満室経営にする賃貸経営リフォームとは? 4つのリフォーム事例を紹介
2023.04.07賃貸経営において、リフォームは大きなイベントの1つです。リフォームを放置してしまうことで、空室が埋まらず収益が減少してしまい改善ができなくなる負のスパイラルに陥ることもあります。
リフォームの中にはオーナー様が利用できる補助金などもあることから、リフォームを積極的に活用することで賃貸経営の収支を改善するきっかけにもなります。
今回は、満室経営を実現するために必要なリフォームの重要性について解説するとともに、賃貸経営リフォームの具体的な事例を紹介します。
原状回復工事・リフォーム・リノベーションの違い
原状回復工事やリフォームという言葉は昔から使われてきた言葉ですが、最近「リノベーション」という言葉もよく聞くようになりました。
原状回復工事やリフォーム、リノベーションにはどのような違いがあるのでしょうか。
原状回復工事(オーナー様負担・入居者様負担)
原状回復工事とは、入居者様が退去した際に必要になる工事で、入居時の状態つまり「元の状態に戻す」工事を指します。具体的には壁紙や床の内装を新しくしたり、付属設備を補修もしくは取り換えたりします。
次の入居者様が決まっていないからといって原状回復工事をしないままでいると、部屋の内装や設備が傷み、最終的に物件の価値を下げることになります。
従来より原状回復工事にはオーナー様と入居者様の費用負担を巡り、トラブルが耐えませんでしたが、1998年に国土交通省により「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が定められたことにより、費用負担のルールや判断の基準が明確になりました。
ガイドラインでは、原状回復について以下のように定義しています。
「賃借人の居住および使用によって発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意や過失、善管注意義務違反などによって、通常の使用を超えるような使い方をした結果による損耗や毀損を復旧すること」(※)
入居者様が退去する際の原状回復費用の負担は、通常の使用を超える使い方をした結果、損傷した部分を復旧する費用になります。普通に利用していて経年劣化による損傷部分の復旧工事費用については、オーナー様側が負担すると、付記されています。
※ 出典:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
リフォーム
リフォームとリノベーションに厳密な定義はありませんが、一般的に汚れた箇所や破損した部分を直すための一般的な改修工事や、設備交換や小規模な工事をリフォームと呼ぶケースが多く見られます。
古くなった部分を新築と同じレベルに修繕若しくは回復させる意味で使われ、具体的には古くなった浴槽やトイレを新品のものに交換したり、さらには、壁紙の汚れが目立つ部分をきれいに貼り替えるなどの工事がリフォームに該当します。
経年劣化によって痛んだ部分を修復して、痛む前の状態に戻す工事をイメージすると分りやすいかもしれません。また、設備の交換や、内装の貼り替え以外にも、増築を含んだ大規模な工事を行うケースもリフォームと呼ばれます。リフォームに該当する工事は広範囲におよぶと理解しておきましょう。
リノベーション
リフォームが古くなったものを新しいものに修繕もしくは改修する工事を指すのに対し、リノベーションとは、その物件に住む人のライフスタイルに合わせて、新しい機能やデザインを施し、物件の価値を向上させる工事をいいます。
具体的には、3LDKのお部屋を2LDKに間取り変更し、新しい住空間を演出したり、キッチンを最新の機能が付いたものに交換して、周辺に食器や調味料などをリデザインする対応などが該当します。
リノベーションを行うことで得られるメリットは、入居者様が好む空間が作れることや、新しく建物を建てるより費用を安く抑えられることです。ただし、物件によっては耐震性能などに不安があり、望むとおりのリノベーションが行えない可能性もあります。
リフォームとリノベーションを税法上で区分することもできます。
改修工事や大規模修繕にかかる費用は、一般的に「修繕費」として処理しますが、すべての改修および大規模修繕費用が「修繕費」になるわけではありません。改修および大規模修繕によって物件の価値が上がる、長く使えるようになる場合は修繕費ではなく、「資本的支出」と判断されます。
修繕費はその年の経費として一括で計上する必要がありますが、資本的支出の場合は減価償却費と同様に数年にわたって費用計上します。修繕費にあたるものはリフォーム、資本的支出にあたるものはリノベーションと判断することも可能です。
リフォーム/リノベーションの重要性
賃貸経営にとって、リフォームそしてリノベーションは「空室リスク」「修繕リスク」「老朽化リスク」に備えるために、非常に重要なポイントになります。その理由について、以下で詳しく解説します。
リフォームを放置することによる負のスパイラル
賃貸経営では、リフォーム等の工事を避けることはできません。入居者様が退去した後、速やかに現状回復やリフォームを行わないと、新しい入居者様が付かないだけでなく、部屋の内部の痛み、そして外観の劣化が発生します。
また、新しい入居者様がつかないことにより、家賃収入の減少を招く結果となります。
部屋の改修工事だけでなく、建物全体の大規模修繕も重要な取り組みです。屋根の塗装や補修工事は建築してから11年~15年目、外壁の塗装工事は11年~18年目に行うのが目安となっています。そのほか、給湯器やエアコンの交換、給排水管の高圧洗浄や取り換え、階段や廊下の塗装や防水工事も必要ですし、屋根の防水、外壁のタイル貼り補修も考えておかなければなりません。
一般的に築年数が経つにつれ、外観の劣化などによって、クラックが発生し2次被害に及ぶこともあります。また、周辺の新築物件よりも見栄えの面で競争力が劣ってきます。建物の資産価値を保全することが大規模修繕工事になります。
大規模修繕工事が必要な時期になっているにもかかわらず、工事費用が確保できずそのままにしておくと、さらに老朽化が進んで、修繕費用の捻出が難しくなる「負のスパイラル」に陥ることが危惧されます。適切な対応をしていれば「空室リスク」「修繕リスク」「老朽化リスク」に備えることが出来ます。
物件価値を高める賃貸経営リノベーション
物件の状態によってはリフォームよりもリノベーションの方が収益向上につながり、収益物件の資産価値を高めることがあります。具体的にはリフォームでは課題改善が難しい場合にリノベーションを選択します。例えば、長期空室を改善するためや、賃料を新築時に近づけるため、競合物件に大きく劣らない競争力の強化、家賃の下落防止などの効果が期待できます。
入居者様が真に求めているのは、「快適に過ごす生活空間」です。また、入居者様が望む生活スタイルは時代によって刻々と変化します。リフォーム箇所(設備の入れ替えや大規模修繕)が多い場合は、リフォームを行うよりも新たな付加価値を加えるリノベーションを行い、賃貸経営を始めたほうが、中期そして長期的な収益の向上につながるケースもあります。
一般的なリノベーションと異なり、賃貸経営の視点を持った戦略的判断が大切です。「収益のバランス」を取り「入居者ニーズを満たす物件価値の向上」をもたらす「賃貸経営リノベーション」により物件価値を高めましょう。
賃貸経営リノベーションには、
・フルリノベーション
・間取り変更
・部分リノベーション
の3つのタイプがあり、それぞれに以下の特徴があります。
フルリノベーションとは、部屋の間取りも含め、内装をゼロから変えることができるため、改修部分が多い部屋におすすめです。一貫性のあるデザインで統一感のあるお部屋を演出できるため、ターゲットを大きく変更する場合や裾野を広げる効果が期待できます。
間取り変更とは、間取りを変え、多様性のある空間にすることです。一般的に 築年数が25年以上経過すると、新築時とは異なるライフスタイルになることが多く、入居者様に求められる要素も変化するため、暮らしの変化に対応できるリノベーションといえます。
部分リノベーションは、コストを抑え、短い工期で対応できる点がメリットです。現代では古い設備で敬遠されていたウィークポイントを魅力のある設備や空間に変えることで、ワンポイント特徴のある物件の魅力を生み出すことができます。
割賦工事などの資金調達方法
本来であれば、修繕計画を立て、計画的に資金を積み立てていくべきなのですが、環境の変化に伴い資金が不足することも考えられます。改善がしたくてもできない事情がある場合は、金融機関からの融資や工事対応をするパートナーからの資金バックアップが受けられるかどうかを早めに相談することも大切です。
オーナー様にとっては、リフォームやリノベーションの資金調達が課題になることもありますが、リフォーム会社や賃貸管理会社の中には割賦工事に対応しているところもあります。また、工事対応だけで終わらず、然るべき金額で集客できるようにリーシング(入居者募集/賃貸仲介)できる管理会社だとより安心でしょう。
割賦工事とは、リフォームやリノベーションなどの工事費用を分割で支払えるものです。工事資金がなくてもリフォームやリノベーションの実施が可能になり、毎月の賃料から工事代金を差し引きすることで、キャッシュアウトを抑えることができます。
企業によってはリフォームローンより低金利で利用できることや、抵当権の設定や連帯保証人を不要としているところもありますので、資金調達に悩んでいるオーナー様はぜひ検討することをおすすめします。
合わせて、国や自治体が用意している補助金の内容を把握し、使えそうな補助金については申請を行うことも考えましょう。
リフォームの具体的事例
リフォーム事例1・宅配ボックス設置で競争優位性を獲得
1Kが10戸の1棟マンションの事例です。
このマンションは築年数が8年と比較的新しく、最新の需要がある設備はほぼ整っていたのですが、宅配ボックスだけはありませんでした。
最近はネットショッピングを利用される方が多く、さらに日中不在にしている方にとって、宅配ボックスはなくてはならない存在になりました。
環境の変化に対応して共有スペースの一部に宅配ボックスを設置したところ、部屋を探しているお客様に同じ条件で駅に近い別の物件を紹介したものの、宅配ボックスがあることが決め手となり、当該物件へ入居されました。
宅配ボックスがあることで、周辺物件との競争力が増した案件といえます。ちなみに、宅配ボックス設置にかかった費用は20万円です。
出典:楽待
リフォーム事例2・男性をターゲットにおしゃれで都会的なリフォーム
部屋の特性(1階)から、おしゃれな社会人男性をターゲットに絞り、グレーを基調とした大理石風クッションフロアやアクセントクロス、ダウンライト、キッチンはダイノックシートといった簡単で価格を抑えたリフォームを行いました。このリフォームによって物件の商品力を上げようという作戦です。
リフォーム後、すぐに社会人男性の入居者様が決まり、家賃も従来の5万5,000円から6万円に上げることができ、オーナー様にとっても非常にいい結果となりました。
リフォームにかかった費用は30万円ですが、中長期的に考えるとそれ以上の費用対効果が得られると考えられます。立地条件を武器に、低予算で効果を出せた実例といえるでしょう。
出典:楽待
リフォーム事例3・トイレ・バス分離のリフォームでアパート3室の空室が満室に
築17年の学生が多い地域にある物件ですが、最近は学生の数も減少傾向にあり、空室率の改善が課題となっていました。特に目立った特徴がないため、決め手に欠ける点も理由の1つだったようです。
リフォームでは、トイレと浴室を独立させ、さらにトイレは洗浄便座を取り付けました。周辺の競合物件との差別化を図るため、若い入居者様の層に好まれる部屋を意識し、床材やクロスも若者向けの新しいイメージのものに変更しています。
また、女性の入居者様のために、室内の物干しや安全面を考慮し、モニター付きのインターホンを設置しました。
リフォームの結果3部屋が成約となり、満室経営が可能となっています。リフォームにかかった費用は105万円ですが、空室が一気に改善され満室経営に至ったことで回収期間が短くなったことは評価すべき点といえそうです。
出典:楽待
リフォーム事例4・1階の特性を活かし遊び心のある部屋
オーナー様は一度リノベーションを行った経験があり、効果を実感できたため、新たにリノベーションをご検討されていました。今回のリノベーションでは家賃の値上げも視野に入れて対応しました。
対象の部屋が1階のため、1階の特性を活かし、玄関脇にあった部屋をあえて土間に改良しました。ファミリータイプの物件のため、ベビーカーやゴルフバックなどの収納スペースとしても利用可能です。合わせて、システムキッチンや洗面台、トイレなどもすべて新しいものに取り替えました。
工事を行った後、1週間で入居者様が決まりました。小さいお子様がおられるご家族で土間と合わせキッチンの広さが決め手となったようです。
工事費用は350万円ですが、新築のような内観に生まれ変わり、なかなか入居者様が決まりにくい1階の物件が工事後すぐに決まったことは、リフォームの効果が大きいといえるでしょう。
出典:楽待
オーナーが使えるリフォームの補助金制度
収益物件のリフォームを行うにあたって、利用できる補助金制度を紹介します。条件を満たし、利用できるものがあれば積極的に申請してみましょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
既存住宅の長寿命化・省エネ化・子育て世代向けの改修支援などを目的とした、国土交通省が行っているリフォーム補助金制度です。
戸建て住宅・共同住宅のどちらも対象となり、住宅の性能を向上させるためのリフォーム工事費が補助の対象です。
具体的には、
・省エネルギー対策
・耐震性
・構造駆体などの劣化対策
・建物附属設備の維持管理や更新
のほか、
・バリアフリー改修工事
・テレワーク環境整備改修工事
なども対象です。
また、3世代同居対応改修工事費や子育て世帯向けの改修工事費用も対象になります。
補助を受けるためには、工事前に建物の状況調査を受ける必要があります。また、リフォーム工事後の性能基準を満たさなければなりません。
これらの要件を満たした場合は、最大で250万円の補助金が受けられます。
出典:国立研究開発法人 建築研究所 長期優良住宅化リフォーム推進事業
高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業
環境省が実施しているもので、既築住宅の所有者による高性能な断熱材や窓を用いた断熱改修への補助金制度です。
効率的な省エネもしくは二酸化炭素排出削減を実践したいと考えている方に向けた支援事業で、戸建て住宅・共同住宅どちらも対象になります。
補助率は、補助対象経費の3分の1以内としており、補助金上限額は、戸建の場合1戸あたり120万円、集合住宅は1戸ごとに15万円です。
別途、「住みながら短納期で改修したい」方に向けた次世代建材事業を経済産業省が行っており、この場合の補助率はかかった費用の2分の1以内、補助額上限は1戸あたり200万円、集合住宅は1住戸あたり125万円です。
次世代省エネ建材の実証支援事業
一般社団法人環境共創イニシアチブが実施する支援事業です。省エネ改修の促進が期待される工期短縮可能な高性能断熱材や、快適性向上にも資する蓄熱・調湿建材などの次世代省エネ建材の効果の実証を支援する制度内容になっています。
戸建て住宅・共同住宅どちらも対象となり、改修区分は「外張り断熱」、「内張り断熱」、「窓断熱」の3つに分けられています。
補助率は、補助対象経費の3分の1以内としており、補助金上限額は、戸建の場合1戸あたり120万円、集合住宅は1戸ごとに15万円です。
申請は、要件を満たした申請者が「交付申請書」をSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)に提出することで行います。
出典:一般社団法人環境共創イニシアチブ 次世代省エネ建材の実証支援事業
住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
国交省の住宅セーフティネット制度の一環で、一般財団法人住宅保証支援機構が実施しています。
対象となる住宅確保要配慮者とは、「低所得者」、「災害の被災者」、「高齢者」、「障害者」、「子育て世帯」など住宅に困窮する世帯などで、住宅確保要配慮者の増加に対応するため、民間の賃貸住宅や空き家を活用した住宅セーフティネット制度と合わせ、バリアフリー改修工事、耐震改修工事、間取り変更工事を行った際に補助金が支払われます。
補助率は補助にかかった工事費の3分の1で、上限は1戸あたり100万円です。
出典:一般財団法人住宅保証支援機構 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
まとめ
賃貸経営にとって、リフォームおよびリノベーションは重要なポイントです。競合物件よりも古さが目立ち、長期空室が改善されない場合は、設備・工事関連の対策を検討するタイミングです。入居者ニーズを満たし、費用対効果を考えた『リフォーム・リノベーション・大規模修繕』により、空室リスク・老朽化リスク・修繕リスクに備えます。
資金不足で修繕リスクの発生に不安を抱えているオーナー様の期待に応える独自サービスとして、「初期費用0円で工事ができる割賦工事」や「1室から収益を確定する借上」を組合せた『リロの満室パック』をご用意しております。
近隣地域の競合物件の動向や、周辺地域の需要を分析し、的確なターゲティングとメインターゲットに物件の魅力が伝わる工事のご提案をいたします。工事完了後も「4つの空室対策」でオーナー様の賃貸経営をトータルサポートいたします。
不動産投資・賃貸経営のリフォームに関することなら、入居者様のニーズを熟知し、仲介件数や管理戸数が豊富な【リロの不動産】にご相談ください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。