賃貸経営における滞納保証とは? 家賃保証や一括借上との違いを解説

2023.04.05

賃貸経営において予想されるリスクの1つに「家賃滞納」問題があります。賃貸経営の収入源のほとんどは家賃収入ですから、家賃滞納が増えるのは経営上の大問題です。借地借家法の関係で、家賃の滞納を理由に即退去を求めることも難しく、オーナー様の目線で考えるとなかなか悩ましい問題といえます。

そこで、家賃滞納リスクをカバーする方法に「滞納保証」があります。「滞納保証」とは家賃未払いが発生した際に、賃貸管理会社が未払い分を立替えてくれるサービスです。

今回は家賃滞納問題へのリスクヘッジとなる「滞納保証」について、基本的な仕組みやメリット面・デメリット面を中心に解説します。混同されがちな「家賃保証」「一括借上」との違いについても一通り説明するので、ぜひ参考にご一読ください。

目次

滞納保証とは

「滞納保証」とは入居者の家賃未払いが生じた際に、賃貸管理会社が未払い分を立替えてくれるサービスのことです。基本的な仕組みとメリット面、デメリット面について解説しましょう。

滞納保証の仕組み

「滞納保証」とは入居者様に家賃の滞納があった際に、賃貸管理会社がオーナー様に対して一定の家賃を支払い、滞納分を一時的に立替えるサービスです。賃貸管理会社の賃貸経営サポートサービスの1つとして広まりつつあり、賃貸管理会社は立て替えと同時に滞納中の入居者様への督促や各種請求などを同時に行います。

滞納保証自体を「家賃保証会社」に委託するケースもあり、その場合は賃貸管理会社を通じて家賃保証会社を利用するかたちとなります。いずれにせよ賃貸管理会社に対しては通常の管理委託手数料に加えて「滞納保証」分の手数料を支払わなくてはなりません。

そもそも入居者様との契約時には連帯保証人を立ててもらうことが多いのですが、実際に家賃滞納が起こった場合にはなかなかうまくいかないケースも多いです。

例えば連帯保証人に支払い能力がない、連絡自体が取れない、さらには連帯保証人が支払いを嫌がって滞納分を支払ってくれない、といった事例も考えられます。家賃の支払いまで2ヶ月、3ヶ月と時間がかかるようではキャッシュフローがどんどん悪化してしまい、オーナー様の賃貸経営に打撃を与えることになるでしょう。

そこで「滞納保証」があると賃貸管理会社がすぐに滞納分を立替えてくれますので、当面のキャッシュフローへの影響を最小限にとどめることが可能となります。入居者様への連絡や督促などの業務も賃貸管理会社などが代行してくれるため、オーナー様の手間や労力がかからない点も大きなメリットです。

滞納保証のメリット

「滞納保証」のメリットをいくつかあげておきましょう。

メリット1:家賃滞納時の債務リスクに備えられる

収益のほとんどが家賃収入で支えられている賃貸経営においては、家賃収入が入らない状態は大きなリスクです。1件でも家賃収入が止まるとキャッシュフローの悪化は避けられず、滞納家賃の回収業務にかかる労力と時間も膨大なものとなるでしょう。

そのような場合に「滞納保証」を利用すれば、入居者様の家賃支払い状況を気にすることなく毎月の家賃収入を安定して得ることができます。督促業務や回収業務など、家賃滞納時の債務リスクについても賃貸管理会社が一手に引き受けてくれるため、オーナー様の負担を大幅に軽減することも可能です。

メリット2:トラブルリスクの少ない入居者様が集まる

家賃滞納を防ぐためにはしっかりとした入居者審査を行い、トラブルになるリスクの少ない入居者様に入居していただくことが大事です。

「滞納保証」サービスを提供する賃貸管理会社は家賃滞納トラブルへの対応実績が豊富ですので、リスクを最小化するためのノウハウを持っています。入居者審査についても厳格な基準を設けており、結果的にトラブルリスクの少ない入居者様を集められるでしょう。

滞納保証のデメリット

「滞納保証」についてのデメリットもあげておきましょう。

デメリット1:別途「滞納保証」サービス分の料金がかかる

賃貸管理会社に一任する場合は、毎月一定の管理委託手数料にサービス料金分が増額されます。管理物件数が多くなるほど負担費用も増加します。

デメリット2:空室リスクへの対応はできない

「滞納保証」はあくまでもすでに契約中の入居者様が家賃を滞納する場合の保証です。空室発生分を補うものではなく、空室リスクへの対応はサービス対象外となります。

デメリット3・賃貸管理会社のサービスの質の影響を受ける

「滞納保証」を行う賃貸管理会社は滞納分の家賃の立替えだけでなく、入居者様への督促や家賃回収業務を行います。非常に少ないケースではありますが、賃貸管理会社が悪質な取り立て行為などを行うようだと、トラブルが大きくなりかねません。

それだけでなく、オーナー様の管理物件に対する悪評につながる恐れもあり、賃貸経営そのものに悪影響を及ぼします。賃貸管理会社を選ぶ際には細心の注意を払わなくてはなりません。

家賃保証とはどう違うのか

「滞納保証」とよく似たサービスに「家賃保証」があります。両方とも家賃の滞納分を立て替えてもらう点で共通していますが、「滞納保証」は賃貸管理会社が行い、「家賃保証」は家賃保証会社が行う点に違いがあります。

家賃保証とは

「家賃保証」は、家賃保証会社が入居者様の保証人となる制度のことです。一般的に賃貸借契約では入居者様に対して連帯保証人による保証を求めますが、入居者様がうまく連帯保証人を見つけられないケースも少なくありません。

その場合、入居者様は家賃保証会社と契約を結ぶことで賃貸借契約上の連帯保証人になってもらい、万が一家賃滞納が生じた場合は家賃保証会社に対して滞納分の支払いを請求します。

「滞納保証」との違いを整理すると、「滞納保証」は家賃の立替えをするのがオーナー様と契約した賃貸管理会社で、サービス料金はオーナー様が支払います。また賃貸管理会社は家賃滞納分の立替えを行いますが、あくまでもオーナー様側に立ってサポートする立場にあるため、入居者様と立場を同じくする連帯保証人ではありません。

これに対して「家賃保証」は入居者様が保証料を支払います。家賃保証会社は入居者様の連帯保証人となるので、家賃滞納時は入居者様に代わって家賃をオーナー様に支払う義務が生じます。

入居者様にとってのメリット・デメリット

「家賃保証」について、入居者側からみたメリット面とデメリット面についてまとめておきましょう。

入居者側からみたメリット:連帯保証人が見つからなくても入居できる

部屋を借りるときに連帯保証人を頼める方がいればいいのですが、なかなか適切な方が見つからないケースも少なくないでしょう。親や兄弟、職場の上司にお願いするにしても、連帯保証人は本人と同じ債務弁済義務を負うことになるのでお願いしづらいものです。

派遣社員や契約社員、アルバイトの方など、長期的な安定収入を見込めない方も同様に連帯保証人が見つからないケースがあります。仮に連帯保証人がいたとしても入居審査にパス出来ない事例も少なくないようです。

このように連帯保証人が見つかりにくい方であっても、家賃保証会社と保証契約を結べば入居先を探しやすくなります。家賃保証会社の入居審査そのものが厳格で信頼性があるため、入居者様に対する信用が確保されるからです。いざというときに滞納分を立替えてくれる点も、オーナー様、入居者様双方にとってのリスクヘッジとなります。

入居者側からみたデメリット:保証料の負担が発生する

家賃保証会社のサービスを受けるには、保証料の支払いが必要です。国土交通省住宅局の公表データによると「初回時に月額賃料の50%、以後1年ごとに1万円の更新費」と設定している事業者が全体の42%で最多となっています。

会社によっては家賃の100%分を求めるケースも多く、月額保証料を支払うパターンも中にはあるようです。いずれにせよ入居者側にとっては小さくない負担となります。

出典:国土交通省 家賃債務保証の現状
https://www.mlit.go.jp/common/001153371.pdf

オーナー様にとってのメリット・デメリット

オーナー様側からみた「家賃保証」のメリット・デメリット面はどのようになるでしょうか?「滞納保証」と比較しながら要点を押さえておきましょう。

メリット:家賃滞納リスクが減少し、費用負担も少ない

家賃保証会社は一般的な連帯保証人による保証と比べて確実性があります。万が一、家賃未払いが起こっても確実に回収できる点は大きなメリットです。「滞納保証」と違い保証料を支払うのは入居者様なので、オーナー様の費用負担もありません。

また、家賃保証会社は入居者様の審査に関して独自のノウハウにもとづく厳格な基準を設けています。そのため入居者審査のレベルが向上し、リスクの少ない入居者様を集めやすくなるでしょう。住環境をいい状態に保ちやすくなる点もメリットです。

デメリット1:入居者様が敬遠する可能性がある

「家賃保証」においては入居者様が保証料を負担することになるため、家賃保証会社との契約を条件にすると入居者様が敬遠する可能性があります。

デメリット2:家賃保証会社には倒産リスクがある

意外と大きなリスクとなるのは、家賃保証会社の倒産です。実際に2008年には業界大手の株式会社リプラスの倒産という事件も起こっていますので、大手だからといって決して安心できません。家賃保証会社が倒産してしまうと家賃未払いリスクが増すうえに、入居者様に対して新たに連帯保証人を立ててもらうなどの難しい交渉が必要となってきます。

一括借上とはどう違うのか

「一括借上」「サブリース」といった言葉もよく耳にするようになりました。「一括借上」とは賃貸管理会社などがオーナー様の物件を一棟丸ごと借りる行為のこと。さらに借り上げた物件を賃貸管理会社が入居者様に貸す、又貸し(転貸)する行為を「サブリ―ス」といいます。

「一括借上」「サブリース」ではオーナー様と入居者様との間で直接の賃貸借関係はありません。オーナー様と入居者様との間の賃貸借関係が基本となる「滞納保証」や「家賃保証」とはこの点が大きく違います。

一括借上は転貸借契約

「一括借上」とは賃貸管理会社(サブリース会社)が借主の立場になり、オーナー様の保有するマンション、アパートなどを一棟丸ごと借り上げることをいいます。オーナー様と賃貸管理会社(サブリース会社)との間で賃貸借契約を結ぶ仕組みです(この賃貸借契約を「マスターリース契約」と呼ぶことがあります)。

そして、オーナー様の物件を借り上げた賃貸管理会社(サブリース会社)は、オーナー様保有の物件を第三者の入居者様に又貸し(転貸)します。これを法律上「転貸借契約(サブリース契約)」といいます。

オーナー様は保有物件を賃貸管理会社に貸すだけですので、実際の賃貸経営実務については直接かかわりません。そのまま賃貸管理会社に賃貸経営をお任せできます。家賃収入については空室率や滞納状況に関わらず一定の収入額が保証されており(満室時の家賃収入の75~85%は保証されることが多いです)、ほとんど労力をかけることなく安定収入を期待できるビジネスモデルとなっています。

一括借上のメリット

「一括借上・サブリース」のメリットをあげておきましょう。

メリット1:毎月の安定収入を確保できる

「一括借上・サブリース」の最大のメリットは、契約期間中は空室の有無に関わらず一定の家賃収入が保証される点です。空室の増加や家賃滞納が生じたとしても、オーナー様には契約上決まった分の収入が毎月入ります。

相場としては満室時の家賃収入の75~85%といったところ。オーナー様はほとんど何もする必要がないにも関わらず安定収入が得られるのは大きな魅力です。

メリット2:賃貸経営の実務に関わる必要がない

賃貸経営の実務には入居者の募集だけでなく、入居者のクレーム対応や設備管理業務など、さまざまな業務があります。いずれも専門的な知識とノウハウが必要なうえに、かかる手間と時間も膨大になりがちです。

しかし「一括借上・サブリース」を選ぶと物件の管理・運営を賃貸経営会社にお任せできるので、オーナー様が賃貸経営の実務に関わる必要がありません。ご多忙な方や賃貸経営がはじめてのオーナー様にはピッタリのビジネスモデルです。

メリット3:確定申告時の煩雑な手続きが軽減する

賃貸経営ではオーナー様が毎年確定申告を行いますが、管理物件が多いと収入管理はかなり煩雑です。家賃収入の計算だけでなくメンテナンスやクリーニング費用などの出費の計上も重なるため、税務書類の作成に大きな労力がかかります。

その点、「一括借上・サブリース」では賃貸管理会社が複雑な会計処理をまとめてくれるので、オーナー様の負担はかなり少ないです。必要な手続きや書類も賃貸管理会社が一通り準備してくれるでしょう。

一括借上のデメリット

「一括借上・サブリース」のデメリットについてもあげておきましょう。

デメリット1:収益が頭打ちになる

空室や家賃滞納の有無にかかわらず一定の収入が約束される点が「一括借上・サブリース」の強みですが、同時にどんなに収益がよくなっても収入額は変わらない点がデメリットとなります。一般的に満室時の家賃収入の75~85%程度が相場で、これ以上家賃を最大化することは難しいです。

デメリット2:中途解約や家賃減額リスクがある

「一括借上・サブリース」は通常、契約期間内の一定の時期に契約内容の見直しが行われます。その際に、賃貸管理会社の収益がよくないと家賃の減額を求められる可能性が高いです。さらにオーナー様との交渉がうまくいかず赤字解消も困難と判断した場合、賃貸管理会社側から中途解約を求めてくることがあります。

「一括借上・サブリース」においてはサブリース会社側が借主となり、借地借家法で保護される存在になります。サブリース会社側は家賃減額や中途解約を主張できるのに、オーナー様側は家賃増額や中途解約を主張することが基本的にできません。そのようなこともあり、サブリース会社との間でトラブルとなるケースも少なくありません。

デメリット3・サブリース会社の倒産リスク

「一括借上・サブリース」においても賃貸管理会社(サブリース会社)の倒産リスクは深刻な課題です。実際にサブリース会社の倒産後の業務引継ぎがうまくいかず、オーナー様と入居者様の間でトラブルになる事例が後を絶ちません。賃貸管理会社を選ぶ際は事業実績だけでなく企業の規模と安定性、事業上のリスクへの対応力などをよく見極める必要があります。

滞納保証は使うべきか

賃貸経営を行う上で「滞納保証」は必要不可欠なものでしょうか?「滞納保証」を利用するうえでオーナー様に心がけていただきたいポイントを2つあげておきます。

物件に魅力があれば必要ない

「滞納保証」の利用は不動産投資を行うオーナー様にとって経営上大きなメリットがありますが、一定のコストがかかる点については慎重に判断していただきたいです。また「滞納保証」はあくまでも家賃未払いに対するリスクヘッジですので、空室保証ではない点も理解しておきましょう。

「滞納保証」を利用するかどうかは保有する物件の収益性を軸に判断してください。そもそも物件に魅力があれば入居希望者はどんどん集まりますので、入居基準を高めに設定しても問題ありません。空室率も低くなるため多少の収益ダウンがあってもほかでカバーしやすく、あえて滞納保証を付ける必要性はあまりないといえます。

一方、保有されている物件の魅力に関してどうしても不安で、万が一のリスクに備えたいという場合は、保険代わりとして「滞納保証」を利用することをおすすめします。所有する物件の収益見込みや管理委託料などを勘案し、費用対効果を見極めて導入するかを決めましょう。

信頼できる賃貸管理会社に委託することが重要

「滞納保証」や「家賃保証」などの手法はあくまでもリスクヘッジです。家賃を滞納しがちな入居者様を選ばない入居者審査や入居者様との連絡対応などが円滑にできているだけでも、家賃滞納リスクを低減させることができます。つねに満室に近い状態であれば「滞納保証」や「家賃保証」に頼らずとも収益全体でカバーできるため、あえて「滞納保証」にコストをかける必要性もなくなります。

このように「滞納保証」を考える以前に、物件を魅力的な状態に保つために適切な物件管理ができているかが重要です。実際の管理業務を行う賃貸管理会社のサービス次第でリスクヘッジにかかる費用や労力が大きく変わってくることを理解しておきましょう。

「滞納保証」を利用する場合も、競合物件と比較した際のお部屋の集客状況や、入居者様への督促手続きなどを行う賃貸管理会社の業務の質を見極めることが大事です。もし悪質な家賃取り立てを行うようだと物件の評判にも関わりますし、トラブルがより深刻化する恐れもあるでしょう。会社の実績や業務内容などをよく吟味したうえで、信頼できる賃貸管理会社に委託することが重要です。

まとめ

今回は「滞納保証」を中心に、「家賃保証」や「一括借上」との違いなども含めて解説しました。「滞納保証」を含めた入居者管理業務については、経験と実績の豊富な賃貸管理会社の管理能力が大きく問われます。

高い収益性を維持できる物件であればそもそも「滞納保証」などのリスクヘッジは必要なくなり、実際に「滞納保証」を利用する場合も実務を行う賃貸管理会社の能力次第で大きなトラブルを避けることができるでしょう。

信頼できる賃貸管理会社を見つけることは、賃貸経営を成功させるために不可欠です。【リロの不動産】は賃貸管理業務を専門に全国トップレベルの管理実績を誇り、これまでも多くのオーナー様をサポートしております。入居者管理業務でお悩みの方は、ぜひ一度【リロの不動産】までご相談ください!

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。