大規模修繕工事はアパート・マンションになぜ必要?工事内容と費用を把握【総集編】

2022.12.28

アパートやマンションなどの賃貸不動産を所有していると、将来的に対応が必要になることのひとつに大規模修繕があります。新築アパートやマンションでも、当然ながら時間の経過とともに建物や設備が劣化するのは避けられません。

この記事では、アパートやマンションになぜ大規模修繕が必要になるのか、理由はもちろん、工事内容や概算費用など詳しく解説します。大規模修繕を進めるための手順も説明しますので参考にしてください。

目次

国土交通省のガイドラインによる大規模修繕の定義は?

建物を建築するときや増築、改築などを行うときは、建築基準法や消防法などの規定に適合しているか確認申請が必要になります。大規模修繕でも同じように、法律上の手続きを踏まなければなりません。

大規模修繕と聞くと、漠然と規模の大きい工事だとイメージしている方もいるでしょう。法律上では、大規模修繕の定義が以下のように定められています。

建築基準法では、「修繕する建築物の部分のうち、主要構造部(壁、柱、床、は り、屋根又は階段)の一種以上を、過半(1/2超)にわたり修繕すること」が大規模修繕に該当します。

まずはマンション・アパートに大規模修繕が必要な理由を2つ挙げるとともに、修繕と改修の違いについても詳しく解説します。

建物や設備の劣化部分を定期的にメンテナンスするため

大規模修繕が必要になる大きな理由のひとつは、建物や設備の経年劣化に対する対策です。マンションやアパートも形のある実物資産である以上、時間の経過とともに劣化するのは避けられません。どれだけいい建築資材を使っていても限界があります。

鉄製部分の塗装がはがれて錆びが発生する現象は、目に見えやすい劣化の具体的な例です。海が近い沿岸部では塩害の影響も受けるため、定期的な修繕の間隔は短めになります。常に紫外線にさらされ、雨風を受ける外壁や屋根も、徐々に塗装のはがれやひび割れなどが発生し、年数が経過するほど汚れや傷みが目立つようになってきます。

毎日稼働し続けているエレベーターは安全にも関わるため、定期的な点検を実施するのはもちろん、状態によってはリニューアルも視野に入れなければならないでしょう。給排水管や廊下・階段、フェンスや機械式駐車場など、さまざまな共用部分も劣化部分は定期的なメンテナンスが必要になります。

アパートやマンションなどの収益物件は、満室の状態を最小限のコストで維持することが求められます。外観の見た目は入居希望者様をご案内する際の心象にも影響が出るため客付けに影響が出ます。競合物件より明らかに見劣りする場合は、できるだけ避けたい賃料減額に踏み切らなければならない場合もあるでしょう。

お部屋を守る建物の躯体が不健康な状態のまま放置されると、予期せぬ大型の修理費用が発生します。売却する際や融資の増額を検討する際も資産価値が低いと判断され、希望が通らない可能性が高まります。節税に活用できる要素もあるため、大規模修繕は計画的に、適切な時期に、適切な対応を、実態を考えながら実施することが大事です。

マンション・アパートの資産価値が急落するトラブルを防ぐため

中古マンションや中古アパートを売買する際、重要事項説明では維持修繕履歴があるときは、購入者に対して情報を告知することが義務づけられています。具体的な内容としては、これまでの大規模修繕の有無や実施内容、修繕計画や修繕の履歴、将来の予定があるのかなどです。

大規模修繕はマンションやアパートの資産価値を守るために、重要な役割を担っています。劣化部分を放置したままにしていると見た目が悪くなるのはもちろん、設備故障や雨漏りなどのトラブルを招くリスクがあります。イメージも悪くなり、入居者様を獲得しにくくなるだけではなく、二次被害など悪影響が広がる事態にもなりかねません。

マンションの購入を検討しているならば、管理組合や賃貸管理会社が把握している工事内容や工事してくれる企業の提案内容などをチェックすることが大切です。アパートなどの収益物件の場合は、賃貸管理会社との契約やサブリース契約時の内容に大規模修繕が含まれているかどうか確認してください。

マンション・アパートの「修繕」「改良」「改修」の違い

「修繕」と「改良」と「改修」は似ているようで内容が違います。修繕は劣化や不具合が発生した建物や設備に対して修理や取替などを施し、支障なく使える状態にまで回復させることです。

一方で、修繕だけではなく、建物や設備の性能・機能をグレードアップさせる工事も加えた工事を「改修」と称しています。。適切な時期に適切な大規模修繕をするためには、運営実態を把握し、信頼ができる賃貸管理会社や管理組合と連携することが重要です。

マンション・アパートの大規模修繕費の見積もりはいくら?

実際に大規模修繕を行うことになったとき、どれくらいの費用がかかるのか気にかかるところでしょう。マンションやアパートを所有していれば、いつかは必要になる費用です。

次に大規模修繕にいくらかかるのか、規模ごとの比較と内容ごとの比較を解説します。修繕積立金についても説明しますので、押さえておきましょう。

マンション・アパートの規模ごとの比較

大規模修繕にかかる費用は、規模によって違ってきます。国土交通省ではマンションの大規模修繕について、「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を発表しています。

アンケートを取った2021年から直近3年間の調査では、1戸あたりの工事金額は100~125万円の範囲が最も多い結果でした。次いで75~100万円となっており、2つの範囲でほぼ半数です。大規模修繕の回数ごとの平均値も算出されており、1回目の平均値は151.6万円、2回目の平均値は112.4万円、3回目以上の平均値は106.1万円になっています。

調査の平均値をもとに、大規模修繕にかかる費用を想定してみましょう。例えば戸数40戸の小規模マンションの場合、1回目は6,064万円、2回目は4,496万円、3回目以上は4,244万円程度になります。

戸数200戸の大規模マンションの相場は1回目がおよそ3億320万円、2回目が2億2,480万円、3回目以上は2億1,220万円です。大規模マンションの工事費用は億を超える場合が多いため、大規模修繕に向けて費用を積み立てておく必要があります。木造アパートは鉄筋コンクリート造などのマンションに比べると費用は抑えられますが、外壁や屋根の塗り替えをともなう大規模修繕は1棟250万円程度かかります。

※2022/12月時点での、目安となる概算費用となります。
※実際の金額は条件により変わります。

修繕工事の内容ごとの比較

大規模修繕で行われる工事内容を大別すると、①防水工事。②外壁工事。③仮設工事。④設備工事の4種類になります。各工事でどのくらいの費用が必要になるのか、戸数50戸以下の小規模マンションと100戸以上の大規模マンションに分けてみていきましょう。

防水工事は一般的に10~15年前後でメンテナンス時期を迎えるため、1回目の大規模修繕で実施されることが多いでしょう。費用は小規模マンションで600~800万円、大規模マンションで3,000~4,000万円程度です。

外壁工事も大規模修繕では中心となる工事で、小規模マンションは700~1,000万円、大規模工事で3,500~5,000万円ほどになります。ただし、建物の形状や窓の数、建物の大きさなどで費用に差が出る工事です。

大規模修繕を行うにあたっては、足場を組むなど仮設工事もしなければなりません。仮設工事には小規模マンションで600~800万円、大規模マンションで3,000~4,000万円程度となり、防水工事と同程度の費用がかかります。

給排水設備をはじめとした設備工事は、小規模マンションで100~200万円、大規模マンションで500~1,000万円ほどです。アパート経営でも、マンションと同じくらいの周期で大規模修繕をする必要があることを考慮しておきましょう。

大規模修繕のための「修繕積立金」

大規模修繕は規模の大きいマンションになると、億を超える費用が必要になります。将来工事で必要になる費用をカバーするために、日常的な修繕に使われる管理費とは別に、区分所有者から徴収して積み立てているのが「修繕積立金」です。賃貸経営を実施している場合は、入居者様から徴収する管理費などの収入から、所有者が修繕積立金を支払う流れになっています。

通常、分譲マンションでは長期修繕計画で工事の計画を建てるとともに、予測した費用をもとに修繕積立金の額を設定しています。積み立て方式は期間中、均等な額で積み立てる「均等積立方式」と、段階的に増額していく「段階増額積立方式」の2種類です。

ただし、修繕費の不足が見込まれる場合もあります。その際には、一時金として追加徴収を求められることや、修繕積立金にイレギュラーな増額があると、収支計画が変わるためトラブルに発展することもあります。

賃貸マンションや賃貸アパートでは、そもそも修繕積立金の項目はありません。しかし、将来的に大規模修繕が必要になるのは間違いないため、賃料や管理費として徴収した中から所有者が自分で積み立てるか、賃貸管理会社がかわりに積み立てを行います。

大規模修繕工事の周期は?タイミングと時期の目安

一般的にマンションでは、12年周期で大規模修繕が実施されています。12年の間隔で行われることが多いのは、国土交通省が公表している「建築基準法に関する施行規則」や「長期修繕計画作成ガイドライン」で示される修繕周期の例が理由です。

特にタイルや石貼り、モルタルなどの外壁塗装は10年経過して改修工事や全面打診調査を行っていない場合、3年以内に全面打診調査や修繕を行う必要があるとガイドラインで示されています。屋上防水や床防水なども、補修や修繕の目安は12~15年です。

目安がもう少し長い箇所もあるものの、貯水槽は12~16年、エレベーターは12~15年、自走式駐車場は8~12年など、12年程度で修繕が必要になる箇所があります。劣化によるトラブルや事故を防ぐためにも、国土交通省の通告を参考に12年程度を大規模修繕の目安として計画が作成されています。

築年11~15年目:第1回の大規模修繕工事

部位や設備によってメンテナンス時期が違うこともあり、1回目と2回目では大規模修繕の工事内容が多少異なります。1回目の大規模修繕では、特に全面打診調査が必要とされる外壁塗装や屋上防水などが必須項目として重点的にみられます。

エントランスや廊下・階段、集会室をはじめとした共用部分、ベランダなども12~15年が修繕周期の目安とされているため、1回目の大規模修繕の対象になります。

錆が発生しやすい鉄部の塗装も対象になります。ただし、雨がかかるような場所にある鉄部では劣化の兆候が早めに現われるため、1回目の大規模修繕の時期を待たず、5~7年でも塗装や修繕が必要になる場合があります。

電灯設備やテレビ設備、インターフォン、消火栓などの取替目安は12年よりも少し長いですが、2回目の大規模修繕までに取替時期がくることを考慮し、多くは1回目に合わせて実施されます。ほかにも機械式駐車場や車道、歩道、植栽などの外構まわりも12~15年での修繕が必要とされているため、1回目の大規模修繕の対象候補に挙がります。

築年21~25年目:第2回の大規模修繕工事

築20年を過ぎた時期に実施される2回目の大規模修繕は、1回目に比べてより踏み込んだ工事が必要です。雨風にさらされ、紫外線の影響を受け続ける建物は、年数が経つほど劣化が進むことも関係しています。

建てられてからまだ10年過ぎの1回目では、ほぼ基本的な内容のメンテナンスだけで十分です。2回目は1回目からさらに10年以上が経過しているため、これまで塗装や修繕を行ってきた鉄製部分や外壁・屋根の塗装、屋上防水なども、すでに新たなメンテナンス時期を迎えるでしょう。

1回目に工事を行った電灯設備やテレビ設備、インターフォン、消火栓のほか、エントランスや集会室、機械式駐車場などの共用部分や外構まわりは、2回目の大規模修繕でも対象です。

外部環境の影響を直接受けない内部の設備も、取替時期にさしかかっていることが多くなります。例えば給水管や雑排水管なども20年前後が修繕周期だとされており、給水ポンプや雨水排水ポンプと合わせて大規模修繕で対応します。

築年31~40年目:第3回の大規模修繕工事

築30年以上が経過すると、さらに経年劣化の進む箇所が増えます。1回目や2回目でも修繕の対象に入っていた鉄製部分や外壁・屋根の塗装、屋上防水、エントランスや廊下・階段、電灯設備やテレビ設備などの共用部分も、もちろん修繕が必要です。

ただし、外壁塗装などの場合、1回目や2回目では上に塗り重ねるだけで大丈夫でしたが、3回目以降の大規模修繕になると、一旦塗膜を剥がして塗り直す工事をしなければならない可能性があります。根本的な対応が求められる分、工事は大掛かりになりやすいです。

また、2回目までは補修や取替の必要がなかった電気設備や配水管、玄関ドアやサッシ、手すりなどの工事も対象になってきます。

さらに、建築してから時間が経つと、社会の変化で住宅水準が向上し、求められるものが変わることも珍しくありません。大規模修繕の回数を重ねるたびに改良を加える工事が増えるケースも多く、バリアフリー設計など新しい基準にグレードアップする場合もあります。

大規模修繕の流れ(マンション・アパートの例)

マンションやアパートの大規模修繕では、進め方が2種類あります。大規模マンションの場合は大規模修繕の予定時期前に、理事会とは別に管理組合の中で「大規模修繕委員会」を発足させます。大規模修繕委員会は修繕積立金を支払っている区分所有者であれば誰でも参加資格があり、大規模マンションでは多くなっている方法です。

一方で中規模以下のマンションでは、マンションの管理組合の中に組織される理事会の主導で大規模修繕が進められます。理事会はマンションの管理を委託している賃貸管理会社と相談しながら進めていきます。

賃貸経営をしている1棟マンションや1棟アパートでは、入居者様は区分所有者ではなく、あくまでも借主です。そもそも分譲マンションのようにマンション管理組合や理事会などが存在せず、大規模修繕を行うにあたって大規模修繕委員会を発足させることもありません。

大規模修繕の基本的な流れは中規模以下のマンションと同様ですが、賃貸管理会社に相談しながらオーナー様が行うことになります。。入居者様には工事中、何かと迷惑をかける可能性もあるため、大規模修繕の予定があることを告知する必要があります。

今回は、大規模修繕委員会を発足させる場合の流れを解説していきます。

1:大規模修繕委員会を立ち上げる

マンションの管理組合にとって大規模修繕は十数年に一度のものですが、実際には最低でも2~3年前から期間をかけて計画を進めます。そこで大規模修繕のための特別チームとして、立ち上げるのが大規模修繕委員会(専門委員会)です。

マンションの管理や運営業務の中には専門性の高い内容を含んでいるものもあり、理事会に意見を進言できる諮問機関として大規模修繕委員会のような専門委員会を組織できます。修繕委員会は区分所有者から有志のメンバーを募り、理事会決議によって設置されます。

大規模修繕委員会がなくても大規模修繕自体は行えますが、任期が1~2年程度の理事会では負担が大きく、時間的にも限界があるでしょう。大規模修繕の計画を進めている途中で理事会が交代してしまうと引き継ぎなども大変ですが、専門のチームを立ち上げることで計画から完了まで一貫して業務に取り組むことが可能です。

理事会から意見を求められれば随時検査して結果を報告するなど、お互いに連携して大規模修繕を進めていくことになります。

2:劣化状況を把握するための建物調査

適切に大規模修繕を実施するためにも、まずはマンションの劣化状況や建物および設備の特性を把握する建物調査を行います。実際に建物調査を行うのは、建設会社やマンション施工会社、大規模修繕を専門に取り扱うコンサルタント会社などです。どこに調査を依頼するのかを決めるのも、大規模修繕委員会の役目ですが一般的にはなじみがないので、修繕計画に記載のある業者や賃貸管理会社の伝手を利用してパートナーを選定します。

大規模修繕が目的の調査では、壁面や屋上、ベランダや共用部の立ち入れる範囲で目視・打診調査を行い、雨漏りや水漏れ、ひび割れや塗装の剥がれなどの劣化状況を調査します。加えてコンクリート中性化深度試験、シーリングダンベル物性試験、タイルや塗装面などの仕上材付着力強度試験なども建物全体の状況を知るためには大切な項目です。

調査した内容を集計・分析して建物調査診断報告書にまとめられ、管理組合への報告や説明の場が設けられます。その後は調査の結果や具体的な修繕内容の提案などを踏まえたうえで、大規模修繕の予算を見積もります。

3:大規模修繕の方針を決めたら見積もりの依頼

調査結果が出れば、建物がどのような状態にあるのか見えてきます。次は調査結果を参考にしながら、具体的に大規模修繕の実行方針を定め、計画を立てる段階です。マンションによっては、すでに将来を見据えて長期的な大規模修繕計画を策定しているところもあります。

大規模修繕計画がある場合は、基本的に計画をもとにして方針を決めていきます。ただし、現状が計画内容どおりになっているとは限らないため、調査結果を参考にしながら工事内容や予算を話し合う必要があるでしょう。

計画を詰めていく段階で、資金が足りないなどのトラブルが発生することがあるかもしれません。資金不足が明らかになった場合は、ここで一旦再検討してください。大規模修繕自体は避けて通れないため、内容を見直すか、一時金を追加で徴収しなければならない場合もあるでしょう。

方針を正式に決定するためには、区分所有者の合意を得なければなりません。大規模修繕委員会が管理組合総会を開催して方針が決定したら複数の施工会社から見積もりを取り寄せ、最終的に正式な見積もりを依頼します。

4:大規模修繕の施工会社を選定する

複数の施工会社からの提案が集まったら、大規模修繕委員会が提案内容と見積もりの金額を精査します。大規模修繕は費用が高額になるため抑えたいところですが、建物の性能や資産価値を維持することも大切です。施工会社を選定する際は、実績を確認するなどクオリティの高い仕事をしてくれるのかどうかを確認しましょう。

区分所有者の協力なしに大規模修繕は実施できないうえ、関連する業者とも連絡を取り合う必要も出てきます。そのため、円滑なコミュニケーションが求められることもあるでしょう。多忙で時間の確保が難しい場合もあるため、賃貸管理会社やコンサルに関係各社の取りまとめを依頼するのも一考の余地があります。

区分所有者の有志で構成される大規模修繕委員会には、専門的な判断ができる方がいるとはかぎりません。トラブルを防ぎ、工事をスムーズに進めるために、大規模修繕について知見のある専門家の力を借りて施工会社を選定するのも方法のひとつです。

依頼先が決まったら、区分所有者の賛成を得るためにも、どのような基準で選んだのかを説明する必要があります。大規模修繕の規模によって議決に必要な賛成者数は異なり、共用部分の工事だけなど軽微な変更では過半数ですが、重大な変更を加える場合は4分の3以上の賛成が必要です。

5:工事計画に沿って大規模修繕工事を実施

正式に施工業者と大規模修繕の請負工事契約を交わしたら、いよいよ工事が始まります。大規模修繕は施工会社やコンサルタント会社などが作成した工事計画をもとに行われます。まずは区分所有者への通知を行ったうえで、足場の設置や現場事務所、作業員詰所、仮設トイレなど共通仮設物の設置から始まり、順次工事が進んでいきます。

大規模修繕委員会のメンバーは、工事が計画どおりに行われているかどうか、状況を確認するのも役目です。また、区分所有者と施工会社の間をつなぐ役割も担うことになります。大規模修繕委員会が設置されないマンションでは、理事会が同じ役割を担当します。

大規模修繕の工程をすべて大規模修繕委員会が管理するのが大変なら、賃貸管理会社や専門のコンサルタント会社に委託することも可能です。委託している場合でも、途中経過を報告してもらうことはできます。信頼できる専門家に委託すれば安心ですが、任せきりにせず適宜進捗状況を確認することも大事です。

大規模修繕工事にかかる期間はどれぐらい?

では、工事期間はどのくらいを想定しておけばいいのでしょうか。ここからは具体的に大規模修繕にかかる期間をみてみましょう。マンションとアパートの規模による工事期間の違いを比較するとともに、工事内容ごとにかかる期間も詳しく解説します。大規模修繕の計画やコストを検討するうえでも大事なポイントになるため、工事期間を把握しておきましょう。

マンション・アパートの規模ごとに工事期間を比較

同じ大規模修繕といっても、やはり物件の大きさによってかかる期間は変わってきます。基本的には規模が大きくなるほど、工事期間も必要とするのが一般的です。まずはマンションやアパートを小規模と中規模、大規模の3つに分類し、単純に規模ごとに工事期間がどのくらいかかるのか目安をまとめて比較してみます。。

アパート、小規模マンション〜中規模マンションの場合

アパートは階数が少なく、大規模修繕にかかる期間の目安はおよそ3~4ヶ月です。総戸数50戸未満の小規模マンションもそれほど共有部分が多くないため、アパートとほぼ同じ期間で工事ができます。規模が小さいからといって準備が簡単にすむとはかぎりませんが、区分所有者同士の関係性がすでに構築されている場合は意見調整がしやすいでしょう。

総戸数が50~100戸程度の中規模マンションになると、工事期間の目安はおよそ4~6ヶ月です。規模が大きくなる分、共用設備も多くなり、工事内容や予算など検討しなければならない項目も増えます。中規模マンションになると、基本的には大規模修繕委員会や理事会を中心に計画を進めることになります。

ただし、区分所有者の数も増えるため、要望や意見に食い違いが出てくるかもしれません。できれば計画段階から専門家に入ってもらうのがおすすめです。

大規模マンションの場合

総戸数100戸を超える大規模マンションの場合、大規模修繕の期間の目安は半年から1年程度です。団地や超高層タワーマンションなど、規模が大きい建物や高層ビルになると、工事期間は1年以上を要する可能性もあります。

中規模マンションよりもさらに施工面積が増えるだけではなく、大規模マンションは建物内に豪華な共用施設を備えていたり、敷地内に公園が整備されていたりすることもあります。検討内容が増える分、計画立案から実行内容の合意形成と実行までに時間や手間がかかるでしょう。

区分所有者の数も小規模マンションや中規模マンションとは比べものになりません。意見調整が難しくなる場合や、合意を得るのに時間がかかることも考えられます。余裕を十分取ったスケジュールで計画を進める必要があるとともに、大規模修繕の経験が豊富な専門家の力を借りながら準備を進めることも大切です。

工事内容ごとに工事期間を比較

次に工事内容ごとの工事期間を比較してみましょう。ここではどんな工事でも必要な仮設工事、下地補修やシーリング工事、防水工事と外壁塗装にかかる期間について、中規模マンションレベルを想定して解説します。大規模修繕の現場では複数の工事が同時進行することもあり、全体の工事期間が単純に工事内容ごとの期間を足したものではない点に注意してください。

仮設工事(足場や仮囲い等)

仮設工事とは工事期間中、一時的に設ける施設や設備などの施工を行う工事で、期間は15~20日程度です。建設工事に直接関連するものや、直接は関わらないものの、工事を進めるためには必要なものなど、さまざまな仮設工事があり、大規模修繕では最初に行われます。

具体的には外壁塗装を行う際などに高所で作業ができるよう組む足場や、仮設通路、工事現場の周囲に設置される仮囲いなどがあります。仮囲いは現場に部外者が立ち入ることを防ぐ目的があるのはもちろん、周囲の安全を保ったり、騒音や粉塵などを防いだりする目的もあります。建物の保護や塗装の汚れを防ぐための養生も大事な作業です。

工事用の電力や用水を設置するのも仮設工事に含まれます。また、直接工事に関連しなくても、現場事務所作業員の休憩所、仮設トイレなどは現場で工事をしてくれる作業員にとっては欠かせないものです。現場の清掃や残材処理作業、消耗品などが含まれることもあります。なお、仮設工事は大規模修繕が完了したら撤去されます。

下地補修やシーリング工事

下地補修やシーリング工事には、およそ2週間~1ヶ月の期間がかかります。常に雨風にさらされ、紫外線を浴び続ける外壁はダメージを受けやすい場所です。時間が経過するとひび割れが発生したり、タイルが浮いてきたりなど、さまざまな劣化がみられるようになります。

そのまま放置しているとさらに劣化が進むのはもちろん、水が建物に染み込んで腐食を招くなど被害を拡大させかねません。外壁や屋根の塗装工事の前に下地補修を実施することで外観を保ちながら、強度も上げるとともに、後に行う塗装の仕上がりにも影響します。下地補修の主な作業は、ひび割れ補修やタイル浮き補修、タイル張り替え工事などです。

下地補修が終わったら、次は外壁のつなぎ目などに施されているゴムのようなシーリング材に対する工事です。建物を漏水などから守るシーリング材が劣化すると、剥がれやヒビが発生して機能を果たさなくなります。建物の気密性や断熱性を保つためにも、シーリング工事は大事です。

防水工事と外壁塗装

下地補修とシーリング工事が完了したら、いよいよ防水工事と外壁塗装に進みます。工事期間は、およそ1~3ヶ月です。防水工事は屋根や屋上はもちろん、外廊下やベランダのような雨がかかるコンクリート部分などに防水加工を施す工事です。防水工事を実施することで汚れを付きにくくし、雨の影響も抑えて機能回復を図り、建物を守ることができます。

下地補修とシーリング工事が終わった外壁には、仕上げの外壁塗装が残っています。建物の防水性や断熱性を保つためにも大事な工事です。マンションの外観もきれいになり、資産価値の維持や入居率アップにもつながります。

外壁塗装の工程は「下塗り」、「中塗り」、「上塗り」の3工程が基本です。下塗りは後に行う中塗りと上塗りのベースとなるもので、外壁素材との塗膜をつなげる役割があります。中塗りと上塗りは同じ塗料を使い、2度色付けして仕上げます。建物の不具合を防ぎ、性能を維持するためにも防水工事と外壁塗装は同時に行うのがポイントです。

「リロの不動産・リロの賃貸」ができること

【リロの不動産・リロの賃貸】は賃貸経営支援のトータルサポートや、リフォーム・リノベーションなどの工事対応もサポートする賃貸管理会社です。賃貸不動産を経営するためには、日々のメンテナンスはもちろん、定期的に行う大規模修繕も考慮しておかなければなりません。ここでは実際にリロの不動産でどのようなことができるのかを紹介します。

建物管理(清掃・メンテナンス)

建物管理では、アパートやマンションの清掃、設備のメンテナンスを行います。建物がきれいに保たれていると入居者様の満足度向上につながるのはもちろん、入居者様獲得にもプラスになります。

特に建物の顔ともいえるエントランスや、手入れが行き届いていないと汚れがちになるごみ置き場などがきれいだと第一印象も良くなるため、日々の清掃は大事な業務です。日々の清掃業務や巡回で目を配っていると、問題のある箇所も早期発見できます。

建物の基本設備はそれぞれ耐用年数があるため、適切な時期に取替やメンテナンスなどの対応も必要です。リロの不動産ではエレベーターや立体駐車場などの設備も定期的に点検するとともに、法令に基づいて設置が義務付けられている防火管理設備や通路の確保ができているかどうかもチェックします。

建物管理は、資産価値の維持や向上につながる業務です。小さな問題でも放置していたり対応を先延ばしにしていたりすると、やがて大きなトラブルや不具合が発生します。日頃からこまめに管理することで、物の寿命を延ばすことも可能です。将来的に実施が必要になる大規模修繕にも備えられます。

大規模修繕(割賦工事で対応可能)

大規模修繕は建物の劣化を防ぎ、資産価値をできるだけ長く維持するためには必要な工事です。しかし、解説してきたように外壁塗装や防水工事、各種設備の取替など工事箇所は多岐にわたり、工事費も高額になります。工事期間もアパートや小規模マンション、中規模マンションでも数ヶ月、大規模マンションならば1年以上もかかる大がかりなものです。

かといって、大規模修繕を行わないわけにはいきません。劣化部分を放置しておくと美観が損なわれるのはもちろん、安全・安心に関わることでもあります。賃貸経営ではできるときにマストの対策を実行し、資産価値が落ちて、賃料の下落が加速する事態や売却困難になる事態を予防する必要があります。

リロの不動産では最適な大規模修繕のプランを提案するとともに、オーナー様が安心して賃貸経営を行えるよう資金面でのバックアップも行っています。特別利率や家賃収入での支払いができる割賦工事のプランのように、【リロの不動産・リロの賃貸】の総合力で資金面も含めたサポートが可能です。

大規模修繕に関するお問合せは「リロの不動産」の無料相談へ

アパートやマンションの建物は、時間が経過すると劣化が出てくるのは避けられません。建物の資産価値を維持し、入居者様に安心して住んでもらうためには定期的に大規模修繕を実施する必要があります。

ただ大規模修繕は数ヶ月から1年程度の期間を要し、まとまった工事費用も必要です。一般的にマンションでは将来の大規模修繕に備えて毎月修繕費を積み立てしていますが、適切な時期に売却したいと考えている方もいるでしょう。

もし売却を検討しているのなら、大規模修繕の時期との兼ね合いで、いつが最適な売却のタイミングなのかを知りたいのではないでしょうか。マンションの新築や購入を考えているのなら、収支計画で検討することや大規模修繕の詳しい内容、注力すべきポイントを知りたいはずです。

【リロの不動産】は購入から運用・工事・売却・相続まで一気通貫で請け負い、オーナー様の立場でアドバイスを行っております。マンションの大規模修繕についてご検討中の方は、お気軽にリロの不動産へご相談ください。

おすすめのサービス

大規模修繕

アバター画像

この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。