賃貸住宅の修繕トラブルとは? 対処のポイントを詳しく解説

2023.04.10

不動産投資を始め、収益物件のオーナー様になると、所有している物件の修繕をめぐるトラブルに遭遇することもあります。収益物件の修繕はすべてオーナー様が行うわけではなく、損害の原因によっては入居者様の負担になるケースもあります。無用なトラブルを生じさせないためには、法律上の知識も必要になります。

今回はオーナー様の修繕義務の範囲を詳しく解説するとともに、トラブル回避策についても紹介します。

オーナーの修繕義務とは

収益物件の所有者であるオーナー様には、物件に不具合が生じた場合、修繕する義務があります。これは民法606条で、以下のとおり規定されています。

民法606条
1.賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕を行う義務を負う
2.賃貸人が賃借物の保存に必要な行為をしようとするときには、賃借人はそれを拒むことができない

収益物件に雨漏り・備え付けエアコンの故障などの不具合が発生した場合は、オーナー様に速やかに修繕する義務が生じます。

修繕を行うにあたり、入居者様の部屋に立ち入る必要があることから、入居者様が修繕に反対するケースも考えられます。しかし、入居者様が反対したとしても修繕は行わなければなりません。

オーナー様の修繕義務が民法上で定められているのは、賃料を受け取っている以上、物件を使用するのが困難な状態を招く損傷については、オーナー様が修繕を行うべきだという考えからですが、修繕を行わないことによって損傷が拡大し、物件の価値が下がるのを防ぐという目的もあります。

つまり、物件の損傷に対する修繕は、オーナー様の義務であり、また、権利であるともいえます。

出典:E-GOV法令検索 民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

オーナーの修繕義務の範囲

では、オーナー様が負う修繕義務の範囲はどこまでなのでしょうか。また、修繕義務の適用が除外されるケースとはどのようなものなのでしょうか。
次項で詳しく解説します。

基準は賃貸不動産(アパート・マンション)が使用収益に耐えうるかどうか

物件に不具合が発生した際、それを修繕しなければならないかどうかの基準は、「修繕を行わないと契約内容が履行できないかどうか」です。つまり、修繕を行わないことで、その部屋で暮らすのが困難な状態になる場合は、オーナー様は修繕を行わなければなりません。とくに修繕を行わなくても生活に影響がないならば、修繕の必要がないと判断します。

つまり、修繕義務の基準となるのは、修繕をしないことで入居者様が賃貸借契約の目的にそった使用収益ができなくなるかどうかです。例えば、雨漏りが発生していて、居室が水浸しになっている状態では、本来の使用収益の目的を果たすのは困難でしょう。その場合は、速やかにオーナー様が修繕を行う必要があります。排水設備が故障した場合も同様にオーナー様に修繕義務が発生します。

逆に経年劣化によって壁紙が変色しているなどのケースでは、通常の生活を送ることに支障はありませんので、使用収益(賃貸住宅を使用することができること)の目的が果たせると判断し、オーナー様に対する修繕の義務は発生しません。

また、修繕義務がある場合の修繕の範囲も気になるところでしょう。

判例では、オーナー様の修繕義務の範囲は「使用収益ができる状態にするための必要最小限度」としており、なにも最新の設備に取り換えなければならないというわけではありません。部屋が普通に使用できる状態になるに足りるものであればいいとされています。

地震や火災などといった自然災害によって生じた損傷においてもオーナー様には修繕義務があります。災害は不可抗力によって起こるものではありますが、その場合でも修繕を行わなければならない点は重要なポイントです。

修繕が不可能なケース

自然災害によって、建物が倒壊もしくは滅失した場合や、建物の耐用年数が残りわずかである場合は、修繕が不可能と判断され、オーナー様に修繕義務は発生しません。

建物の倒壊や滅失は修繕が物理的に不可能ですので、修繕義務が適用除外となります。ただし、損害が軽微な場合は、オーナー様に修繕義務が発生する点に注意が必要です。

建物の耐用年数が残りわずかである場合などでは、修繕を行うにあたり、高額な費用が発生する可能性があります。その際、資金が不足しており、経済的に修繕が不可能と判断された場合は、修繕義務の対象外です。

このことは高等裁判所の判例(東京高裁昭和56年2月12日判決)にも残っており、「修繕に不相当の高額な費用がかかる場合で、物件の賃料と照らし合わせても採算が取れない費用がかかる場合は、賃貸人には修繕義務がない」とされています。

したがって、入居している物件が築古の場合、物件に不具合が生じたとしてもオーナー様に修繕して欲しいとお願いできないケースもあり得ます。

入居者の責任によるケース

オーナー様が修繕義務を負うのは、あくまでも通常の使い方をしており、経年劣化などによって損傷が生じた場合です。入居者様の故意や過失など善管注意義務違反によって発生した損傷については、オーナー様は修繕義務を負わず、入居者様が修繕を行わなければなりません。

2020年4月より施行された改正民法では、賃貸人の修繕義務についてただし書きが追加され、入居者様の故意や過失によって修繕が必要となった場合はオーナー様に修繕義務がないことが明文化されています。

修繕に関しては、管理会社またはオーナー様から施工会社に依頼して修繕を行い、対等箇所の修繕にかかった費用を入居者様に請求する形が一般的です。

入居者様には、物件をていねいに扱うという「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」があります。したがって、入居者様の故意や過失によって建物や建物附属設備を損傷した場合は、オーナー様に修理義務は発生しません。

また、入居者様が持ち込んだ機器の損傷については、当然入居者様の財産ですので、入居者様に修繕義務があり、オーナー様に修繕義務は発生しません。

修繕義務を免除する特約があるケース

賃貸契約を結ぶ際の契約書に、「物件に損傷が発生した場合には、賃借人が修理を行う」といった修繕義務免除特約を設けているケースがあります。この場合は特約の内容が優先されますので、オーナー様には修繕義務は発生せず、入居者様が修繕費用を負担しなければなりません。

特約の例としては、以下のように軽微なものが多く見られます。

・電球、蛍光灯、ヒューズの交換
・給水栓や排水栓の取り換え
・蛇口のパッキンやコマの取り換え

などの消耗品類

ただし、特約に物件すべての損傷を入れることはできず、キッチンなどの水回りや、柱や屋根などといった住宅の基礎部分や生活になくてはならない設備の損傷については、オーナー様に修繕義務があるとされます。特約の対象にできるのは、少額で修理できるものに限られており、大規模修繕工事が必要になるような内容は対象になりません。

また、入居当初から損傷があった場合は、オーナー様に修繕義務が発生します。入居する際には軽微な箇所であっても異常がないかどうかをしっかりと確認しておくようにしましょう。

入居者が修繕する場合はどうなるか

物件に損傷が生じた際、オーナー様に修繕をして欲しいとお願いしても聞いてもらえない場合、入居者様自身が修繕を行ってもよいのでしょうか。また、その場合の費用負担はどうなるのかについても気になるところです。

本項では、オーナー様が修繕を拒否した場合、入居者様自身が修繕できるのか、また、その際の費用負担について解説します。

オーナーが修繕してくれないとき、入居者が修繕することは可能か

結論からいうと、オーナー様が修繕義務に応じない場合、入居者様が自分で修繕を行うことが認められています。

2020年の改正民法では、607条の2で以下のとおり規定されています。

民法607条の2

賃借物の修繕が必要である場合において、次に揚げるときは、賃借人はその修繕をすることができる。

1.賃借人が、賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または、賃貸人がそのことを知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
2.急迫の事情があるとき。
本来、賃貸借契約では入居者様が勝手に物件に変更を加えることを認めていません。さらに、退去時には原状回復をしなければならず、基本的に入居者様自身が修繕を行うことはできないとも考えられます。

ただ、オーナー様に修繕義務があるにもかかわらず、その義務を遂行してもらえない場合、入居者様は生活上の不便を強いられることになり、契約内容にそった使用収益ができないことになります。これでは賃料を支払っている入居者様にとっての不利益が大きくなってしまいます。

入居者様が自分で修繕を行う場合は、以下の点に注意しておきましょう。

1.修繕の範囲
本来、オーナー様が行う修繕の範囲は通常の使用が可能な状態に戻すための最小限の修繕です。そのため、修繕前よりもよいものにする必要はありません。自分で修繕する場合には以前と同じレベルまでの範囲に留めるようにしてください。

2.請求書や領収書を保管しておく
修繕にかかった費用は、本来オーナー様が負担するべきものですので、後にオーナー様に請求するか、立て替えた場合は領収書をもらっておき、費用を返してもらいましょう。オーナー様によっては、家賃と相殺するケースもあります。

3.家賃の減額の可能性
民法611条1項では、以下のとおり規定されています。

民法611条1項 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等

賃借物の一部が滅失そのほかの事由によって、使用および収益をすることができなくなった場合に、その理由が賃借人にない場合は、賃料についてその使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額される。

2.賃借物の一部が滅失そのほかの事由により、使用および収益をすることができなくなった場合において、残った部分では賃借人が賃借をした目的を達成することができないときには、賃借人は契約の解除をすることができる。

この条文があることにより、物件の設備の損傷によって設備が利用できなくなった場合、対象の部分の割合に応じた家賃の減額が可能になります。また、家賃の減額割合については、日本賃貸住宅管理協会によってガイドラインが設定されていますので、参考にするとよいでしょう。

また、入居者様が修繕を行えるのは、オーナー様が修繕の依頼に応じなかった場合です。そして、入居者様が修繕を行う際には、必ずオーナー様にその旨を伝えるようにしてください。自己判断で修繕を行うと、オーナー様に費用を請求しても支払ってもらえない可能性もあります。

出典:E-GOV法令検索 民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

入居者が修繕した場合の費用

入居者様が修繕した場合の費用は、本来ならばオーナー様に修繕義務があるものですので、当然にオーナー様に請求できます。そのため、工事業者からの見積もり書や請求書、領収書などの書類は忘れずに保管しておくようにしてください。

オーナー様は入居者様からの修繕費用の請求を拒むことはできません。

なぜなら、民法606条によって、「賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない」と規定されているからです。

さらに民法608条では、以下のように規定されています。

民法608条

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担にあたる必要な費用を支出した際には、賃貸人に対して、直ちにその償還を請求できる。

2.賃借人が賃借物について、有益となる費用を支出したときには、賃貸人は賃貸借契約終了時に民法196条第2項の規定に従って、その費用を償還しなければならない。ただし、裁判所は賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を認めることができる。

オーナー様は、家賃の減額請求を受ける可能性も考慮して対応を進めておくとよいでしょう。

出典:E-GOV法令検索 民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

賃貸住宅の修繕トラブルを回避するポイント

収益物件の修繕については、損傷の原因や修繕の範囲などを巡り、オーナー様と入居者様との間でトラブルになるケースが多く見られます。

修繕にかかるトラブルを回避するためには、どのようなポイントに気を付けておけばいいのかについて解説します。

契約時の説明はていねいに

賃貸借契約を結ぶ際には、事前に重要事項説明があり、賃貸借契約書の読み上げを行いますが、修繕に関する説明をていねいに行うようにしましょう。修繕義務免除特約など特約については、一つ一つ確認しながら説明することが大切です。

例えば、室内のエアコンが備え付けではなく入居者様が持ち込む場合、エアコンは入居者様の持ち物になるためエアコンが壊れたとしてもオーナー様には修繕義務はありません。このような細かい内容でもきちんと説明しておく必要があります。

さらに、入居者様には物件をていねいに扱う善管注意義務があることを理解してもらうことによって、のちのちの修繕トラブルを回避できます。

また、重要事項説明には、以下の内容を必ず入れておき、オーナー様そして入居者様双方で確認しておきましょう。

・禁止事項
最近ではペットOKの物件も増えてきましたが、共用部では抱きかかえるなどのルールを設けているところが多く見られます。楽器についても、使用時間が制限されるケースもありますので、該当する場合は必ず確認しておきましょう。ほかには、石油ストーブの利用を禁止しているケースや、事務所としての利用の禁止、複数人で借りるルームシェアを禁止するものもあります。

・設備
エアコンやコンロ、トイレのウォシュレットなど、後付けができる設備については、前の入居者が取り付け、そのままにして退居した場合はそのまま利用できますが、故障した場合のオーナー様の修繕義務はありません。不要な場合には処分することもできます。

前の入居者が取り付けてそのままにしている設備については、基本的にオーナー様に修繕義務はありませんので、どの設備が該当するのか、入居前に確認しておきましょう。

・緊急連絡先
物件の設備が故障した場合の連絡先は必ず確認しておきましょう。管理方法によって連絡先も異なります。自主管理オーナーへ直接お問い合わせがいく場合もあれば、賃貸管理会社に管理を任せている場合であれば、賃貸管理会社が緊急連絡先になります。

物件を紹介してくれた不動産会社はあくまでも仲介の立場であり、売却後の設備トラブルについては基本的に関知しません。

建物・設備の定期メンテナンスをしっかり行う

設備の故障が発生しないように、日頃から共用部分の日常的な点検や定期的なメンテナンス、清掃をしっかりと行っておくことが、最終的に修繕トラブルを防ぐことにつながります。建物や建物附属設備の修繕の目安を把握して計画的に修繕を行うことも大切ですし、日々のメンテナンスを行うことにより、入居者様の満足度も高まります。

定期的なメンテナンスを怠っていると、設備の破損や故障が生じやすくなり、入居者様に迷惑をかけることになると心得ておきましょう。

信頼できる賃貸管理会社に委託する

収益物件を自主管理するには限界があります。管理の内容によっては、専門的な知識や経験が必要になりますので、信頼できる賃貸管理会社を見つけ、賃貸管理業務を委託することをおすすめします。

【リロの賃貸】では、建物管理や工事対応に強みを持っています。耐用年数に応じた確認やメンテナンスを定期的に行うことで、問題の早期発見につなげるほか、定期的な確認によって問題を未然に防ぐことを心掛けています。そのほか、消防設備の法定点検や、定期清掃などにより、建物の維持保全を行いながら、資産価値の向上を実現しています。

巡回中に入居者様の状況確認を行うことはもちろん、建物の使用状態や設備の不具合のチェック、さらには建物の保守状態のチェックも行います。また、防火管理に関する放置点検や、各種設備の定期メンテナンスにより、問題を未然に防ぐサポートを行います。

【リロの賃貸】が行う点検およびメンテナンス業務には、以下のものがあります。

・消防設備法定点検
・衛生給水設備点検、ポンプ点検、水質検査
・エレベーター点検
・自動扉の点検および修理
・機械式駐車場、立体駐車場の点検および修理 ※物件により対応可否を都度調整

また、入居者様に対して設備に関するアンケートを実施し、必要に応じた工事を提案させていただきます。

まとめ 修繕トラブルを回避するために

修繕をめぐる入居者とのトラブルを発生させないためには、賃貸管理会社の管理の質が問われます。そのためにも、質の高い建物管理を行う賃貸管理会社にまかせることが重要です。

【リロの不動産】は建物の維持保全をしながら、空室対策そして資産価値向上を実現しています。建物管理では、建物の清掃や設備メンテナンスを行います。エントランスやごみ置き場がきれいに清掃されているか、防火管理の設備や通路の確保が出来ているかはもちろん、ご希望に応じてエレベーターや立体駐車場などの各種設備点検も対応いたします。

建物管理は、入居者様の満足度向上や物件の早期問題発見に繋がる大切な業務となります。賃貸経営においては、修繕トラブルを回避することも大切ですが、その結果空室対策などの収益向上につながることをしっかりと理解しておきましょう。

入居者ニーズを満たしつつ、費用対効果を考えた『リフォーム・リノベーション・大規模修繕』を実施することにより、空室リスク・老朽化リスク・修繕リスクに備えることができます。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。