相続した不動産の売却手順!売却基準や注意点・税金の特別控除も解説

2023.09.26

相続した不動産はそのまま居住したり活用したりすることもできますが、一定の条件下では相続後すぐに売却することが望ましい場合もあります。不動産を売却するかどうかは各家庭の事情だけでなく、相続時に納税の義務が発生する「相続税」のことも考慮して慎重に判断しなければなりません。

本記事では不動産を売却する手続きや流れ、売却するか所有し続けるかを判断する基準について解説します。

相続した不動産を売却するまでの流れ

個人で所有する不動産を売却する場合とは異なり、相続財産としての不動産の売却にはさまざまな手順を踏む必要があります。ここではその大まかな流れを見ていきましょう。

遺言書の有無を確認

不動産の相続が発生したら、まずは亡くなった人(被相続人)が遺言書を残していないかを確認する必要があります。遺産相続においては、不動産に限らず基本的に遺言書の内容を優先して行われるためです。

遺言書が見つかった場合には、家庭裁判所に申し立てて「検認」を行います。「検認」とは相続人立会いのもと遺言書を開封し、遺言書の内容を確認することを指します。遺言書の形式が整っているかを確認するだけでなく、遺言書の内容を明確にすることで偽造を防止する重要な手順です。

相続人の確定

遺産分割協議には相続人全員が参加しなければならず、また全員の合意がなければ遺産分割ができません。しかし遺産の相続人を確定させる際、相続人の自己申告では効力がないため、戸籍をもって証明しなければなりません。

まずは被相続人が亡くなった時点から、原則として出生までの戸籍をさかのぼり、被相続人の名前が記載されているすべての謄本を取得します。婚姻前の謄本や転籍前の謄本、戸籍法改正による書き換え前の謄本や、役所でコンピューター化される前の謄本などが該当します。

被相続人の戸籍をすべて取得したら、相続人自身の戸籍を取得し、相続人になれることを証明します。この時点で、すでに判明している相続人たちも知らない血縁関係が発覚するケースも少なくありません。

相続財産の調査

相続人の確定と同時進行で、被相続人の財産を特定し財産目録を作成します。

財産目録とは、相続財産の内容がわかるように一覧にまとめたもののことです。遺産分割協議の際に相続財産のすべてを把握しておく必要がありますが、相続人が被相続人の財産を把握するためには多くの時間と手間がかかるものです。あらかじめ財産目録を作成しておくことで、遺産分割をスムーズに進められます。

財産目録に記載するのは、現金・預貯金、株式・投資信託などの有価証券、不動産などが該当します。さらにマイナスの財産も相続の対象になるため、被相続人が借金をしている場合には借金も財産目録に含まれます。

遺産分割協議

相続人全員が集まり、誰がどの財産を相続するかを話し合って具体的に決定することを「遺産分割協議」と呼びます。遺産分割協議は必ずしも全員が一ヶ所に集まって行う必要はなく、電話・メール・LINEなどの方法で協議を進めることも可能です。

遺産の分け方が決まったら、各相続人の相続分を記録として残す「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割は仲のいい家族間でもトラブルに発展することが少なくありません。後のトラブルの発生を防ぐためにも、遺産分割協議書は速やかに作成することが求められます。

相続登記

不動産を相続する人が確定し遺産分割協議書を作成したら、不動産の名義を相続人に移動する相続登記申請を行います。

相続登記申請の際には、下記3つの書類を準備して法務局に申請を出しましょう。

・相続関係説明図
・登記申請書
・遺産分割協議書

なお2024年4月1日より相続登記は義務化され、さらに申請期限が設けられることになっています。相続により不動産を取得した人は、所有権を取得したことを知った日、あるいは遺産分割協議が設立した日から3年以内に相続登記申請をおこなわなければなりません。

相続税の申告・納税

不動産相続の際に注意しなければならないことの1つに、相続税の申告と納付には期限があるという点が挙げられます。

相続税の申告期限は、相続が発生したことを知った日(被相続人が死亡したことを知った日)の翌日から10ヶ月以内です。

10ヶ月という期間は長いようにも思えますが、相続人が複数人いる場合は相続人の確定に時間を要することも少なくなく、相続人同士での揉めごとに発展すると期限までに申告書類を提出できないケースも考えられます。期限を過ぎてしまうと特例が適用されなかったり、延滞税が課せられたりするため注意が必要です。

なお相続税の納税資金を不動産の売却金でまかなう場合は、売却後に納税します。

不動産の査定を依頼

相続税を納税したのちに、不動産仲介会社に査定の依頼を出します。希望価格で売却するためには複数の不動産会社を比較することが重要です。しかし一方で、不動産の相続においてはスムーズな財産分与をおこなうためにも、可能な限りスピード感を持って売却活動を進めなければなりません。

そのため一度に複数の不動産会社に査定依頼を出せる「不動産一括査定サイト」を上手に活用し、効率的に不動産会社を選定することが推奨されます。

売却する不動産がマンションなどの収益物件である場合は、賃貸物件の管理を行いながらも販路を持っている不動産会社に依頼するという方法もあります。

不動産仲介会社と媒介契約

複数の不動産会社から送られてきた査定結果を比較し売却を依頼する会社を決めたら、不動産仲介会社と媒介契約を締結します。

媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」という3つの種類があります。

「一般媒介契約」は一度に複数社に売却活動を依頼できる点がメリットです。それに対して専任・専属専任媒介契約は、1社のみとしか契約できない代わりに、レインズ(指定流通機構)への登録や売主様への活動報告が義務づけられており、より精力的に売買活動をおこなってもらえるというメリットがあります。

売却活動を開始

不動産仲介会社と売主様との間で媒介契約を締結したのち、不動産仲介会社による売却活動が始まります。

具体的にはインターネット上の不動産ポータルサイトやレインズへ物件情報を登録したり、自社のホームページや店頭に広告を掲出したりすることで買い手を募ります。

売却活動中は購入を検討する人から内覧の希望があった場合、売主様も可能な限り立ち会うことが理想です。物件についての質問をされた際には明確に答えるようにし、購買意欲を損なわないように印象のいい対応を心がけることが重要です。

買主様と売買契約

買主様が見つかったら、購入申込書の提出を受け、担当者を通じて売却条件の交渉・調整をしたのちに売買契約を締結します。

売買契約を締結する前には、不動産仲介会社から買主様に対して重要事項説明書の交付と説明がされます。重要事項説明は取引対象である不動産の所在地や構造・設備などだけでなく、損害賠償の予定や契約解除による違約金の取り決めなど、買主様が物件を購入するかどうかの最終判断をするために行います。

重要事項説明が終わると、買主様と売主様の双方で売買契約書を締結し、買主様から手付金が支払われます。

決済と物件の引渡し

売買契約締結時に定めた決済日に、売買代金全額から手付金を引いた金額を受領して領収書を発行します。このとき固定資産税をはじめとした諸費用の清算も行います。

また不動産を売却すると、引渡し日をもって所有権が売主様から買主様へ移動するため、所有権の移転登記もこの日に申請します。これらがすべて完了した後に、売主様から買主様に必要書類と物件の鍵を引渡します。

不動産売買ではこれら一連の手続きを「不動産決済」と呼び、すべて同日におこなうのが一般的です。

確定申告

不動産は売却したら終わりではなく、売却した翌年に確定申告を行わなければならないケースがあります。

確定申告をしなければならないのは、不動産を売却して譲渡所得(利益)が発生した場合で、譲渡所得と不動産の所有年数に応じた所得税と住民税を納める必要があるのです。譲渡所得が発生した場合の確定申告を怠ると、延滞税などのペナルティが課せられるため注意しなければなりません。

一方で譲渡所得が発生しなかった場合には、確定申告は義務ではありません。しかし確定申告することで損益通算が可能になるなどのメリットもあるため、「不動産を売却したら必ず確定申告する」と覚えておきましょう。

不動産を共有名義で相続するときの注意点

1つの相続不動産を共有名義で相続した場合、特に注意しなければならないのが売却時の取り扱いです。共有名義の不動産を売却時に注意するポイントと、共有名義を解消するための方法について解説します。

売却には共有者全員の合意が必要

共有名義で相続した不動産を売却するためには、相続人全員の合意が必要です。不動産の売却は法律上「変更行為」に該当するとされ、変更行為をおこなうためには共有者全員の合意が必要と定められているためです。

一方で不動産の「管理行為」については共有者の過半数の合意で実行できます。ここでいう管理行為とは、相続した不動産を賃貸に出して利用したり、リフォームしたりすることを指します。

相続した不動産を売却するのか資産活用をして賃貸経営をするのか決定するためには、相続人全員で協議する必要があるという点を押さえておきましょう。

共有の解消方法

共有名義の不動産は権利関係が複雑になることも多いため、相続した段階で共有状態を解消しておくことが望ましいと言えます。それでは不動産の共有名義を解除するにはどのような方法があるのでしょうか。

現物分割

不動産の共有名義を解消する1つ目の方法は「現物分割」です。その名のとおり、相続財産である不動産を共有者で分割する方法のことを指します。

分割対象が更地の場合は、おおむねもめることなく分割できるケースが多いですが、自宅や収益物件といった建物を分割する場合には分割方法で紛争になる可能性も考えられます。

そのため現物分割は、不動産の財産分与の際に用いられるケースは多くありません。

代償分割

不動産のように現物分割は難しい相続財産を分割する場合、特定の相続人が現物を相続したうえで、他の相続人に対して金銭などを支払い、相続分を調整する方法を「代償分割」と呼びます。

例えば一つの建物を兄弟の二人で分割する場合、建物の現物を長男が相続し、長男が次男に対して次男の相続分に相当する金銭を支払うといった方法です。

相続人の中に不動産を丸ごと相続して活用したいと考えている人がいる場合、代償分割により相続分の金銭を支払うことで、他の相続人にとっても不公平感が少なくなるというメリットがあります。

換価分割

共有名義の不動産を分割する方法の中で、最も明確でトラブルになりにくいのが、相続財産である不動産を売却して金銭にかえてから相続人同士で分割する「換価分割」です。

例えば1つの建物を兄弟で相続し、それぞれの共有持分が3:2だったとします。この建物の売却金額が3,000万円だった場合、換価分割により兄が1,800万円、弟が1,200万円相続するということです。

ただし、不動産の名義が共有名義のままでは買い手が見つかりにくいため、一度単独登記を行う必要があります。遺産分割協議書に「換価分割である」ということを明記しなければ、売却金額の分割の際に「贈与」とみなされてしまい、贈与税が発生することがあるため注意が必要です。

相続した不動産をすぐに売却したほうがよいケース

相続した不動産は、相続後すぐに売却したほうがいいケースもあります。ここでは早めの売却が望ましいとされる3つのケースについて解説します。

遺産分割が困難

不動産は現物のまま分割することが難しい資産のため、相続人が複数いて遺産分割が困難な場合は、売却して現金化したほうが望ましいと言えます。

ただし上記で解説したとおり、共有名義の不動産を売却するためには共有者全員の同意が必要であり、1人でも反対があれば売却できません。しかし売却しないまま放置してしまうと、相続人がさらに増え、将来的に遺産分割がより複雑化する可能性もあります。共有物件は共有者が増えるほど全員の同意取得が難しくなり、売却できなくなる恐れがあるのです。

相続人が比較的少ない一次相続段階で売却して現金化することで、遺産分割を比較的容易に行えます。そのため公平性が保ちにくい場合であっても、可能な限り早期に売却して現金化し、協議を円滑に進める必要があります。

相続税の納税資金が足りない

不動産相続税の納税資金を確保する方法の1つとして、「相続した不動産の売却」が挙げられます。通常不動産を相続した場合、先に相続税を納税してから売却活動に移るのが一般的とされています。

しかし一度にまとまった資金を準備することが難しい場合は、相続が発生したらすぐ売却活動を開始し、売却代金を納税に充てることがあります。不動産の所有には固定資産税などの維持費がかかるため、将来利用する予定がない場合は、早く売却してしまったほうがコスト削減にもつながります。

ただし売却してから相続税を納める場合は、納税期限に注意しなければなりません。相続の納税期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月と限られているため、相続が発生したらすぐに行動に移す必要があるということを覚えておきましょう。

不動産が活用できない

相続した不動産を活用できない場合や活用する予定がない場合には、そのまま所有せずに売却することをおすすめします。具体的には自宅としての利用がない場合や、賃貸に出そうとしても需要が低い・収益が見込めない場合などです。

土地や建物といった不動産は、保有しているだけでも固定資産税や都市計画税がかかります。収益を生み出さない不動産はマイナスの資産でしかありません。また居住する予定がない場合でも、定期的なメンテナンスや修繕をおこなわなくては資産価値はどんどん減少していき、いざ売却しようとしたときに思った以上に価格がつかないという事態に陥る可能性もあるのです。

上記のような無駄なコストを削減するためにも、相続した不動産を有効活用できないと判断した場合、早めに売却を検討することが重要です。

相続した不動産をすぐ売却しなくてもよいケース

ここまで相続した不動産を売却した方がいいケースについて見てきました。それでは逆に売却をしなくていい不動産とはどのような条件の不動産のことを言うのでしょうか。

遺産分割が整う

相続時に不動産の遺産分割がスムーズに進む場合は、急いで売却する必要はありません。

不動産の相続が発生すると、被相続人の遺言書の確認や相続人の確定を行い、相続人同士で遺産分割の方法や割合について協議を行います。不動産は相続財産の中でも特に資産価値が大きいものであり、かつ現物分割が難しい資産です。そのためたとえ仲のいい親族間での遺産分割であっても、トラブルに発展したりスムーズに分割割合が決まらなかったりすることも少なくありません。

逆にスムーズに遺産分割が完了すれば通常は相続した人の単独所有となり、相続人が自由に不動産を活用することが可能になります。将来的に賃貸に出したり売却したりといった活用・処分も自由になるため、相続直後に急いで売却活動を進める必要はありません。

自宅として利用する

相続した不動産が相続人の自宅として利用される予定がある場合も、売却する必要はありません。

特にすでに自宅として利用している不動産を相続した場合、相続不動産だからと言ってすぐに売却してしまうと、新たな住居を見つけなければならなくなります。相続人がしばらくの間自宅として利用する予定があるならば、そのまま居住し続けても問題はありません。

将来的に売却することを検討している場合は、タイミングを慎重に見計らう必要があります。不動産市場や経済状況は常に変動しており、合わせて不動産の価値や需要も変化します。自宅として活用しながらゆっくりと時間をかけて売却のタイミングを見極めることで、より良い条件で売却できる可能性が高まるのです。

ただし売却まで期間が空く場合は、築年数の経過や建物の劣化などによる資産価値の減少には注意が必要です。将来できる限り高く売却するためにも、適切なメンテナンスや維持管理をおこなうことが重要です。

収益物件として活用が見込める

収益を生み出す可能性のある不動産や賃貸需要の高い地域であれば、上手に活用することで定期的な収益を得られ、日々の生活にゆとりが出るだけでなくさらなる資産形成をすることも可能です。

さらに不動産の活用方法によっては、収益物件としての価値を高めることができます。例えばリノベーションやリフォームをすれば空室率低下や家賃増額が期待できますし、駅前開発や商業施設の新設によりエリアの利便性が高まり、不動産自体の価値が上昇することもあります。収益物件は相続発生後も資産価値が上がる可能性を秘めているため、積極的に活用を検討したいところです。

ただし相続した不動産を収益物件として活用するためには、適切な空室対策と出口戦略が重要です。どんなに価値のある不動産でも空室率が高ければ家賃収入は得られませんし、不動産を手放す際のことを考えておかなければ、結果的に大きく損をしてしまう可能性があるためです。

そのため、地域密着型企業と大手企業それぞれの良さを併せ持つ賃貸管理会社を賃貸経営のパートナーとして選ぶことをおすすめします。

譲渡所得税を節約できる特例・特別控除

土地の相続においては、3年10ヶ月以内に売却した場合に適用される節税特例があります。ここでは「相続費用の取得費加算」と「相続空き家の3,000万円特別控除」の2つについて解説します。

相続税の取得費加算の特例

「相続税の取得費加算の特例」とは、相続で取得した土地や建物、株式といった資産を売却した際に、取得費に相続税額の一定金額を加えられるという制度です。

譲渡所得を計算する際には、売却時に得た金額から取得時にかかった費用を差し引きます。そして算出された譲渡所得から、所得税や住民税の納税額が決まるという仕組みです。

相続税の取得費加算の特例が適用されると、相続税額から計算した一定金額を取得費に加えることで、譲渡所得金額が減少します。これにより納税者に課される負担を大幅に軽減できるのです。

特に不動産を相続した場合、不動産の売却により「譲渡所得税」「相続税」の二重課税が発生し資産が大きく減少する可能性があります。そのため、取得費加算の特例を活用して税負担を最適化することが重要なのです。

取得費に加算する相続税額の計算式

取得費に加算する相続税額を計算する際には、下記の計算式を使用します。

納付すべき相続税額×売却した不動産の相続税評価額/相続税の課税価格(債務控除前)=取得費に加算する相続税額

まず納付すべき相続税額を計算します。これは相続した不動産に対して課税される相続税の金額です。次に売却した不動産の相続税評価額を取得費に加算します。計算に用いる相続税評価額は、相続した不動産の路線価や固定資産税評価額をもとに算出されます。

最終的な取得費は、納付すべき相続税額と売却した土地の相続税評価額を、相続税の課税価格(債務控除前)で割ったものです。

ただし上記で算出した取得費に加算する相続税額が、特例を適用しない場合の譲渡益の金額を超える場合においては、その譲渡益相当額のほうを取得費に加算します。

特例の3つの適用要件

相続税の取得費加算の特例を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

1)相続や遺贈により財産を取得した者であること。
2)取得した財産に対して相続税が課税されていること。
3)取得した財産を、相続が発生した日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過するまでに売却していること。

つまり相続や遺贈によって不動産を取得し、その不動産に対して相続税が課税されている場合に、相続が起きた日の翌日から3年10ヶ月以内にその財産を売却すれば、取得費加算の特例が適用されるということです。

取得費加算の特例は、相続した財産を早期に売却して節税をはかるという仕組みです。相続した不動産に居住したり、収益物件として長期的に活用したりする予定がない場合は、早期に売却してこの特例を活用することで節税効果が期待できます。

相続した空き家を売却した場合の3,000万円特別控除

相続した不動産が空き家だった場合、売却によって得た利益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる制度があります。これを「空き家に係る譲渡所得の特別控除」と呼びます。

具体的な計算式は下記のとおりです。

譲渡所得=譲渡所得-諸経費(取得費+譲渡費用)-特別控除3,000万円

ここでいう取得費用は不動産を購入した当時にかかった費用(物件代金・仲介手数料・登録免許税など)のことを、譲渡費用は相続後に不動産を売却するためにかかった費用のことを指します。

相続した空き家の売却価格が3,000万円以下であれば、その全額が特別控除されるため所得税の課税対象から除外されます。つまりこの場合の税金はゼロということです。

なお譲渡所得の3,000万円を超える部分は通常どおり課税対象になるため、売却後翌年に確定申告をおこなうことで納税します。

特別控除の4つの適用要件

相続した空き家を売却して3,000万円特別控除を受ける要件は以下の通りです。

1)被相続人が1人で暮らしていた家であること。
2)1981年5月31日以前に建築された戸建て住宅であること。
3)相続から売却まで空き家であったこと。
4)売却する空き家が新耐震基準を満たしているか更地にすること。

特別控除を受けるためには、被相続人が1人で生活していた既存の戸建て住宅であり、建築年が1981年5月31日以前であることが条件です。また相続後から売却までの間、誰も居住したり相続したりしていない空き家であることも条件です。

そして相続した不動産の場合、耐震性が基準を満たしていないことで特別控除を受けられないケースが多く見られます。現在の耐震基準(新耐震基準)を満たさない不動産を売却する場合は、耐震補強工事をおこなうか、建物を取り壊して更地にする必要があるという点に注意が必要です。

取得費加算の特例と相続空き家の3,000万円特別控除は併用不可

取得費加算は、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除と併用できません。つまり、特例控除のいずれか一方を選択する必要があります。

ただし同じ年のうちに複数の不動産を譲渡した場合は、各物件に対して取得費加算と空き家に係る3,000万円の特別控除を個別に適用できるとされています。また譲渡した不動産が居住用部分と非居住用部分に区分される場合は、居住用部分に相当する譲渡については空き家特別控除を、非居住用部分に相当する譲渡については取得費加算を、それぞれ適用することが可能です。

特例を適用した際の納税額は、毎年の確定申告の際に確定します。しかしどちらの特例を適用すべきなのかについては、個人で判断することは容易ではないため、必要に応じて専門家に相談し税額計算をしてもらうことが節税のために重要なポイントです。

親と同居している場合に利用できる特例・特別控除

親などの被相続人と同居している不動産を相続する場合、不動産はマイホーム(居住用財産)とみなされて特例・特別控除の対象となります。ここでは主な特例・特別控除として、「マイホームの3,000万円特別控除」と「所有期間10年超の軽減税率の特例」について詳しく解説します。

マイホームの3,000万円特別控除

被相続人と同居していれば相続した家はマイホーム(居住用財産)とみなされ、さまざまな特例の適用対象となります。その中でも代表的なのが「マイホームの3,000万円特別控除」です。

相続した不動産に限らず、売主が居住していた家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円までの特別控除が適用されます。特例を利用するためには、対象の不動産から転居してから3年後の12月31日までに売却をおこなうことが条件です。

所有期間10年超の軽減税率の特例

居住用の不動産(マイホーム)を売却する際に、所有期間が10年を超えていれば譲渡所得税に軽減税率を適用できるという特例もあります。この特例は3,000万円特別控除の特例と併用でき、売却益(譲渡所得)が6,000万円以下の場合は譲渡所得税率が14.21%(所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%)になります。

売却事例とまとめ

不動産を相続した際の手続きは士業との連携が必要ですが、円滑に進めるためにはコーディネーター役が不可欠です。そして相続不動産を売却したり収益物件で安定的な利益を得たりするには、信頼できる不動産仲介会社や賃貸管理会社との相談が重要です。

【リロの不動産】は充実した不動産オーナー様とのネットワークを持っており、不動産売却で起こりがちなトラブルを未然に防ぎながら、スムーズな収益物件の売却をサポートいたします。

■不動産の売却事例

相続の準備をお考えの方も、相続された方も、不動産の売却では実際にどんなことが起こるか直前までわからないと思います。リロの不動産が運営する賃貸経営の改善事例から売却に関連する相続物件の売却事例をご紹介いたします。

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物件の持つ個性を引き立て、問題を解消する専門的な知見を保有していないと、売却が困難なケースも存在いたします。あらかじめ備えることで、有意義な相続を思い描いてみてください。

■賃貸経営の改善事例 売却編

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。