アパートローンの相続に関する注意点!債務者死亡時によくあるトラブルと対策

2024.12.22

アパートローンを利用していた収益物件の相続にかぎらず、相続が発生したときはさまざまなトラブルのリスクを考える必要があります。「誰がどの遺産を引き継ぐのか」「借金などの負債はどうなるのか」といった話がまとまらず、悩んでしまう方も多くいらっしゃいます。

加えて、アパートローンが関係するマンション経営やアパート経営の相続は金融機関の承諾が必要になるなど、遺族だけで解決できる問題ではありません。相続人を決めるのが容易ではない場合もあり、手続きに多くの時間がかかったり、揉めごとが起こってしまうケースも珍しくないでしょう。被相続人(故人)の存命中にあらかじめ相続の方針をまとめておくと、相続発生時の負担や予期せぬトラブルを軽減できます。

本記事では、アパートローンのある収益物件を相続するときの流れや、よくあるトラブル事例、トラブルを防ぐ対策について紹介します。将来、被相続人・相続人となる可能性のある方や、相続トラブルを防ぎたい方はぜひ参考にしてください。

▼この記事の内容

●アパートローンは相続の対象となり、多くの場合は連帯保証人になっている親族がアパートローンと物件そのものを相続する

●相続放棄によって、アパートローンを含むプラス・マイナスすべての財産を手放すこともできる

●アパートローンを相続するときは金融機関の審査を通過する必要があり、通過後は債務者変更登記申請や賃貸管理会社・入居者様への通知などを行う

●アパートローンの相続によって発生しやすいトラブル対策は「遺言書の作成」「口座の確保」「団信付きのアパートローンへの借り換え」など

●アパートローンの相続に迷ったらアパートの空室率や築年数、相続人の状況などを総合的に判断する。悩んだときは賃貸管理会社など専門家に相談するとよい

アパートローンは相続対象?

相続の対象となるのは預貯金や不動産など、経済的価値のある「プラスの財産」だけではありません。借金などの「マイナスの財産」も合わせて相続する必要があります。

アパートローンも相続の対象となり、ローン残高が残っている収益物件を相続する場合は、アパートローンもまとめて相続しなければなりません。

以下では、アパートローンを相続する仕組みについて紹介します。また住宅ローンとの違いや金利など、アパートローンの基本知識については以下の記事を参考にしてください。

■参考記事

アパートローンを上手に利用するコツと注意点|住宅ローンとの違いは?

アパートローンはマイナス財産での相続となる

相続財産は、「プラスの財産」と「マイナスの財産」の2種類に分けられます。プラスの財産は経済的に価値のある財産のことをいい、以下のようなものが該当します。

●預貯金、現金、貸金庫にある財産など
●有価証券
●債権
●不動産(土地、家屋、収益物件、付属設備など)
●借地権、借家権、地上権など
●家庭用財産(貴金属、骨董品、自動車、船舶など)
●事業用財産(機械器具、棚卸資産、売掛債権など)
●知的財産権(著作権、工業所有権など)
●みなし相続財産(生命保険、死亡退職金、個人年金など)
●ゴルフ会員権
●占有権 など

一方、マイナスの財産は借金などの支払い義務を指し、具体的な項目は以下のとおりです。

●借入金(住宅ローン・アパートローン残高債務、クレジット残債務、自動車ローンの割賦契約月割賦金など)
●未払金(賃借料、公共料金、リース料、医療費など)
●敷金、保証金、預り金、買掛金、前受金
●保証債務、連帯債務
●公租公課(所得税、消費税、国民健康保険料など)
●葬式費用(債務控除対象) など

アパートローンはマイナスの財産に該当するため、相続の対象となります。相続税を計算するときは、プラスの財産の評価額からマイナスの財産の評価額を差し引く債務控除が可能です。状況により、債務控除を前提とした相続対策もあるため、遺言書や公正証書の確認など然るべきポイントを確認しましょう。

団信(団体信用生命保険)加入について

アパートローンは住宅ローンと同じように団信に加入できます。そもそも「団体信用生命保険(団信)」とは、ローンの契約者が亡くなるなど、返済不能となったときに生命保険会社が残債を肩がわりしてくれる保険です。

オーナー様が団信付きのアパートローンを契約している場合、亡くなったときは保険会社が金融機関への支払いをかわってくれるため、相続人がアパートローンを引き継ぐ必要はなく、アパートのみを相続することになります。

通常アパートローンを組む際は団信に加入するケースが多いですが、債務控除を利用した相続対策や何らかの事情により団信未加入でローンを組んだ場合は、オーナー様が亡くなった後も債務が残ります。

なお、団信はローンの途中で加入することはできないため「相続が発生しそうだから団信に加入したい」というのは難しいでしょう。アパートローンの団信や相続対策について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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不動産投資ローンなしで賃貸経営?現金購入と比べるメリットと判断基準

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相続放棄について

相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの方法があり、それぞれ「プラス・マイナスの財産をどの程度引き継ぐのか」という違いがあります。

相続放棄とは、プラス・マイナスに関わらずすべての財産を相続しない方法です。相続人はアパートローンなどの借金を手放すことができますが、預貯金や不動産などのプラスの財産も合わせて放棄することになります。アパートローンの借入額が多く、資産よりも負債が多い場合などは相続放棄が選択肢の1つとなるでしょう。

ただし、相続人がアパートローンの連帯保証人になっている場合、実質的に相続放棄ができません。相続放棄をしても連帯保証人の返済義務がなくなることはないからです。物件の売却やアパート経営の黒字化など、ほかの方法によってローン返済を目指す必要があるでしょう。

相続放棄をせずアパート経営を継続する場合、「損益通算」であえて赤字を計上し、節税効果を高める方法が効果的です。詳しい方法は以下の記事を参考にしてください。

■参考記事

家賃収入にかかる税金はいくら?設備投資と損益通算で考える節税対策

アパートローンは相続税対策として有効?

アパートローンは、債務控除を利用することで相続税対策に効果的なケースがあります。アパートローンを組むことで、相続対象となるプラスの財産からローンの借入金(マイナスの財産)を差し引くことができるからです。資産を現金ではなく建物として相続することになるため、評価額が下がり、相続税が抑えられる効果も期待できます。

節税対策としてアパート経営を始める方は多くいらっしゃいますが、中には節税効果を重視しすぎた結果、アパートの収益性が下がってしまうケースも少なくありません。例えば「空室対策を十分に行わなかったためにキャッシュフローが悪化した」「大規模修繕で予想外の費用がかかってしまった」などが挙げられます。

土地活用のためにアパートを建てたものの、思うように収益が上がらず、結果的に土地を手放さなければならなくなった例もあります。相続税対策としてアパート経営を行う場合はアパートの経営状況をしっかり確認し、赤字にならない範囲での節税を意識するとよいでしょう。

アパートローンで相続税対策を行う場合、あえて団信に加入せずにアパートローンを借り入れるという方法もあります。ローンの残債を相続人が引き継ぐことで債務控除の対象となり、相続税評価額を減らすことができるからです。

「アパートローンを相続したものの、団信に加入されていない」という場合、節税効果を高めるためにオーナー様が生前にあえて未加入を選んだ可能性も考えられます。被相続人が相続対策を行う場合には、相続人にも事前に共有することで予期せぬトラブルを回避することができます。

相続税対策について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

■参考記事

相続税の基礎控除とは? 各種控除と賃貸不動産を活用した相続税対策

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アパートローンを相続する際の流れ

アパートローンを相続する場合、ローンの名義変更手続きを行います。手続きの一般的な流れは以下のとおりです。

1.連帯保証人を確認する
2.金融機関の審査を受ける
3.債務者変更登記申請を行う
4.賃貸管理会社や入居者様へ変更の旨を通知する
5.準確定申告や相続税の申告・納付を行う

次の項目から、それぞれの詳しい手順を紹介します。

連帯保証人を確認する

まずは、契約書の確認や金融機関への問い合わせなどを行い、アパートローンの連帯保証人を把握しましょう。

アパートのオーナー様が亡くなるなど、ローンの契約者が返済できなくなった場合は連帯保証人に返済義務が発生します。多くの場合、債務者の子どもや配偶者などを連帯保証人にしますが、子どもや配偶者は債務者の法定相続人でもあります。アパートローンだけでなく、物件自体も連帯保証人が相続するケースが多いでしょう。

アパートローンを借り入れるときは、契約者が団信(団体信用生命保険)に加入するのが基本です。しかし団信への加入は任意であるため、中には未加入でローンを契約するオーナー様もいらっしゃいます。アパートローンの連帯保証人がいないうえに団信(団体信用生命保険)にも加入していない場合は、相続人全員が法定相続分に従いローンを相続することになります。

金融機関の審査を受ける

アパートローンの相続人が決定したら、金融機関の審査を受けてローンの名義を変更します。基本的には、アパートローンを融資している金融機関が承諾しないかぎり、ローンの名義変更は認められません。金融機関は相続人の年収や属性、アパートの収益性などを確認し、ローンの返済能力を審査していきます。

相続人に十分な返済能力がなく、アパートの収益性も不十分であると判断された場合は、金融機関が相続を認めてくれない可能性があります。場合によっては連帯保証人を複数求められる可能性もあるでしょう。無事に金融機関からローンの相続が認められたら、「債務引受契約」を締結します。

債務者変更登記申請を行う

金融機関の審査を通過して債務引受契約を締結したら、管轄の法務局で債務者変更登記申請を行います。手順は以下のとおりです。

1.アパートの相続登記をする
2.金融機関と必要書類の準備を進める
3.必要書類を法務局に提出する

注意したいポイントは、あらかじめアパートの相続登記を済ませておく必要があることです。債務者変更登記の申請は司法書士に任せるのが一般的ですが、場合によってはアパートの相続登記もまとめて依頼できる可能性があります。

賃貸管理会社や入居者様へ変更の旨を通知する

アパートローンと建物そのものを引き継いだ相続人は、亡くなったオーナー様に代わってアパートを経営していくことになります。アパートのオーナーが代わったことを、経営のパートナーである賃貸管理会社や入居者様へすみやかに通知しましょう。家賃の振込先が変わるなど、変更点がある場合はあわせて通知してください。

準確定申告や相続税の申告・納付を行う

アパートローンの相続人は、オーナー様が亡くなった日、あるいは相続発生を知った日の翌日から4ヶ月以内に「準確定申告」を行わなくてはなりません。準確定申告とは、その年の1月1日から死亡した日までに確定した所得と税額を計算し、申告・納税をすることです。年の途中で亡くなったとしても翌年の確定申告まで待つ必要はなく、すぐに準確定申告の手続きをしましょう。

また、相続発生の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告・納付も必要です。相続人が複数いる場合は、申告・納付までに相続財産の分割を済ませておかなくてはなりません。相続税の申告については以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。

■参考記事

不動産相続の流れと必要経費 遺産分割の方法と注意点も解説

アパートローンの相続時に発生しやすいトラブル

アパートローンを相続するときに、起こりやすいトラブルは以下のとおりです。

●名義変更できない
●アパートローンの返済が滞る

相続人の人数が多いと遺産分割協議に時間がかかり、なかなかアパートローンの手続きに移行できないケースもあります。金融機関での審査が思いどおりに進まなかったり、知らないうちに返済が滞ってしまったりするケースも少なくありません。

次の項目から、アパートローンの相続で発生しやすいトラブルの事例について紹介します。

名義変更できない

先述のとおり、アパートローンの名義変更は金融機関の承諾が必要です。遺族間でアパートおよびアパートローンの相続人を決定しても、金融機関の審査に通らなければ意味がありません。必ずしも遺産分割協議のとおりに相続できるとはかぎらず、中には相続人の決定で揉めごとが起こったり、手続きに時間がかかったりすることもあるでしょう。

遺産分割協議が進まないからといって金融機関がローンの返済を待ってくれることはないので、手続きが滞るとローン返済にも影響をおよぼしかねません。連帯保証人になっているなど将来アパートローンを相続する可能性がある方は、現在のオーナー様が元気なうちから然るべき相続対策を行い、前もって金融機関に相談しておくことをおすすめします。

アパートローンの返済が滞る

相続時にアパートローンの返済が滞ってしまう原因としては、次のケースが挙げられます。

●遺産分割協議が進まず、なかなか相続の手続きに移行できない
●アパート経営が赤字の状態で相続問題が発生した
●相続人が法定相続分どおりに残債を負担することになった

アパート経営が赤字の状態で相続が発生した場合、「誰がアパートを引き継ぐのか」「ローンは誰が払うのか」などが決まらないかぎり、経営を立て直すのは難しい課題があります。相続人が確定するまでの間もアパートローンの返済は続くため、知らないうちに返済が滞り、金融機関からの督促や残債の一括返済要求が発生するケースも少なくありません。

また、相続人が法定相続分どおりに残りのアパートローンを負担することになったものの、アパートの賃料収入が返済額を下回っている場合や、相続人の中に支払いが難しい方がいる場合などは返済が滞りがちです。ローンを滞納すると個人の信用情報に傷が付いてしまうため、余裕を持って返済資金を確保しておく必要があるでしょう。

アパートローンを相続する際の事前対策

前述のようなトラブルを防ぐために、アパートローンの相続はあらかじめ対策しておくことが大切です。アパートを所有しているオーナー様が元気なうちに、前もって下記の対策を行うようにしましょう。

●遺言書の作成
●家賃入金口座の確保
●団信付きのアパートローンへの借り換え
●専門家に相談できる体制の構築

次の項目から、それぞれのポイントを紹介します。

遺言書の作成

遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、話し合いによって分け方を決めなくてはなりません。あらかじめ遺言書を作成し、物件とアパートローンの相続人を記載しておくと、手続きをスムーズに進められるでしょう。遺言書には「亡くなった方の財産を誰がどれくらい引き継ぐのか」「アパートを処分するのか・売却するのか」など、財産の分け方を記載します。

なお、遺言書がある場合でも、相続人全員の合意があれば遺産分割協議を行い遺言書と異なる内容で遺産を分けることが可能です。ただし、遺産分割協議で揉めてしまうと、ローン返済が滞ったり名義変更ができなくなったりする原因になりかねません。トラブルを防ぐためにも、関係者全員の合意を得ておくことが大切です。

家賃入金口座の確保

家族が亡くなったことが金融機関に知らされると、本人の銀行口座は凍結されます。亡くなった方の預金は相続財産の対象となるため、勝手に引き出せる状態にあるとトラブルに発展するリスクがあるからです。

亡くなった方が名義人となっている口座はすべて凍結されるため、オーナー様の死亡時は家賃が入金される口座も凍結される可能性があります。凍結が解除されるまでは、原則として入居者様からの家賃収入をローン返済にあてることができません。あらかじめ、家賃が入金される口座とローンを返済する口座を同一にしてつくっておくと、オーナー様が亡くなり口座が凍結されても問題なく返済が可能です。

口座をまとめるときは、家賃の振込先が変わることを入居者様に通知するのを忘れないようにしましょう。相続手続きにはある程度の期間を要するため、ローン返済口座に余裕を持って残高を入れておくと安心です。

団信付きのアパートローンへの借り換え

アパートローンを借りるときは、金融機関の紹介などによって団信に加入するのが一般的です。しかし節税目的などの理由から、あえて団信に加入しないオーナー様もいらっしゃいます。

団信に未加入の状態で相続が発生すると、アパートローンの残債はすべて相続人が引き継ぐことになります。オーナー様が亡くなった後、遺族が支払いを続けるのが難しい場合は団信付きのアパートローンへの借り換えを検討しましょう。

団信は途中加入できないため、残債分として新たに団信付きのアパートローンを借入することになります。既存のアパートローンよりも金利が低く、返済プランが優れているなど好条件のローンを契約できれば、返済負担を減らす効果も期待できるでしょう。

ただし団信に加入すると課税遺産総額が増加し、相続税が増える可能性があります。アパートローンをそのまま相続した場合と、団信付きのものに借り換えた場合でシミュレーションを行い、どちらが適切かを慎重に判断する必要があります。

専門家に相談できる体制の構築

アパートローンや物件を相続する可能性がある方は、いざというときに相談できる専門家がいると安心です。税理士や弁護士、司法書士などとつながりを持ったり、金融機関や賃貸管理会社などと日頃から連携を取ったりと、相談体制を整えておくとよいでしょう。

例えばアパートの収益性が悪化し、ローンの返済負担が大きくなる可能性がある場合は、早い段階から賃貸管理会社に空室対策や売却の相談をすることで解決できるかもしれません。「相続人が決まらない」「相続人の間でアパート売却の同意が取れない」などを弁護士に相談し、スムーズに問題が解決した例もあります。あらかじめ起こりうるトラブルを想定し、解決できる専門家を分野ごとにいくつかピックアップしておきましょう。

アパートローン相続時の対策

相続は突然発生するもので、事前に十分な対策を取るのが難しいケースもあります。アパートローンの相続が発生したとき、すぐにできる対策は以下のとおりです。

●アパート経営できるかどうかを見極める
●連帯保証人を立てる
●アパートを売却する

次の項目から、それぞれのポイントを紹介します。また、相続したアパートを売却するべきか、賃貸経営を続けるべきか悩んでいる方は以下の記事も参考にしてください。

■参考記事

両親のアパートを相続!売却か賃貸経営継続かを判断するポイントと注意点

アパート経営できるかどうかを見極める

アパートローンと物件を相続したとき、最も望ましいのは経営を黒字化して家賃収入でローンを完済することでしょう。ただし経営が破綻しているなど、状況によってはこれ以上アパート経営を続けるのが難しい場合もあります。まずは以下の点を確認し、アパート経営の継続が可能かどうかを慎重に判断することが大切です。

●相続人のアパート経営力
●アパートの空室率
●アパートの築年数
●『4つの空室対策』の対応力

アパート経営は月々の家賃管理や入居者様の募集、物件の維持など業務は多岐にわたります。「本業の仕事でアパート経営にあまり時間が取れない」など、運営に携われない場合は賃貸管理会社に業務を委託するなど対策が必要です。

またアパートが長期にわたって空室が続いている場合、家賃の見直しやリフォームなど、空室改善を行う必要があるでしょう。アパート経営は税金や管理費用などの支出もあるため、空室率が一定以上になると収支がマイナスになってしまいます。特に築年数の古いアパートは修繕費が高くなりやすいうえに、空室が発生しやすいため、築30年以上のアパートを相続する場合は注意が必要です。

『4つの空室対策』の対応力も、アパート経営を行ううえで重要なポイントとなります。空室対策に有効なのは、募集(入居者募集)、仲介、管理(入居者管理・建物管理)、設備・工事の対応力です。4つすべてを網羅するにはオーナー様1人では難しいため、サポートしてくれる賃貸管理会社や不動産会社などの存在をつくっておくと安心です。

連帯保証人を立てる

金融機関の審査によっては、相続人のアパートローンの承継が認められない可能性があります。金融機関の承認が得られない場合は、連帯保証人の追加を検討するとよいでしょう。多くの場合、連帯保証人はアパートローン契約者の親族が選ばれます。金融機関は、原則として法定相続人やアパート経営を引き継ぐ方を連帯保証人にしたいと考えるからです。

連帯保証人は重い責任を背負うことになり、返済が滞ると自己破産などの債務整理をしなければならないリスクもあります。金融機関にほかの選択肢についても相談し、リスクを把握したうえで判断することが大切です。

アパートを売却する

アパートの収支がマイナスの場合や返済が難しい場合、アパート経営に自信がない場合などはアパートを売却するのも1つの方法です。入居者様がそのまま住んでいる状態で物件を売却し、オーナー様だけを変更することもできます。

アパートを売却するメリットは、財産分与や遺産分割協議で発生する際の金銭トラブルを防げるだけでなく、相続に関する複雑な手続きを省略できることです。また売却益で残債を返済できるため、相続人にかかる負担を大幅に減らすことができます。売却益で残債を相殺できなかったとしても、相続人が責任を負ってすべてのローンを返済するよりは、リスクを軽減できるでしょう。

相続人が複数いる場合は、全員に売却の合意を得る必要があります。1人の判断で勝手にアパートを売却することはできないため、あらかじめ話し合いの場を設けておきましょう。

アパートローンの相続はさまざまなリスク対策が必要

アパートローンの相続は、今後のアパート経営にも影響をおよぼす重要な項目です。相続人は自分にアパート経営の能力はあるか、物件の空室率・築年数などをもとに、アパート経営を継続するか、売却するかを慎重に判断しなければなりません。

アパートローンの相続で悩んだときは、賃貸経営や相続に精通する専門家にアドバイスをもらうとよいでしょう。専門家の意見を参考に、あらゆる選択肢の中から自分に合った方法を選ぶことで、リスクを最小限に抑えられます。

リロの不動産】は、相続したアパートローンの組み換えや税金対策、アパートの売却など幅広い観点でオーナー様のサポートを行っています。税理士などの専門家と連携を取り、トラブルを未然に防ぐこともできるので、アパートローンの相続や資産活用でお困りの方はご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。