DCF法のDCFは「Discounted Cash Flow」の略です。

収益は不動産の経済価値の本質を形成するものとして、基本的に市場性のない不動産以外のすべてに適用されなければならないとされています。収益還元法は収益物件の査定で用いられることが多いものの、自宅用の不動産でも賃貸を想定して適用するとの考えから、マイホームの査定でも使われることがあります。

不動産査定で特にチェックされる箇所

不動産の査定では詳細な点検項目がありますが、特にチェックされる箇所について戸建て住宅とマンションでそれぞれ紹介します。

戸建て住宅の場合

戸建て住宅で特によくチェックされる箇所がいくつかあります。戸建て住宅では土地の境界の確定状況を気にする買主様が少なくありません。土地の境界が曖昧だったり、境界線上に越境しているものがあったりすると、後々トラブルに発展する可能性もあります。土地の境界が完全に確定されていることを示す、確定測量図があればすぐにでも売却できる状態です。

土地の面積や形状も査定に影響を与えるためチェックされます。形状が悪いと建てられる建物が制限されてしまうため、特に三角地や旗竿地は評価が低くなります。

建物の維持管理状況は売却する際、重要事項説明書に詳しく記載する必要があるため、しっかり把握しておく必要があります。建築時に得ているはずの確認申請書や確認済証、検査済証などの書類の確認は必須です。

屋根や外壁の劣化状況、傾き、シロアリ被害の有無、設備のグレード、内装がきれいに保たれているかなどもチェックされます。土地や建物そのものだけではなく、日照や通風、眺望や騒音など、物件を取り巻く住環境も査定では重要なポイントです。

マンションの場合

マンションの場合は最寄り駅からの距離など、立地条件が査定価格に大きな影響を与えます。駅からの距離が近いほど、査定価格が高くなるのが一般的です。また、マンションの査定では専有面積に単価をかけて査定価格を算出するため、広さもマンションの価格に直結します。

基本的には専有面積が広いほど査定価格も高くなりますが、専有面積が広ければ広いほどいいというわけでもありません。間取りも査定に影響をおよぼす要因となるため、チェックされます。例えば単身者や夫婦二人暮らしが多い地域では特に1LDKや2LDKまでの間取りにニーズがあり、査定価格も高くなりがちです。

一方、ファミリー層が多い地域になると3LDK以上の広めの部屋が好まれ、査定価格が高めになることがあります。また、LD部分の広さや収納スペースも、査定価格のアップにつながるポイントです。

そのほかマンションでは共用部分のグレードやセキュリティ面の設備も重視されます。戸建て住宅と同様に維持管理の状況も見られるところですが、マンションの場合は管理員の勤務形態など、管理体制もチェックされています。

不動産査定を依頼するときの注意点

最後に注意点を解説します。不動産仲介会社に不動産査定を依頼するときは、特に以下の3点に気をつけてください。

複数の不動産仲介会社に依頼する

不動産査定価格は、算出する不動産会社によって異なります。ときには数百万円の差が出ることもあるほどバラツキがあるため、必ず複数の不動産仲介会社に依頼してください。不動産仲介会社が行う査定では、公益社団法人 不動産流通推進センターが提供している価格査定マニュアルを活用していることも多く、それほど相場とかけ離れた査定価格になることはないでしょう。

しかし、評価に利用する取引事例が各社で異なると査定価格には当然バラツキが出ます。もし、査定価格が低いところだけの見積もりしか知らないまま売却してしまったら、大きく損をするかもしれません。

逆に、本当に売却可能な金額と離れた高額の査定額を提示する企業に依頼をしてなかなか売却できない可能性もあります。1社のみに限定してしまうと判断を間違える可能性があるため、必ず複数の不動産仲介会社に査定を依頼し、価格を比較するようにしてください。

複数の不動産仲介会社にそれぞれ査定を依頼するのは手間も時間もかかりますが、一括査定サイトを利用すると一度の入力で複数の不動産仲介会社の査定価格を把握できます。

また、ご相続に関連する売却の場合、いつまでに販売したいなど時期が決まっている場合もあり得ます。この様な場合に対処できるように、買取対応ができるかも併せて確認しておくと先々の見通しが立ちやすくなるでしょう。

高すぎる査定額を提示する会社に注意

査定価格が低すぎると損をする可能性がありますが、高すぎる査定額を提示する会社にも注意する必要があります。不動産仲介会社の中には、高い価格を提示することで売主様の注意を引き、専任媒介契約・専属専任媒介契約を結ぼうとするところもあるからです。

宝石やブランド品の査定価格では、実際にその会社が買い取り可能な金額を提示してくれます。しかし、不動産の査定価格は売れそうな価格というだけで、実際に売れることまでは保証していません。

もし、適正な価格から大きく外れた高い価格で売り出したとしても、なかなか売れない可能性が高いでしょう。結局は値下げを提案され、思い描いていた価格で売却できなかったという自体に陥ることもあります。適切な査定額を出すためには地域の需要を熟知していることや、競合物件の把握、データドリブンな査定など一定の根拠があるはずです。

また、査定で出した価格で売却する力がなければ、提示はできないでしょう。明らかにほかの不動産仲介会社に比べて高すぎる場合は、査定額の合理的な根拠を聞くようにしてください。

不都合なところを隠さない

誰でも不動産をできるだけ高く売りたいと思うでしょう。しかし、査定額を高くしたいがゆえに、マイナスになりそうなところを隠すのはおすすめできません。もし、不都合な情報を隠して高い査定額になったとしても、売買契約の締結後に欠陥や不具合などが見つかった場合は「契約不適合責任」を問われることも考えられます。

契約不適合責任とは、物件の品質や面積などに関して契約内容に適合しない引渡しを行った売主様が負う責任を指します。物件情報は隠さず伝えることが大事です。そもそも不動産の売却では、売主様が買主様に対して欠陥や不具合があれば知らせておく告知義務があります。

リフォームが必要な箇所があれば隠さず、正直に伝えましょう。リフォームの必要がないと思って購入した買主様ならば、購入後すぐのリフォームは想定していないはずです。あとで余分なリフォームの費用がかかれば、不信感を持つかも知れません。査定額が高くなればいい、売れてしまえば関係ないというのではなく、あとでトラブルの火種になるようなことは隠さず伝えるようにしましょう。

まとめ 不動産を売却するなら【リロの不動産】におまかせを

不動産は一つとして同じものがないため、物件ごとに売出価格を決める必要があります。不動産を売却するときは売出価格を決めるためにも、まずは不動産仲介会社に査定をしてもらうのが一般的です。

【リロの不動産・リロの売買】は大手と地域密着の両方の強みを持つ賃貸管理会社として地域特性を熟知し、長年地域に根ざして培ってきたノウハウを発揮しながら不動産の売却ができます。

不動産の売却を検討しているのなら、まずは見積もりでデータドリブンな査定をしてもらうところからはじめましょう。アパート経営やマンション経営をしている収益物件の不動産査定なら、賃貸管理オーナーのネットワークを保有するリロの不動産におまかせください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。