終活で考えるべき不動産の整理!自宅と収益物件のケースを徹底解説

2023.08.08

高齢になってくると、誰もが少なからず「終活」を意識するようになるのではないでしょうか。終活で考えておくべきことはいろいろありますが、所有する資産の整理は重要です。特に自宅などの不動産は、資産の中でも大きなパートを占めます。

不動産の整理をしっかりしておかなければ、後々さまざまな面で支障が出てくるかもしれません。この記事では終活で考えるべき不動産の整理について、自宅などの持ち家と収益物件のケースをそれぞれ詳しく解説します。

終活とは

終活(しゅうかつ)とは、「人生の終末期の準備」を指す言葉です。人生の終わりを悔いなく迎えるにあたり、身の回りの整理をしておく活動を意味しています。厚生労働省が提供する生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」によると、2019年時点での日本の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳です(※)。

日本が長寿国といわれるようになって久しく、高齢者と呼ばれるようになる年齢から実際に亡くなるまでの期間も長くなりました。自分の最期は自分で決め、老後を有意義に過ごすためにも終活を考える方が増えています。終活といっても具体的には身辺整理や財産の管理、遺言書の作成や葬儀・埋葬の方法まで幅広いものがあります。

※出典:e-ヘルスネット 平均寿命と健康寿命

なぜ終活で不動産が重要なのか

終活で考えるべき内容はいろいろありますが、不動産をどうするのかが大事なポイントになっています。では、なぜそれほど終活で不動産が重要だといわれるのでしょうか。終活で不動産が重要な理由を3つの視点から詳しく解説します。

社会的な要請

終活で不動産の整理が重要になる大きな理由の一つが、空き家が増えている社会的な背景です。被相続人が亡くなって相続が発生した際、相続人が不動産を引き継いでくれれば問題はありません。しかし、現実には被相続人が所有していた不動産が放置された結果、空き家となっているところが多いのです。

特に地方では若い世代が生まれ育った地域を離れ、都市部で新たに生活の基盤を築く家庭もあるでしょう。親の近くに住み続けていても同居せず、親が亡くなると実家が空き家として残るケースも増えています。

過疎地では売却することが難しい不動産も多く、適切な維持管理がされずに残されている空き家も増えてきました。そのような事態を招かないためにも、生前に対処しておく必要があります。

遺された人のために

自宅はもちろん、収益物件などの不動産を所有している状態で相続が発生すると、相続人に負担をかけてしまうことがあります。例えば相続税を支払うために、売却を検討しなければならないケースです。

都市部に所有している不動産などでは、相続税の金額も高くなります。相続税に充当できる現金の確保や、相続税を捻出するための対策などができていれば問題ありませんが、事前の対策がなければ不動産を売却して捻出することも視野に入れなければなりません。もし、自宅に住み続けたいと思っていても、それでは手放さなければならなくなります。

誰も住まずに空き家として放置すると劣化が早まり、相続人が維持管理に困る可能性もあります。売却しようとしても地方にある不動産などは資産価値が低いことも多く、買い手が見つからないことも珍しくありません。単純分割することも難しい不動産は、相続をスムーズに行うためにも終活での資産整理が必要です。

何よりも自分自身のために

終活は遺された方のために行っておきたいのはもちろんですが、同時に自分自身のためでもあります。そもそも終活は円満な形で人生の終焉を迎えることであり、そのためには自身の意思を尊重してもらえる環境を整えておかなければなりません。

例えば、老後の生活を考えるうえで避けて通れないのが医療や介護です。病気になったときにどのような医療を望むのか、どのような介護を受けたいのかなどを、あらかじめ示しておく必要があります。最終的にはお葬式やお墓についてもプランを立てておきたいところです。

また、終活は自身の人生をあらためて考え、人生の充実を追求するための機会でもあります。目標や生きがいを探して残りの人生を楽しみ、有意義に過ごすためにも大切な取組です。

そのために所有していた不動産(自宅・収益物件)を残すのではなく、売却して金銭に換えるという選択もありえます。

遺言書の作成

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で揉めるケースも少なくありません。特に不動産は相続人の人数に合わせて分割するのが難しく、遺産分割協議がまとまらない原因にもなります。あらかじめ遺言書を作成しておけば、基本的には遺言書の内容が優先されるため、相続はスムーズにいくでしょう。

遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」および「秘密証書遺言」の3種類があります。自筆証書遺言は本人が自筆で記述して作成する遺言書です。公正証書遺言は公証人に作成してもらうもので、原本は公証役場に保存されます。秘密証書遺言は内容を秘密にしたまま、遺言書がある存在だけを公証役場で認証してもらう制度ですが、実務上はあまり利用されていません。

自筆証書遺言は誰でもすぐに作成できるメリットがあるものの、裁判所での検認が必要であったり、無効になりやすかったりなど、デメリットもあります。公正証書遺言は費用や手間がかかりますが、無効になりにくく、争いにもなりにくい遺言書です。

不動産の売却

実物資産である不動産は、相続人が複数いると分割が難しいという側面があります。相続が発生したときに困ることがないよう、終活の一環として生前に売却し、現金化しておくのも対策の一つです。現金化しておけば遺された相続人にとって遺産分割協議がしやすくなるのはもちろん、現金を自分自身の老後資金として役立てることもできます。

自宅の場合

自宅を所有している場合は、売却して現金化するのが一般的な方法です。現金化しておけばそれ以降は、不動産を維持していくための経費や固定資産税がかかりません。ただ、実際に不動産を売却するとなると、タイミングに迷うこともあるでしょう。不動産の価格はつねにさまざまな要因で変動しているため、なるべく高く売却するためには資産価値が下落する前に行うのがポイントです。

自宅を売却する場合は、売却後に住む場所の確保もしなければなりません。別の家に住んでいる家族と同居したり、賃貸住宅を借りたりなど、選択肢はいくつかあります。終活で不動産を整理する際、以下で解説するリースバックやリバースモーゲージという選択肢もあるため、状況に合わせて検討してください。

リースバック

リースバックは自宅を売却したうえで新たに賃貸借契約を結び、そのまま住み続けられる仕組みです。主にファイナンス会社や不動産会社などが実施しており、売却後の所有権は売却した会社に移ります。売却後は家賃(リース料)を支払うことで、そのまま住み続けられるのがメリットです。引越しの必要がないため周囲に知られることがなく、維持費の負担もなくなります。

資金調達としても用いられる方法であり、まとまった資金が短期間で得られるのもメリットの一つです。あらかじめ現金化しておけば、相続が発生したときに財産を均等に分けやすいでしょう。デメリットとしては、売却価格が相場より安くなりがちな点が挙げられます。家賃も高めに設定されているため、契約内容や将来を見据えたうえで利用することが大事です。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージはリースバックとは違い、自宅を担保に金融機関から融資を受ける方法です。自宅に住み続けられるのは同じですが、リバースモーゲージは主にシニア層を対象にした融資であり、リースバックのように売却益を得るわけではありません。

一般的な融資とは異なり、存命中は毎月利息のみを返済し、本人の死亡後(または契約期間終了後)に担保とした不動産を売却して元金を返済する仕組みです。

リバースモーゲージを扱う金融機関が増えており、自宅を有効活用しながら老後の資金を確保できるメリットがあります。ただし、想定よりも長生きした場合は契約期間が終了し、元金と利息を一括返済しなければならなくなるなど、リスクにも注意して利用する必要があります。

収益物件の場合

賃貸マンションや賃貸アパートなどの収益物件を所有している場合は、不動産投資としての出口戦略を考える必要があります。もちろん、相続人に不動産投資を引き継いでもらう選択肢もありますが、売却を検討する場合は総合的に勘案しなければなりません。

収益物件は自宅を1軒売却するのに比べると規模が大きいうえ、一般的な住宅とは査定方法も異なります。入居者様の状況や築年数、将来的なニーズなどによっては売却しにくいケースもあるほか、売却するのに時間がかかります。売却の時期によっては利益が見込めず、かえって損失を出してしまう場合もあるため、タイミングには注意を払いましょう。

譲渡所得税がどのくらいかかりそうなのか、相続する現金の遺産はどのくらいになるのかなども大事なチェックポイントです。都市部に規模の大きい収益物件を所有しているケースでは、相続税の金額も大きくなります。将来的に相続人が負担することになる相続税についても視野に入れておくようにしましょう。

不動産の生前贈与

あらかじめ不動産を現金化するのも遺産分割協議をスムーズにするために有効ですが、将来の相続人に生前贈与しておく方法もあります。

不動産を生前贈与するメリット

不動産の生前贈与には、主に以下に説明する3つのメリットがあります。終活として不動産を生前贈与するのがふさわしいか、メリットを把握して検討するようにしましょう。

相続税よりも節税できる

相続発生後に納税する必要がある相続税よりも節税できるケースがあることが、あらかじめ生前贈与をしておくメリットの一つです。贈与の方法には、大きく分けて暦年贈与と相続時精算課税制度の2種類があります。

暦年贈与は年間110万円まで基礎控除額が設けられている仕組みを利用し、毎年110万円以内を生前贈与する方法です。相続税と同じように一定以上の金額を贈与すれば、受け取った方には贈与税がかかってきますが、年間110万円以内ならば贈与税が課税されず、申告の必要もありません。

もう一つ相続税対策として活用されているのが、60歳以上の親または祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与に利用できる相続時精算課税制度です。相続時精算課税制度では控除額を超えた分に対しては一律20%の贈与税がかかるものの、2,500万円以内ならば贈与税が課されません。

相続時には贈与された財産を相続財産に加算して相続税が計算されますが、それまでに納めた贈与税があれば相続税からは控除されます。

贈与する相手を選べる

相続が発生したときは相続人全員で話し合い、遺産分割協議を行わなければなりません。遺産分割協議がスムーズに進めばいいですが、紛争が発生する可能性もあります。遺産相続でトラブルが起こるのは大きな資産を持つ家だけの話ではなく、実際にはどこの家庭にも起こりうることです。

遺言書を作成しておくことで財産を誰に相続させるか、ある程度は被相続人の意思を伝えることはできます。しかし、相続では法定相続人に遺留分を請求する権利があるため、想定通りに相続されないかもしれません。生前贈与では、あらかじめ贈与する相手(受贈者)を決めることが可能です。特定の財産を確実に特定の相手に贈与できることで、相続時に起こるような紛争を回避できます。

収益物件の場合、受贈者が不動産収入を得られる

贈与の対象が収益物件なら、受贈者が不動産収入を得られるのもメリットの一つです。将来的に賃貸経営を任せる人物を決めている場合、贈与することで早いうちに贈与者(将来の被相続人)から受贈者(将来の相続人)への所有権移転ができます。

贈与後に発生する家賃収入は受贈者の帰属です。将来的に相続が発生したとしても、生前贈与された後に得た収益は相続財産に含まれません。特に不動産の評価自体が低く、それでいて収益性が高い物件の場合は、相続財産を減らし、相続税を節税できる効果が見込めます。

相続税の金額が高くなることが予想されるケースでは、生前贈与された収益物件から得られる不動産収入を相続税の支払いの原資にすることも可能です。また、他の職業で十分生計を立てられている受贈者でも、不動産収入があれば生活に余裕が持てるでしょう。子どもの教育費や万一のときの備え、老後の資金など、さまざまな用途に不動産収入を活用できるメリットもあります。

不動産を生前贈与するデメリット

不動産の生前贈与にはデメリットもあるため注意が必要です。以下の3つのデメリットもふまえておいてください。

贈与加算がある

生前贈与する際に注意しておきたいポイントとして、贈与加算があります。贈与加算とは、相続開始前に行われた贈与がある場合、一定の期間に贈与した財産を相続財産に加算する制度です。従来の贈与加算は、相続開始前3年以内の贈与が対象でした。

2023年度税制改正大綱で贈与加算も改正されることとなり、2024年からは相続発生前7年以内の贈与が加算の対象になります。相続発生前7年の対象となるのは2024年1月1日以降の贈与からで、贈与加算が段階的に延長されていきます。最終的に贈与加算が一律7年になるのは、2031年以降の相続開始からです。2023年12月以前に贈与された分については、従来どおり3年以内の贈与加算として扱われます。

先述したように生前贈与は相続税の節税効果を見込める方法ですが、贈与加算が7年分になることで贈与者が亡くなった際の相続に加算される分が増え、相続財産が増加します。受贈者にとっては相続税が増税されることになるため、生前贈与は早めの対策が必要になります。

小規模宅地等の特例が使えなくなることも

相続税に関しては、個人が相続や遺贈で得た財産のうち、事業用や居住用として使っていた宅地に対する特例があります。小規模宅地等の特例と呼ばれ、条件を満たしていれば一定の面積までの部分について、課税価格の計算をする際に減額される制度です。

例えば被相続人が自宅として住んでいた宅地の場合、特定居住用宅地等の適用要件を満たしていれば、限度面積を330平方メートルとして80%まで減額されます。マンションやアパートなどの収益物件の場合も貸付事業用宅地等の要件を満たしていると、限度面積200平方メートルとして50%まで減額されます。

ただし、暦年贈与していた不動産の評価額が相続財産に加算されるケースや、相続時精算課税制度を利用して不動産を生前贈与しているケースは、小規模宅地等の特例の対象にはなりません。生前贈与は節税対策として有効な方法である一方、かえって相続税が高くなることで損をする場合もあるため、生前贈与するときは注意が必要です。

不動産の名義変更に費用がかかる

生前贈与として不動産を贈与すると、贈与者から受贈者に名義を変更する必要があります。不動産の名義変更にともない、不動産取得税や登録免許税が課税され、余分な費用がかかるのもデメリットです。

不動産取得税は贈与だけに限らず、土地や建物の売買、家の新築などで不動産を取得した際に発生します。新たに不動産を取得した方に納税義務がある税金であるため、受贈者が支払わなければなりません。

登録免許税は不動産の所有権移転登記にかかる費用です。贈与による所有権の移転登記は相続での移転登記に比べて税率が高くなっていますが、していないと借り入れの担保にできなかったり、将来売却できなかったりします。登記は義務ではないものの、後々のことを考えるとしておくのが賢明です。

以上のように不動産を生前贈与すると、ある程度の費用がかかるのは避けられません。相続税を節税できたとしても、これらの費用で損失が出てしまうこともあるため、総合的に判断する必要があります。

まとめ

不動産の終活には遺言書の作成や不動産の売却、不動産の生前贈与など、さまざまな方法がありますが、所有財産や状況を正しく把握して対処するためには専門家への相談が重要です。特に資産の中に収益物件がある場合は、不動産投資に詳しい不動産会社への相談が求められます。

【リロの不動産】は約10万戸の収益物件の管理を行い、日本全国のリログループによる売買ネットワークがあります。賃貸管理業を数十年営み、蓄積された独自のノウハウを活かす ことによって、オーナー様の物件売却や生前贈与、相続のお悩みに応えます。ぜひ【リロの不動産】にご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。