両親のアパートを相続!売却か賃貸経営継続かを判断するポイントと注意点
2024.03.12相続はそう頻繁に経験するものではありません。しかし、実際に発生すると、ただでさえ大切な家族が亡くなったことで大変な状況にある中、相続にまつわるさまざまな手続きを進めていく必要があります。
特に相続財産に親が建てたアパートやマンションなどがある場合、賃貸経営を継続するのか、売却するのかで悩むこともあるでしょう。この記事では、賃貸経営を継続するかどうかの判断ポイントはもちろん、売却する場合の注意点についても詳しく解説します。
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アパートを相続したときにするべきこと
賃貸アパートの相続では一般的な不動産を相続する手続きに加え、特有の手続きも必要です。借入金の有無など賃貸経営の状況により、判断も違ってきます。まずはアパートを相続したときにするべきことを確認しておきましょう。
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アパートローンの残債がないか確認する
アパートを建てるためには、それなりのまとまった資金が必要です。そのため収益不動産を購入する際に、アパートローン(不動産投資ローン)を活用するケースも少なくありません。相続が発生したときは、まず親が借り入れによってアパートを建てていないか、借り入れていたらローンの債務がどのくらい残っているのかを確認してください。
残債がある場合は、マイナスの資産となります。被相続人の遺産をそのまま相続するとプラスの資産だけではなく、マイナスの資産も相続することになるため、ローン残債の有無は重要なポイントです。財産目録を作成する際は、必ず確認しましょう。
アパートローンを組むにあたって親が団体信用生命保険に加入していれば、残債は保険会社が弁済してくれます。ただ、団体信用生命保険に加入していないケースでも、あえて相続対策としてマイナスとなる負債を残していることもあります。残債があるからといって、必ずアパートの経営が不調だとは断定できません。
ローンの連帯保証人がいるか確認する
アパートローンの残債がある場合は、連帯保証人を立てているかどうか、それが誰なのかも確認してください。アパートのような収益物件の取得には多額の費用がかかるため、個人がアパートローンを組む場合は連帯保証人を必要とするケースが多くあります。
マイホームを購入する際に組む住宅ローンとは違い、アパートローンは主に家賃収入から返済する仕組みになっています。そのため、アパート経営に携わる関係者や、将来的に相続が発生したときに物件を相続する可能性が高い配偶者、子どもなどが連帯保証人になっていることがあります。
ここで注意すべきことは、アパートローンの連帯保証人は連帯保証債務を放棄できない点です。被相続人が亡くなってしまうと、連帯保証人が負債を引き継ぎ、残債を返済していかなければなりません。連帯保証人が配偶者や子どもなどの法定相続人であれば、そのアパートを負債のある状態で相続し、その後も引き続き家賃収入で残債を返済していくことが可能です。
アパート経営を継続するか判断する
親が所有していたアパートを相続したところで、アパートの経営に携わったことがなく、どう経営していけばいいのか分からないという方もいるでしょう。しかし、最終的には賃貸経営を継続するのか、売却するのか判断しなくてはなりません。
賃貸経営が軌道に乗っている状態なら、相続後も安定した家賃収入を得られるメリットがあります。本業で十分生活できる収入を得ている方でも、いつ、何が起こるかは分からないため、相続したアパートの家賃収入を万一の備えとして蓄えておくことも可能です。
しかし、アパートを保有していることで負債が増えていくだけ、という経営状態のケースも考えられます。加えてアパート経営には、空室の発生や家賃の滞納など、いくつかリスクもあります。ただ、賃貸経営のリスクは事前に予測できるものが多く、リスク対応が可能です。
相続したアパートを引き継ぐ場合はどう経営していくのか、売却したほうがメリットは大きいのかなど、状況をふまえて判断しましょう。
アパート経営を継続するかの判断ポイント
では実際にアパート経営を継続するのか、それとも売却するのか、何を基準に判断すればいいのでしょうか。ポイントは毎月の収支と大規模修繕の時期です。また、的確に判断するためには、専門家の判断を仰ぐことも大事です。以下で3つのポイントを解説しますので、参考にしてください。
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毎月の収支は黒字か
まずチェックすべきポイントの一つが毎月の収支です。実際にアパートの経営を行っていれば、固定資産税の支払いや日々のメンテナンスなど、さまざまな諸経費がかかってきます。アパートローンの残債が残っているケースでは、毎月返済も続けていかなければなりません。
相続が発生したら、まずは被相続人が残しているアパート経営の財務諸表を参照しながら、収支が黒字であったかどうかを確認してください。加えて経営状況をより詳しく把握するために、空室率などの各種経営指標の確認や、周辺の家賃相場と乖離していないかどうかも確認しましょう。
基本的には家賃収入から必要経費やアパートローンの返済金額などを差し引き、収支が黒字になっていることがポイントです。ただし、決算の数字と現実のキャッシュフローにズレが生じている可能性もあるため、判断が難しいこともあります。正確な収支を把握するためにも、管理を任せている賃貸管理会社と綿密に相談してください。
大規模修繕の時期
アパートだけに限ったことではありませんが、建物は時間の経過とともに劣化が進むことは避けられません。どれだけ日頃から維持管理に力を注いでいても、どこかのタイミングで施設や設備の修繕・交換などを行う必要がでてくるでしょう。アパートの場合は日常的なメンテナンスに加えて、13~15年程度のサイクルで大規模修繕を実施するのが一般的です。
大規模修繕で外壁や屋根の塗装、バルコニーなどの防水工事をまとめて実施するとなると、かなりの出費になります。アパートを相続した時点で大規模修繕は実施済みなのか、まだだとしたらあと何年くらいで実施を予定しているのかなども確認しておくことが大事です。
合わせて修繕積立金があるかどうかの確認も必要です。収支で黒字が出ていても、将来必要になる大規模修繕のための費用がまかなえない状況では、経営が困難になる可能性があります。大規模修繕の時期や修繕積立金についてもしっかり確認し、経営を継続するのならば資金計画を試算しましょう。
専門家の意見を聞く
アパート経営継続か売却かの判断は、最終的にさまざまな事柄を比較検討して判断する必要があります。例えば大規模修繕の時期が迫っているとしても、具体的にどの程度の修繕をすべきなのかは状況によって異なります。もし修繕積立金でまかなえるなら、資金的にも問題はないでしょう。
ある程度築年数が経過しているアパートの場合、リフォーム/リノベーションを実施することで入居者様にとってより魅力のある物件に生まれ変わることもあります。用意できる資金の範囲内で費用対効果の高いリフォーム/リノベーションができれば、空室があっても埋まりやすく、経営状態が改善される可能性が高まります。
ただし、どうすることが最善なのか判断するためには、収益物件に詳しい賃貸管理会社に相談することが重要です。これまでの賃貸管理会社だけではなく、セカンドオピニオンとして別会社の意見も聞いてみることをおすすめします。知人の紹介などの地縁ではなく、できればビジネス視点を重視し、データドリブンな分析を行う賃貸管理会社を選定するのがいいでしょう。
相続したアパートを売却する際の注意点
相続したアパートの現状を調べた結果、経営を継続するのが難しいと判断したら、最終的な選択肢は売却です。ただ、売却する際にも、気をつけなければならないポイントがあります。ここからは売却時の注意点を4つ解説します。
アパートの所有期間を確認する
不動産の売却時にはさまざまな税金がかかってきますが、そのうちの一つが譲渡所得税です。アパートを売却して利益が出ると、その譲渡所得に対して所得税や住民税などの税金が発生します。課税譲渡所得は物件の所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれ、税率も異なります。
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていると長期譲渡所得、5年以内であれば短期譲渡所得です。長期譲渡所得の税率は所得税30%、住民税9%、短期譲渡所得の税率は所得税15%、住民税5%です。加えて2037年までは2011年に発生した東日本大震災の復興を目的として、復興特別所得税が所得税に対して2.1%上乗せされています。
所得税・住民税・復興特別所得税を合計すると長期譲渡所得は20.315%、短期譲渡所得の税率は39.63%となり、所有期間5年を境にかなり税率が違ってきます。なお、物件の所有期間は、親の所有期間と相続人の所有期間を合算することが可能です。
「相続税の取得費加算の特例」を適用する
不動産を相続すると相続税はもちろん、売却するとケースによっては譲渡所得税もかかり、その分資産が大きく減少する可能性があります。そこで相続した不動産を売却する場合に二重課税を少しでも抑えられる制度として、相続税の取得費加算の特例があります。
相続後3年10ヶ月以内であれば、相続税額の一部を取得費に加算できる仕組みが「相続税の取得費加算の特例」です。譲渡所得税は譲渡所得の金額に対して課せられるため、譲渡所得が少なくなれば税金の額も抑えられます。譲渡所得は収入金額から物件を購入したときにかかった取得費と、売却時にかかった譲渡費用を差し引いた金額です。
相続税の一部を取得費として扱えることで、譲渡所得にかかる税金は軽減されます。ただし、この特例を受けるためには取得費に加算する相続税の計算書や譲渡所得の内訳書など、書類をそろえて確定申告をする必要があります。相続したアパートを早期に売却したいと考えているのならば、相続税取得費加算の特例の活用も頭に入れておいてください。
共有の場合は共有者名全員の同意が必要
遺産分割の方法は現物分割と換価分割、代償分割、共有分割の4種類があります。相続財産が不動産だとすると、物件をそのままの形で引き継ぐのが現物分割、売却して相続人間で分けるのが換価分割です。代償分割は1人の相続人が不動産をそのまま引き継ぐかわりに、ほかの相続人には相当分の代償金を支払います。
共有分割は複数の相続人が共有名義で相続する方法です。相続の発生当初に分割方法が決まらずにとりあえず共有名義にしていたり、ほかの分割方法が取れずに共有にせざるを得なかったりすることも珍しくありません。
しかし、共有分割にしていると相続人が単独で売却できず、共有者全員の同意が必要になります。将来的にアパートのリフォームや大規模修繕を実施しなければならなくなった際は、管理行為として共有者の過半数の同意が必要です。
また、共有者が死亡すると二次相続が発生し、権利関係がさらに複雑になります。親しい間柄の家族であっても紛争の原因になるため、共有分割にはせず、換価分割か代償分割にしておくのが望ましいでしょう。
収益物件売却に強い不動産仲介会社に依頼する
相続したアパートを売却する際は、収益物件の売却に強い不動産仲介会社に依頼するのが大事なポイントです。同じ相続不動産でもアパートのような収益物件と、実家のような実需物件では売却方法が異なります。
実需物件の売却相手は自宅として住むことを考えている方がほとんどである一方、アパートのような収益物件の購入を検討するのは主に不動産投資をしている方です。買い手は当然、そのアパートの利回りや空室率、入居者様の状況などを気にするでしょう。購入して経営が成り立つかどうかを見極めたいはずです。そもそも不動産売買は、買ってくれる相手がいてこそ成り立ちます。
売却を実現するために、不動産仲介会社は築年数や交通の利便性がいい立地であるかどうかなども含め、物件の収益性を明確に提示する必要があります。収益物件を売却する場合は、不動産投資を考えている顧客を多く抱え、収益物件の仲介業務に力を入れている不動産仲介会社に依頼することが重要です。
アパートを相続したくないときは
親が遺したアパートには、ローン残債などの負債があることも考えられます。ローン残債はなくても経営状況が悪い物件など、相続しないほうがいいケースもあるでしょう。アパートを相続したくないときはどうすればいいのか、相続放棄を含む相続の3つの類型について解説します。
単純承認
単純承認とはプラスの財産もマイナスの財産も、すべてひっくるめて相続することです。言い換えれば、被相続人が遺した財産の権利はもちろん、債務の返済などの義務もすべて引き継ぐことになります。相続と聞いて一般的にイメージするのが、この単純承認でしょう。
プラスの財産には現金や預貯金、不動産などがあります。
気をつけなければならないのは、単純承認ではアパートローンのような負債も一緒に相続することです。細かくいえば、被相続人がまだ支払いを済ませていなかった水道光熱費や通信費などもマイナスの財産に含まれるため、単純承認すれば未払い分の料金なども相続人が支払う義務を負います。
もし、プラスの財産でマイナスの財産を返済しきれない場合、相続人が自分の財産から弁済しなければなりません。また、以下で解説する相続放棄や限定承認の手続きをせず、被相続人の財産を勝手に処分してしまうと、単純承認とみなされます。あとになって相続放棄はできないため注意してください。相続をどうするのか決める期限は、相続後3ヶ月以内です。
相続放棄
相続を辞退したい、または拒否したい場合は、相続放棄を選択できます。相続放棄は単純承認とは逆で、マイナスの財産を引き継がないのはもちろん、プラスの財産も受け取らない方法です。相続財産を調査していく中で明らかにマイナスの財産のほうが多い場合、そのまま相続してしまうと相続人の負担が大きくなる可能性があります。
また、相続人の中に被相続人の事業を引き継ぐ方がいるなど、誰か1人だけに相続させたいというケースもあります。その場合、残りの相続人が相続放棄するという選択が可能です。相続放棄を選ぶ場合、被相続人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。手続きの期限は相続開始を知ってから3ヶ月以内です。
ただ、相続放棄は一度手続きを行うと撤回できません。後日多額の財産が見つかったとしても、それから相続するのは不可能です。負債は減額される可能性もあるため、相続放棄は十分な調査を行ったうえで申し立てるようにしましょう。
限定承認
単純承認は被相続人の財産に対してすべての権利・義務を引き継ぐ、相続放棄は逆にすべて引き継がない方法であるのに対し、限定承認は条件付きで相続する方法です。限定承認にすると、引き継いだ債務の弁済はプラスの財産の範囲内で行います。
特にマイナスの財産がどのくらいあるのか分からず、プラスの財産が残る可能性が考慮されるケースで選択されることが多い方法です。限定承認ではプラスの財産を超えるマイナスの財産があっても、その分は相続せず、被相続人が遺した債務の弁済に自分の財産を使う必要もありません。逆にマイナスの財産を弁済してプラスの財産が残れば、残った分は相続人の手元に残せます。
ただし、相続放棄の場合と同じく、限定承認も相続後3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立ての手続きをしなければなりません。相続放棄は相続人一人の意思で行えますが、限定承認は相続人全員が合意して行います。また、限定承認が受理されたら官報に公告を出したうえで清算手続きを進める必要もあります。
まとめ
親からアパートを相続した際、状況が良好で経営を継続するほうがメリットになることもありますが、売却したほうがいいケースも少なくありません。相続の手続きはもちろん、相続税や譲渡所得税の納税などやるべきことも多く、なかなか手が回らない可能性もあるため、信頼できる専門家の意見を聞きながら手続きを行う必要があります。
ポイントは賃貸経営に詳しい不動産会社や賃貸管理会社に相談することです。【リロの不動産】は管理戸数・仲介数ともに日本有数で、相続への対応にも実績があります。親が所有していたアパートを相続することになったら、【リロの不動産】に相談してください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。