投資用マンションの売却時期は?出口戦略を見据える高値売却ポイント
2023.04.24投資用マンションを所有していると、売りどきを悩むことがあります。自宅として購入する居住用マンションとは違い、いつかは売却することを考えておかなければなりません。
しかし、売却時期を見誤れば、せっかくの投資で損を出してしまう可能性があります。不動産投資の出口戦略となる投資用マンションの売却について、売却の方法や高く売れるタイミングなどを解説します。
投資用マンションとは?
そもそも投資用マンションとは、どのようなマンションを指すのでしょうか。居住用マンションとの相違点や、区分所有マンションと一棟マンションを所有する場合の違いなど、まずは投資マンションについて見ていきましょう。
不動産投資のためのマンション
投資用マンションは収益を得るために所有するマンションです。自分で住むことを目的として購入する居住用マンション(実需)とは区別して、投資用マンションと呼ばれます。居住用マンションでは基本的に所有者イコール利用者になりますが、投資用マンションでは利用者は第三者になります。
投資用マンションで収益を上げる方法は2種類あります。その一つが第三者に賃貸することで得られる家賃収入です。資産を保有することで得られる収入で、インカムゲインと呼ばれる収益です。もう一つの方法に、所有しているマンションを売却して売却益を得るキャピタルゲインがあります。
ただし、キャピタルゲインは市場動向によっては大きな売却益を得られる可能性があるものの、購入時よりも高い価格で売却できなければ収益には結びつきません。一方でインカムゲインは、投資用の収益不動産を所有していれば毎月家賃収入が見込めるため、安定的に継続して収入を得られるメリットがあります。
区分所有マンションと一棟マンション
投資用マンションとして物件を購入する際、区分所有マンションにするか、一棟マンションにするかの選択肢があります。区分所有マンションは一棟の建物の中の1室だけを購入し、一室のみを運用する投資方法です。一方で、一棟マンションの投資ではマンションを丸ごと購入し、全部屋を賃貸物件とする不動産投資になります。
区分所有マンションでは購入するのが1室だけであるため、比較的少額でも投資を始められるメリットや、管理コストも多くかからないメリットがあります。しかし、複数の区分マンションを購入したとしても一棟マンションに比べると部屋数は少なく、収益性はそれほどありません。所有しているのが1室だけの状況で空室になったら、家賃収入はゼロになります。
一棟マンションは収益性や資産価値の高さ、収入の安定性、運営の自由度などでメリットがあるものの、管理コストが高く、購入時には多額の資金も必要です。また、区分所有マンションは比較的売却がしやすいですが、一棟マンションになると物件価格が高額になり、購入する投資家が限られてくる傾向にあります。
居住用マンションと投資用マンション
居住用マンションと投資用マンションがどのように違うのか、さらに間取りとローンの面を掘り下げて解説します。
間取りの違い
居住用マンションか、投資用マンションかなど、目的によってマンションの建て方が変わるわけではありません。ただ、メインのターゲット層が異なるため、広さや部屋数などに違いがあります。
居住用マンションは、基本的に購入者がマイホームとして実際に入居することを前提としている物件です。さまざまな間取りがあるものの、どちらかといえば2LDKや3LDKのように部屋数が多いファミリー向けが中心です。
リビングやキッチンが広めに作られていたり、収納スペースが充実していたりなど、家族で生活することを想定して作られています。長く住み続けることが多い傾向にあるため、日当たりや眺望のよさ、設備が充実していることなども重視されます。
投資用マンションが主にターゲットにしている入居者様は、学生や社会人などの単身者です。間取りは一人暮らし向けのワンルームや1K、少し広めでも1LDK程度など、コンパクトな造りの間取りが中心になっています。
単身者向けのマンションでは、どちらかというと通勤や通学での交通の利便性が重視される傾向があります。昼間は在宅していない入居者様も多く、間取りや設備のグレードにこだわらない方も珍しくありません。そのため、部屋の造りがシンプルな物件が多くなっています。
ローンの違い
マンションを購入する際、投資用か居住用かを問わず、多くの方がローンを組むことになります。居住用マンションと投資用マンションでは、購入時に利用できるローンの種類が異なります。マンション購入用のローンには、住宅ローンと不動産投資ローンの2種類があり、自分が住むための居住用マンションの購入で利用できるのは住宅ローンになります。
住宅ローンは一戸建ての購入にも活用され、多くの金融機関で取り扱われています。居住用マンションは生活の基盤となるものであるため、金利は低めに抑えられているのが特徴の一つです。要件が合えば、住宅ローン控除が使えるメリットもあります。審査の対象になるのは、収入や保有している資産など本人の返済能力です。
投資用マンションの購入には住宅ローンは使えず、利用できるローンは不動産投資ローンになります。不動産投資ローンはアパートローンという名称が使われることもあり、審査の対象は本人の返済能力に加えて賃貸事業の収益性や事業の継続性も重視されます。一般的に住宅ローンよりも審査が厳しく、担保としての役割もある当該物件の価値もチェックされます。
融資額は住宅ローンに比べて高くなることが多いのですが、住宅ローンと比べると取り扱っている金融機関が少なく、金利も高く設定されています。
投資用マンションの売却には仲介と買取がある
投資用マンションを売却する方法は、仲介と買取の2種類があります。どちらもメリット・デメリットがあり、状況によってどちらを選べばいいのか違ってくるため、ニーズに合う方法を選択してください。
投資用マンションの仲介
居住用マンションや一戸建てと同じように、投資用マンションでも売却の方法は仲介と買取の2種類があります。仲介は不動産仲介会社に間に入ってもらい、買主様を探してもらう方法です。契約の当事者はあくまでも売主様と買主様であり、不動産仲介会社は間を取り持って売却のサポートをするだけです。
投資用マンションは、一般的な居住用マンションの仲介とは違い、不動産仲介会社には投資家の買主様を探すことが求められます。不動産投資家や賃貸経営をしているオーナー様のネットワークを保有している不動産業者や賃貸管理会社などに頼むとよいでしょう。
流れとしては不動産仲介会社に物件の広告を出してもらい、広く買主様を募ることになります。
値引き交渉が入ることも考えられますが、賃貸需要の多い地域にある物件や、ある程度時間をかけても大丈夫ならば、相場に近い価格やそれ以上の売出価格を設定することが可能です。ただし、必ず買主様が見つかるとはかぎりません。実際に売却できるまでに数ヶ月程度以上の期間を要する場合もあることを想定しておく必要があります。
仲介の場合は契約が成立して物件を売却できたら、不動産仲介会社に対して仲介手数料を支払う必要もあるため、その分の費用も用意しておかなければなりません。
投資用マンションの買取
不動産の取引における買取は、仲介のように不動産仲介会社に間に入ってもらうことで買主様を探すのではなく、不動産会社自体に買い取ってもらう方法です。
投資用マンションは居住用マンションに比べてマーケットが小さく、特に区分所有マンションでは買取が採用されるケースが多い傾向にあります。広告などを出す手間を省くことができ、仲介のようにいつ現われるかわからない買主様を待つ必要もありません。物件が売りに出されていることを広告などで世間に知らせることもしないため、誰にも知られずに売却することも可能です。
売却までの時間が短期間ですむことで、早く現金化できるメリットもあります。買取価格の査定は一般的に相場価格の6割から8割程度で、仲介で売却するよりも低めになってしまうのはデメリットでしょう。ローンの残債がある場合は、売却した代金で返済できるかどうか試算しておく必要があります。
不動産会社が取引相手の買取では、売主様が契約不適合責任を免責されることが一般的です。もし、欠陥や劣化、汚れなどがあっても、一般的には不動産会社が買取後に修復や付加価値をつけるリフォームを行ったうえで再販し、利益につなげます。しかし、需要が見込めない物件の場合は、そもそも買い取ってもらえないことも考えられます。
投資用マンションの売却時期とはいつか
実際に投資マンションを売るタイミングはいつがいいのでしょうか。最適なタイミングで売却するためにはどのようなことに注意すればいいのか、ポイントを押さえておく必要があります。ここからは具体的に、投資用マンションの売却時期を判断する方法を紹介します。
物件の売却は出口戦略
不動産投資における物件の売却は、「出口戦略」と呼ばれます。日本国内で行われている不動産投資は、収益物件を所有して家賃収入を得るインカムゲイン狙いの運用方法がメインになります。継続して家賃収益を得られるメリットがあるものの、永遠に運用できるわけではありません。
どのタイミングで売却するのか、売りどきを間違えると大きな損失を出す可能性があります。順調に家賃収入を得ていたとしても、売却がうまくいかなければ、それまでの利益が吹き飛んでしまい、最終的に赤字で終わってしまうことも考えられます。それだけ出口戦略は大切なものです。
投資用マンションは売りどきを見極め、最適なときに売却することがポイントです。例えば、マンションは築年数が経過するといろいろなところが劣化していきます。その分、修繕費がかかってくるため、支出が増えるのは避けられません。近くに新築の競合物件が建てば、空室が埋まらない状況が続くことも考えられるでしょう。
そうなってから売却したいと思っても、想定した金額で売却できなかったり、そもそも売却自体が難しかったりする可能性があります。資産価値が低下する前に売却できるよう、できれば購入時から出口戦略も見据えた運用をシミュレーションしておくようにしましょう。
中古マンション市場の動向
投資用マンションを売却する際には、市場の動向を把握しておくことが大事です。参考になる指標の一つに、国土交通省が毎月発表している不動産価格指数があります。不動産価格指数は年間30万件にものぼる不動産の取引価格情報をもとに、動向を指数化したものです。
2023年1月31日に発表されたプレスリリースによると、マンション(区分所有)の価格は2013年以降、一貫して上昇を続けています。2010年を100として比較すると、2022年10月は186.4 となり、1.8倍以上になりました。
2020年以降は住宅地や戸建て住宅なども上昇傾向にあるものの、住宅地では112.9、戸建住宅でも114.1程度で、120にも届きません。全国の商業用不動産総合でも増加はしていますが134.0にとどまり、いかにマンション(区分所有)の上昇率が高いのかがわかります。
ただ、不動産価格指数のマンション(区分所有)の183.1は、あくまでも全国平均です。国土交通省のプレスリリースではブロック別や都市圏別などの数字も公表されています。地域によって違いもあり、ブロック別の中部地方や近畿地方、都市圏別の名古屋圏や京阪神圏は全国平均と同程度の指数です。
ブロック別の関東地方は176.5、都市圏別の南関東圏では177.9で、全国平均に比べるとわずかに低めになっています。一方で、北海道地方では287.0、東北地方で226.2、九州・沖縄地方で216.6となっており、全国平均よりもかなり高めです。
このプレスリリースでのマンション(区分所有)は実需のマンションを対象としたものであるため、投資用マンションとイコールではありません。しかし、投資用マンションも同じ流れを受けているため、参考になる指数です。
商業用不動産の不動産価格指数を見てみると、マンション・アパート(一棟)でも全国の数字が156.0となっています。2018~2019年あたりで一時下がり気味の時期があるものの、2013~2017年頃までは上昇を続け、2020年以降も上昇傾向にあります。
出典:国土交通省 不動産価格指数、住宅は前月比0.8%上昇、商業用は前期比0.9%上昇~不動産価格指数(令和4年10月・令和4年第3四半期分)を公表~
税金の優遇期間で売却判断する
不動産を売却して譲渡所得がでたら所得税や住民税などの税金がかかりますが、所有していた期間によって税額を計算する税率が変わってきます。譲渡した年の1月1日時点で所有していた期間が5年以下なら短期譲渡所得、5年を超えていれば長期譲渡所得になります。
短期譲渡所得の場合は所得税率が30%、住民税率が9%、2037年までは復興特別所得税0.63%の合計39.63%が課されます。長期譲渡所得の場合は、所得税率15%、住民税率5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%です。
以上のように、売却するタイミングで発生する税金の金額はかなり違ってきます。かつてバブル期には、投資目的での不動産売買が増え、短期間で売り買いされることも珍しくありませんでした。結果的にマイホームを建てたいと思う方たちが、適正な価格で不動産を手に入れるのが難しい状況になったのです。
そこで、投資目的の売買を抑制するために、短期譲渡所得と長期譲渡所得にわけ、長期間所有していると税金が優遇されるようになりました。少し売却時期が早かっただけで課される税額が大きくなり、手元に残る分が減ってしまうと収益にも影響を与えます。売り急ぐ必要がないのなら、また法人所有でない場合、長期所有になった段階での売却を検討したほうがいいでしょう。
短期譲渡所得か長期譲渡所得になるのかの計算は、譲渡した日ではなく、譲渡した年の1月1日であることに注意する必要があります。例えば、2017年の4月1日に取得、売却が2022年の5月1日なら、所有期間は5年1ヶ月になると思うかもしれません。しかし、譲渡したときは2022年の1月1日で計算するため、まだ5年が経過していないことになります。
デッドクロスが見えてきたら売却判断する
不動産投資を行ううえで見据えておきたいのが、「デッドクロス」が到来する時期です。不動産投資におけるデッドクロスは、ローンの元利返済額が減価償却を上回る状態を指します。マンションの建物のように高額で、しかも何年も使うようなものに対しては、購入時に支払いが完了している費用を分割して経費に計上できる減価償却の仕組みがあります。
一方で、ローンの返済では実際に現金を支出しているにもかかわらず、元金は帳簿上、経費として計上できません。ローンの元金はそもそも借りたお金を返済しているだけだからです。ローンの返済で経費として扱えるのは、利息分だけであることに注意しておく必要があります。
減価償却費を経費に計上している間は、帳簿上の利益を圧縮できるため節税の効果もあります。しかし、マンション購入時から時間が経過すると、経費として計上できるローンの利息部分が減少していくとともに、そのうち減価償却期間も終了します。
デッドクロスに入ると現実のお金の出入りは変わらないにもかかわらず、帳簿上は黒字になり、所得税額が増えることで、手元に残るお金は少なくなります。最悪の場合、実際のキャッシュフローがマイナスになってしまい、「黒字倒産」に陥ることもありえます。
デッドクロスが見えてきたタイミングで売却するというのが、一つの投資判断となります。
入居者様が退去する前後で売却判断する
分譲マンションでは一度購入するとマイホームとして長く住み続けることが多いですが、賃貸マンションでは入居者様が退去するタイミングが必ずあります。入居者様が退去すると、必ず原状回復工事が必要になり、次の入居者様を探すために募集業務も行わなければなりません。
ある程度年数が経過している物件の場合は、入居者様が退去したタイミングでリフォームやリノベーションを実施し、入居者様を募るという選択肢もあります。
ただ、物件の特性によっては費用をかけても入居者様が必ず決まる保証はなく、空室の状態が長期間続けば収益そのものが確保できなくなるでしょう。区分所有マンションの場合は、入居者様の入れ替わりにともなうコストを負担するよりも、売却したほうがいいという投資判断もあります。
入居者様がいる状態での売却はオーナーチェンジ物件として売却先を探しますが、区分マンションで収益物件の需要がなければ、実需のマンションとして販売することも可能です。自らの居住用やセカンドハウスとして購入したいという方も売却の対象として視野に入れられるため、売れる可能性は広がります。
ただし、一棟マンションは集客力のある満室物件のほうがいいため、上記のケースには当てはまりません。一棟マンションの場合は、空室対策に強い賃貸管理会社に管理をまかせ、満室状態を保っておき、オーナーチェンジ物件としたほうが売却しやすくなります。
大規模修繕工事の実施前に売却判断する
マンションなどの建物は日常的なメンテナンスを行っていても、時間の経過とともにさまざまな箇所に劣化や不具合が出てくるのは避けられません。一般的には築10~15年経過すると、第1回目の大規模修繕を迎えます。
大規模修繕に備えてマンションの所有者が毎月修繕積立金として、あらかじめ大規模修繕にかかる費用を積み立てています。しかし、工事にかかる費用が上昇し、修繕積立金だけでは大規模修繕にかかる費用を賄えないケースも増えているのが現状です。
区分所有マンションを運用している場合、建物全体の大規模修繕が実施されるにあたり、一時徴収金を請求されるケースがあります。こうした事態に至る前に売却するという判断があり得ます。
一方、一棟マンションを運用しているケースでは、自ら大規模修繕の計画を立てなければいけません。多額の費用がかかることは同様なので、ここでも大規模修繕前に物件を売却するという判断もあり得ます。
まとめ
投資用マンションは個人がマイホームとして購入する居住用マンションとは、間取りやローンなどの面で違いがあります。また、区分所有マンションと一棟マンションを所有するのでは、同じ不動産投資でも異なる運用や出口戦略になります。共通する点として、どちらも不動産投資としての損失を出さないために出口戦略を練り、売却時期を正しく判断することが大事です。
【リロの不動産】では、賃貸経営や不動産にまつわる困りごとに対し、長年蓄積してきたデータをもとに解決に導きます。賃貸管理会社として全国のオーナー様ともつながっているため、多彩な売却ネットワークを持っているのも強みです。投資マンションの売却(出口戦略)に悩んでいるのなら、物件の仲介・買取にも対応している【リロの不動産・リロの売買】におまかせください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。