公務員の副業はなぜ禁止?できる範囲と不動産投資が公務員に有利な理由

2023.03.14

不動産投資は副業としても注目されるビジネスモデルの1つ。成功すれば、あまり手間と時間をかけずに継続的な収益が手に入るため、副業としては理想的な収入源となり、老後資金の不足を補える「じぶん年金」にもなります。しかし、実際には副業禁止規定のある会社も多く、不動産投資をやってみたくてもなかなか手を出せない方も少なくありません。

会社員よりも副業が難しいのが「公務員」です。公務員は法律の規定で副業禁止とされていますので、原則として副業ができません。本業以外での副業をするためには、限られた条件をいくつもクリアする必要があります。

そこで、本記事では公務員と副業の関係性ついて、副業禁止の理由や可能範囲を含めて詳しく解説します。公務員のほうが有利だとされる「不動産投資」についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

公務員が副業禁止の理由。バレたら処分される?

そもそも公務員はなぜ副業が禁止されているのでしょうか?公務員といえども「職業選択の自由」はあるはずですが、公務員は職務上「中立性」と「公平性」を重視されるため、副業禁止が法律で明文化されています。公務員の副業禁止の理由や、もしバレてしまった場合にどのような処分があるのか解説しましょう。

公務員が副業を禁止される理由

公務員の副業については、国家公務員は「国家公務員法」、地方公務員は「地方公務員法」で、それぞれ法律上禁止されています。公務員はあくまでも国民のために働かねばならない存在であり、国民の信頼を失わないよう「公平性」や「中立性」を持たねばならない、と考えられているためです。

公務員は国民に対し義務の履行を求める立場にもあるので、特定の業種や会社とビジネス関係を結んで便宜を図ったように見える行為は許されないわけです。

もし法律に違反して副業がバレてしまうと、最悪の場合は「懲戒解雇」、そこまでの処分に至らなくても「停職」「減給処分」など、何らかの処分を受けることは避けられません。一般企業の会社員とは違って副業禁止が法律で明記されている以上、規定に反した副業がバレた場合の立場は厳しいものとなります。

国家公務員法による規定(法律)

国家公務員の副業禁止の根拠となる条文は「国家公務員法第103条(私企業からの隔離)」と「国家公務員法第104条(他の事業又は事務の関与制限)」の2つの条文です。

2017年6月12日に衆議院で提出された「公務員の副業に関する質問主意書」によると、国家公務員法第103条で「国家公務員は営利を目的とする企業や団体の役員等との兼業や自営業ができない」、同104条では「営利企業以外の事業の団体についても同様のことを規定しており、国家公務員の兼職、副業を禁止している」との解釈が確認されています。

以上をふまえると、公務員が営利目的の私企業を経営したり、会社員として兼業したり、といった行為は原則禁止です。国家公務員法103条にある「営利企業以外」、つまり非営利団体の一員としての副業も禁止ですが、これについては内閣総理大臣や所轄省庁の長官からの許可がある場合には、一部可能となる事例があります。

地方公務員法による規定(法律)

地方公務員の副業禁止規定は、「地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)」が根拠となります。地方公務員法第38条には、「任命権者の許可がない場合には「役員兼業」及び「自営兼業」、そのほか、あらゆる報酬のある兼業への従事を制限する」とあるので、やはり副業は基本的にNGです。国家公務員と同様に、国の奉仕者として職務に専念し、公共利益のため全力を尽くすこと、公僕としての公平性・中立性を保つことが重視されます。

しかし、地方公務員による副業禁止違反は毎年のように問題となっています。ちょっとしたことで知人や同僚にばれてしまったり、副業でのビジネス相手から情報が漏れたりなど、気軽に始めた副業のつもりが大ごとになる事例が少なくないようです。

また地方公務員の場合、任命権者の許可を得るプロセスが自治体によって違うこともあるため、副業をめぐる問題が生じがちです。もし本業とは別の業務を始めたい場合は、各自治体で認められている基準をよく確認したうえで、任命権者の許可を取るなどの対応が必要でしょう。

公務員の副業を解禁した自治体の事例

自治体の一部では公務員の副業を解禁する動きも出ています。代表的な自治体の1つが兵庫県の神戸市です。神戸市は全国的にもいち早く先進的な取り組みをする自治体として知られます。

神戸市の認める副業は「市の職員の持つ知識や経験を生かし、地域の課題解決に貢献できる活動」とのことで、具体的には須磨海岸の障がい者支援活動、阪神大震災後に活動を始めたNPO法人への参加など、公益性の高い活動が中心です。副業解禁といっても、ごく一般的なアルバイトとの兼業を認めているわけではないようです。

神戸市に続いて副業解禁に踏み切ったのが奈良県の生駒市です。生駒市の場合も「公益性の高く、市の発展に寄与する副業」に限定とされており、勤務時間外に限る活動であることや、報告書を義務付けるなどの規定が設けられています。

ただ、認められた事例には地域のサッカーチームやバレーボールチームの指導者としての業務(いずれも現役消防士さんの事例)も含まれており、副業の範囲自体は徐々に広がっている印象を受けます。

宮崎県新富町でも副業解禁となっていますが、新富町ではスポーツチームの指導者だけでなく、人出不足の農家や新聞配達の手伝いなども認められる方向のようです。

任命権者の許可を受ければできる副業もある

国家公務員、地方公務員を問わず、公務員は基本的に副業禁止ですが、任命権者の許可次第では一部可能となります。

もちろん、どのような副業が認められるかについては任命権者次第です。知事や市町村長の方針によって、今後解禁される副業の範囲が変わる可能性がありますし、そもそも公務員の副業に関心がある政治家がトップになるかどうかでも状況は変わります。

また、副業を解禁した自治体であっても「公益性の高い、地域の発展に貢献できる業務」に限定する姿勢は崩していません。今後、徐々に認められる業種は広がる可能性があるとはいえ、公務員として守るべきルールに反した副業は難しいと考えるべきでしょう。副業を始めたいとお考えの場合は、自分の勤めている自治体が副業の申請に対してどのような姿勢をとっているのか、必ずチェックしてください。

公務員でもできる副業の種類【10選】

ここからは公務員でもできる副業を10種類紹介します。ただし、どの職種であっても事前に職場の自治体に申請して許可を取り、公務員としての信用を棄損する振るまいを行わないことが大前提です。

公務員の副業として認められるかどうかは、3つの原則が守られているかどうかが重要な判断基準となります。その3つの原則とは以下の内容です。

「信用失墜行為の禁止(国家公務員法第99条)」
「守秘義務(国家公務員法第100条)」
「職務専念の義務(国家公務員法第101条)」

どのような副業であれ、以上の3原則を満たさない場合は処分対象となる可能性があります。

講師・講演活動

公務員の知見や自分の専門知識を生かした「講師活動」は認められています。スポーツチームのコーチや審判も基本的にはOKです。ただし、謝礼については注意する点がいくつかあります。

公務員の副業で謝礼を受け取るべきかに関しては、

・謝礼が報酬にあたるか
・謝礼の対象となる行為が事業・事務に従事することにあたるか
・事前に任命権者の許可を得ていたか

以上の3点が受領可否の判断基準です。講師活動で得られる講演料や交通費、原稿料などが「報酬」の大半は、そもそも講師活動は労務契約がない場合が多い、謝礼の多くは謝金、実費弁償に近く「報酬」にはあたらない、などの理由から受領を許される事例が多いです。

ただし、社会通念上、明らかに継続的、定期的にかなりの報酬を得ている場合は、事業活動とみなされる恐れがあります。また、近年は公務員でYouTube活動をされる方も増えていますが、広告を掲載する場合はグレーゾーンです。実際に活動される方のほとんどは広告非掲載のようです。

執筆活動

執筆活動も公務員として働きながらできる有力な副業のひとつ。公務員であっても「表現の自由」は尊重されるため、比較的認められやすい傾向にあります。公務員としての知見を活かした執筆はもちろん、趣味としての執筆活動も基本的に問題ありません。

ただし、任命権者の許可は原則として必要で、公務員としての信頼を損ねるような執筆活動はもちろんNGです。表現内容によっては情報の漏えいや政治批判など、公務員としての品位を損なうと判断される可能性がある点には注意したいところです。

また、雑誌などで小説などの長期連載をしている場合など、完全にプロとして執筆活動を行うケースについてはグレーゾーンといえます。「職務専念の義務(国家公務員法第101条)」の関係上、公務に影響のない範囲内での執筆活動であることも大前提です。

アンケートモニター

スマホやPCで手軽にできる「アンケートモニター」も人気の副業の1つ。専用アプリやWebサイト内、登録メールに届くアンケートに答えることで報酬をもらう簡単な仕事です。

アンケートモニターは国家公務員法で制限されている「副業」にはあたらないと考えられます。そもそも営利目的の業務ではないうえ、アンケートに答えてもらえる「謝礼」も継続的な雇用関係から得られる報酬ではないため、特に問題視されません。

ただし、本業に支障の範囲内での活動に限られます。公務中にアンケートモニター業務を行うのは問題です。また、一件一件は微々たる報酬であっても、トータルで年間20万円を超えると確定申告が必要となります。

家業手伝い(無報酬)

実家が農業や飲食店などの商売をやっていて、土日や休日、繁忙期に手伝いをするケースです。明確な規定がある自治体は少ないですが、常識的な範囲内であれば副業・兼業にはあたらず、基本的に問題ないと考えられるでしょう。

ただし、公務に支障がない範囲内であることが前提となりますので、可能なかぎり任命権者の許可をとったほうが無難です。プライベートな活動に近いとはいえ、公務員法に規定されている義務は適用されます。

また、副業として容認されるケースでは基本的に無報酬であることが条件です。金額の大小にかかわらず、家業手伝いであっても報酬を受け取っていた場合、副業・兼業にあたると判断される可能性がありますので注意してください。

暗号資産(仮想通貨)

公務員の代表的な副業が「投資活動」です。投資活動は不動産投資であれ、暗号資産、株式投資であれ、基本的にOKです。投資活動は労働の対価として報酬を得る営利目的ではなく、あくまでも保有している資産を運用しているだけなので「報酬を得る業務」に該当しない、とされています。もちろん、副業ではないので任命権者の許可も不要です。

しかし、投資活動が本格化すると収益がどんどん大きくなるはずです。投資での年間所得が20万円以上になると、本業とは別に確定申告を行わなければなりません。もし確定申告をしないまま放っておくと、税務無申告とみなされ罰則が発生します。公務員としての信用失墜にもつながり、所属先から重い処分を受けるかもしれません。

また、常にチャートをチェックする必要のある投資は、公務との両立が難しいため困難といえます。暗号資産の投資では突然相場が変動する場合がありますが、業務中に投資活動を行うのは避けたほうが賢明です。

不用品の売買

フリマアプリなどを利用した「不用品の売買」も副業にあたりません。フリマアプリとは不特定多数の利用者同士で不要になったものを売買するアプリのこと。使わなくなった服や家電などの売却で、日常的に利用する機会は多いです。

日常生活の延長上にある不用品の売却は基本的に営利目的ではないため、金額の大小にかかわらず処分を受けることはないでしょう。法律上禁止されている副業にも該当しませんので、任命権者の許可も不要です。

しかし、明らかに「せどり」や「転売」目的の売買となると話は別です。物販ビジネスとみなされるような取引が発覚すると、懲戒処分の対象となります。特に継続的な売却をする意思が認められた場合は、副業禁止規定に抵触するとみなされる可能性が高いです。

小規模農業

郊外に小さな畑を借りたり、趣味で園芸をはじめたりする方も増えています。たまに余った作物などを販売することもあるでしょうが、営利目的でない趣味の範囲内での売り上げであれば、特別な許可は不要です。

ただし、農業の規模が大きくなると、任命権者の許可が必要になります。一般的には「販売農家」に区分される「耕作面積が30a以上、または農産物の年間販売額が50万円以上」が、許可が必要とされる基準です。農業については各自治体で細かく基準が異なるケースが多いので、所属する自治体に問い合わせたうえで必要な許可などを申請しましょう。

ブログ

ブログはネット環境さえあれば誰でも手軽に始められるビジネスです。趣味の範囲で運営する場合もあれば、本格的なビジネスとして参入される方もいます。

ブログの収益には「広告収入(アフィリエイト)」と「案件収入」の主に2種類の収益モデルがありますが、「広告収入(アフィリエイト)」で稼ぐブログを運営するのはNGのケースが多いようです。「案件収入」のほうは問題ない、という見解もあるようですが、そもそも明確な線引きの定まっていない分野ですので、念のため所属先に許可が必要かどうかの確認をとったほうがよいでしょう。

副業に該当しないブログの条件としては、

・単発的な報酬しか発生していない
・社会貢献性があり、公務に活かせる情報発信であること
・本業に差し使えない範囲での活動であること(勤務中に執筆しない)
・「機密保持」「信用を損なわない」活動であること

などが大前提となります。副業としてはまだまだグレーゾーンが多いため、本格的にブログを始める際は慎重に判断してください。

株式投資・投資信託

株式投資や投資信託は預貯金と同様、あくまでも資金運用の手段とされていますので、営利目的の副業には当たりません。自治体の任命権者の許可なども必要なく自由に始めることができます。公務員が合法的にできる数少ない副業分野といえるでしょう。

ただし、「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念の義務」の3つに抵触しない範囲での活動に限られます。本業に支障をきたすレベルでの投資活動はNGです。また、年間収益が20万円以上になると確定申告の義務が生じますので、必ず申告漏れのないように準備しましょう。

株式投資だけでなく、FX取引や暗号資産取引、投資信託など、投資のスタイルはさまざまですが、常に為替取引やチャートに張り付かなくてはならないタイプの投資は、公務員に向いていません。職務中に投資活動をするだけでも「職務専念の義務」違反となり、法的な処分を受ける可能性があるためです。

そのため、公務員の方は「投資信託」を選ぶ場合が多いようです。「投資信託」は毎月一定の手数料などを支払えば、後はプロの投資家におまかせできるので、投資スタイルそのものが公務員に向いています。

不動産投資

最後にご紹介するのが「不動産投資」です。不動産投資はアパートなどの部屋を貸し出し、その家賃収入を得るタイプの投資ビジネスですが、人事院の規定によると、一定の範囲内であれば営利目的の副業には該当しない、とされています。

ただし、副業にあたらない不動産投資はインカムゲイン(家賃収入)限定です。不動産を安く買って高く売却するキャピタルゲイン(売却益)目的の投資は、完全に営利目的の活動となりNGです。

インカムゲイン主体であっても経営規模が大きくなると任命権者の許可が必要となります。副業扱いとならない条件は不動産投資による賃貸料収入の合計額が年間500万円未満、運用する物件は「戸建て」で5棟未満、「マンション」「アパート」の部屋は10室未満でなければなりません。

公務員が不動産投資に向いているのはなぜ?

公務員は原則として副業が禁止されていますが、保有資産の運用とみなされる投資活動は比較的自由に始められます。その中でも公務員にとって「有利」とされるのが不動産投資です。なぜ公務員の副業として不動産投資が有利なのかについて、簡単に解説しましょう。

公務員は信用力が高く融資に有利

公務員が不動産投資に圧倒的に向いている理由の1つが、「信用力」の高さです。

不動産投資を始める際に自己資金だけで物件を購入するケースはまれで、通常は金融機関からの借入れをして投資物件の購入費用を調達します。不動産は高額の買い物なので、よい物件を手に入れるためには資金が必要です。金融機関から好条件での融資がおりれば、目的達成をするための選択肢が広がります。

不動産投資のための融資は住宅ローンと同様に、借入れする本人の返済能力を含めた「信用力」次第で融資条件が変わります。この点で、公務員は同レベルの収入の給与所得者と比べて断然有利です。

公務員は収入が安定しているうえにリストラや会社の倒産などのリスクもないため、金融機関から返済能力を高く評価される傾向にあります。低金利のローンでも審査に通りやすいので、かなりの好条件から不動産投資をスタートすることも可能です。

公務員の種類や業務によって与信に差がない

公務員が不動産投資に向く理由の2つ目が、「公務員の種類や業務によって与信に差がない」という点です。金融機関から見ると、公務員であれば長期的に安定した収入を見込めるため、公務員の業種別で細かく評価を変えることはほとんどありません。

国家公務員、地方公務員や業種や職種、警察官や自衛官、海上保安官などの特殊任務に就く公務員の区別はなく、公務員の雇用主は「国」であるため、金融機関としては高い与信があると判断されます。

通常の与信審査においては、申込者の職業や手持ち資金の有無はもちろん、借入時の年齢や勤務先、勤続年数なども審査対象になります。前述のとおり、公務員の雇用主は「国」なので倒産の危険性がなく、与信審査に関して圧倒的なアドバンテージがあります。総合的に見て、公務員という身分自体に高い与信がある、と考えてよいでしょう。

副業とみなされない?公務員が不動産投資をする際の注意点

先述のとおり、公務員は金融機関から融資を受けやすい圧倒的な「与信力」を持つため、不動産投資に向いています。しかし、法律で副業を禁止されているため、どの程度の規模から副業禁止規定に抵触するのか気になるところです。ここからは公務員が不動産投資を始めるうえでの注意点について解説しましょう。

不動産投資の規模が「5棟10室以下」であること

公務員の行う不動産投資については、「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)について」が副業と認めるかどうかの線引きに関する根拠となっています。

事業の経営が「自営」(副業扱い)にあたるもの

イ :独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
ロ :独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
ハ :土地の賃貸については、賃貸契約の件数が10件以上であること

参考元:人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html

この規則によると、一戸建て住宅などの独立家屋で5棟未満、独立家屋以外の建物、つまりアパートやマンションなどの区画された部屋10室未満までが、副業禁止規定に違反しない資産運用の範ちゅうとの扱いになります。

同規則では賃貸の目的についても触れられており、賃貸目的が娯楽施設や旅館・ホテルの運営の場合は「自営」に該当します。つまり、住居目的での一般的な賃貸であれば副業禁止に直接引っ掛かりません。

まとめると、住居用目的の不動産賃貸で「戸建て」5棟未満、「マンション・アパートの一室」10室未満であれば、特別な許可なく、副業としての不動産投資が可能です。

不動産・駐車場の賃貸料収入の額が年500万円未満であること

副業として認められる不動産投資の範囲は、独立家屋5棟、独立家屋以外10室未満のほかに、「年間の家賃収入が500万円未満であること」も条件となっています。

事業の経営が「自営」(副業禁止に抵触する業務)にあたるもの

(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合

人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について 第1項関係4-2(3) https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html

注意したいのは、不動産投資の規模が5棟10室未満の条件を保っていたとしても、収益の総額が年間500万円以上になると「自営」に該当してしまう点です。例えばマンション4室を所有し、月額の家賃設定が12万円の場合、年間の賃料収入は576万円なので「自営」としての扱いとなります。

所有する不動産からの賃料収入がどれくらいになるかは、「賃貸予定の不動産の賃料収入額(月額)×室数×12ヶ月分」で計算しておきましょう。実際に賃料収入が500万円を超えてしまい、減給や懲戒処分を受けたケースも発生していますので、家賃設定を含めた経営プランには細心の注意を払ってください。

管理業務は賃貸管理会社へ委託する

公務員の副業では「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念の義務」の3つの原則を守る必要があります。この点は不動産投資に関しても同じです。特に3つのうち問題となりやすいのは「職務専念の義務」でしょう。

不動産投資では保有する物件を維持・管理する業務が必須となりますが、その業務範囲はかなり膨大です。入居者様の募集や家賃の集金、不動産の維持管理など、不動産投資に関わるすべての業務が関係します。このような管理業務を自力でこなそうとすると、本業に影響が出てしまい「職務専念の義務」に抵触するかもしれません。

そこで公務員の不動産投資では、管理業務全般をまかせられる「賃貸管理会社」の存在が不可欠です。不動産投資に関する業務の負担軽減だけでなく、副業禁止の規定違反を避ける意味でも、信頼できるパートナーである賃貸管理会社を見つける重要性は大きいといえます。

地方公務員についても同様の規定を守って不動産投資を行う必要があります。ただし、地方自治体は各自治体によっては異なる規定が設けられている場合もあるので、不動産投資を始める際に必ず細かな条件を確認してください。

公務員が不動産投資を始めるときのポイント

公務員が不動産投資を行う際の強み、副業禁止規定に抵触しないための条件などをご紹介したところで、実際の不動産投資でどのような点を意識するべきか、3つのポイントを挙げて解説します。いずれも不動産投資での成功に欠かせない重要なポイントになります。

不動産投資のリスクを理解しておく

不動産投資はリターンの大きい優れた投資ビジネスではあるものの、さまざまなリスクがつきまとうのも事実です。リスクを大まかに分けると「運用面」でのリスク、「経営面」でのリスク、そして「外的要因」からのリスクに分けられます。

まず「運用面」のリスクには、家賃収入に直結する「空室リスク」「家賃滞納リスク」「修繕リスク」があります。特に「空室リスク」は収益に直結するため、不動産投資では最大のリスクといっても過言ではありません。

立地周辺の需要を理解し、適切な集客を行うこと。入居者様の満足を高めつつ、必要に応じて大規模修繕工事や各種設備対応を、収益面を考慮して対応する投資を計画的に行う対策を行うこと。一見あたり前の対応を適切に実行することで、賃料の大幅な下落を抑制し、長く最適な賃料収入を得られます。

「経営面」でのリスクには、経営上の税務に関する問題、収益悪化リスクによる債務超過、売却リスクなどが挙げられます。専門的知識が必要となる局面が多いため、経営と税務に関する専門家の力が欠かせない分野です。

「外的要因」からのリスクも大きな課題です。災害の多い日本では地震や水害、火災への備えは不可欠でしょう。それ以外にも、不動産投資では経済状況の影響を受けて不動産価値が下落する、金利が上昇する、エリア需要が変わる立地リスクといった問題が起こります。

天災リスクに対しては、まず災害の少ない立地にある物件を選ぶことが大切です。コスパに優れた火災保険への加入を検討することも有効な対策となるでしょう。金利上昇や不動産価値の低下などの経済的リスクについては、立地の選定法や金利についての知識をしっかり身につけ、リスクがあるという前提に立った準備を積み重ねる必要があります。

副業の許可申請の必要性を確認する

公務員の不動産投資は、戸建て5棟、マンション・アパートの部屋10室未満で、年間の家賃収入500万円未満であれば、任命権者の許可なく経営することができます。しかし、この範囲を超える規模での運用を無許可で行うと、懲戒処分の対象になる恐れがあります。

実際に、2019年に仙台市で年600万円の賃料収入が発覚した仙台市職員が減給処分に、2013年には妻の経営する不動産投資会社の役員となって約7,000万円の年収を得ていた宝塚市の職員が停職6ヶ月と降格処分となっています。

副業で収益を上げるのはよいことですが、それが原因で本業を失うことになれば本末転倒です。自分が行う不動産賃貸業務の規模が許可を受ける条件に該当しているかどうか、細かな禁止規定に抵触していないかどうか、あらためてよく確認しましょう。

許可申請が必要であれば申請書の提出前に、所属部署の上司に一言相談しておくこともおすすめです。無用な誤解を生まないだけでなく、手続きについての情報を共有してもらえる可能性があります。

信頼できる賃貸管理会社を見つける

公務員が副業として、新たに不動産投資を始めるのであれば、信頼できる専門家に相談したいところです。不動産投資では数多くの専門知識が必要ですし、不動産の世界ではネットや書籍ではわからない貴重な情報が膨大にあります。

公務員が与信審査に強いことも周知の事実のため、知識不足の状態だと高額でコスパの良い物件、悪い物件を判断できない可能性が高くなります。信頼できる専門家と出会えるかどうかは、不動産投資経営での成功のカギとなります。

優良物件を手に入れるほかに、公務員の不動産投資では、信頼できる賃貸管理会社を見つけることがきわめて重要です。「職務専念の義務」がある以上、管理業務全般を賃貸管理会社に委託せざるをえません。そのため、賃貸管理会社が行う管理業務の質が直接的に経営状況を左右する、と言っても過言ではないでしょう。

運営に関する設備・工事対応以外にも、売買や出口戦略・資産活用や税金の知見も保有するトータルサポートが可能なパートナーであれば、賃貸経営のリスクに備えることができます。

優れた賃貸管理会社を選ぶためには、まず候補となる会社に問い合わせたうえで、直接担当者と会って相談することをおすすめします。あなたの質問に対して真摯にわかりやすく応えてくれるか、不動産投資に関するメリットばかりでなくリスクについても率直に説明してくれるかどうかに注目し、会社の姿勢や雰囲気を慎重に判断しましょう。

公務員の副業で不動産投資に興味があるのなら【リロの不動産】へ

この記事では、公務員が副業を禁止されている理由や許容されている副業の種類などを中心に解説しました。公務員といえども先行きの不透明な時代ですから、法律に抵触しない範囲で複数の収入を確保することは、今後ますます重要になるでしょう。

公務員の副業としておすすめなのは投資関連です。特に金融機関からの信用度の高さというアドバンテージを生かせる「不動産投資」はレバレッジ効果も高く優秀な収入源となりえます。正しい知識と専門家のアドバイス、そしてパートナーとして欠かせない優秀な賃貸管理会社と出会うことさえできれば、不動産投資での成功を確実に引き寄せられるはずです。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。