【事例付】相続不動産の売却で争続回避!相続財産を分割する4つの方法

2024.03.05

相続が発生すると、相続人の間で相続財産の分割が必要になります。なかでも分割が難しくなりがちなのが不動産です。

では、トラブルを避け、円滑に相続不動産を分割するにはどうすればいいのでしょうか。この記事では相続した不動産を売却することも含め、複数の分割方法を解説します。具体的な事例も交えますので参考にしてください。

なお、不動産相続の流れと遺産分割についてはこちらも参考になります。あわせて、参照ください。

不動産相続の流れと必要経費 遺産分割の方法と注意点も解説

土地の相続手続きの流れとは? 遺産分割の方法と相続税節税の仕組みを解説

目次

相続財産を分割するときの4つの方法

現金や預貯金などと違い、不動産のように簡単には分けられない相続財産を相続人間で分割する場合、以下の4つの方法があります。

また、収益物件の相続についてはこちらも参照ください。

収益物件の相続対策 遺産分割と売却の注意点

現物分割(げんぶつぶんかつ)

現物分割は相続財産をそのままの形で引き継ぐ方法です。例えば被相続人が自宅と収益不動産を所有し、かつ相続人が2人のケースをみてみましょう。相続人Aが自宅、相続人Bが収益不動産をそれぞれ単独で相続すると、2つの不動産はそのままの形で引き継がれる現物分割になります。

相続の対象となる土地を分筆し、複数の相続人がそれぞれ相続するケースも、現金などに換えずに土地そのものを相続するという意味で、現物分割の方法の一つとされます。また、被相続人の相続財産が自宅と現金、株式の3種類あり、相続人が3人だった場合、相続人Aが自宅、相続人Bが現金、相続人Cが株式を相続するのも現物分割です。

現物分割は手続きが簡単で相続後の活用も自由にできるのがメリットですが、分割の仕方や不動産の評価によっては相続人間で不公平になるのはデメリットです。

換価分割(かんかぶんかつ)

換価分割とは不動産などの相続財産を売却し、金銭に換えてから相続人間で分割する方法です。相続財産に不動産が含まれている場合、不動産の相続を望む相続人がいれば遺産分割協議を進めやすいかもしれません。

しかし、不動産の相続を望む相続人がいないようなら、不動産の売却を視野に入れるほうが、遺産分割協議はスムーズにいく可能性があります。先の自宅と収益不動産の2件を被相続人が所有していた例で、現物分割せずに換価分割すればどうなるか考えてみましょう。

不動産の売却には諸経費がかかってくるため、売却金額をそのまま相続できるわけではありませんが、ここでは単純に売却金額だけで考えてみます。自宅を1億円、収益不動産を2億円で売却できるとすると、合計で3億円です。それを相続人A・Bがそれぞれ1億5,000万円ずつ分割すると、公平な分割になります。

代償分割(だいしょうぶんかつ)

代償分割は相続人のうち、誰か1人が相続財産すべてを取得し、残りの相続人には代償金を支払うことによって清算する遺産分割の方法です。ここでも被相続人が自宅と収益不動産の2件を所有し、相続人が2人のケースで考えてみましょう。自宅の時価が1億円、収益不動産の時価が2億円と見積もられる場合、相続人AとBがそれぞれ単独で所有すると不公平が生じます。

時価2億円の収益不動産を相続する相続人Bが、相続人Aに5,000万円の代償金を支払うことでAとBが手にする金額は1億5,000万円ずつとなり、公平になります。以上のように法定相続分よりも多く相続する側から、少なく相続する側に対し、法定相続分との差額分を代償する方式が代償分割です。

共有分割(きょうゆうぶんかつ)

共有分割は、2人以上の相続人が法定相続割合に応じた共有持分で不動産を取得する方法です。共有分割では1つの不動産をそのままの状態で相続人全員が共有します。共有分割は法定相続割合で公平に分割できるのがメリットです。

一方で不動産を売却したい、土地に新たな建物を建てたいなどの「変更・処分行為」については全員の同意がないとできないデメリットがあります。また、相続した物件のリフォームなど「管理行為」を行う際には、共有者の過半数の同意が必要とされます。

相続が発生した際になかなか分割方法が決まらず、とりあえず共有分割にするケースは少なくありません。ただ、長期間そのままにしているうちに状況が変わり、後々問題になることが多いため注意が必要です。共有者が死亡すると2次相続が発生し、さらに相続人の人数が増えて権利関係が複雑になってしまいます。

換価分割のメリット・デメリット

相続財産が不動産の場合、現物分割では不公平が生じやすいため、現実には換価分割や代償分割の方法が取られることが多いでしょう。そこでまずは換価分割のメリット・デメリットを解説します。

なお、資産整理と相続の具体的事例については、こちらもご参照ください。

不動産の資産整理は何をするの?相続・負債整理・投資別に注意点も解説

大きな敷地を相続された3人兄弟!空き家の分割ラインがとんでもないことに

換価分割のメリット1 相続財産を公平に分割できる

不動産のように分割しにくい相続財産では、なによりも相続人間で不公平になりやすい懸念があります。現物分割のように形を変えず、かつ公平に相続財産を分割するのは難しいでしょう。不動産が2つ、相続人が2人で1つずつ相続できる場合でも、公平な遺産分割ができるとはかぎりません。2つの不動産の評価額が違えば、評価額の低い不動産の相続人に不満が生じても不思議ではないからです。

その点、不動産を現金化すれば1円単位まで明確にできるため、相続財産を公平に分けられます。相続人同士のトラブルは起こりにくく、相続財産を公平に分割できるのは大きなメリットです。

遺産分割協議書に換価分割を記載

換価分割を行う手順としては、まず1人の相続人が代表して遺産を相続し、その後に残りの相続人に現金を交付するのが一般的です。

ただし、遺産分割協議書には、換価分割を行う旨を記載しておく必要があります。換価分割であることを明確にしておかないと、現金の交付が贈与とみなされてしまい、贈与税がかかることがあるからです。

換価分割のメリット2 相続税を支払うための現金が用意できる

相続財産によっては、相続税の負担が大きくなる可能性があります。相続税は現金で支払うのが原則であり、相続人はその分の現金を用意しておかなければなりません。突然相続が発生した場合、考えていたよりも相続税の金額が高くなってしまい、思わぬ負担を強いられることもあります。

手元にある程度の現金を所有していれば問題ありませんが、手持ちがなければ現金以外の資産を売却したり、借り入れを行ったりなど、相続税支払いのための資金を捻出する必要があります。換価分割では不動産を現金に換えていれば、相続税支払いの心配がありません。現金で受け取った相続財産をそのまま相続税の支払いに充てられるとともに、納税の準備にもなるメリットがあります。

換価分割のデメリット1 相続財産を手放す必要がある

換価分割を選択すると相続財産をそのままの形では残せず、現金化するために不動産や有価証券などを売却する必要があります。特に先祖代々受け継がれた不動産を換価分割することになると、自分の代で手放すことに申し訳なさを感じるかもしれません。住み慣れた自宅を売却し、出ていくのが辛いという方もいるでしょう。

将来値上がりが見込まれる不動産では、売却に反対する相続人が出てくる可能性も考えられます。また、相続財産が収益不動産の場合、不動産のままで相続すれば将来にわたって家賃収入を得られるメリットがありますが、手放してしまえばその権利も放棄することになります。やはり売却に反対する意見が出ることも考えられ、遺産分割で揉める原因にもなるでしょう。

換価分割のデメリット2 売却益に譲渡所得税がかかる

相続した不動産を売却した際に売却益が出ると相続人の所得となり、売却益には譲渡所得税が発生するのもデメリットの一つです。譲渡所得税は売却価格から、購入価格や手数料を差し引いた金額に対してかかってきます。特に取得費が分からない古い不動産の場合、譲渡収入金額の5%を取得費とみなす「概算法」が適用されるため、税額は高額になりがちです。

譲渡所得税の税率は被相続人が不動産を保有していた年数によって違い、譲渡した年の1月1日時点で5年以内ならば所得税が30%、住民税は9%を納める必要があります。5年を超えていれば所得税が15%、住民税が5%です。それ以外に2037年までは東日本大震災の復興を目的とした復興特別所得税として、所有年数5年以内は0.63%、5年を超える場合は0.315%が加わります。

ただし、相続で財産を取得した場合には取得費に相続税の一部を加算できる「取得費加算の特例」があり、相続税と譲渡所得税の二重負担を回避できる仕組みがあります。

換価分割のデメリット3 売却に時間と手間がかかる

不動産を売却するといっても、思ったとおりに手続きが進むとはかぎりません。購入希望者がすぐ出てくれば早期に売却できる可能性は高いかもしれませんが、それでもある程度の手間や時間、お金がかかります。買い手を探したり、交渉を行ったりしながら最終的に売却できるまで、数ヶ月かかることも珍しくありません。

そもそも換価分割するためには、遺産分割協議で相続人全員が同意している必要があります。全員の同意を得たうえで、換価分割であることを記載した遺産分割協議書を作成している間にも時間は過ぎていきます。

相続税の支払い期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。その期間内に不動産を売却して換価分割し、相続人すべてが納税手続きを済ませるためには、急いで売却に向けて着手する必要があります。納税期日が定められている相続の手続きでは、高く売却できる時期を待っている時間的な余裕がなく、売却のタイミングを選べないのもデメリットです。

代償分割のメリット・デメリット

次にもう一つ、代償分割についても詳しく解説します。メリット・デメリットをそれぞれ3つ、押さえておいてください。

代償分割のメリット1 公平に遺産分割を行えるので、トラブルを回避できる

現金や預貯金などの分割しやすい相続財産が少なく、大部分が不動産だというケースを考えてみましょう。換価分割のように不動産を売却せず、現物分割としてそのままの状態で誰かが相続するとなると、不動産を相続する方とそれ以外の方でかなりの不公平が生じます。

不動産を売却せずに遺産分割をする方法としては先述した共有分割もありますが、将来的に権利が複雑になる可能性があるのはデメリットでしょう。変更・処分行為に全員の同意が必要なことを考えると、将来的にトラブルに発展するリスクも否定できません。その点、代償分割は不動産をそのままの状態で残しつつ、取得財産の額をそろえ、トラブルのない公平な相続を実現できるのがメリットです。

代償分割のメリット2 相続財産をそのままの形で残すことができる

相続財産の分割を公平にする方法としては換価分割がありますが、不動産などの財産は売却して換金する必要があります。しかし、土地や建物などの不動産を相続後も活用したいと考えている場合、換価分割は使えません。代償分割にすることで、不動産などの相続財産は相続人がそのままの形で引き継ぐことが可能です。

相続財産となるのが自宅だった場合、売却することになると同居していた配偶者などが住めなくなる事態も発生するでしょう。相続する土地や建物を活用して、何か事業を始めたいと考えている相続人がいる場合、そのままの形で使えなければ目的を達成できません。代償分割は収益性が見込める不動産を賃貸物件として活用したいケースや、歴史のある不動産を保存したいケースにも有効です。

代償分割のメリット3 相続税を節税できる可能性がある

土地や建物を相続すると、相続税を節税できる可能性があるのもメリットです。相続で受け継ぐ土地は自宅や事業用などケースによってさまざまですが、相続した土地が「小規模宅地等」に該当する宅地であれば、「小規模宅地等の特例」が適用できます。小規模宅地等の特例は、最大80%まで相続税を算出するもととなる相続税評価額を下げられる制度です。

特例を受けるための要件には、被相続人が住んでいた自宅や事業に使っていた土地、賃貸業に使っていた土地などがあります。減額される割合は、どの要件に当てはまるのかで違ってくるため確認してください。特例の対象となる土地であれば相続税評価が減額され、相続税もその分だけ減らせる可能性があります。

代償分割のデメリット1 代償金を支払う相続人に資力が必要になる

代償分割は相続財産の額を公平にできる点では、相続人の間で不公平感が起こりにくい分割方法です。ただし、公平にするためには土地や建物のように分けられない相続財産を相続した方から、残りの相続人に対して代償金の支払いをともなうところがネックになる可能性があります。

例えば不動産だけを相続した方がほかの相続人に現金で代償金を支払うことになった場合、自分の財産から現金を捻出しなければならないこともあります。不動産の価格にもよりますが、代償金は高額になることが多く、一定の資金力が必要です。

代償金の支払いを分割払いにするのも可能ですが、支払いが滞ればトラブルになることも考えられます。そもそも、相続人間での合意がなければ、分割払いも採用できません。それでも代償分割にしたい場合は、不動産担保ローンを利用するのも選択肢の一つです。また、被相続人が代償金に充てられる生命保険金を準備しておくなど、生前に対策を施しておく必要があるでしょう。

代償分割のデメリット2 相続財産の評価や代償金の算出でトラブルが起きる場合もある

公平な遺産分割を行うためには、まず正確に相続財産の評価をしなければなりません。しかし、代償金の算出方法は複数あります。代償金の算出で基準とするのは、「相続税評価額」または「代償分割時の時価」です。ただし、相続する不動産の評価は相続税評価額をもとに計算するのか、時価をもとに計算するのかで評価金額が変わってきます。

代償金を支払う側としては、評価額をできるだけ低くしたいと思うこともあるでしょう。一方で、受け取る側は評価額が高くあってほしいと考えているかもしれません。算出方法の採用に決まりがあるわけではないため、意見が対立すればトラブルになる可能性もあります。

代償金を受け取る側が金額に納得できなければ、当人同士の話し合いで解決できない事態にまで発展することも考えられます。そうなれば相続税の納税期日に間に合わなくなったり、裁判所へ遺産分割調停を申し立てることになったりする可能性まであるのもデメリットです。

代償分割のデメリット3 贈与税・所得税に気をつける必要がある

代償分割で受け取った代償金は直接相続財産を受け取るわけではありませんが、相続税は同じように課税されます。代償金に対しては、基本的に贈与税などの税金は発生しません。しかし、ケースによっては贈与税や所得税がかかることもあるため要注意です。

どのような状況で贈与税や所得税が発生するのか理解しておかないと、後々税金の支払いで困る状況になることも考えられます。不備がないよう手続きをするためにも、以下の2点を押さえておいてください。

代償分割は遺産分割協議書に記載する

代償分割を選択した際は、遺産分割協議書の書き方に注意が必要です。代償金という形でほかの相続人に金銭を渡す場合、贈与税がかかってくるのではないかと心配になる方がいるかもしれませんが、そもそも代償金は贈与ではありません。遺産分割協議書には「代償分割により代償金を支払う」と記載しておくことがポイントです。

この記載がないと、代償金の交付が贈与とみなされてしまう可能性があります。具体的に土地が対象の相続財産であったケースでは、遺産分割協議書に土地の所在や地番、地目、地積などの詳細、取得する相続人の氏名を入れます。加えてほかの相続人に対して支払う代償金の金額や支払い期限、支払いの方法なども明確に記載しておいてください。

代償分割は不動産で代償した場合、譲渡所得税が課税されることがある

代償として交付するのは、必ずしも現金でなくてもかまいません。代償金を支払う相続人が以前から自分で保有している不動産をかわりにすることも可能です。ただし、不動産をほかの相続人に交付した場合は時価による不動産の譲渡があったとみなされるため、譲渡所得税が課税されることがあります。

譲渡所得税が課税されるのは、譲渡時の時価が取得額を上回っているケースです。例えば取得額1,000万円だった不動産が、代償分割時の時価で2,000万円になっていると、1,000万円の差額が出ます。差額の1,000万円は譲渡所得とみなされるため、課税の対象になります。代償分割を選択する際に不動産で代償することを検討する場合は、譲渡所得税が発生するかどうかも注意してください。

まとめ

相続は親子や兄弟などの親しい間柄であっても、利害調整をきちんと行わないとトラブルになります。特に不動産の相続では相続登記や相続不動産の売却も含めて、遺産分割にまつわる手続きが煩雑です。相続税はもちろん贈与税や所得税にも気をつけ、確定申告もしなければなりません。

スムーズに遺産分割協議を進めるためには、相続に詳しい不動産会社への相談が重要です。オーナー様のネットワークを保有している【リロの不動産】は相続物件の売却にも強く、相続や遺産分割、売却時のトラブルを防げます。相続にあたって不動産の売却を検討しているのなら、【リロの不動産】にぜひご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。