老後2000万円問題はどうなった? ゆとりある老後には不動産投資がおすすめ

2022.12.22

2019年に社会現象にもなった「老後2,000万円問題」。当時は連日のようにメディアで取り上げられ、現役世代や若者からは将来に強い不安を感じる声が多数あげられていました。最近では見たり聞いたりすることが少なくなりましたが、その後、問題はどうなったのでしょうか?

今回は老後2,000万円問題をふりかえると同時に、老後の生活資金の備えとしておすすめしたい不動産投資について解説します。

老後2,000万円問題とは?

まずは「老後2,000万円問題とは何だったのか」「問題は現在も継続しているのか」という疑問をひもといていきましょう。

「老後2,000万円不足する」の根拠

ことの発端は、2019年の金融庁・金融審議会のワーキンググループ報告書です。2017年の高齢夫婦無職世帯の平均的な家計収支が月5.5万円不足していることから、「老後30年間を暮らすには約2,000万円の保有資産の取り崩しが必要」との報告がなされました(※)。

これを政府が発表した結果、世の中に大きな衝撃を与え、老後生活を不安視する声が高まったのが「老後2,000万円問題」と呼ばれる現象です。

仮に20歳から65歳までの45年間で2,000万円を貯めるとしたら、毎月少なくとも3.7万円を預貯金にまわさなくてはなりません。しかしながら、この間にはさまざまなライフイベントがあります。子どもの教育費やマイホーム購入などの出費を考えると、コンスタントな預貯金は難しいのではないでしょうか。

病気やケガ、転職、失業などで一時的に収入が下がる可能性もあります。定年まで平穏無事に勤めたとしても、頼みの退職金は減少傾向にあります。これでは現役世代はもちろん、若者世代が将来に不安を感じるのも無理はありません。

※ 出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」

老後2,000万円問題は消滅?

「老後2,000万円問題」がメディアを賑わせたのは2019年のこと。その後はどうなったのでしょうか。前述の計算の根拠は、2017年における高齢夫婦無職世帯の平均的な家計収支です。2022年7月時点で公開されているデータを比較してみましょう。

なお、高齢夫婦無職世帯は「夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」と定義されていましたが、2020(令和2)年の調査では「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」に変更されています。

単位:円

年度収入可処分所得消費支出差額30年間の差額
2017209,198180,958235,477-54,519-19,626,840
2018222,834193,743235,615-41,872-15,073,920
2019237,659206,678239,947-33,269-11,976,840
2020256,660225,501224,3901,111399,960

出典
家計調査報告(家計収支編)2017年
家計調査報告(家計収支編)2018年
家計調査報告(家計収支編)2019年

2020年(令和2年)家計調査年報(家計収支編)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支

表からも分かるとおり、2020年度では差額がプラスに転換しており、計算上の「老後2,000万円問題」は消滅しています。

平均的な家庭収支は毎年変動します。例えば、2020年は前年末に発生した新型コロナウイルス感染症の影響で外出などが制限されたため、支出が減少したと考えられています。「老後2,000万円問題」は、平均的な可処分所得と消費支出の差額に対して単純に30年を乗じたことで起きたものだったのです。

老後資金不足問題は残り続ける

「老後2,000万円問題」の消滅で安心した方も多いでしょう。ただ、老後の生活資金が不足しがちであることは事実です。ここからは、老後生活の実態を探っていきます。

長生きを前提とするライフプラン

老後資金2,000万円は「夫婦二人で老後30年を生きるとしたら」という仮定の話です。65歳定年だとしたら95歳。「そんなに長生きしないから大丈夫」と思っていませんか? 厚生労働省が発表する日本人の平均寿命の推移は、下表のとおり年々延び続けています。

 男性女性
1975(昭和50)年71.73歳76.89歳
1985(昭和60)年74.78歳80.48歳
1995(平成7)年76.38歳82.85歳
2005(平成17)年78.56歳85.52歳
2015(平成27)年80.75歳86.99歳
2020(令和2)年81.64歳87.74歳

また、2020(令和2)年における年齢別の生存割合は次のとおりです。

 男性女性
65歳89.7%94.6%
75歳76.1%88.4%
90歳28.4%52.5%
95歳11.1%28.3%

出典:令和2年簡易生命表の概況|厚生労働省

このように実際のデータを見ると、現実的に人生100年時代が到来しつつあることがお分かりいただけるでしょう。本来、長生きは喜ばしいことです。ところが、長く生きることで資産が枯渇する恐れがあることから、近年では「長生きを前提とする生き方」を意識するライフプランが一般的な考えになってきました。

想定外の事態に備えて

高齢になるほど病気やケガのリスクが高まり、医療費がかかりがちです。状況によっては介護サービスを利用するなど、これまでには想定していなかった費用が発生します。老人ホームへの入居を希望する場合には、かなりのまとまった資金が必要です。

厚生労働省の報告書によると、民間の介護付きホーム(有料老人ホーム)の平均の月額費用は約22.7万円かかります(※)。もちろん、地域や施設の種類によって差はありますが、年金だけでまかなえる方は少ないのではないでしょうか。

また、年齢に関わらずいえることですが、不測の事態への備えは考えておくべきでしょう。長い人生には何が起こるかわからず、高齢になってから火災や自然災害などで損害を被る可能性もゼロではありません。ご家族の住宅購入費用や学費の備えをご検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか。

※ 出典:厚生労働省 特定施設入居者生活介護

ゆとりある老後生活のためにはさらに資金が必要

公益財団法人生命保険文化センターが行った意識調査では、「夫婦二人の老後生活に必要な最低日常生活費は月額平均22.1万円、ゆとりある生活を送るには平均36.1万円が必要」という結果が発表されました。

これは、2019(令和元)年に行われたアンケート調査です。前述の総務省の家計調査によると同年の可処分所得は206,678円で、最低日常生活費にも足りていません。ゆとりある生活を送るには約15.5万円が不足しています(※)。

さらに以下に示すとおり、租税や社会保障の国民負担率は年々増加しています。

 租税負担社会保障負担
2019年度25.8%18.6%44.4%
2020年度28.2%19.7%47.9%
2021年度28.7%19.3%48.0%

出典:国民負担率|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

つまり、可処分所得は減少傾向にあるということ。ゆとりある老後生活のためには、さらに資金が必要と考えておくべきでしょう。

※ 出典:生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計

老後資金不足問題で必要となる考え方

必要な老後資金は人それぞれに異なります。住む場所やライフスタイルによっては2,000万円の資産があっても苦しいと感じる世帯があるかもしれませんし、もっと少ない金額でゆとりある生活ができる世帯もあるでしょう。

ただし、公的年金だけでは老後の生活費が不足しがちであることは間違いないようです。老後を安心して迎えるためにも、将来必要になるであろう金額を把握し、早くから準備しておくことが大切です。ここからは、老後の生活を考える際に考慮すべきポイントについて解説します。

「貯金を取り崩す」という発想からの脱却

老後2,000万円問題の発端となった報告書では、「不足分を預貯金から取り崩す」という前提で試算が行われています。まずはその発想から抜け出す必要があるでしょう。つまり、老後までに必要な資金を貯めるのではなく、老後にも収入を得る方法を考えることが大切です。

例えば、定年後の再雇用制度を活用したり、再就職したりするのもよいでしょう。2018(平成30)年12月に閣議決定された「労働施策基本方針」(※)には、働く意欲がある高齢者が働き続けられるよう、さまざまな施策が盛り込まれました。ただし、雇用されるには健康であり続ける必要があります。また、雇用する企業側の努力も必要になります。

高齢になってからの労働目的が健康維持ならすばらしいことですが、生活資金を得ることが主目的の労働はおすすめできません。いつまでも健康でいられる保障がないためです。働いて賃金を得るのではなく、働かなくてもお金を生み出してくれる仕組みを構築する方向へと考えをシフトしていきませんか?

※ 出典:労働施策基本方針

ストックではなくフローで考えてみる

「ストック」は資産、「フロー」はお金の流れ、つまり月々の収入を指します。まずは自分がいくらぐらいの年金を受け取れるのかを確認し、不足分をどのようにして補うかを考えてみましょう。

前述のとおり、労働ではなく不労収入について考えてみてください。おすすめは、長期的に安定した家賃収入が期待できる「不動産投資」です。不動産投資のメリットについては後ほど詳しく紹介しますが、若いうちに始めたほうが有利なことは確かです。

なお、不動産を対象とした投資には、現物不動産投資と不動産投資信託(J-REIT)の2種類がありますが、老後の生活資金にするなら現物不動産投資が向いています。なぜなら、不動産投資信託では年1~2回の決算期にしか分配金を得られないためです。毎月の生活費の不足分を補うのであれば、家賃収入のほうが毎月安定的に入る収入として期待できるでしょう。

金融資産でまかなう場合の目安

配当金などで生活費を賄うとしたら、どのくらいの金融資産を持てばよいのでしょうか。アメリカ発祥の「4%ルール(25倍ルール)」が参考になるかもしれません。4%ルールとは、年間生活費の25倍の運用金融資産を築けば年率4%の運用益で生活できるという考え方です。前に紹介した2019年の家計調査・意識調査の差額を参考にシミュレーションしてみましょう。

可処分所得の平均金額:約20.7万円/月
日常生活に最低限必要とされる平均金額:22.1万円/月(平均可処分所得との差額1.4万円)
ゆとりある生活に必要とされる平均金額:36.1万円/月(平均可処分所得との差額15.4万円)

1.4万円×12ヶ月×25倍=420万円
15.4万円×12ヶ月×25倍=4,620万円

上記のように4%ルール(25倍ルール)で逆算してみれば、準備しておきたい金融資産の額がわかります。必要な金額は人によって異なるので、試しに計算してみてください。

不動産投資が老後資金不足問題で有効な理由

老後の生活費不足対策のための資産運用にはいくつかの方法がありますが、ここでは長期にわたり安定した家賃収入を得られる不動産投資をおすすめします。不動産投資のメリットとして、 レバレッジ効果があること、長期・安定した収益を期待できること、インフレに強いこと、賃貸管理会社に任せられる、相続対策になること、生命保険代わりになることの6点にしぼって解説します。

金融機関からの融資が使えるレバレッジ効果がある

不動産投資の一番の特長は、金融機関からの融資が利用できるという点です。株式投資の場合は自己資金分しか株を購入できません。収益物件を購入する場合は、不動産投資ローン(アパートローン)を利用して自己資金よりもはるかに高額な物件を購入できます。このように、少ない資金で大きな資産を得ることを「レバレッジ効果」といいます。

不動産というと高額なイメージがありますが、物件によっては比較的手頃な価格で購入できるものもあります。融資を利用すれば、自己資金が少ない方も不動産投資を始めることは十分に可能です。なお、金融機関の融資審査には一定の基準があります。

長期・安定した収益を期待できる

家賃というものは生活に根ざしたものから生み出される収益です。株式投資と違って、景気動向や世界の政治情勢、経済情勢によって大きく左右されるものではありません。不動産投資によって得られる家賃収入は、長期的に安定した収益が期待できるものなのです。

ただし、空室が発生して家賃を得られない期間が発生したり、家賃が下落するリスクがあることも事実です。例えば、新築物件は人気があり、空室になるリスクは低めですが、家賃の下落が早いというデメリットがあります。

比較的家賃が安定した物件を選ぶのなら築15~25年ほどの中古物件がおすすめですが、賃貸管理の状況や建物のメンテナンス状況などによっては、リーシングや入居付けといわれる入居者募集や賃貸仲介に苦労するかもしれません。また、地域によっても空室率や家賃相場が変動するため、物件選びは最も重要なポイントになります。

物件選びや空室リスクに備えるためにも、収益物件の売買と空室対策に強い賃貸管理会社をパートナーにすることが大切です。まずは信頼のできるパートナーを探すところから始めてみてください。

インフレに強い

「お金は金融機関に預けておけば安心」と誤解していないでしょうか? 現金や預貯金はインフレ時に価値が下がり、目減りすることに注意してください。2022年現在、アメリカを始め世界中でインフレが進んでいます。物価は高騰し、お金の価値が下がり続けていることはご存じのとおりです。

その点、不動産や貴金属などの現物資産はインフレに強いことで知られています。特に不動産は、立地条件などが良ければ価格が暴落することが少なく、所有している間は家賃収入も得られます。インフレの進行状況によっては資産価値が上昇するため、預貯金よりもはるかにインフレに強いといえるでしょう。

賃貸管理会社に任せられる

賃貸経営にはさまざまな業務が発生します。入居者募集や仲介業務、家賃回収、共用施設の日常的な清掃、退去時の立会い、原状回復工事など、かなり煩雑になることは避けられません。入居者様からのクレームや家賃滞納などが発生した場合は、精神的にも疲弊してしまうのではないでしょうか。

これらの煩雑な業務は、すべて賃貸管理会社に委託することが一般的になってきました。委託してしまえばオーナー様が行うことはほとんどありません。不動産投資を副業にする会社員が多いのは、こうした仕組みがあるためです。

ちなみに公務員には副業禁止規定がありますが、公務員の不動産投資が副業にならない条件は、規模が5棟10室以下であること、家賃収入が年500万円未満であること、管理業務を賃貸管理会社に委託することが条件になります。

相続対策になる

相続を考えるなら、現金や預貯金で残すよりも不動産で残すほうがおすすめです。相続財産の評価方法は「相続税財産評価に関する基本通達」(※)によって定められています。例えば現金や預貯金は額面どおり、株式は時価で評価され、相続税の課税対象になります。

不動産の場合、建物は固定資産税評価額、土地は主に路線価によって評価額が計算されます。固定資産税評価額は時価の約7割、路線価は時価の約8割です。賃貸物件については借地権割合や借家権割合なども加味されるため、さらに評価額が下がり高い節税効果を発揮します。

同じ1億円でも、預貯金の場合は100%の金額が相続税の課税対象になるのに対し、1億円で購入した不動産なら6,000~7,000万円程度に課税対象の評価額を圧縮できるということです。

1億円の現金を相続したケースと時価1億円(相続税評価額6,000万円)の不動産を相続したケースで相続税がいくら相違するか簡単にシミュレーションしてみましょう。相続人は長男が1人として計算します。

〈1億円の現金を相続するケース〉

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 相続人数(1人)= 3,600万円
課税される遺産額 = 1億円 - 3,600万円 = 6,400万円
税率は30%、控除が700万円なので、
6,400万円 × 30% - 700万円 = 1,220万円の相続税を支払う。

〈時価1億円(相続税評価額6,000万円)の不動産を相続するケース〉

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 相続人数(1人) = 3,600万円
課税される遺産額 = 6,000万円 - 3,600万円 = 2,400万円
税率は30%、控除が700万円なので、
2,400万円 × 30% - 700万円 = 20万円の相続税を支払う。

なんと、相続税を支払う金額は、現金と不動産で1,200万円の差となりました。

※ 出典:国税庁 財産評価4-6 生命保険代わりになる

不動産投資には生命保険の代わりになるという側面もあります。不動産投資ローン(アパートローン)を受ける際に、団体信用生命保険の加入が可能です。ローン返済中に契約者に万一のことがあった場合、残債は免除されるため、家族に返済負担を残す心配がありません。負債のない収益物件を資産として残せるだけでなく、家族が賃貸経営を継続して家賃収入を得ることも可能です。

ただし、保険加入から一定期間のうちに被保険者が自殺した場合、保険給付が免責される「自殺免責特約」が付いていることが一般的ですので、その点は注意が必要です。

まとめ ゆとりある老後の生活のために不動産投資を始めよう

国民の多くが不安を感じた「老後2,000万円問題」は、2017年の統計から生じた仮説です。必ずしも老後の生活に2,000万円かかるということではないので、気にすることはありません。

ただし、ゆとりある老後を送るためにはそれなりの資金が必要なのは事実です。リタイア後も毎月安定的な家賃というキャッシュフローを得られ、相続税対策にもなる不動産投資は、資産形成にもってこいの方法といえます。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。