【地主必見】借地権の種類と概略、底地の制限や問題点を徹底解説!

2024.05.14

現在所有している土地が「底地」になっているため、悩んでいる地主が多くいます。底地とは、借地権が設定された土地のことを指します。

借地権が設定された土地には、借地人が持っている借地権と地主が持っている底地権の2つの権利が存在するため、権利関係が複雑になりがちです。

地主が土地をできるかぎり有効に活用していくためには、借地権についての正確な理解が必要不可欠です。これから底地を相続することが予定されている人も、底地の問題点についてしっかり理解しておくことが大切です。

この記事では借地権の種類と概略、底地の制限や問題点について詳しく解説していきます。

借地権の種類

借地権とは、「地主から土地を借りた借地人が借りた土地の上に建物を建てられる権利」のことです。借地権は、あくまでも建物を建てる目的で貸し出した場合にのみ借地人に付与される権利のため、駐車場や資材置き場として貸し出した土地には借地権は発生しません。

借地権には「地上権」と「賃借権」の二つが含まれ、以下のような違いがあります。

借地人に対して地上権を与えると、地主が不利になってしまうため、土地を貸す際には借地権のうち賃借権を設定するケースがほとんどです。

また、2024年現在は借地借家法によって借地権が規定されていますが、旧法の借地法が適用される場合もあります。賃貸借契約を結んだ時期によって適用される法律が異なるため、どれにあたるのかあらためて確認しておきましょう。

旧借地法

1992年8月1日以前に賃貸借契約を結んだ土地については、旧借地法が適用されます。旧借地法によって定められた借地権は、「旧法借地権」とも呼ばれます。

旧借地法における借地権には、おおまかに以下のような特徴があります。

・借地上に建物があり借地人が利用している場合、地主が拒否をする正当な事由がなければ借地権は更新され続ける

・鉄骨や鉄筋コンクリートなど堅固な建物を建てる目的の場合には、借地権の存続期間が最長60年となる

・建物再築に対して地主の異議がなければ借地権の期間が延長されてしまう

旧借地法では「土地を一度貸したら戻ってこない」などと呼ばれるほど、借主である借地人の権利が強くなっているといえます。

借地借家法

1992年8月1日以降に賃貸借契約を結んだ土地については、借地借家法が適用されます。借地借家法における借地権には、「普通借地権」「一時使用目的の借地権」「定期借地権」の3種類があります。

さらに、定期借地権は3つに分類できるため、整理すると以下のように5つの借地権があるといえます。

①普通借地権
②一時使用目的の借地権
定期借地権③一般定期借地権
④事業用定期借地権
⑤建物譲渡特約付き借地権

これら5つの借地権の違いについて、それぞれ簡単に解説していきます。

普通借地権

普通借地権とは、旧借地法における借地権と同様に、借地人が建物を利用しているかぎりは更新し続けられる権利です。

普通借地権がついている土地は、契約期間が決まっているとはいえ、更新をし続けることで事実上は半永久的に借地人が借り続けられるという特徴があります。

契約期間は、建物の構造には関係なく以下のように決まります。

契約当初30年間
1回目の更新20年間
それ以降の更新10年間

普通借地権がついている物件の契約を地主側から解除する場合には、借地人が地代を長期間滞納しているなどの正当な事由が必要となります。

一時使用目的の借地権

一時使用目的の借地権とは、その名のとおり一時的な使用を目的として土地を借りた際の借地権のことです。

一般的には、土地を借りる借地人が不利な立場に立たされないように、借地借家法によってさまざまな規定が定められています。ただし、借地の利用実態が、一時的な使用が目的であると明らかな場合には、借地借家法による借地人保護規定が適用されなくなります。

例えば、普通借地権においては当初の契約期間は最低でも30年間と定められていますが、一時使用目的の場合は数年程度の契約でも可能となります。一時使用目的と認められるのは、「臨時設備の設置その他一時用のために借地権を設定したことが明らかな場合」と借地借家法25条によって定められています(※)。

具体的には、借地人が以下のような建物を建てた場合には、一時使用目的であると認められます。

・イベントや催事のための簡易的な建物
・仮設店舗
・建築工事のための臨時的な事務所・資材倉庫など

また、賃料が相場よりも安い、賃貸借契約の期間が数年と短いなどの場合にも、一時使用目的とみなされる場合もあります。

※ 出典:e-Gov 借地借家法

一般定期借地権

一般定期借地権は、現行の借地借家法によって定められた、契約更新ができない借地権です。契約期間を50年以上として土地を貸し出す場合には、一般定期借地権が適用されます。

一般定期借地権が設定された土地は、契約期間が満了した後には更地にして地主に返すことが義務付けられています。普通借地権とは異なり、以下のような特約を書面にて定める必要があります。

・契約の更新をしない
・建物の改築による契約期間の延長を認めない
・契約満了時に地主に対して建物の買取請求をしない

ただし、借地人と地主双方の合意があれば、契約が満了した後に、借地契約を再び締結するという形で土地を貸し続けることもできます。

一般定期借地権では、建物の使用目的に制限がないという点も特徴です。

事業用定期借地権

事業用定期借地権は、「専ら事業の用に供する建物」を建設するために土地を借りる場合に設定される定期借地権です。専ら事業の用に供する建物とは、店舗や事務所、倉庫などを指します。

賃貸物件としてアパートやマンションを建設する場合は、借地人からすれば事業用の建物ともとれますが、法律上アパートなどは居住用の建物にあたるため事業用定期借地権は適用できません。

事業用定期借地権における契約期間は、10年以上50年未満で設定ができます。

ただし、契約期間が「10年以上30年未満」か「30年以上50年未満」によって、以下のように契約に関する特約の扱いが異なる点に注意してください。

一部例外として、50年以上の契約期間で借地にしたい場合には、事業目的であっても一般定期借地権を設定する必要があります。また、事業用定期借地権が設定される場合には、一般定期借地権とは異なり、公正証書によって契約をしなくてはいけません。

建物譲渡特約付き借地権

建物譲渡特約付き借地権とは、契約期間満了後に、地主が建物を相当の対価で買い取るという特約を付けた借地権です。

契約当初に「契約後30年以上が経過した時点で、借地上の建物を相当の対価で地主に譲渡する」という旨の特約を結ぶことで、建物譲渡特約付き借地権が認められます。

建物譲渡特約付き借地権は、一般定期借地権などにオプションとして付け加える形で契約を結ぶこともできます。

引用:「定期借地権の法的整理」国土交通省

借地の建物を買い取るかどうかを判断する権利は地主にあるので、「買い取るつもりだったけど建物が劣化しているため断りたい」などの理由で買取を断ることも可能です。

地主が建物を買い取った後も借地人が建物を利用したいという場合には、新たに借家契約を結んで借地人に建物を貸し出す形になります。この際には、定期借家契約として期限を定めることもできるので、借地人にはいずれ退去してもらいたいと考えている地主にとっては好都合と言えます。

補足として、建物譲渡特約は書面などで特約を締結する必要はなく、口頭の約束でも成り立ちますが、将来のトラブルを防ぐために文書の形で残しておきます。

底地権とは

冒頭で述べたように、借地権が設定された土地を底地と呼びます。底地権とは、底地の持ち主である地主が持っている所有権のことです。

本来の所有権では、地主はその土地の利用権も持っているはずですが、借地権が設定されている土地については借主である借地人が、土地の利用権を持っていることになります。土地全体の権利から、借地人が持っている借地権を差し引いた権利が底地権となります。

底地権を持っている地主は、借地人から地代(賃料)を受け取れる権利や、契約更新の際に更新料として一定の金銭を受け取れる権利を持っています。

また、借地人が他人に借地権を売り渡すこともできますが、その際には地主の承諾が必要になり、承諾料として金銭を要求できます。このように、底地権とは借地人から利益を受け取れる権利でもあります。

地主にとって底地はさまざまな制限がある

自分の所有している土地を底地にすると、土地に関する権利を借地人と分け合うことになります。1992年8月の法改正によって借地人の権利が少しは弱くなったとはいえ、依然として借地人にとって有利な制約が多いのも事実です。

地主にとって、底地には以下のような制限があります。

・収益性が低い
・土地を自由に活用できない
・売却が難しい
・貸したまま帰ってこない
・借地人とトラブルになる
・融資の際の担保価値が低い

それぞれ簡単に解説していきます。

収益性が低い

底地は、賃貸アパート・マンションやオフィス・店舗、駐車場などほかの収益物件と比較すると収益性が低いといえます。

底地から得られる利益は、借地人から受け取る地代と更新料がほぼすべてで、地代などの金額は借地人と地主の間の合意によって決まります。

ほかの収益物件と比べると、一般的に地代は極めて低く、どうしても収益性が低くなってしまいがちです。

土地を自由に活用できない

地主は底地権を持っているため、底地から一定の収益を得ることはできますが、土地自体を利用する権利は借地人にあります。

底地に建物を建てて、自分で居住したり収益物件として利益を得たりする権利を持っているのは、借地権を持っている借地人です。

自分の所有している土地を底地にしてしまうと、自分の目的に合わせて自由に土地を活用できなくなってしまうのです。

売却が難しい

自分の所有する土地を一度底地にしてしまうと、不要になった際に売却をするのにも苦労する恐れがあります。

国土交通省「2021年土地保有・動態調査」からも分かるとおり、土地を購入する人のほとんどは、購入した土地に建物を建てて自分で活用することを目的としています(※)。しかし、底地を購入したとしても、土地を利用する権利は元から借地権を持っている借地人にあるため、購入者が自分で土地を自由に活用することはできません。

購入者が土地を利用できない底地には買い手が付きづらいため、売却することも難しいと言えます。仮に買い手が見つかったとしても、借地人がすでに建物を立てていることもあり、更地として売却するよりも大幅に安く買い叩かれる可能性が高いです。

借地権を持っている借地人に底地を買い取ってもらうという選択肢も考えられますが、このまま借り続けられればいいという方も一定数いるため、やはり売却は難しいでしょう。

底地を売却したい場合には、不動産買取に対応している専門家への相談を検討しましょう。不動産買取については、以下の記事を参照してください。

■投資用不動産・収益物件の売買に関連する記事
不動産買取で利益を生む方法とは?後悔しない買取と仲介の選択を

※ 出典:国土交通省 2021年土地保有・動態調査(2020年取引分)

貸したまま返ってこない

旧借地法や、借地借家法の普通借地権が適用されている底地については、借地人が半永久的に土地を借りることができます。旧借地法や借地借家法の普通借地権は、借地人の権利を保護する法律です。

一度土地を底地にして貸し出してしまうと、地主からの明渡し要求は事実上不可能ともいえます。

借地人とトラブルになるリスク

土地を底地として貸し出すと、一つの土地について借地人と地主の2者がそれぞれ権利を持つことになります。

土地自体の所有権は、地主が底地権として持つことになりますが、土地を自由に活用できるのは借地権を持っている借地人だけです。

そういった立場の違いから、地主と借地人の間では、以下のようにさまざまなトラブルが起こるリスクがあります。

・借地人が地代や更新料を滞納する
・借地人が地代の値上げ要求に応じてもらえない
・地上権を持っていない借地人が勝手に建物を改築した
・借地人が地主に無断で借地権を譲渡・売却した など

借地人とのトラブルを防ぐためには、土地の利用状況などに関して綿密にコミュニケーションをとって良好な関係を築く必要があると言えます。

融資の際の担保価値が低い

通常の土地やマンションなどほかの不動産と同様に、底地を担保として融資を受けることが可能です。

しかし、底地は借地人が建物を立ててしまっているため売却価格が低くなりやすく、それにともなって担保としての評価も低くなる傾向があります。

万が一未払いが起きた際にも、借地権によって権利関係が複雑になっているため土地を回収するのが難しく、底地を担保とした融資は銀行から敬遠されやすいといえます。

まとめ 底地を活用するには専門家の知恵を借りよう

土地を底地として貸し出した際には、借地人に土地を自由に活用する権利を与えることになるため、トラブルが起こるリスクがあります。

また、借地権が設定されている底地にはさまざまな制限があるため、底地を有効的に活用するには専門家の力添えが必要になります。

【リロの不動産】は、底地を所有している地主の顧客ネットワークを保有しているため、底地の有効活用・売却などにも力を発揮します。

底地の活用・売却・相続などに悩んでいる地主は【リロの不動産】にぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。