地主が借地権の買取をするポイント!底地権者の借地権買取相場まで解説

2024.05.07

地主として土地を所有していても、借地権が設定されていることにより自己活用できなかったり、固定資産税の支払いだけが発生していたりと、なにかと悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

この状況を解決する方法の1つに、地主が借地権を買い取る「借地権買取」というものがあります。

本記事では地主が借地権を買い取るための手順や相場、資金調達の方法について解説します。買取後の土地活用の具体例もご紹介しますので、所有する土地を活用できず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

地主による借地権買取

まずは、借地権とはどのようなものなのか、地主が借地権を買い取ることでどのようなメリットがあるのかを知っておきましょう。

借地権とは

借地権とは、第三者から借りた土地の上に建物を建てる権利のことです。借地権を持つ人のことを借地権者、土地の所有者のことを地主(借地権設定者または底地人)と呼び、借地権者は地主に対して毎月地代を支払います。

現存している借地権は、借地権が設定された年によって適用される法律が異なります。

「旧借地法」による借地権では、現行の新借地借家法よりも借地権者の権利が強く守られていました。地主と借地権者とのトラブルが絶えなかったことから、1992年8月に施行されたのが現行の「新借地借家法」です。

新借地借家法に基づく借地権には、普通借地権と定期借地権という2つの種類に分類されます。新しく設定される借地権のほとんどが定期借地権で、借地権者は期間経過と同時に土地を更地にし、地主に返還する義務があります。

新借地借家法は、地主と借地権者双方の便宜を図るために改正されたものです。しかし旧借地法に基づいて設定された借地権は、存続期間が更新を迎えても、新借地借家法に自動的に変更されるものではありません。そのため、現在でも旧借地法と新借地借家法の土地が混在しているというのが実情です。

地主は借地権が設定されている土地(底地)の所有権を持っていますが、土地を利用する権利は借地権者にあります。つまり、借地権が設定されている土地は、通常の土地と比べて活用したり売却したりすることが難しいのです。

地主による借地権の買取

地主が借地権の設定された土地の活用で頭を抱えるケースが多い理由は、借地権者の権利が法律により強く守られていることが理由です。

借地権者は新借地借家法と旧借地法いずれにおいても、正当事由制度によって保護されています。地主側に土地を利用する正当な事由がない限り、地主からの契約解除は事実上不可能ということです。

ただし、底地権者である地主が、借地権者から借地権を買い取ることは可能です。この場合、借地権のみを買い取る方法と、借地権にプラスして建っている建物を合わせて買い取る方法の2つのパターンがあります。

借地権のみ買い取る方法では、建っている建物の解体費用は借地権者負担になるため、交渉のハードルとしては高めです。それに対して借地権と建物を合わせて買い取る方法は、借地権者への交渉のハードルは下がるものの、建物の解体費用を地主が負担しなければなりません。

地主による借地権買取までの流れ

地主が借地権を買い取る際、以下の流れで進めていきます。

・不動産仲介会社に相談
・不動産査定
・借地権者と交渉
・売買契約の取り交わし
・融資審査の申込み
・借地権の引渡し

地主による借地権の買取には長い期間がかかるケースもありますので、全体の流れを把握したうえで行動しましょう。

地主の借地権買取の流れ 不動産仲介会社に相談

借地権の買取を検討し始めたら、借地権者への直接交渉ではなく、不動産仲介会社への相談から始めることが重要です。

借地権の買取は複雑な専門知識が必要なうえ、特に譲渡価格でもめるケースが多く見られます。最初から借地権者に買取を持ちかけてしまうと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。そのため、まずは不動産仲介会社(宅建業者)に相談し、アドバイスをもらいましょう。

売買される借地権は、厳密には「不動産」ではなく「権利」に分類されます。しかし借地権の設定されている土地には建物が建っていることも多いため、相談先は不動産の専門家である不動産仲介会社で問題ありません。

地主の借地権買取の流れ 不動産査定

借地権者に借地権の買取を提案する前に、不動産仲介会社の担当者が対象となる不動産の査定を行います。

不動産査定では、借地権と建物の両方を買い取る可能性を想定し、土地と建物それぞれの価値を算出します。土地の査定では、現地調査と市区町村役場のそれぞれで、主に下記のポイントをチェックします。

現地調査・土地の形状
・土地の面積
・前面道路の幅員
・隣地との境界線
・周辺環境
市区町村役場での確認・路線価
・法令上の制限
・建築可能な建物の用途、構造、規模
・建替えの可否

上記の内容を基に対象となる土地の借地権価格を査定し、借地権者に対して買取を提案する際の根拠とします。

地主の借地権買取の流れ 借地権者と交渉

査定が完了したら、借地権者に借地権買取の提案と交渉をします。

借地権者と交渉する内容には、譲渡金額のほかにも以下のようなものがあります。

・借地権のみの買取か、借地権と建物の買取か
・借地権のみの買取の場合、建物の解体費用をどちらが負担するか
・借地をいつ引渡すか

「土地を利用する権利を買い取らせてほしい」と提案し、なおかつ金銭が絡む交渉になりますので、地主と借地権者だけで買取について協議することにはリスクがともないます。のちに大きなトラブルに発展させないためにも、不動産会社に仲介を依頼して交渉を進めましょう。

地主の借地権買取の流れ 売買契約の取り交わし

借地権者と契約条件について合意に至ったら、地主と借地権者との間で売買契約を締結します。売買契約書を作成するのは、仲介に入る不動産会社です。

売買契約締結時に、地主(買主様)から借地権者(売主様)に対して支払うのが手付金です。手付金は売買契約が成立したことを示す証拠金のような意味合いがあり、万が一地主が買取をとりやめる場合は、支払った手付金を放棄することで契約を解除することができます。

手付金の金額は売買価格の5〜10%程度が相場で、不動産の引渡し時に行う残金決済で売却金に充当されます。

地主の借地権買取の流れ 融資審査の申込み

借地権買取時に金融機関の融資を利用する場合は、締結した売買契約書を金融機関に持参し、融資審査の申し込みをしましょう。

融資の審査には売買契約書のほか、申込者の属性や経済状況・不動産の情報がわかる書類などを準備する必要があります。利用する融資によっては、本審査の前に事前審査を行っている場合もありますが、審査の内容や書類の提出状況などによっては、申し込みから審査結果が出るまで1ヶ月程度かかる場合もあるため注意が必要です。

借地権の買取で利用できる融資の種類については、後ほど詳しく解説します。

地主の借地権買取の流れ 借地権の引渡し

金融機関の審査にとおったら、売買契約書で定めた期日に融資実行と残代金の決済、借地(および建物)の引渡しが行われます。

すべて決済日に手続きを行いますが、建物もあわせて買い取る場合は、建物の所有権移転登記も行う必要があります。

なお借地権に関わる登記ですが、借地権登記がされている場合は地主への所有権移転登記を行います。借地権登記がされていないときは、特に必要ありません。借地権者は建物の所有権登記をもって第三者に借地権を対抗できるので、実務上は借地権登記をしていないケースがほとんどです。

また、建物は不動産取得税(土地や建物を取得した際に、取得者に対して課される税金)の課税対象です。後日納税通知書が郵送されてきますので、期日までに忘れずに納付しましょう。

地主が借地権買取をする相場

借地権の買取を検討している方の中には、所有する土地の借地権を買い取るにはいくら必要なのか知っておきたいという方もいるでしょう。ここでは借地権の相場と、一般的な計算方法について見ていきます。

相対取引なので相場は事実上ない

借地権の買取価格には、明確な相場が存在しません。その理由は、借地権の売買が相対(あいたい)取引によって行われるためです。

相対取引というのは、価格などの取引条件を、売主と買主が直接話し合って決定する取引のことを指します。不動産売買はもともと相対取引ですが、特に借地権の売買においては、立地や地主の買取に対する意向の強さなど、個別の事情が大きく影響する傾向にあります。

借地権の売買事例自体が少ないという点も、相場が事実上存在しないとされる理由です。

土地評価額に借地権割合をかけたものが基準

取引相場がないとはいえ、価格交渉の際の基準が全くないというわけではなく、一般的には下記の計算式を基に算出した金額を基にします。

更地の土地の評価額×借地権割合

価格交渉の際に重要になるのが借地権割合です。

借地権割合というのは、相続税路線価(相続税額の算出時に用いられる土地の価格)に記載されている、借地権の割合を示す数字のことです。国税庁のホームページで公開されている「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認でき、土地ごとに30〜90%の間で設定されています。

借地権買取価格の目安は上記の計算式で求められますが、実際の現場では対象となる土地の個別事情も考慮されます。抵当権設定の有無や立地、地代の価格などによっても変動するという点は押さえておきましょう。

地主に借地権を買い取る資金がない場合

借地権の買取には多額の資金が必要なため、場合によっては自己資金だけでの買取が難しいケースもあります。資金が足りない場合は、金融機関の融資を利用する、あるいは底地と借地権を等価交換するという方法も検討しましょう。

金融機関の融資を利用する

不動産の購入時の資金調達としてまず思い浮かぶのが、金融機関から融資を受ける方法です。金融機関が取り扱っているローン商品には、住宅ローンと不動産投資ローンの2種類があります。

住宅ローン

住宅ローンは、ローン契約者自身が住む住宅を建てる、または購入する場合に利用できるローン商品です。

借地権買取の場合は、自宅を建てる目的で借地権を買い取る場合、あるいは合わせて買い取る建物を自宅として利用する場合に限られます。

更地の状態で借地の引渡しを受ける場合、借地権の買取から自宅を新築するまで期間が空くこともあるでしょう。その場合は、建物部分が完成していない状態で利用する「土地先行融資」や、住宅ローンの融資実行までのつなぎとして利用する「つなぎ融資」という選択肢もあります。

金融機関によって扱っている住宅ローンの種類が異なるため、利用を検討している場合は早めに相談に行くことをおすすめします。

不動産投資ローン

自宅以外の用途を目的として借地権を買い取る場合に利用できるのが、不動産投資ローン(アパートローン・事業ローン)と呼ばれるローン商品です。

具体的な用途としては、マンションやアパートを建築して賃貸経営をしたり、駐車場として経営したりといったケースが該当します。

不動産投資ローンはその名のとおり、収益不動産を対象としたローン商品のため、審査時には担保となる不動産の収益性が重視されます。住宅ローンと比較して審査基準が厳しく、金利も高く設定されていることがほとんどのため、利用する場合は入念な資金計画やシミュレーションを行う必要があります。

不動産投資ローンも住宅ローンと同様、金融機関によって融資限度額や金利、返済期間などが異なるため、必ず複数の金融機関を比較して自分に合ったものを選びましょう。

底地と借地権を等価交換する

借地権の買い取り資金がない場合の対策としては、底地と借地権の等価交換もあります。分割した底地の一部を借地権者に譲渡する代わりに、借地権の一部を返還してもらうという方法です。

底地と借地権を等価交換するメリットは、地主と借地権者の双方が土地の完全所有権を得られるという点にあります。土地の所有者と借地権者が異なる土地は、活用法に制限があるため売却時に不利になるケースが多いですが、等価交換により完全所有権を得ることで、スムーズに高値で売却できるようになります。

また、原則として等しい価値の底地と借地権を交換するため、現金を用意せずに取引を行えるという点も大きな利点と言えます。

交換する割合は土地の評価額などから算出した価格を基に、借地権者と地主で協議して決定します。

地主が借地権を買い取って土地の有効活用を

借地権を買い取り完全な所有地となれば、さまざまな用途で土地を有効活用できます。

ここでは土地の活用法として多くの方が検討される、賃貸アパート・マンション、戸建て賃貸住宅、駐車場経営に焦点を当てて、メリットとデメリットについて解説します。

なお、下記のページでは不動産投資に関する記事や、不動産売買のさまざまな改善事例をご覧いただけます。あわせてご活用ください。

■不動産投資・収益物件関連のコラム・売買事例
不動産投資の関連記事

売買の改善事例・お客様の声

賃貸アパート・マンション

土地活用の王道とも言えるのが、マンションやアパートを建設して賃貸経営を行うという方法です。

マンションやアパートを建てるメリットは、何といっても安定した賃料収入を得られるという点にあります。運用開始からしばらくの間は、建設費用の回収がメインになりますが、将来的には安定した不労所得を得られるようになるのは大きな魅力でしょう。

その他のメリットとしては、インフレに強い現物資産を手に入れられる点や、固定資産税の軽減措置が適用される点、相続税対策ができる点などが挙げられます。自宅としての住居を建てるよりも、マンションやアパートを建てた方が節税効果は高いということは押さえておきましょう。

ただし、空室が埋まらず家賃収入が得られなくなったり、建物の修繕のために多額の支出が発生したりといったリスクがあるということも理解しておく必要があります。こうした賃貸経営のリスクに備えるためにも、下記に挙げる『4つの空室対策』を行うことが重要です。

・入居者募集対応
・仲介対応
・管理対応(入居者管理・建物管理)
・設備、工事対応

信頼のできる賃貸管理会社を見つけることが、マンション経営・アパート経営には不可欠と言えます。
『4津の空室対策』や空室対策については以下の記事や改善事例で詳細をご紹介しています。あわせてご活用ください。

■空室対策・賃貸管理の関連記事
空室の原因を解決する『4つの空室対策』とは?14種類の手法を徹底解説!

空室対策 賃貸経営の関連記事 一覧

■空室対策の改善事例
空室対策の改善事例・お客様の声 一覧

5-2 戸建て賃貸住宅

賃貸経営を行うのであれば、戸建て住宅を建築して貸し出すという方法もあります。

戸建て賃貸住宅を建てるメリットとしては、駅から離れた立地の土地でもニーズがある点が挙げられます。戸建て住宅のターゲットとなるファミリー層は、駐車場を確保でき、かつ居住面積の広い物件を求める傾向にあるためです。

マンションやアパートは主に単身者がターゲットで、入退去のスパンが短い傾向にあります。ファミリー層は一度入居すると長い期間住み続けてもらえるため、より安定した家賃収入を見込めるという魅力があります。そのぶん一戸のみの所有では空室リスクが高まるということは、理解しておく必要があるでしょう。

また、空室が発生した際のメンテナンス費用やリフォーム費用が高額になる点はデメリットです。マンションやアパートと比較して賃貸面積が大きいため、経年劣化部分や通常使用による摩耗の修繕であっても費用がかさむ傾向にあります。間取りの変更や屋根・外壁・基礎部分の修繕などが発生すると、さらに一度に多くの費用が必要になるため注意が必要です。

駐車場経営

建物を建てるほかにも、月極駐車場やコインパーキングとして経営するという活用法もあります。

駐車場経営を選択するメリットとしては、少ない初期費用で始められる点が挙げられます。マンションや戸建て住宅を建てるには多額の資金が必要で、多くの方が資金調達のために住宅ローンや不動産投資ローンを利用します。その点駐車場経営は、アスファルト舗装や車止め・料金収受機の設置などの費用を確保できれば始められるため、銀行の融資を利用する必要がない方も多くいます。

建物が建っていないということは、土地をほかの用途に転用したくなった場合でも、すぐに切り替えられる点は魅力です。その代わり、固定資産税や都市計画税の優遇措置が受けられないため、税金の負担が多くなります。

また、投資額が少なく賃料が低いということは、マンションやアパートと比較して高い収益は見込めないということです。ローリスク・ローリターンの投資手法ということを理解したうえで検討しましょう。

■土地活用・駐車場経営 資産活用の関連記事
駐車場経営・コインパーキング関連記事 一覧

■土地活用・駐車場経営 資産活用の改善事例
駐車場経営・コインパーキングの改善事例 一覧

まとめ

借地権が設定されている底地は、地主にとって不利益になる場面が少なくないのが実情で、そのまま相続すると相続人にかえって迷惑をかけてしまいます。

所有する土地が賃貸需要の高い場所にある場合は、借地権を買い取って有効活用したほうが、長い目で見て大きな利益になることもあります。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。