賃貸物件の修繕費を徹底解説!オーナー様の修繕義務と節税ポイント

2026.02.28

賃貸住宅の修繕リスクには、オーナー様、入居者様どちらが費用負担するかでトラブルになりがちです。然るべき対応をとる賃貸経営を行うためにも、修繕義務や費用負担の基本ルールをよく理解する必要があります。

そこで、この記事では賃貸住宅の修繕に関して、法律や国土交通省のガイドラインなどで定められた内容を中心に解説します。また、修繕費用は節税対策に役立てることもできますので、基本知識と合わせて税法上の考え方も理解しておきましょう。

▼この記事の内容

●賃貸住宅に関するトラブルで最も多いのが、原状回復費用の負担をめぐる問題。トラブルの原因は、オーナー様と入居者様の負担に関する認識の違い。

●修繕費負担の基本は、オーナー様(賃貸人)の修繕義務と入居者様(賃借人)の善管注意義務。

●原状回復をめぐってはトラブルが多いので、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発行して注意喚起をしている。

●貸主と借主の双方の同意があれば、賃貸借契約時に原状回復費用の負担割合を変更した特約を結ぶことができる。

●一定の要件を満たした修繕費は必要経費扱いとなるため、節税につながる。物件の資産価値を高める支出は資本的支出となり、減価償却の会計処理を行う。

目次

賃貸アパート・マンションで修繕トラブルが多発

賃貸住宅に関するトラブルで最も多いのが、修繕費用の費用負担をめぐる問題です。

原状回復費用について貸主側と借主側の情報共有が不十分だと、費用請求時にトラブルになりやすいです。

国民生活センターへの相談件数が1万件以上

賃貸住宅に関する原状回復トラブルはどれくらい生じているのでしょうか。国民生活センターの公表によると、原状回復についての相談件数は2021年度は14,112件、2022年度は12,884件、2023年度は13,247件にのぼります。

国民生活センターには毎年、賃貸住宅に関するトラブル相談が3万件以上寄せられますが、その実に約4割が原状回復に関する相談とのことです。国民生活センターに相談されない事案も相当多いはずですので、実態としてはかなり多くの件数で原状回復トラブルは発生していると推測できます。

原状回復に関するトラブルは、主に室内の破損・汚れの原因をめぐる認識の違いで生じることがほとんどです。

トラブルの原因は認識の違い

原状回復トラブルはオーナー様と入居者様、双方の修繕負担に関する認識の違いが原因で起こります。そこで、国土交通省はトラブルの予防・防止を目的とした「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めました。このガイドラインによって、原状回復費用についてオーナー様と入居者様のどちらが負担するかの基準を明確にしています。

しかし、実務ではオーナー様と入居者様ともにガイドラインの内容を理解していなかったり、特約事項の中身を把握していなかったりなど、お互いの認識不足を原因とするトラブル事例があとを絶ちません。破損個所の現況や傷のできた時期などの情報をきちんと記録しておくなど、物件の現況について双方が正しく情報共有する必要があります。

関連記事は、以下をご参照ください。

賃貸住宅の修繕トラブルとは? 対処のポイントを詳しく解説

マンションの修理・修繕内容とは?賃貸経営におけるトラブル防止の対応方法

オーナー様には修繕義務がある

修繕費の負担を考えるうえでの基本となる「オーナー様(賃貸人)の修繕義務」について解説します。まずは法律上の規定を把握し、オーナー様にどのような法的義務が生じるのか理解することが重要です。

民法の規定

賃貸住宅のオーナー様には、物件に不具合が生じた場合に建物を修繕する義務があります。その根拠となる規定が民法606条です。

民法606条

1 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

出典:e-gov 民法(明治二十九年法律第八十九号)

賃貸借契約において、賃貸人(オーナー様)は賃借人(入居者様)に対して、物件を使用収益させるべき義務を負います(民法601条)。オーナー様は入居者様に対し、物件を適切に使っていただく環境を整えなくてはならないということです。民法606条の規定は民法601条を前提にしていますので、建物の修繕行為も「賃借人(入居者様)に対して物件を使用収益させるべき義務」に含まれます。

仮に物件に不具合が生じた場合、修繕のための工事の実施とその費用負担義務があるのは賃貸人(オーナー様)です。雨漏りや外壁の破損、給排水設備の故障などの報告があれば、オーナー様が主導して工事会社を手配し、速やかに工事を行わなければなりません。

一口に修繕といってもその原因はさまざま。物件に生じたあらゆる破損についてオーナー様側が一方的に修繕義務が生じるのは不公平でしょう。そこで重要となるのが賃貸人(オーナー様)の「修繕範囲」に関する法的基準です。

基準は使用収益に耐えうるかどうか

賃貸人(オーナー様)の修繕義務が生ずる破損はどこまでの範囲なのか、その基準となるのが「使用収益に耐えうる破損」にあたるかという点です。東京地裁の判例によると、賃貸人に修繕義務がある破損の基準は「修繕しないと入居者様が契約どおりの使用収益を行うことができない(生活できない)もの」とされています(東京地裁平成25年1月29日)。

例えば雨漏りや配管の詰まりなどは、入居者様がまともに生活できないトラブルにあたりますので、オーナー様の責任で速やかに修繕しなければなりません。一方、内壁の一部破損、室内の照明やパッキンの交換といったトラブルは入居者様の生活に支障をきたすものではないため、オーナー様の修繕範囲に入らないということになります。

工事の程度にも基準があります。オーナー様に修繕義務が生じる工事内容は「使用収益ができる状態にするために必要な限度にとどまる」程度までです。仮に排水設備が故障した場合、元の状態まで戻す修繕はオーナー様の負担となりますが、設備一式を最先端のものに交換する義務まではない、ということです。

なお、賃貸住宅の修繕に関するトラブルについては以下の記事も参照ください。

賃貸住宅の原状回復とは? トラブルになりやすい費用負担の考え方

賃貸住宅の修繕トラブルとは? 対処のポイントを詳しく解説

入居者様には善管注意義務がある

賃貸物件の使用については入居者様側にも「善管注意義務」があります。「善管注意義務」は原状回復費用の負担に大きく関わってきますので、法的な原則や仕組みについて一通り理解しておきましょう。

善管注意義務とは

「善管注意義務」とは民法400条に規定されている「善良な管理者の注意義務」のことです。民法400条は以下の内容となります。

民法400条

債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

出典:e-gov 民法(明治二十九年法律第八十九号)

賃貸借契約にあてはめると、債務者にあたる賃借人、つまり入居者様は引渡しのあるとき(賃貸借契約終了後、オーナー様に物件を明け渡す)まで、善良な管理者の注意をもって物件を保存しなければならない、ということです。

善管注意義務に関する具体的な内容については国土交通省の示したガイドラインが参考になります。このガイドラインによると、賃借人(入居者様)は「社会通念上要求される程度の注意をもって賃借物を使用しなければならない」とされており、善管注意義務に違反する事例については以下のような事例を列挙しています。

善管注意義務に違反している事例

➀通常の掃除を怠ったことによって、特別の清掃をしなければ除去できないカビ等の汚損を生じさせた場合

②飲み物をこぼしたままにする、あるいは結露を放置するなどにより物件にシミ等を発生させた場合

③物件や設備が壊れたりして修繕が必要となったにもかかわらず、賃貸人(オーナー様)に通知を怠った結果、物件等に被害が生じた場合

出典:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン再改訂版

入居者様が故意に設備や内装を破損したり、適切な対応をとらずに状態を悪化させたりした場合には善管注意義務違反となり、入居者様側が修繕費用を負担することになります。

原状回復はトラブルになりやすい

原状回復費用の負担については、実際にトラブルとなることが多いです。まずは基本ルールを定めた国土交通省のガイドラインを読み、原状回復についての基本的なルールを把握しましょう。

原状回復の定義

国土交通省の定めた原状回復についての定義を確認します。

原状回復の定義

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より引用)

内容を簡単にまとめると、入居者様の故意・過失によって後発的に生じた室内の汚れ・傷の修繕費用は「入居者様の負担」によって、入居前の状態に戻すことが義務づけられています。

しかし、入居者様の故意・過失以外の原因となる破損、例えば「経年劣化」による内装の汚れや、入居前から存在する破損などの修繕費用は、オーナー様が負担しなければなりません。

さらに定義内容で注意したいのが「通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」の部分です。契約内容や常識的な使用を大きく逸脱して生じた損傷部分は入居者様に原状回復義務が生じる一方、通常使用による劣化部分については入居者様ではなく、オーナー様に原状回復義務が生じる点に注意しましょう。

原状回復のガイドライン

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」については、現状の賃貸契約に関する原状回復についての基本指針となっているので、必ず一度目を通しておくことをおすすめします。

参照:国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

このガイドラインは、原状回復に関するトラブルを未然に防止することを目的に1998年に取りまとめられたものです。賃貸住宅標準契約書の基本理念や実際の裁判例、賃貸借契約取引の実務、さらには裁判事例やQ&Aなどが追加され、適宜改訂が行われています。

賃貸経営実務では国土交通省のガイドラインに加えて、自治体がより細かなガイドラインを定めている場合があります。例えば東京都は条例によって、原状回復に関する特約事項の中身を具体的に指定しています。物件の存在する自治体でこのような独自のガイドラインが存在する場合は、その指定内容を元に、各不動産会社が「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」を作成することが通例です。

参照:東京都住宅政策本部「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン第4版(令和4年12月)」

「通常の使用」の考え方

オーナー様に原状回復義務が生ずる、入居者様の「通常の使用」による経年劣化について、もう少し解説しましょう。

国土交通省のガイドラインでは「通常の使用」について、4つのパターンで説明しています。

(参考)「通常の使用」とは

A:賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの

B:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)

A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの

A(+G):基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの

このうち、BとA(+B)については賃借人に負担義務がある。

出典:国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

ポイントはBの区分で、契約で定めた内容や常識的な判断も含めて、入居者様側の規約違反や故意・過失による損耗があれば、入居者様(借主)側に原状回復義務が生じます。

例えば禁煙指定のアパートでのヤニによる汚れ、入居者様が故意に住宅設備を破壊した、壁に穴をあけたなどの事例は「通常の使用」とはいえないと評価されます。

原状回復費用負担の特約

原状回復費用の基本ルールでは、通常の経年劣化による室内の傷・汚れの修繕についてはオーナー様(貸主側)の負担となっています。しかし、いくら経年劣化といっても、入居者様が長年使用した後のクリーニング代すべてをオーナー様負担とするのはいささか不公平です。

そこで、実務上では入居者様にも一定の費用負担を請求できるよう、賃貸借契約時に慣習としての「特約事項」を定めます。賃貸借契約はあくまでも当事者同士の自由契約ですので、ガイドラインと異なる内容であっても貸主・借主の双方が合意していれば契約内容として有効です。例えば経年劣化などの原因を問わず、退去時のハウスクリーニング費用を一定額請求すると特約で決めておくことができます。

ただし、特約内容はあくまでも貸主と借主の公平な費用負担のために定めるものですから、不公平で一方的な内容だと無効です。特約を有効に活用するためには、特約に関する考え方や基本ルールをよく理解しなければなりません。次の項目でより詳しく解説します。

関連記事は以下を参照してください。

【事例付き】マンションの原状回復工事で収益改善!相場と工事内容を解説

賃貸住宅の原状回復とは? トラブルになりやすい費用負担の考え方

【事例付き】原状回復とリフォーム費用を解説! トラブル回避と収益改善

修繕に関する特約についての考え方

原状回復費用の負担についてまとめると、入居者様の故意・過失による破損は入居者様の負担、それ以外の経年劣化や建物構造的な問題が原因の破損部分はオーナー様側に修繕義務があります。

ただし、実際の事例においてはその線引きが難しいことも多々あり、オーナー様と入居者様で見解の食い違いが見られることもが少なくありません。

そこで、実務で重要視されているのが「特約」の存在です。特約によって物件特有の事情に合った具体的内容を定めることができ、結果的にトラブルの発生を予防することができます。

修繕費を入居者様負担とする特約

原状回復にかかる修繕費の負担は、経年劣化が原因の破損や入居者様の生活に支障をきたす破損したものは貸主(オーナー様)、借主(入居者様)の故意や不注意による破損は借主(入居者様)の負担となるのが原則です。しかし、実務上は必ずしも法律やガイドラインに沿った基準で契約する必要はありません。貸主と借主の双方の同意があれば、負担割合を変更した特約を結ぶことができます。

民法は原則として「契約自由の原則」のもと、当事者同士の合意内容を法律に優先させます。当事者同士の合意で問題解決が難しい場合は、民法の規定に従って事案を処理するのが基本的な流れです。

契約当事者双方が合意した内容であれば、オーナー様(貸主側)の費用負担を減らす特約を結ぶことも可能です。例えば修繕部分の原因に関わらず、原状回復費用の負担はすべて貸主(入居者側)とする内容も有効となります。

ただし、特約の内容があまりに不公平だったり、公序良俗に反したり、他の法律に抵触したりする中身であれば無効扱いとなってしまいます。国土交通省のガイドラインにおいて「特約が有効となるための3つの要件」が示されていますので、以下にあげておきましょう。

特約が有効となるための3つの要件

①特約の必要性と客観的・合理的理由があること

②入居者様が特約の存在・内容を認識していること

③入居者様が特約による義務を負担する意思表示をしていること

➀の要件によって、どちらかにとって一方的に不利な内容や、相場とかけ離れた費用負担を強いる特約は無効となります。

②の要件においては、特約の存在や内容を契約当事者同士が明確に認識していることが必要です。契約書や重要事項説明書の提示段階で、入居者様に特約内容をしっかり伝えなければなりません。

そして③の要件において、入居者様が特約内容について明確に合意する意思を示していることが重要となります。入居者様の合意のない特約はどんな内容であれ無効です。

この3要件を満たすかぎり、特約内容は自由です。特約内容はより細かく具体的なものでも構いません。例えば「ハウスクリーニングは入居者様の負担」「エアコン、給湯器の交換費用はオーナー様の負担」といった内容でもOK。特約内容に具体性を持たせることで、当事者同士での見解の食い違いを防ぐこともできます。

一般的には消耗品類を対象とする

実務上ほとんどの特約においては、消耗品の交換・修繕にかかる費用は入居者様の負担となっています。常識的に考えて消耗品の交換までをオーナー様が負担するのは不公平ですし、利便性も低いためです。

例えば電球・蛍光灯・ヒューズの交換などは日常的に行いますので、そのたびに費用請求するのは非効率でしょう。また、入居者様の利便性や好みによって交換する機会も多いですから、そのすべての費用をオーナー様が費用負担するのは不公平です。

給水栓・排水栓の取替えなども小まめに掃除していれば頻繁に起こるものではなく、トラブルが起こるのは入居者様の管理に問題がある事例がほとんどといえます。

消耗品や備品の費用負担については異論も出にくいので、特約によって入居者様の負担とするのが一般的です。

入居時の賃貸借契約で丁寧な説明を

具体的な内容は、賃貸契約締結時に交付する重要事項説明書で明示します。

原則としてエアコンやトイレ、給湯器などの設備本体の修理・交換は貸主(オーナー様)側の負担、消耗品の修理・交換は貸主(入居者様)側の負担と記載されることが多いです。消耗品の中身をより明確にしたい場合は、具体的な備品を特約上に記載します。

収益物件修繕の主な種類と費用相場

収益物件における主な修繕工事について、おおよその費用相場をそれぞれご紹介していきます。あくまでも参考例ですので、個々の物件の状況や工事内容、施工会社などによって金額が変わる点にはご注意ください。

参照:【事例付き】アパート経営の修繕と費用相場!収益を生み出す修繕内容

屋根・屋上

つねに風雨にさらされる屋根や屋上は12~15年に一度くらいのペースで修繕・防水工事を行うことになります。屋根の大きさや形状によりますが、塗装工事の費用は100万円ほどを想定しましょう。

経年劣化や災害による破損などにより屋根の葺き替え工事が必要になると、100~150万円ほど費用がかかります。

外壁の塗装と同様、屋根の修繕工事では塗装材料や屋根素材の種類によって費用が大きく変わります。特に耐久性に優れた素材を使用すると高額となる傾向です。建物の安全性と工事費用のバランスをとりつつ、物件にとって最適な塗料を選びましょう。

階段・廊下

階段や廊下も利用頻度が高く、傷みやすい箇所です。特にアパートでは外付けの階段が風雨にさらされやすいため、サビによる経年劣化が目立ってしまいます。

階段や廊下部分の塗装工事の頻度は5年に1度くらいのペースがよいとされていますが、費用は階段一基あたり5~15万円ほどです。費用は階段の規模や工事の難易度などによって変わってきます。

廊下部分は同じく5年に1度ペースでトップコート塗装を行います。費用相場は1㎡当たり2,000円前後といったところです。

外壁塗装

外壁塗装は建物の修繕工事のなかでも大規模な部類です。物件の安全性や外観の印象を大きく左右する意味で、重要度の高い工事といえるでしょう。

外壁塗装は塗装面積と使用する塗料のグレードによって費用が大きく変わります。物件の劣化状況によってひび割れ補修や防水工事も実施することになりますので、工事の着手にあたって施工会社に細かな見積もりを出してもらうことが大切です。

費用の相場としては定番のシリコン素材で1坪当たり1万2,000円程度、より耐久性の高い塗料だと2万円を超えます。塗装工事の頻度は12~15年に1度といったところです。

エアコン

エアコンは入居者様からの問い合わせの多い設備の一つです。昨今の厳しい気候状況を考えても、常に万全の稼働状態を維持しなければなりません。入居者様から問い合わせがあった場合は、至急修理や交換に対応する必要があります。

エアコンの修理は1台当たり1万5,000円程度ですが、故障の深刻さによっては10万円前後かかる場合も想定しておきましょう。交換の場合はエアコン1台当たり5~15万円前後といったところです。

なお、2022年の省エネ法改正によって、2027年度よりエアコンの省エネ基準が現在より大幅に引き上げられる予定です。2027年度以降、新基準を満たさないモデルは原則として製造・販売ができなくなります。現在収益物件で主流の「安価なスタンダードモデル」が姿を消し、設備更新時のコストが上昇すると見られています。

給湯器

給湯器も故障が発生すると迅速に修理しなければならない設備の一つです。頻繁に故障することは少ないものの、使用頻度の高い冬場は意外とトラブルが起きやすいので注意が必要です。給湯器の修理費用の相場は1台当たり6,000円から5万円前後、新しい機種への交換は1台当たり10~15万円ほどになります。

ユニットバス・浴室設備

水回りは入居希望者が注目する箇所の一つです。古びていたり、清潔感がなかったりすると物件としての魅力を大きく損ねてしまいます。

壁や床など、設備の一部を補修するだけの場合は、2~20万円前後の費用で済みますが、ユニットバス一式と交換する場合は50~150万円ほどかかるとお考え下さい。

浴室のサイズによって費用が大きく変わる点にも注意しましょう。標準サイズとされる0.75坪サイズはコスパに優れますが、これより大型サイズになると価格が1.3倍以上となるケースもあります。

トイレ

トイレも使用頻度の高い設備で交換や修理を必要とします。ほかの水回り設備と同じく、清潔感のある状態を保つことで、入居者様に喜ばれやすい箇所です。

トイレは便器を交換する場合、便器本体と交換工事の費用を合わせて1台当たり4~10万円程度かかると想定しましょう。温水洗浄便座の取換え・交換工事も工事費と本体価格込みで同じくらいの金額がかかります。

ガスコンロ

キッチンのガスコンロも消耗品ですので、メーカーの推奨するタイミングが来たら交換を検討しましょう。ガスコンロの交換時期は8~10年程度で、1台当たりの交換費用は本体と工事費込みで5~15万円程度、レンジフード込みだと10~30万円程度が相場といったところです。

修理のみ必要となる場合は、1台あたり1,000〜1万円程度で対応してもらえることがほとんどです。なお、都市ガス用、プロパンガス用で価格差はありませんが、ガスコンロのグレードやオプションの有無で金額が変わる点に注意しましょう。

クロス

部屋内部の雰囲気を大きく左右する壁のクロスは、だいたい6〜8年程度に1度が張り替えの目安です。使用状況によって劣化部分が目立ってきますが、比較的低価格で大きな集客効果を得られるため、空室対策としても効果的です。

通常、退去があったタイミングごとでクロスの張り替えを検討しますが、工事費用の相場は1㎡あたり1,000〜1,500円程度。クロスの種類は素材や柄を含めて種類が豊富なため、高性能な壁紙を選ぶと高コストになります。また、職人の技術力次第で仕上がりが大きく違ってくるため、経験豊富な職人の在籍する施工会社を選ぶことも重要です。

クッションフロア

床に張るシート状の床材であるクッションフロアも、部屋のイメージに直結する内装部分です。防音性や防水性に優れ、施工も簡単なことから導入する物件が増えています。

ただ、クッションフロアは変形や変色がしやすく、石材や木材と比べて耐用年数は比較的短め。張り替えのタイミングは8~12年に1度で、壁のクロスと同時に張り替えるケースが多いでしょう。

費用の相場は1㎡あたり3,000〜5,000円程度です。デザインや性能の種類が豊富なので、費用対効果を考えた素材を選ぶ必要があります。

賃貸経営で負担する修繕費と節税の関係

物件の修繕で負担した費用のうち、一定の条件を満たすものは勘定項目の修繕費として計上できます。修繕費は税務申告時に必要経費扱いとなるため、節税につなげることが可能です。

ここでは修繕費となるための要件を中心に、修繕費用と税金の関係性について解説します。

なお、賃貸アパート・マンションの修繕費の相場に関しては、こちらの記事を参照ください。

賃貸アパートの改修工事や大規模修繕費用はいくら?改修項目別に解説

大規模修繕工事はアパート・マンションになぜ必要?工事内容と費用を把握【総集編】

小規模なものは修繕費として経費計上可能

修繕にかかった費用のうち、必要経費として申告できる修繕費となる要件は以下の通りとなっています。

➀かかった費用が20万円以下のもの

②修繕の周期が3年以内で実施されるもの

③通常の維持管理・原状回復のために支出されるもの

④品質が向上する場合であっても60万円未満、あるいは固定資産取得価格(前事業年度終了時点)の10%以下のもの

原則として、物件の価値を維持するためにかかった修繕費用は修繕費となります。小規模な補修や原状回復工事、必要最小限のメンテナンスなどはほぼすべて該当するでしょう。

また、工事によって物件のスペックが上がる場合であっても1件当たり60万円以下、または固定資産取得価格(前事業年度終了時点)の10%以下であれば修繕費としての計上が可能です。

具体的に修繕費として計上できる工事例を挙げておきましょう。規模の大小にかかわらず、マンションやアパートのスペック維持を目的とした工事が中心です。

・雨漏り補修のための外壁工事・屋根の改修工事

・耐久性能や断熱性能が補修前と同程度の塗料を使用した外壁塗装工事

・室内の原状回復で、入居者様の入居前の状態に戻すための内装工事

・エアコン・給湯器など、交換前と同程度の性能・品質の製品への再交換

修繕費に含まれる工事の規模は比較的小さいものが多いですが、アパート全体でかかった費用を合計すると不動産所得の圧縮効果は高いです。毎年税務申告時に経費計上ができるため、安定した節税効果も期待できます。

資産価値を高めるものは資本的支出

外壁塗装、屋根の張替えなどの大規模修繕や新型モデルへの設備交換、大幅なリノベーション工事など、物件そのものの価値向上につながる支出全般は資本的支出として扱われます。

資本的支出は修繕した資産の耐用年数に応じた減価償却率を掛けて計算しますので、複数回に分けて計上することになります。

例えば、保有物件が築28年の鉄骨造アパート(鉄骨の厚さ3〜4mm)と仮定します。工事費用が270万円の外壁、屋根の大規模修繕を実施しました。鉄骨造建物の法定耐用年数は27年ですので、この物件は耐用年数を過ぎており、減価償却期間は5年で計算されます。

結果として、270÷5=54で、工事費用は5年間54万円減価償却費として計上されます。このように、修繕費と資本的支出では会計上の処理が異なるので、納税を含めたキャッシュフロー計算では十分にご注意ください。どのような種類の工事を、どのタイミングで実施するかの見極めは、賃貸経営上きわめて重要となります。

修繕費と資本的支出の判断基準

工事費用が修繕費あるいは資本的支出のどちらかにあたるかについて、両者の区分は複雑です。実際に裁判で区分について争われた事例もあったため、実務上では金額や目的によって形式的な判定基準が設けられています。

費用は20万円未満か

一つ目の判断基準は、支出した金額による区分です。リフォーム工事やリノベーション工事の内容にかかわらず、1件当たりの工事額が20万円未満の場合は修繕費として計上できます。

注意すべき点は、支出の合計金額が20万円未満であることが条件となっている点です。例えば分割払いで1回あたり支払いが20万円未満であっても、合計金額が50万円、100万円の工事費用であれば、この判断基準は適用されませんのでご注意ください。

日々の賃貸経営で頻繁に起こる備品の交換や軽微な修理工事などは、この20万円未満の基準に収まることがほとんどです。

出典:国税庁 第8節 資本的支出と修繕費

おおむね3年以内の周期で行われるものか

2つ目の判断基準となるのが、修繕工事の周期です。おおむね前回の修繕工事から3年以内で行われる修繕工事にかかる費用は修繕費扱いとなります。3年以内の間隔で行われる工事は主に建物のメンテナンス、つまり資産価値を維持するための工事と考えられるためです。

ただし、たとえ小規模の工事だったとしても修繕内容を証明する必要はあります。工事内容に関する資料、見積書や請求書などはきちんと保管しておきましょう。

現状維持のための支出か

工事費用が20万円以上となり、かつ修繕工事の周期も3年以上に該当するケースでも、工事目的そのものが物件の現状維持にある場合は修繕費として計上される余地があります。

典型的な事例に、台風や大雨によって屋根や排水管などが一部破損した際の修繕工事や、エレベーターや立体駐車場などの設備不良時に行う修理工事などが挙げられます。

こうした修繕工事の目的は破損・故障した箇所を元の状態に戻すことにありますから、金額の多寡にかかわらず会計処理上修繕費として処理してよい、ということです。

一方、災害時や設備不良に対する工事内容として、建物の構造そのものを強化したり、最新設備へアップグレードしたりする工事の場合は、資本的支出とみなされる可能性が高くなります。

資産価値や使用可能期間を増加させるか

工事の実施によって建物の耐用年数が延びたり、あきらかに資産価値が増大したりすると考えられるケースは、資本的支出と評価されます。

例えば外壁や屋根の塗装工事であっても、従前の塗装剤と比べて上質な素材を使用した場合は建物の資産価値向上のための工事と判定される、ということです。

安全確保のために避難階段を新たに設置したり、建物の一部を用途変更したりする工事も資本的支出と判定されます。従前の建物に新たな価値を加える工事の費用は、基本的に資本的支出です。

過去にはマンションやアパートの部屋に最新のシステムキッチンやユニットバスを導入した工事費用も、資本的支出と判定された判例があります。

出典:国税不服審判所 2014年4月21日裁決

資産価値を高めると判断されるポイントをまとめると

● 住宅機能がグレードアップする
● 従前の材質・設備よりも明らかに上質の素材に交換する
● 工事の結果、建物や設備の使用可能期間が長くなる

このように判断される工事は修繕ではなく、不動産の価値向上のための工事と判定されると理解しておきましょう。

60万円未満か、前期末取得価格の10%以下か

金額に関しては20万円未満のほかにもう一つ判定基準があります。以下の基準です。

● 物件の資産価値を維持するための工事で、総額60万円未満であること
● 該当する物件の前期末取得価格の10%以下の金額であること

2項目にある「前期末取得価格」とは、前事業年度終了時点での該当物件(固定資産)の取得価格のことです。つまり物件購入時の価格に加えて、前年までに実施した資本的支出分や減損部分などを総合した物件取得にかかった費用全ての金額を意味します。

前期末取得価格の10%以下の条件によって、金額制限はかなり幅を取れるようになるため、実務上は利用されることが多い基準です。もちろん、工事内容は原状回復やメンテナンス、設備の修理工事など、資産価値を維持する中身に限定される点は理解しておきましょう。

出典:国税庁 第8節 資本的支出と修繕費

区分の特例

ここまで工事目的や費用の大小、工事の周期などを基準に修繕費と資本的支出の判断が分かれることを解説してきましたが、実務での工事では建物の価値を維持するものなのか、資産価値向上を目的とするものなのかの線引きはかなりあいまいなケースも多いです。

そこで、修繕費か資本的支出か不明な場合の最終的な判断基準として、

● 支出額の30%と取得価額の10%のいずれか少ない額を修繕費とする
● 残りの金額を資本的支出として扱う

といった会計処理も認められています。

ただし、この判断基準を利用する場合の条件として「継続的な適用」が必要です。つまり、次回の修繕工事の際もこの基準を継続して適用することが求められます。

この特例は、工事費用についての判断の迷いや、想定される税法上のトラブルなどを回避するための実務的な救済措置といえます。実際に工事費を修繕費か資本的支出かを明確に区別できない事例も多いため、実務では利用機会の多い基準です。

出典:国税庁 第8節 資本的支出と修繕費

災害の場合の特例

震災や風水害などの災害によって被害を受けた場合の復旧費用は、特例的に修繕費として認められる範囲が広くなります。

具体的には、被災した固定資産(被災資産)について、その現状を回復するための工事費用や被災前の機能・効能を維持するための補強工事、さらには排水または土砂崩れを防止するための防災工事にかかる費用などは修繕費として扱われます。

この特例は被災資産の現状復旧を迅速に支援するため、かなり柔軟に経費化できる仕組みとなっています。なお、資本的支出に含まれるかあいまいなケースでは、支出額の30%を修繕費に、残りを資本的支出として計上する処理も可能です。

この基準はあくまでも災害からの復旧を目的とする工事が対象となります。被災資産に替えて新たな建物や設備を建設する場合は資産の取得となりますので、修繕費の対象からは外れる点にご注意ください。

少額減価償却資産の特例

もう一つの重要な特例が「少額減価償却資産の特例」です。この特例は中小企業を対象にした制度で、青色申告中の法人が行った1件30万円未満の工事について、当該年度の工事費用合計額が300万円を上限に全額経費計上できます。

この特例については2年ごとに適用期限が延長されており、現状での期限は2024年までとなっています。対象となる企業の要件が細かく決まっていますので、気になる方は国税庁のホームページでご確認ください。

出典:国税庁 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

少額減価償却資産の特例は、1件当たり30万円(年度の合計額300万円上限)以下に抑えた複数の工事をまとめて経費計上することに強みがあります。例えば、新型の給湯器1台25万円を10台分交換した場合、総額250万円分を全額経費計上できることになります。

なお、実際のリフォーム事例については以下の記事を参照ください。

不動産投資成功の鍵はリフォームにある! 戦略的なリフォーム投資で資産価値向上を

満室経営にする賃貸経営リフォームとは? 4つのリフォーム事例を紹介

まとめ

アパートやマンションの修繕は物件の価値を維持するのに必要不可欠です。お手持ちの物件の価値を高めるための投資だと考え、無理のない範囲で効果的に投資する必要があります。

修繕問題は原状回復費用などをめぐって入居者様とトラブルになりがちです。法律上のルールを理解したうえで、トラブルを未然に防ぐための対策を取る必要があるでしょう。税金面においても修繕費用が修繕費にあたるか、資本的支出にあたるかによって違う点にもご注意ください。

賃貸経営における修繕費用の扱いは複雑です。工事そのものだけでなく法的安全性、節税対策の知識などの専門的な知見が必須といえます。少しでも不安がある場合は、賃貸管理会社などの不動産の専門家に相談してみましょう。

リロの不動産】では建物の修繕でお困りのオーナー様からの数多くのご相談をお受けしています。【リロの不動産】は全国トップレベルの豊富な管理実績を生かしつつ、資金調達方法から節税方法にいたるまで、あらゆる面でオーナー様に寄り添ったサポートを実施中です。

賃貸経営で何かお悩みがございましたら、ぜひ【リロの不動産】までお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。