収益物件の売却|高値売却する出口戦略の立て方と注意点を事例で解説
2026.02.03
投資目的で不動産を所有している方や、これから不動産投資を始めたいと考えている方の中には、「収益物件を将来的に手放すことになった場合、高く売ることができるのだろうか」「投資用の不動産を高く売るためのコツが知りたい」「不動産が高く売れるタイミングはいつなのか」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では収益物件を売却する流れや、より高く売却するコツ、高く売却するために知っておきたい注意点、出口戦略の立て方などを解説します。
▼この記事の内容
●収益物件の売却は、資産運用の重要な出口戦略。
●売却戦略は、ローン残債と査定価格の比較から始まる。査定が残債を上回るアンダーローンなのか、逆のオーバーローンなのかを必ず確認する。
●収益物件の売却時にかかる税金としては、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、消費税がある。消費税の課税事業者にはインボイス制度が始まっているため、注意する。
●売却のタイミングは、不動産市況の上昇局面、所有5年超(長期譲渡で税率が軽くなる)、デッドクロス到来(節税メリット低下)、大規模修繕の前(多額のキャッシュアウト前)が代表例。
●売却で注意すべき実務ポイントは、①入居率を高めて実質収益力を示す、②外観・共用部・管理状態を整える、③時代のニーズに合った設備で競争力を確保、④出口戦略は購入時から、⑤投資家に強い不動産会社へ仲介依頼の5つ。
目次
収益物件はどのように売却すればいいのか?高く売る秘訣は?

収益物件はどのような流れで売却すればいいのでしょうか。高く売却するポイントもあわせて解説します。
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①不動産業者を探す・物件査定を受ける
どのような業者に売却を任せるかで、収益物件が高く売れるかどうかが決まるといっても過言ではありません。そのため業者選びは収益物件の売却の成否を決めるうえで、とても重要なポイントになります。
収益物件の売却サポートが受けられる不動産業者には、不動産仲介業者・不動産買取業者・不動産買取+仲介を行っている業者に大別できます。
それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、複数の業者に査定を依頼し、相場を把握することが収益物件の売却の第一歩となるでしょう。
不動産仲介業者に売却を依頼するメリット・デメリット
不動産仲介業者に売却を依頼するメリットは、不動産買取業者に依頼する場合よりも高く売却できる可能性が高いことです。
ただし、仲介は買取よりも成約するまでに時間と手間がかかる場合が多く、仲介手数料の負担をともなうこと、個人に売却する場合は、契約不適合責任など引き渡し後の保証が求められるなどのデメリットもあります。
マイホームとしての需要が高い物件や、駅近・築浅の収益物件など条件がよく担保評価が高いために個人でも融資を引きやすい物件の場合は、不動産仲介業者に売却を依頼することはおすすめの選択肢です。
しかし、現金化を急いでいる場合には向かない可能性が高く、築古の物件や変形地など売りにくい物件だと、仲介で思うような結果が得られないリスクも考えられます。
不動産仲介業者に売却を依頼し、高値で売却を成立させるためには、正しく需要を見極めることが大事なポイントです。地域の需要やニーズを把握するために地域事情に詳しい不動産会社から情報収集を行いましょう。
不動産買取業者に売却を依頼するメリット・デメリット
不動産買取業者に売却を依頼するメリットは、不動産仲介業者にかかる仲介手数料(売却価格×3%+6万円が上限)などの手数料負担がなくなること、契約不適合責任を負わなくてよいこと、売却にかかる時間と手間が最小限ですむことなどが挙げられます。
手間をかけずに早く確実に売りたい方や、物件の築年数が古いなど売りにくい収益物件の売却を希望している場合におすすめの選択肢です。
一方で、不動産買取業者に売却を依頼するデメリットは、不動産仲介業者に依頼する場合ほど高くは売れない可能性があることです。そこである程度、時間に余裕があれば、不動産仲介業者などほかの選択肢も検討されることをおすすめします。
買取保証という選択肢もある
収益物件の売却方法としては、仲介・買取以外に「買取保証付き仲介」という選択肢もあります。
買取保証とは、一定期間は不動産会社に売却活動を依頼し、市場での高値売却を目指しつつ、期限内に売却が成立しなかった場合は、あらかじめ決めておいた価格で不動産会社が買い取る仕組みです。
この方法の最大のメリットは、「高値売却の可能性」と「売却期限の確定」を両立できる点にあります。仲介のみの場合は、いつ売れるか分からない不安が残りますが、買取保証を付けることで、最終的な出口価格とスケジュールが明確になります。そのため、ローン返済のタイミングが迫っている場合や、買い替え・相続対策などで売却時期を確定させたいオーナーにとっては、有力な選択肢となります。
一方で、買取保証価格は市場価格よりも低めに設定されるのが一般的で、保証価格を基準にすると想定より売却額が下がる可能性があります。また、保証付き仲介を取り扱っていない不動産会社もあるため、対応できる会社選びが重要です。
時間的な制約がありつつも、できる限り高く売却したい場合には、仲介・買取・買取保証を比較検討したうえで、自身の状況にもっとも合った方法を選ぶことが、収益物件売却成功のポイントといえるでしょう。
②ローン残債と査定価格を比較する
収益物件を売却する際は、不動産投資ローンの残債額と査定価格を必ず比較し、売却戦略を立てることが重要です。
売却価格がローン残債を上回るのか、下回るのかによって、取るべき対応や売却方法は大きく変わります。ここを曖昧にしたまま売却活動を進めると、想定外の自己資金負担や売却後のトラブルにつながるため、初期段階での正確な把握が欠かせません。
アンダーローン
アンダーローンとは、物件の査定価格(売却想定価格)がローン残債を上回っている状態を指します。例えば、ローン残債が5,000万円で、査定価格が6,000万円の場合、アンダーローンとなります。この状態であれば、売却代金でローンを完済でき、さらに手元に資金が残る可能性があります。
アンダーローンの最大のメリットは、売却の自由度が高いことです。不動産仲介を利用して高値売却を狙う、買取保証付き仲介を選ぶなど、時間と価格のバランスを取りながら柔軟な戦略を立てられます。また、金融機関との交渉も比較的スムーズで、抵当権抹消に関する手続きで大きな障害が出にくい点も特徴です。
売却後に残る資金を次の投資に回したり、借入比率を下げて財務状況を改善したりと、資産組み替えの選択肢が広がる点もアンダーローンならではの強みです。ただし、アンダーローンであっても、仲介手数料や譲渡所得税などの諸費用を差し引いた「最終的な手残り額」まで確認することが重要です。表面的な差額だけで判断せず、実質的な収支を踏まえた売却計画を立てましょう。
オーバーローン
オーバーローンとは、ローン残債が物件の査定価格を上回っている状態を指します。例えば、ローン残債が6,000万円で査定価格が5,000万円の場合、売却しても1,000万円が不足するため、その差額を自己資金で補填しなければなりません。収益物件の売却において、もっとも慎重な判断が求められるケースといえます。
オーバーローン状態では、売却そのものが難航することも少なくありません。売却の際には金融機関の抵当権抹消が必要ですが、オーバーローンの場合は不足分をどう補うかについて金融機関の同意をとりづらくなるためです。自己資金を投入できる場合は問題ありませんが、資金余力がない場合には、任意売却や返済条件の見直しといった選択肢を検討する必要が出てくるでしょう。
無理に売却を進めると、生活資金や次の投資資金を圧迫し、資産全体のバランスを崩すリスクもあります。そのため、オーバーローンの場合は「今すぐ売るべきか」「保有を続けて収益改善を図るべきか」を冷静に判断することが重要です。
複数の不動産会社に査定を依頼し、現実的な売却価格を把握したうえで、長期視点での資産戦略として売却を位置づけることが求められます。
③不動産業者と媒介・代理契約を結ぶ
よい業者が見つかったら、不動産業者と契約を結びます。契約方法には媒介契約と代理契約の2種類があります。それぞれどのような契約で、どのような場合に向いているのか解説します。
媒介契約とは?
不動産売買における媒介契約とは、売買契約を成立させるための営業・宣伝活動や契約などの手続きを不動産会社に依頼する契約のことです。不動産売買における媒介契約には、1社の不動産会社に限定して売買の仲介を依頼する「専任媒介契約」と複数の不動産会社に買主探しを依頼できる「一般媒介契約」の2種類があります。
一般媒介契約には、複数の不動産会社と契約を締結できるメリットのほか、仲介手数料を受け取れるのは契約を成立させた1社だけのため、一般媒介契約を結ぶ不動産会社同士に競争意識が生まれ、早期の売却が実現する可能性が期待できます。
しかし、不動産会社から見て仲介をする魅力が高い物件でなければ、競争意識が生まれず、積極的なサポートが得られない可能性も考えられます。
一方で、専任媒介の場合は、物件の売却を1社のみに任せるという性質上、専任媒介契約を結ぶ不動産会社にとっては、高い確率で仲介手数料が見込めるため、積極的な営業活動につながります。
専任媒介契約には、7日以内の指定流通機構登録義務と、14日に1回以上の販売状況報告義務があるので、よい業者が見つかった場合には、進捗状況が把握しやすく、比較的早く好条件で売れる可能性がある専任媒介契約がおすすめです。
ただし、不動産会社の中には、自社で利益を独占するために、物件情報の露出を制限する企業も存在するので注意しましょう。物件情報の囲い込みが発生してしまうと、機会損失につながり、売却にかかる時間が長期化するリスクをともなうため、専任媒介契約を結ぶ不動産会社は慎重に選ぶ必要があります。近隣に売却活動を悟られたくないケースの場合は専任媒介の利用をおすすめします。
また、媒介契約には「専任媒介契約」よりもさらに拘束力の強い専属専任媒介契約があります。専属専任媒介契約は、売却を1社の不動産会社のみに依頼する点は専任媒介と同様ですが、売主自身が買主を見つけて直接取引することができないという点が大きな特徴です。
不動産会社には5日以内の指定流通機構(レインズ)登録義務と、1週間に1回以上の販売状況報告義務が課されており、進捗管理はもっとも厳格です。売却活動を完全に任せたい場合に適した契約形態といえるでしょう。
代理契約とは?
不動産売買における代理契約とは、オーナー様のかわりに第三者(買主)と売買契約を締結する権利(代理権)を、オーナー様が不動産会社に対して与え、オーナー様のかわりに不動産売買契約を締結してもらう契約方法です。
代理契約の場合、代理人である不動産会社に不動産の売買契約書を交わす権利も与えられる点が媒介契約と異なります。
不動産の売買においては、遠方で契約手続きが難しいなど契約が行えない特別な事情がある場合に選択される方法で、手間を省く目的のみであれば、専任媒介契約を結ぶのが一般的です。
また代理契約には双方代理の禁止という、売主と買主両方と代理契約を結んではいけないルールが存在します。代理契約を選択する場合も、大きな権利を与えることになるので、専任媒介契約同様に不動産会社は慎重に選ぶ必要があります。
③売却の戦略を立てる
周辺地域の動向やニーズをもとに、いくらで売り出すのか、誰をターゲットとするのかなど売却の戦略を立てます。税金や手数料を見積もり、希望金額で売却できた場合、手元にいくら残るかこのタイミングでシミュレーションを行います。
データドリブンに高値売却の根拠を示し、具体的なターゲット設定ができるほど、物件と広告の訴求内容が一致してお問い合わせの増加につながるでしょう。地域の情報や入居者様のニーズを熟知した不動産会社をパートナーに選べば、必要な情報収集が容易にでき、物件の魅力を最大限に引き出すことで、収益物件を高く売却できる可能性が高まります。
④販売活動を行う
業者独自のネットワークや、広告などを活用して買い手を見つけます。お問い合わせや内見希望があった場合に対応するだけではなく、オーナー様でも反響状況を定期的に確認し、反応が少ないようであれば、契約している不動産会社の担当者と相談しながら計画を見直すことも必要です。
一般的な居住用の物件と収益物件では購買層や購買力が異なるため、どのような販路で販売活動を行うかも重要なポイントです。既に賃貸経営をはじめている不動産オーナー様が、収益拡大のために買増しやステップアップの物件購入をするケースも多くあります。オーナーチェンジの需要を狙うためにも、不動産オーナー様へ売却情報を伝えるネットワークや仕組みを利用できると安心です。
例えば、収益拡大したい不動産オーナー様から優先的に物件情報を紹介することで、希望に近い価格で売却できる可能性が高まります。
⑤条件調整・売買契約を締結する
購入申し込みがあったら、購入希望者の掲示した条件を確認し、具体的な交渉に入ります。不動産会社は売主および買主双方の希望を確認し、それぞれの条件を調整します。このことを「条件交渉」といいます。
売主および買主の合意が得られたら、売買契約を締結しましょう。契約の際には、「本人確認書類」「登記済権利証」「印鑑証明書」「収入印紙」「印鑑(実印および認印)」を準備しておきます。
そして契約締結の際には、認識のずれがないよう、契約内容を細部まで確認するなど、細心の注意を払いましょう。このタイミングで、賃貸管理会社や金融機関へ物件を売却することを伝え、所有者変更に必要な手続きを行います。
補足となりますが、賃貸管理会社が売買の支援を行うケースもあります。より好条件での売却を行うためにも販売活動を行う前に管理会社に打診することで、オーナーチェンジができる可能性が高まります。
⑥物件を引き渡す
決済と同時に物件を引き渡します。決済日当日は、以下の流れで進みます。
- 司法書士が売主および買主の本人確認および所有権移転登記に必要な書類の確認を行う
- 買主側から売主側へ残代金が支払われる(売主は確認後領収書を発行する)
- 鍵および必要書類の引渡しを行う
- 司法書士への報酬および不動産会社への仲介手数料を支払う
収益物件を個人に売却する場合は、契約不適合責任など引き渡し後の保証が必要となるケースもあるため注意が必要です。
収益物件の売却時にはどのような手数料や税金がかかるのか?

収益物件の購入時に諸費用や税金がかかることは一般的に知られていますが、売却時にも仲介手数料や抵当権抹消登記の費用、印紙税・登録免許税・譲渡所得税などの税金が発生します。どのような手数料や税金がかかるのかを理解し、手数料や税金をふまえたシミュレーションを行いましょう。
収益物件の売却時にかかる税金
売却時にかかる税金には、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、消費税がかかります。それぞれどのような税金で費用負担の目安はいくらくらいを想定しておけばよいのか解説します。
印紙税
不動産の売買契約では、売買契約書に印紙を貼る必要があります。売主保管用と買主保管用の計2通の売買契約書を作成し、1通分の印紙税を売主と買主で負担するのが一般的です。
印紙税の金額は、売買価格が1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円、5,000万円超1億円以下の場合は6万円と決まっていますが、1997年4月1日から2024年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書は、税率の軽減があるため、1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円、5,000万円超1億円以下の場合は3万円になります。(出典:国税庁サイト|不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書)
登録免許税
登録免許税とは、不動産登記上の所有者の名義が変わる場合に発生する税金のことで、売却時にアパートローンの残債がある場合には、抵当権抹消登記の費用が発生します。
抵当権抹消登記の費用は不動産1件につき1,000円で、土地と建物を売却する場合は2,000円の登録免許税がかかります。
(参考:国税庁サイト|登録免許税の税額表:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁 (nta.go.jp))
譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)
譲渡所得には譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を譲渡する場合「長期譲渡所得」と所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」があり、不動産の売却で利益が出た場合に譲渡所得税が課せられます。
長期譲渡所得の場合は所得税15%と住民税5%の合計20%の税金がかかりますが、短期譲渡所得は税率39%(所得税30%+住民税9%)と税負担が重くなります。当該理由により、取得してから5年以内に売却を考えているのであれば注意が必要です。
土地や建物を譲渡する場合は分離課税の対象となり、ほかの所得との損益通算は一定の場合を除き認められていません。
譲渡所得は以下の計算式で求めることができます。
譲渡所得=不動産の売却価格 -(取得費+譲渡費用)
消費税
土地の売却は非課税ですが、仲介手数料、建物には消費税がかかります。消費税の課税事業者でなければ免税のため、副業として小規模で不動産投資を行っている方など、消費税を払う必要がない場合もあります。
消費税の課税事業者とは、事業を行っており、「前々年の課税売上が1,000万円を超えている方」、もしくは「前年の1月~6月の課税売上が1,000万円を超え、さらに支払給与額の合計が1,000万円を超えた方」が対象です。
そのため、課税事業者が建物を売却した場合は、消費税がかかります。さらに、売却を不動産仲介会社を通して行った場合は、不動産仲介会社に対して仲介手数料の支払いが発生します。この仲介手数料にも消費税が課税されます。
そのほか、ローンの一括繰り上げ返済手数料や司法書士に登記を代行したもらった際の報酬にも消費税がかかることを覚えておきましょう。
インボイス制度

収益物件を売却する際には、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の影響についても理解しておく必要があります。インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために、適格請求書発行事業者が発行するインボイス(適格請求書)の保存が必要になる制度で、2023年10月から開始されています。
不動産売却において注意したいのは、仲介手数料や建物売却にかかる消費税の扱いです。売主が課税事業者であり、かつ適格請求書発行事業者として登録している場合、買主や仲介会社はインボイスをもとに仕入税額控除を行えます。一方で、売主が免税事業者の場合や、課税事業者であってもインボイス発行事業者として登録していない場合、買主側は建物部分にかかる消費税について仕入税額控除ができません。
法人や課税事業者が収益物件を購入するケースで特に影響が大きく、インボイスを発行できない売主の物件は、実質的な取得コストが上がるため、価格交渉で不利になる可能性があります。
そのため、収益物件の売却を検討する際は、自身が課税事業者か免税事業者かだけでなく、インボイス発行事業者として登録すべきかどうかも含めて検討することが重要です。
収益物件の売却時にかかる手数料
収益物件の売却時には、税金だけではなく、不動産業者や金融機関に支払う手数料も発生します。
引き渡し前の原状回復工事費用やクリーニング費用なども売主が費用を負担して行うのが一般的で、土地の形状や広さ、境界などを明らかにするための測量費の負担が必要になる場合もあります。
もし収益物件にオーナー様が住んでいた場合には、引っ越し費用などもかかりますので、忘れずに見積もっておきましょう。
不動産業者に支払う手数料
不動産業者へは広告料や仲介手数料などを支払う必要があります。仲介手数料の上限は売買価格の3%+6万円+消費税です。
チラシの作成やポスティング、ネット掲載などにかかる広告料は仲介手数料に含まれるのが一般的ですが、大手メディアへの広告掲載料など「特別に依頼した広告」にかかる広告料はオーナー様が承認したものにかぎり、オーナー様の実費負担となります。
金融機関に支払う手数料
アパートローンの残債がある場合には、アパートローンの一括返済手数料がかかるのが一般的です。ただし、ネットバンクなど手数料が無料の金融機関も存在します。
一括返済にかかる手数料だけではなく、ローン残債より売却価格が低い場合には、差額を現金で準備しなければいけないことも理解しておきましょう。
司法書士に支払う手数料
先述の抵当権抹消登記は司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士報酬は2~3万円程度が相場といわれています。
司法書士の主な仕事の1つに「土地や建物の登記」があり、代理人として登記を行う場合は司法書士しか行えないことになっています。そのため、自分が登記を行えない場合は、司法書士に依頼する必要があります。
司法書士に依頼することで、売買の当事者の本人確認や意思確認も行えるので、スムーズに登記手続きを進める意味でも、司法書士に依頼する方がいいでしょう。
収益物件を売却するタイミングとは?
ここでは、収益物件を売却するうえで適切なタイミングについて詳しく解説します。
不動産価格が上昇しているとき

収益物件を売却するタイミングとして、不動産価格が上昇している局面で売ることは、不動産投資の基本かつ鉄則といえます。
不動産価格は景気動向、金利、人口動態、金融機関の融資姿勢など、複数の要因が重なって変動します。区分マンション、一棟アパート、一棟マンションといった収益物件も例外ではなく、市況が好調な局面では投資家の購入意欲が高まり、物件価格が押し上げられます。
このような上昇局面で売却できれば、家賃収入によるインカムゲインだけでなく、購入時よりも高く売ることでキャピタルゲイン(売却益)を得られる可能性があります。取得時に相場より安く購入できている場合や、運営改善によって収益性を高めている物件であれば、売却時の評価額が大きく伸びるケースも珍しくありません。
2026年現在の不動産市場を見ても、建築コストの上昇や新築供給の減少の影響により、全体としては価格上昇局面にあるといえます。ただし、市況は永遠に続くものではなく、金利上昇や景気後退をきっかけに転換する可能性もあります。そのため、「今は保有し続けるべきか」「高値圏のうちに売却すべきか」を定期的に見直し、市況が追い風のうちに売却を検討する姿勢が重要です。
所有期間が5年を超えたとき
収益物件の売却タイミングを考えるうえで、所有期間が5年を超えたかどうかは重要な判断基準になります。不動産を売却して譲渡所得が発生した場合には、譲渡所得税(所得税・住民税)が課されますが、その税率は所有期間によって大きく異なります。
具体的には、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%です。一方、5年を超えている場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%まで下がります。この差は非常に大きく、同じ売却益でも手元に残る金額が大きく変わります。
例えば、譲渡所得が1,000万円出た場合、短期譲渡では約396万円が税金として差し引かれますが、長期譲渡であれば約203万円に抑えられます。所有期間が5年を超えるだけで、約200万円近い差が生じる可能性があるのです。
そのため、売却を急ぐ特別な事情がなければ、長期譲渡所得になるタイミングまで保有し、その後に売却を検討するのが合理的な戦略といえます。
デッドクロスを迎えたとき

収益物件の売却タイミングとして重要なのが、「デッドクロス」を迎えたときです。
デッドクロスとは、ローン返済における元本返済額が、減価償却費を上回った状態を指します。不動産投資では、減価償却費を経費として計上することで課税所得を圧縮し、所得税・住民税を抑える節税効果が期待できます。
賃貸経営の年次が進むと、減価償却費はじょじょに減少していきます。ローン返済も進んでいくのですが、経費計上できる利息分の減少のペースのほうが早いため、元本分が相対的に大きくなります。ある時点を経過すると減価償却費が元本返済額を上回り、帳簿上の利益が急増し、税負担が一気に重くなる局面が訪れます。これがデッドクロスです。
デッドクロスを迎えると、所得税・住民税の節税メリットはなくなります。節税を主目的として不動産投資を行っている場合、デッドクロス以降は保有メリットがなくなるため、売却すべきタイミングと判断されます。
物件ごとの減価償却年数や融資条件を踏まえ、デッドクロス前後で出口戦略を考えることが、長期的な資産形成において重要になります。
大規模修繕実施の前
収益物件を売却するタイミングとして見逃せないのが、大規模修繕を実施する前です。大規模修繕とは、一般的に12〜15年周期で行われる、外壁補修、防水工事、共用部分の改修など、規模の大きな修繕工事を指します。建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持・向上させるためには欠かせないものですが、その分、数百万円から数千万円規模の資金が必要になるケースもあります。
この大きなキャッシュアウトを前に、「修繕を実施してから保有を続けるべきか」「修繕前に売却するべきか」を検討することになります。大規模修繕を行えば物件価値は維持できますが、その費用を回収するには一定期間の運用が必要です。
一方、修繕前であっても立地や収益性が評価されれば、投資家が将来の修繕を織り込んだうえで購入してくれるケースもあるでしょう。
自己資金に余裕がない場合や、これ以上の追加投資を避けたい場合には、修繕前に売却するという判断は合理的です。大規模修繕を「やるか・売るか」の分岐点と捉え、キャッシュフローと将来計画を踏まえた冷静な判断が求められます。
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収益物件の売却で注意すべきポイントとは?

収益物件を売却するうえでどのような点に注意しておく必要があるのでしょうか。ここでは理解しておきたい重要なポイントを解説します。
入居率を高めておく
収益物件を高く売却するために、入居率を高い状態で維持しておくようにします。
不動産の価格算定には「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」の3つがありますが、収益物件の場合、基本的には収益還元法が重視されます。これは、将来生み出す収益力をもとに物件価格を評価する方法です。
そのため、空室が多く実質利回りが低い物件よりも、入居率が高く安定した家賃収入を得ている物件のほうが、高い評価を受けやすくなります。直近の収支状況や入居実績は買主にとって重要な判断材料となるため、売却前に空室が目立つ状態だと、価格交渉で不利になりやすくなるでしょう。
可能であれば満室経営を目指し、その状態を一定期間維持することが理想です。短期的な満室ではなく、「安定して稼働している」という実績を示せると、買主に安心感を与え、物件の収益性が正当に評価されます。売却を見据えた場合、入居者募集や条件調整を早めに行い、売却時点での入居率を意識した運営が重要になります。
建物の外観や管理状態を良好しておく
収益物件の売却においては、数字上の利回りや収支だけでなく、建物の外観や管理状態といった見た目・印象も価格に大きく影響します。
エントランスや共用廊下、ゴミ置き場などが清潔に保たれている物件は、それだけで管理が行き届いている印象を与え、買主からの評価が高まるでしょう。
日常清掃や設備点検、入居者対応などの管理業務を適正に行うことは、既存入居者の満足度向上にもつながり、退去リスクの低減にも寄与します。結果として入居率が安定し、収益性の高さもアピールしやすくなります。
管理状態が悪い物件は、購入後に修繕や改善が必要と判断され、その分が価格交渉で差し引かれる可能性があります。売却前に大きなリフォームを行う必要はありませんが、最低限の清掃やメンテナンスは欠かさず、第一印象を良くしておくことが、売却価格を守るうえで重要です。
時代のニーズに合った設備を導入する
収益物件の価値は、立地や築年数だけでなく、時代のニーズに合った設備が整っているかどうかによっても左右されます。新築時には最先端だった設備も、年月が経てば標準設備となり、やがては時代遅れと見なされてしまいます。
近年では、エントランスのオートロック、宅配ボックス、無料インターネット、モニター付きインターホンなどが、入居者様にとって重要な判断材料になっています。これらの設備が整っている物件は、入居者満足度が高まり、空室が埋まりやすくなるだけでなく、収益性の高い物件として買主からも評価されやすくなるでしょう。
すべてを最新設備にする必要はありませんが、費用対効果の高い設備投資を行うことで、利回りの改善や売却時の評価アップにつながるケースは多くあります。
売却を見据えるのであれば、「次のオーナー様にも評価される設備か」という視点で導入を検討することが重要です。
出口戦略は購入時に立てておく

不動産投資は、売却(出口)を迎えてはじめて投資結果が確定します。運用期間中に家賃収入を得ていたとしても、出口戦略を誤れば、最終的に損失が出る可能性もあります。そのため、出口戦略は売却直前に考えるものではなく、購入時から想定しておくべきポイントです。
出口戦略にはさまざまなパターンがあります。代表的なものとして、①そのまま売却する、②自分や家族が住む、③相続・贈与する、④更地にして売却する、⑤実需物件として売却する(区分マンションと戸建て賃貸住宅の場合)などが挙げられます。どの出口を想定するかによって、購入する物件の立地や構造、築年数の考え方も変わってきます。
売却を前提とするなら、将来の需要や買主像を意識した物件選びと運営が不可欠です。出口戦略を明確にしておくことで、売却タイミングや改善投資の判断もしやすくなり、結果として安定した投資成果につながります。
信頼できる不動産会社に仲介を依頼する
収益物件の売却は、どの不動産会社に仲介を依頼するかで結果が大きく変わるといっても過言ではありません。
実需向け物件とは異なり、収益物件の買主は投資家であり、利回り・融資条件・出口戦略など、専門的な視点で判断します。そのため、投資家向けの販売ノウハウを持たない会社では、適切な価格で売却できない可能性があります。
信頼できる不動産会社は、投資家ネットワークを持ち、物件の収益性を正しく整理・説明する力があります。レントロールや修繕履歴、収支計画などを適切に提示できるかどうかは、売却成功の重要なポイントです。価格設定や販売戦略について、根拠をもって提案してくれるかも見極める必要があります。
現実的な相場感と戦略を示してくれる不動産会社に仲介を依頼することで、納得感のある売却を実現しやすくなるでしょう。
収益物件の売却に関する注意点については、以下もご参照ください。
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まとめ

収益物件の売却を成功させるためには、問題が顕在化してから慌てて売却を検討するのではなく、購入時から出口を見据えた戦略を立て、計画的に判断することが重要です。
【リロの不動産】では、賃貸管理を行うオーナー様のネットワークを活用し、購入希望条件に合致する投資家へ優先的にご紹介するなど、実需とは異なる収益物件ならではの売却支援を行っています。
集客から成約、アフターフォローまで一貫したサポートが可能。買取制度の活用により最短2週間でのスピーディーな決済にも対応できます。相続・納税・資産売却を見据えたデータドリブンな査定は、今後の資産運用の判断材料としても有効です。
売却せずに保有を選択する場合でも、初期投資を抑えた魅力アップ施策や空室・賃料改善提案など、収支改善を通じて出口価値を高める支援を行います。相続や節税対策については、提携税理士と連携し、事例にもとづいた実践的な出口戦略のプランニングが可能です。
収益物件の売却をご検討の方は、ぜひ一度【リロの不動産】にご相談ください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。
