相続税対策で不動産購入する理由とメリット・デメリット・物件種類別の特徴を解説

2026.02.28

相続税対策において有効な手段として注目を集めているのが「不動産の購入」です。不動産を所有していることで相続税の節税効果が期待できるということをなんとなく聞いたことがあるものの、その理由を詳しくご存知ではない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、なぜ不動産が相続税対策に有効なのかについて解説します。購入した不動産を賃貸不動産として活用する場合のメリットとデメリットや、不動産の種類ごとの節税対策の違いについても触れますので、これから不動産の購入を検討している方は参考にしてください。

改善事例については、以下をご参照ください。

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▼この記事の内容

●不動産の購入が相続税対策になる理由としては、相続税評価額を下げることができる、賃貸不動産はさらに相続税評価額が低くなる、融資の残債が「債務控除」になる、がある。

●賃貸不動産を活用した相続税対策のメリットとしては、家賃収入を得ることができる、インフレに強い資産が手に入る、賃貸管理会社に委託すれば手間はかからない、がある。

●賃貸不動産を活用した相続税対策のデメリットとしては、空室が生じると収入が得られない「空室リスク」、売りたいとき売れない「流動性リスク」、分割が難しい「相続トラブルリスク」、節税効果が失敗する「税務否認のリスク」、がある。

●相続税対策として見ると、区分マンションは、敷地権が比較的小さい、高層階ほど相続税評価額は下がる、流動性が高い、複数所有すれば遺産分割がしやすい、という特徴がある。

●一棟アパートは、土地の有効活用ができる、所有資産が大きい場合は資産の組み換えに適している、賃貸経営の自由度が高い、利回りが高い、という特徴がある。

●一棟マンションは、一棟アパートの特徴に加えて、さらに資産を大きくできる。

目次

不動産の購入が相続税対策になる理由

不動産の購入を検討する前に、そもそもなぜ不動産を購入することで節税効果が期待できるのかを知っておきましょう。

相続税評価額を下げることができる

不動産を購入することによって相続税対策ができる主な理由は、不動産の評価額を圧縮できる点にあります。相続税の計算時、現金や預貯金、株式などは時価100%の相続税評価額とされる一方、不動産はその評価額を圧縮することが可能です。

相続税計算時に参考にされる「相続税路線価」や「固定資産税評価額」は、時価の7割程度を目安に定められています。つまり同じ1億円を相続する場合でも、現金の状態で相続するよりも1億円で購入した不動産を相続したほうが、相続税評価額を3割程度減らすことができるということです。

賃貸不動産はさらに相続税評価額が低くなる

賃貸不動産は居住目的の不動産と比較して、資産価値が低いものとみなされます。賃貸物件は賃貸借契約によって借主様の物件を利用する権利が保護されており、貸主様は契約を簡単に解除できず、もちろん借主様を強制的に退去させることも困難です。

つまり賃貸物件として貸し出されている不動産は、所有者が自由に活用したり利用したりできる範囲に制限があるということです。相続税評価額は不動産の収益性とは関係なく、「どれだけ自由に利用できるか」という観点から価値を評価されます。

そして賃貸不動産は、借主様が使用できる範囲である「借地権割合」「借家権割合」の存在により貸主様が自由に利用できる範囲が限定されるという理由から、相続税評価額が低く設定されるのです。
 
相続税評価額が低いということは、実際に課せられる相続税額も自己使用の不動産と比較して低いということです。相続税対策として不動産を購入する場合は、賃貸物件として活用することでさらなる節税効果が期待できます。相続税評価額の具体的な計算方法は、後ほど詳しく解説します。

融資の残債が「債務控除」になる

現金資産を不動産という実物資産に変える際に、金融機関から融資を受けて不動産を取得するというのも相続税を抑えるためには有効な手段です。

財産を相続する際には、現金や預貯金、不動産や株式といったプラスの財産だけでなく、借入金や債務などのマイナスの部分も相続します。そして相続財産のうちの借入金はマイナスの資産としてみなされ、債務控除の対象になります。相続税額を計算する際に、相続財産の価額から債務控除分が差し引かれるため課税価格が下がり、結果的に相続税額を抑えられるという仕組みです。

さらにインフレが続いており金利も低い近年においては、債務控除が適用されることにより、借入金の実質価値が目減りするという利得も発生します。この利得のことを「債務者利得」と呼びます。

相続税額をできるかぎり抑えるためには、ローンを組んで購入した不動産を第三者に貸し出す収益物件として活用すると効果的、ということです。

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不動産の相続税評価額の計算方法

相続税を算出する際に不動産の評価額(相続税評価額)を元に、土地と建物に分けて計算します。それぞれの計算方法を詳しく見ていきましょう。

土地部分の相続税評価額

土地の相続税評価額は「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法で算出されます。

路線価方式は毎年各国税局が作成する路線価図に基づいて土地を評価するもので、ほとんどの市街地で適用される算出方法です。路線価図とは、地域ごとに公示された基準価格である路線価を示したものであり、道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額です。

不動産の相続が発生した際の土地の評価においては、この路線価を基準にし、さらに土地の地理的条件や形状などを考慮します。路線価は年度ごとに見直されることもあり、市場の変動に対応して調整されるという特徴を持ちます。

倍率方式は路線価が定められていない地域(市街化調整区域など)や特殊な土地に対して採用される方法で、土地の固定資産税評価額に一定の倍率(評価倍率)をかけて算出します。 評価倍率は国税庁ホームページで公開されている「路線価図・評価倍率表」に記載されており、地域や地目によって異なる倍率が適用されます。

土地の相続税評価額は。路線価方式と倍率方式のいずれの方法で算出した場合でも、土地の時価の約80%になるのが一般的です。

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」は、相続した土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度のことです。

資産価値が高い不動産の相続が発生すると高額な相続税を納めなければならず、場合によっては土地を売却しなければ納税できないケースもあります。しかし被相続人と同居していた土地を売却するとなると、相続人は突然住まいを失うことになったり、賃貸業の継続ができなくなったりする可能性も考えられます。

小規模宅地等の特例は土地の相続税評価額を大幅に減額し、納税額を圧縮することで、相続人が負う税負担を軽減することを目的としているのです。

この特例が適用される小規模宅地等の面積は、被相続人が居住していた土地であれば330m2以下の部分、賃貸物件として活用していた土地であれば200m2以下の部分と定められています。特に都市部や住宅密集地では土地の面積が小さいケースが多く見られるため、この特例を利用することによる節税効果に期待できます。

ただし、小規模宅地等の特例は相続税に関する特例の中でも相続税評価額の減額幅が大きいため、面積以外についても他の特例と比べて適用要件が厳しく定められています。詳しくは国税庁のホームページも参照しながら、専門家への相談も合わせて行うことをおすすめします。

国税庁 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

建物部分の相続税評価額

建物部分の相続税評価額は、固定資産税評価額を基準にして算出されます。

建物部分の相続税評価額の算出方法は、以下のようになります。

被相続人が居住していた場合:固定資産税評価額×1.0

被相続人が賃貸物件として活用していた場合:固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

上記を見て分かるとおり、相続不動産が被相続人の居住用として利用されていたか、賃貸に出されていたかにより相続税評価額が異なります。「借地権割合」や具体的な計算方法については後述します。

固定資産税評価額は地方自治体によって毎年計算されるものであり、建物の状況や使用用途、地域の市場価格などを考慮して算出されます。一般的に、建物部分の評価額は固定資産税評価額の時価の約70%程度です。つまり固定資産税評価額の約70%が建物部分の相続税評価額として考慮されるということを押さえておきましょう。

賃貸不動産の相続税評価額の計算方法

相続した不動産が賃貸物件として活用されている場合、自己居住用の不動産よりも相続税評価額が低くなります。その理由と具体的な計算方法を見ていきましょう。

借家権割合・借地権割合

賃貸不動産(収益物件)の相続税評価額が自己使用の土地や建物と比較して低くなるのは、相続税評価額は「対象の不動産をどれだけ自由に使えるか」ということを基準に考えられるためです。

自己居住用の不動産の場合は、いうまでもなく不動産の所有者が自由に使用できます。一方で賃貸不動産は第三者に貸し出しているため、所有者であっても自由に使用することはできません。

賃貸借契約においては借主様の権利が強く守られており、借主様が持つ権利によって不動産の「自由に使用できる割合」に制限が生まれるのです。この土地や建物のうち借主に使用の権利がある割合を、それぞれ「借地権割合」「借家権割合」と呼びます。

つまり賃貸不動産は所有者が自由に使用できないという観点から、相続税評価額が時価よりも非常に低く産出され、結果的に相続税対策になると言えます。

それでは実際に賃貸不動産の相続税評価額を算出する方法を、土地と建物のそれぞれについて見ていきましょう。

土地部分の相続税評価額

賃貸不動産の土地部分の相続税評価額は、以下の計算式で算出されます。

土地部分の評価額 = 更地としての評価額 × (1 – 借家権割合 × 借地権割合 × 賃貸割合)

「更地としての評価額」とは、不動産が建物を含まない状態(更地)の評価額を意味し、土地の市場価格を元に算出されます。

「借家権割合」「借地権割合」は、建物を賃貸している場合に建物の所有者・土地の所有者がそれぞれ受け取る賃料収入の割合です。「賃貸割合」は対象となる不動産のうち、賃貸に出されている割合のことを指します。

例えば相続した土地の更地としての評価額が1,000万円、借家権割合が0.7、借地権割合が0.8、賃貸割合が0.6の場合を考えます。

土地部分の評価額 = 1,000万円 × (1 – 0.7 × 0.8 × 0.6) = 1,000万円 × (1 – 0.336) =664万円

このようにして、土地部分の相続税評価額が算出されます。

建物部分の相続税評価額

賃貸不動産の建物部分の相続税評価額は、以下の計算式で算出されます。

建物部分の評価額 = 建物の固定資産税評価額 × (1 – 借家権割合 × 賃貸割合)

建物部分の評価額は、建物の固定資産税評価額を基準にして算出されます。固定資産税評価額は地方自治体によって評価される建物の価格のことで、毎年1月1日に建物の所有者に4月頃送付される固定資産税課税明細書で確認できます。

固定資産税課税証明書が見つからない場合は、管轄の市区町村の役場で固定資産税評価証明書を発行してもらうか、窓口で固定資産税課税台帳を閲覧することでも確認できます。

それでは固定資産税評価額が1,200万円、借家権割合が0.3、賃貸割合が0.6の建物を相続した場合を例に、相続税評価額の算出方法を見ていきましょう。

建物部分の評価額 = 1,200万円 × (1 – 0.3 × 0.6) = 1,200万円 × (1 – 0.18) = 984万円

相続税の計算は原則として納税者が行うことになっていますが、間違った税額を算出してしまうと、無駄に多く税金を払ってしまったり逆に不足分を延滞として扱われてしまったりする可能性があります。不動産にかかる相続税は非常に高額なため、税理士などのプロの力も借りながら正しく算出することが求められます。

賃貸不動産を活用した相続税対策のメリット・デメリット

賃貸不動産を所有することで相続税対策になるというのは先述したとおりですが、同時にデメリットも存在するという点には注意しなければなりません。

以下では賃貸不動産を所有することで得られるメリットとデメリットについて解説します。

メリット1・家賃収入を得ることができる

収益物件となる賃貸不動産を所有することで、定期的な家賃収入を得られます。家賃は生活に密着した支出であるため、経済動向や景気変動にあまり左右されず比較的安定しています。経済の変動に影響されにくい安定的な収益を期待できる点は大きな強みです。

物件選びを慎重に行えば、長期にわたって安定的な収益を得ることも可能です。需要の高い地域の物件を選び、さらに適切な家賃設定をすることで低い空室率での賃貸経営が叶います。

ただし賃貸経営で安定的な収入を得るためには、信頼のできる賃貸管理会社に入居者募集や管理を依頼することが重要です。魅力的な物件を購入しても、入居者の募集や審査・建物の維持管理などが適切におこなわれなければ、入居率を安定させることは難しいということを覚えておきましょう。

メリット2・インフレに強い資産が手に入る

不動産は実物資産であるため、インフレに強いという特性を持ちます。2023年8月現在も世界的にインフレが進行しており、日本でも40年ぶりの物価高となっています。このような経済状況において、不動産はインフレ対策として有効な投資手段とされています。

インフレが起こると、現金や預金などの貨幣資産は価値が目減りしていきます。一方不動産は、需要と供給のバランスや地域の発展などによって価値が上昇する傾向にあります。実物資産である不動産は、経済の変動に比較的安定して反応するのに加え、インフレの影響を相対的に受けにくいのです。

上記のような特性により、インフレ対策や資産の保全として、不動産の購入を検討される方が増えています。

メリット3・賃貸管理会社に委託すれば手間はかからない

不動産投資として不動産賃貸業を行う場合、不動産の管理には手間や労力がかかることもありますが、賃貸管理会社に管理業務を委託することで、わずらわしい業務に追われずに済みます。

賃貸管理会社はテナントの募集や入居者の対応、契約の管理、賃料の徴収、修繕・メンテナンスなどのさまざまな業務を一括しておこなってくれるため、投資家はこれらの面倒な作業から解放されます。また賃貸管理会社には経験豊富な専門家が集まっている場合が多く、トラブルが起きた際に適切な対応をしてもらえたり、トラブル回避のための助言を受けられたりする点もメリットです。

さらに賃貸管理会社に業務を委託することで、物件の稼働率や収益性の向上が期待できます。入居者の募集や契約管理を効果的に行うことで空室期間を減らし、結果的に収益が安定するのです。

賃貸管理については、以下で詳しく解説しています。

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デメリット1・空室が生じると収入が得られない「空室リスク」

不動産賃貸業を行う際の最大のデメリットは、入居者が入らず家賃収入が得られないというリスクがあるという点です。どんなに立地がよく最新の設備を備えた物件であっても、空室率が高かったり空室期間が長かったりしては思ったような収益を得られません。

空室対策を行うためには、下記4つの要素を重視することが重要です。

1.入居者募集対応
2.仲介対応
3.管理対応(入居者管理/建物管理)
4.設備・工事対応

入居者募集においては、周囲のマーケットをリサーチしたうえで適切な家賃設定や情報発信をおこないます。不動産仲介会社を上手に活用することで入居審査も円滑にすすみ、空室期間を最小限にすることが可能です。

入居者から設備の不具合の報告やクレームがあった場合に迅速に対応したり、物件の定期点検や設備交換・工事などをおこなったりすることで、入居者に「住み心地のいい物件」と感じてもらえ、結果的に入居率の維持向上につながります。

空室対策については、以下で詳しく解説しています。

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デメリット2・売りたいとき売れない「流動性リスク」

不動産賃貸業を行う際のデメリットの一つは、物件を売却しようと思ってもなかなか売れないリスクです。不動産市場の変動や需要供給の変化によって、物件の売却が困難になることがあります。これを防ぐためには、以下のポイントに注意することが重要です。

1.売れやすい物件を購入する

投資家が欲しいと思える物件を選定することが重要です。需要が高く、入居者が入りやすい立地や条件を持つ物件を選ぶことで、将来売却する際にも需要が見込まれます。

2.適切な価格設定

過度に高い価格では融資がつきにくいため、売却できなかったり時間がかかったりする可能性があります。融資が付きやすい価格帯を設定し、市場の価格水準に合わせることで売却の可能性が高まります。

3.多様な売却ネットワークを持つ賃貸管理会社の活用

不動産の売却においては多様なネットワークを持つことが重要です。賃貸経営を始める際に、オーナーとのつながりが多い、あるいは買取対応もおこなっている賃貸管理会社を選ぶことで、賃貸経営と並行して出口戦略も行うことが可能です。

賃貸経営や不動産投資の目的については、以下で詳しく解説しています。

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1棟のアパートから区分マンションへの資産組み換えによる節税対策!

デメリット3・分割が難しい「相続トラブルリスク」

不動産を相続税対策として活用する際に注意すべきデメリットの一つが、相続人が複数いる場合に分割が難しい点です。現金であれば金額に応じて公平に分けることができますが、不動産は物理的に分割しにくく、評価額や利用方法をめぐって意見が対立しやすい性質があります。

特に賃貸不動産の場合、「売却して現金化したい」「保有を続けて家賃収入を得たい」など、意見が分かれやすいでしょう。共有名義で相続した場合でも、将来的な売却や修繕などの際には共有者全員または過半数の同意が必要となるケースもあり、意思決定が滞る原因になります。このような状態が長引くと、資産価値の低下や管理不全につながるリスクにもつながります。

以上のような相続トラブルを防ぐためには、生前のうちから遺言書の作成や、相続人ごとの取得財産を明確にしておくことが重要です。不動産と現金を組み合わせた分割方法や、法人化、保険の活用なども有効な対策となるため、早い段階で相続全体を見据えた準備を進めておく必要があります。

デメリット4・節税効果が失敗する「税務否認のリスク」

不動産を活用した相続税対策は、現金や有価証券に比べて評価額を抑えやすく、有効な手法として広く知られています。

その一方で、節税を強く意識しすぎた不動産取引は、税務署から「租税回避」と判断され、想定以上の税金が課されるリスクがある点に注意が必要です。税務署に否認されると、評価額の修正や追徴課税が発生し、想定していた相続税対策が逆効果になる可能性もあるため、制度の趣旨を踏まえた慎重な対応が欠かせません。

以下では、2026年時点で特に気をつけるべき法制度について詳しく解説します。

2024年度税制改正によるタワマン節税の縮小

2024年度税制改正では、これまで富裕層を中心に活用されてきた「タワーマンション節税」に大きな見直しが入りました。

従来の相続税評価では、マンションの評価額は固定資産税評価額と路線価をもとに算定されていたため、実勢価格との乖離が生じやすく、高層階・好立地のタワーマンションほど評価額が実勢価格よりも大幅に低くなる傾向がありました。この差を利用し、相続税評価額を圧縮する手法がタワマン節税です。

しかし2024年度改正では、マンションの階層や専有面積、市場価格とのバランスを考慮した新たな補正ルールが導入され、評価額が実勢価格に近づく仕組みへと変更されました。これまで特に大きな節税効果が得られていた高層階住戸ほど、評価額が引き上げられる結果となり、タワマン節税のメリットは縮小しています。

2024年度の税制改正は、過度な節税を防ぎ、相続税負担の公平性を確保する目的で実施されたものです。今後は、単にタワーマンションを購入すれば相続税が下がるという考え方は通用しなくなり、立地や運用目的、保有期間などを総合的に考慮した相続対策が求められます。不動産による相続税対策を検討する際は、最新の税制を踏まえたうえで、長期的な資産設計を行うことが重要です。

財産評価基本通達総則6項

財産評価基本通達総則6項、いわゆる「総則6項」とは、国税庁が定める通常の評価方法では著しく不適当と認められる場合に、例外的な評価を行うことを可能とする規定です。

一般的な相続税評価は、路線価や固定資産税評価額など、明確なルールにもとづいて行われますが、その形式的な評価方法を利用して不自然な節税が行われた場合、この総則6項が適用される可能性があります。

具体的には、相続開始の直前に多額の借入をして不動産を購入したケースや、相続後すぐに売却され、実質的に現金化されているケースなどが典型例です。このような取引は「相続税を不当に減少させる目的で行われた」と判断されやすく、税務署が鑑定評価などを用いて、実勢価格に近い評価額へと修正することがあります。

総則6項が適用されると、当初想定していた相続税評価額が否認され、結果として多額の追徴課税や延滞税が発生するリスクがあります。これは、節税対策として不動産を活用したつもりが、かえって相続人の負担を増やしてしまう事態にもつながりかねません。

形式的な節税ではなく、実態をともなった資産運用であるかが厳しく問われる点を理解しておく必要があるといえるでしょう。

2026年度税制改正による評価の変更

現在、将来の税制改正として注目されているのが、2026年度に予定されている相続税評価ルールのさらなる見直しです。

現行制度では、主に区分マンションを対象とした評価方法の是正が進められてきましたが、今後は一棟マンションやアパートなど、区分マンション以外の収益不動産についても見直しが検討されています。

具体的には、相続開始前5年以内に取得した一棟マンションなどについて、相続税評価額を従来の画一的な評価方法ではなく、実勢価格を基準に評価する案が準備されているとされています。この改正が実施されれば、短期間での不動産取得による相続税評価額の圧縮は、これまで以上に難しくなる可能性があります。

この動きは、不動産を利用した過度な節税スキームを抑制し、相続税負担の公平性を高める狙いがあるといえるでしょう。特に、相続直前の駆け込み的な不動産購入を検討している場合、将来の改正によって想定していた節税効果が得られなくなるリスクを考慮しなければなりません。

今後の相続税対策では、短期的な節税効果だけに目を向けるのではなく、長期保有や安定収益を前提とした不動産活用、さらには他の相続対策との組み合わせを含めた総合的な設計が重要になります。

投資する物件種類別に相続税対策の特徴を紹介

これから不動産投資を始めようと考えている方の中には、どの種類の物件を購入したらいいか悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。

区分マンション・一棟アパート・一棟マンションのそれぞれを購入した場合に相続税対策に違いはあるのか、それぞれの特徴を見ていきましょう。

区分マンションの場合

敷地権が比較的小さい

区分マンションを購入して不動産投資を行うメリットの1つは、マンションの土地部分の権利が敷地権となることです。敷地権とはマンション全体の土地を共有している権利のことで、マンションの一室を購入することで建物に対する部屋の面積の所有割合に応じて、土地の借地権も得られるということです。

世帯数が多いマンションほど、土地部分の敷地権割合は小さくなり相続税評価額を下げるポイントとなります。相続税は不動産の評価額に基づいて課税されるため、評価額が低いほど支払う税金が減少します。世帯数が多いマンションでは土地部分を多くの人と共有するため、戸建て住宅などに比べて相続税評価額が抑えられる傾向にあります。

高層階ほど相続税評価額は下がる

マンションの建物部分の相続税評価額は、同じ専有面積の部屋を比較すると高層階ほど相続税評価額が下がるため節税になります。

相続税評価額を算出する際のもとになるマンションの建物部分の固定資産税評価額は、低層階と上層階で違いがありません。一方で、実際の市場価格は高層階ほど高額になる傾向があります。現金資産を不動産に変えて相続する場合、低層階の物件よりも、高層階の物件のほうが市場価格と固定資産税評価額の乖離が大きくなります。

つまり同じ面積の区分所有マンションを購入するのであれば、高層階の部屋のほうが節税効果が高いということです。

ただし高層階の物件は一般的に価格が高く設定されているため、初期費用が高くなるという点は押さえておきましょう。

また、前述したように、「タワマン節税」を制限する税制改正も予定されていますので、その点も考慮しましょう。

流動性が高い

区分マンションは、一棟マンションや一棟アパートと比較して流動性が高い、つまり売りやすいという特徴があります。

一棟ものは全体を一括で売却する必要があるため、市場の状況や需要によっては売却に時間がかかることがあります。また、買主様は同じ投資家である必要があるので、実需物件のマーケットと比べると一般的には売りにくい側面があります。

それに対して区分マンションは、物件価格が比較的低額のため売りやすいということがいえます。また、借主様が退去した後は実需物件として売却することも可能なため、大きなマーケットで売却ができます。

複数所有すれば遺産分割がしやすい

区分マンションの物件価格は一棟ものと比較して安価であるため、相続人の人数に合わせて所有しやすく遺産分割がしやすいという点もメリットの1つです。不動産は相続時に遺産分割の対象となりますが、区分マンションは複数戸に分かれているため、相続人の数に応じて柔軟に分割することが可能です。

それに対して一棟ものは一つの建物として一括所有されているため、相続時に遺産分割が複雑になる可能性があります。相続人が複数いる場合、不動産の評価や利用意向の違いから遺産分割において揉めごとに発展する可能性があります。

区分マンションは相続時のトラブルを回避する点で有利です。また相続人の生活スタイルやニーズに合わせて柔軟に対応できるため、遺産分割におけるトラブルのリスクを軽減できます。

一棟アパートの場合

土地の有効活用ができる

複数のお部屋を一度に貸し出せる一棟アパート投資は、賃貸需要の変動こそありますが、適切な賃貸経営を行うことで安定的な収入を多く得られるようになります。

土地だけを所有している場合であれば、一棟アパートを建てることで賃貸経営を開始できます。一棟アパートを建てる際の土地の購入費用が不要なため、不動産投資における初期投資額を押さえることが可能です。建物は減価償却することで、所得税の節税効果を得ながら建築できるでしょう。

所有資産が大きい場合は資産の組み換えに適している

一棟アパートは通常区分マンションよりも物件価格が高いですが、その分所有資産の額が大きくなります。この大きな所有資産を相続税対策として有効に活用する方法として、資産の組み換えが考えられます。

資産の組み換えとは、相続対象となる資産の中で相続税負担が大きいものを他の資産と交換することで、相続税の軽減を図る方法です。一棟アパートの価値が高いため、他の低価格の資産と組み換えることで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

賃貸経営の自由度が高い

一棟アパートは建物全体の管理をすべて自分で賃貸管理ができるため、賃貸経営の自由度が高いという特徴があります。

区分マンションは共用部分の管理が賃貸管理会社によって行われるため、投資家の意向とは異なる管理方針がとられることもあります。それに対して一棟アパートの場合は、自らがすべての管理を行うことで、入居者へのサービスや維持管理に対する自由な判断が可能になるのです。

例えば、築年数が経過して一般的な賃貸需要が低迷した場合に、管理規約の見直しから対策できるため「ペット可の物件にする」などの判断も行いやすいです。

利回りが高い

区分マンション投資と比較して、一棟アパートのほうが利回りが高い傾向にあります。

健美家の「収益物件 市場動向 年間レポート 2022年」によれば、2022年の利回りは一棟アパート投資が8.29%、一棟マンション投資が7.84%、区分マンション投資が7.41%となっています。このデータからも、一棟アパートは他の投資種類に比べて高い収益性を持っているということがわかります。ただし、大都市圏と地方では賃貸需要も異なるため、一つ一つの物件を購入前に吟味しましょう。

出典:健美家 収益物件 市場動向 年間レポート 2022年

一棟マンションの場合

一棟アパートに比べてさらに資産を大きくできる

一棟アパートを購入して不動産投資を行う場合のメリットは、一棟マンションの場合にも当てはまります。一棟マンションも複数の住戸からなる建物であり、複数の安定した家賃収入を見込めます。

一棟マンションは一般的に一棟アパート以上の資産価値を持っているため、より高い収益性が期待できる点が大きな魅力です。そのため、さらに所有資産が大きい人に向いているといえるでしょう。

不動産投資や賃貸経営を行う目的と、物件種別やライフステージに応じた出口戦略とセットで考えるとリスクを軽減できます。

■賃貸経営の改善事例

収益物件の売買の改善事例・お客様の声をご紹介。

リロの不動産は収益物件オーナー様や検討顧客の売買ネットワークを保有。

相続税のシミュレーション

ここでは、不動産を活用した相続税対策によって、相続税額がどの程度変わるのかを具体的な数値で比較します。

相続人は子ども1人のみとして、以下の3つのケースでシミュレーションします。

1.現金1億円をそのまま相続するケース
2.現金1億円で収益不動産を購入したケース
3.1億円の融資を受けて1億5,000万円の収益不動産を購入したケース

それぞれのケースを順に確認して、不動産が相続税対策としてどのように機能するのかを具体的に理解していきましょう。

現金1億円の場合

まずは、もっともシンプルなケースとして、1億円を現金のまま相続した場合を考えます。現金は評価の余地がなく、相続税評価額は額面通りの1億円となります。

相続税には基礎控除が設けられており、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。今回は相続人が子ども1人のため、基礎控除額は3,600万円です。

したがって、課税対象となる金額は「1億円-3,600万円=6,400万円」となります。この金額に対して相続税率30%、控除額700万円を適用すると、相続税額は(6,400万円×30%-700万円)となり、最終的な相続税額は1,220万円です。

以上のように、現金は流動性が高く管理しやすい一方で、相続税評価額を圧縮する手段がなく、そのまま高額な相続税負担につながります。相続対策を何も行わなかった場合の基準として、このケースを押さえておくことが重要です。

現金で1億円の賃貸不動産を購入した場合

次に、現金1億円を使って賃貸不動産を購入した場合の相続税シミュレーションを見ていきます。土地4,000万円、建物6,000万円の収益物件を、自己資金のみで購入したと仮定します。不動産は現金と異なり、相続税評価額が時価よりも低く算定される点が大きな特徴です。

評価の前提として、土地は自用地評価80%とし、建物は自用家屋評価60%、さらに賃貸中であることから借家権割合30%、借地権割合30%、賃貸割合100%を適用するとします。

土地:4,000万円✕0.8✕(1-0.3✕0.7✕1)=2,528万円
建物:6,000万円✕0.6✕(1-0.3✕1)=2,520万円

土地の評価額は2,528万円、建物の相続税評価額は2,520万円となり、合計の評価額は5,048万円まで圧縮されます。これは購入価格1億円に対して、約半分程度まで評価額が下がっていることになります。

ここから基礎控除3,600万円を差し引くと、課税遺産総額は1,448万円です。この金額に対して税率15%、控除額50万円を適用すると、相続税額は167万2,000円となります。

現金1億円をそのまま相続した場合の1,220万円と比較すると、相続税が大幅に軽減されていることがわかります。不動産を活用した相続税対策の基本的な効果が、数値として明確に表れるケースといえるでしょう。

1億円の融資を受けて1億5,000万円の賃貸不動産を購入した場合

最後に、現金1億円を所有している人が、さらに1億円の融資を受け、1億5,000万円の賃貸不動産を購入したケースを想定します。この場合、自己資金(頭金)5,000万円を投資していますが、相続時には借入金1億円が債務として残っている点が大きなポイントです。相続税では、被相続人の債務は「債務控除」として相続財産から差し引くことができます。

物件の内訳として、土地6,000万円、建物9,000万円と仮定し、前節と同様の評価条件を適用します。

土地:6,000万円✕0.8✕(1-0.3✕0.7✕1)=3,792万円
建物:9,000万円✕0.6✕(1-0.3✕1)=3,780万円

土地の評価額は3,792万円、建物の評価額は3,780万円となります。評価額の合計は7,572万円ですが、ここから債務控除として借入金1億円を差し引くことが可能です。

その結果、差引評価額は▲2,428万円となります。1億円から頭金5,000万円を拠出しているため、残金が5,000万円あるとすると、評価額は現金2,572万円となります。すると、基礎控除額3,600万円以下のため、相続税が非課税となりました。

融資を活用した不動産購入は、リスク管理が必要である一方、相続税評価の圧縮と債務控除を組み合わせることで、非常に強力な相続税対策になるのです。

まとめ

相続税対策には土地や建物、マンションといった不動産を購入し、賃貸物件として活用することが有効です。

ただし本当の意味で不動産投資を成功させるためには、運用中の入居者募集や賃貸管理だけでなく、出口戦略も考える必要があるため、信頼できる賃貸管理会社が不可欠です。

リロの不動産】は豊富な実績とノウハウにより、多数のオーナー様の賃貸経営をサポートしてまいりました。安定収入のための空室対策はもちろん、将来の出口戦略まで親身になってお手伝いいたします。不動産投資を検討するなら、【リロの不動産】にご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。