地主のジレンマを解決!底地の売却方法と借地権の問題点を徹底解説
2024.04.30土地オーナー様の中には、借地権が設定された土地をどうにか売却したいと考えている方がいるかもしれません。しかし、借地権が設定されている土地は売却が難しいといわれています。
この記事では、借地権設定のある土地が売却困難とされる理由を解説するとともに、それでも売却につなげるための方策を紹介します。借地権でお困りのオーナー様は、問題解決に向けたヒントとしてぜひ参考にしてください。
目次
借地権とは
第三者から借りた土地上に建物を建てて活用できる借地権。借地権が設定された土地は売却が難しいといわれますが、そもそも借地権とはどのような権利なのでしょうか。また、どのような種類があるのでしょうか。前提となる借地権の概要を解説します。
借地権
借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利です。借地権を有する方(土地を借りている方)を「借地権者」「借地人」、借地権が設定された土地の所有者を「借地権設定者」や「底地人」と呼びます。
借地権には、民法上で規定されるものと借地借家法で規定されるものがあります。民法上の借地権は「賃借権」と「地上権」の2種類に分類されます。なお、先ほど紹介した、建物所有を目的とする権利は借地借家法で規定される借地権です。借地借家法上の権利を借地権とするのが一般的であり、この記事でもこちらを前提に解説します。
借地借家法上の借地権は建物を建てることを目的に設定される権利であるため、借地権の設定された土地には借地人が所有する建物が存在するのが基本です。
借地権には、借地借家法施行以前の旧借地法にもとづく借地権、現行の借地借家法にもとづく普通借地権・定期借地権などがあります。このうち定期借地権は、契約の更新ができない点がほかの2つと大きく異なります。
底地
借地権が設定されている土地を「底地」と呼びます。借地権設定者の権利は底地の所有権であり、底地を使用収益するのは借地権者の権利です。底地を所有する地主は借地人に土地を貸すことで地代収入を得る一方、借地人は底地に建物を建てて活用することができます。
ここで重要になるのが、借地借家法が借地人の権利を保護する目的で定められた法律である点です。借地権は借地借家法にもとづく権利であるため、たとえ地主が「土地の賃貸借契約を解約したい」と考えても、借地人の同意が得られないかぎりは簡単に解約できません。
また、同じ所有権であっても、更地に比べて底地は活用の自由度が低いため、更地よりも土地価格が安くなる傾向にあります。相続税・贈与税の算出などに用いられる「借地権割合」は、更地評価額に対する借地権評価額の割合を表すもの。土地の利用価値が高い都市部になるほど借地権割合が高くなり、底地の価値は低く評価されるのが一般的です。
地主から見た底地の問題点
借地借家法により借地人の権利が保護されている底地は、所有する地主からすると、普通の土地に比べてさまざまな問題点があります。地主から見たときの底地の問題点を順番に見ていきましょう。
地代収入は極めて低い
底地を所有する地主は借地人から地代を得ることができますが、地代収入の水準は高くありません。特に普通借地権が設定されている底地の地代収入は極めて低い水準であり、収益性が悪いのが実情です。
定期借地権が設定された底地における地代は、年間で土地価格の2〜3%程度が相場とされます。一方、普通借地権における地代の相場は「固定資産税の2〜3倍」などといわれます。宅地に関しては固定資産税の特例が適用されるため、住宅が建てられた底地では、年間地代が土地価格の1%にも満たないケースが多いのです。
更地に収益物件を建設して運用するのと比べて、はるかに利回りは低くなるでしょう。借地権によって土地活用が制限される結果、更地であれば本来得られるはずの収入が得られず、土地の収益性が悪いままの状態で固定化してしまいます。
売却が困難
底地は自由に売却するのが難しい点も地主にとっての大きな問題です。土地の購入希望者は、その土地を購入して活用したいと考えます。自宅や自らの事業に使うほか、収益物件を建てて運用する場合もあるでしょう。自由に活用できる土地でなければ、購入する価値はほぼないということです。
借地人が土地を使用している底地では、自由に土地を活用することができません。仮に底地を第三者に売却して所有権が移転したとしても、借地権は新たな所有者にも対抗できます。所有者が変わっても借地権はそのまま残るのです。
借地権が存在するかぎり、底地の所有者による自由な土地活用は難しくなります。底地は使い勝手の悪い土地でしかないので、買い手がとても付きづらいでしょう。
もし売却できたとしても、底地の売却価格は更地の1〜2割程度が目安とされ、極めて安い価格でしか売却できません。
土地を自由に活用できない
先ほどから紹介しているとおり、底地の利用権はあくまでも借地人にあります。地主は土地の所有権を有しているに過ぎず、借地権が存在する以上は自由に活用することができません。借地権の契約期間が満了すれば、再び地主が自由に活用できるのではないかと考えるかもしれませんが、実際そう簡単にはいきません。
まず、借地借家法第3条において「借地権の存続期間は30年とする」と定められています。続けて「契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする」とされていることから、最初の賃貸借契約は30年以上で設定しなければなりません。
加えて、第4条で「借地契約を更新する場合の期間は更新日から10年以上、最初の更新に関しては20年以上とする」旨も定められています。借地権の契約を1回締結してしまうと、少なくとも30年、更新によってさらに20年は土地の活用が制限されるのです。
普通借地権の場合、底地を所有していても長期にわたって土地活用が難しく、地代収入による低い利回りしか期待できないのが実情です。
貸したまま返ってこない
ここまで紹介した項目以上に、地主にとって大きな問題といえるのが、底地は貸したまま半永久に返還してもらえないリスクがあることです。
現在の借地借家法が公布されたのは1991年、施行されて実際の運用が開始されたのは1992年8月1日のこと。それまでの旧借地法に代わって借地借家法が制定された大きな理由の一つが、旧借地法では「一度土地を貸したら二度と返ってこない」といわれるほど、強力に借地人が保護されていたためでした。
返還される見込みがないとなれば、地主は当然土地を貸したがらなくなります。その結果、土地の有効活用が妨げられる状態となったため、地主が安心して土地を貸し出せるよう法律の見直しがおこなわれたという経緯があったのです。
よって、借地借家法が適用される1992年8月よりも前に借地権が設定された土地では、半永久的に借地人から返還を受けられないリスクがあります。
現行の借地借家法のもとで設定された借地権でも、普通借地権の場合には先ほど紹介したように、30年以上の存続期間が必要です。その後も「正当の事由があると認められる場合」(借地借家法第6条)でなければ、地主から更新を拒絶できないとされています。
定期借地権でないかぎり、地主から借地人へ明け渡しを請求するのは事実上不可能と考えてよいでしょう。
借地人とトラブルになることがある
借地人の権利が強いという借地権の性格上、底地について借地人とトラブルになりやすいという問題も抱えています。底地でよくあるトラブルとして挙げられるのは次のようなものです。
地代滞納のトラブル | 借地人が支払うべき地代を滞納した場合に発生するトラブル。一定期間にわたる地代滞納は契約解除の正当事由として認められる可能性は高い。しかし、底地には借地人の建物が建っているため、除却・退去させるまでに相当な期間がかかる。 |
契約更新のトラブル | 契約更新を求めてきた借地人に対して、更新を拒絶することによって生じるトラブル。更新拒絶には正当な事由が求められるため、多くの場合、借地人からの更新の申し出を拒絶することは難しい。 |
地代交渉のトラブル | 契約期間中に地代の増減を請求することは地主・借地人双方に認められているものの、借地人が地代増額に応じるケースは少ないと考えられる。増額請求が原因で関係が悪化する可能性がある。 |
解体費用のトラブル | 長期間にわたる地代滞納など悪質なケースでは「建物収去土地明渡請求」によって、借地人に退去を命じることが可能。それでも退去しない場合は強制執行による強制退去も可能だが、借地人が解体費用を支払えないときには、地主負担で解体せざるを得ない場合がある。 |
このようなトラブルのリスクが存在することも、底地の売却を困難にしている一因です。
地主が底地を売却する方法
上記のとおり、売却が困難とされる底地ですが、地主が底地を売却するためにはどのような方法が有効なのでしょうか。売却できる可能性がある5つの方法を解説します。
借地人に売却する
1つ目が借地人に売却する方法です。現状、借地人は土地を使用するために毎月地代を支払っています。地主から底地を買い取ることで土地の所有権を獲得でき、毎月の地代支払いが不要になるうえ、今後は自由な土地活用が可能となります。借地人にとって底地を手に入れるメリットは多くあるので、第三者に売却するより高い価格で購入してくれる可能性もあるでしょう。
ただし、この方法が採れるかは、借地人に所有権を手に入れる意思があるかどうかにかかっています。借地人に土地を購入するだけの経済力があるかどうかも課題です。前提として、地主と借地人の関係が良好でなければなりません。
実現すれば理想的ですが、上記より必ずしも実現可能性が高いとはいえない方法です。
底地と借地権を等価交換する
底地の一部を完全所有権の土地にして、売却もしくは有効活用する方法もあります。例えば底地を二つに分割したうえで、分割した底地と借地人の有する借地権を等価交換するやり方です。
等価交換により、分割前の地主と借地人がそれぞれ完全所有権のある土地を手に入れることになります。分割しているので土地面積自体は以前より小さくなるものの、底地と異なり自由に活用できるため、一般市場でも売却しやすくなるでしょう。小さな面積でも利用価値のある土地なら、収益物件として活用することも可能です。
この方法のメリットは、等価交換により地主・借地人ともに費用負担が発生しないこと。借地人に底地を買い取るほどの経済力がない場合でも、これなら実現できる可能性があります。
借地権価格の明確な相場はありませんが、先ほど紹介した借地権割合を目安として、借地人と交渉して決定するのが一般的です。
一例として、借地権割合70%の地域にある200坪の底地で等価交換を行うケースを考えてみます。借地権割合が70%ということは底地の権利は30%と考えることができます。よって、地主:借地人=3:7の割合で土地を分割するというのが一つの方法です。
地主は200坪×7/10=140坪分の土地を借地人に譲渡し、反対に借地人は200坪×3/10=60坪分の借地権を地主へ返還します。これをベースとして、最終的にはお互いの交渉で持分を決めるのです。
この方法を採るには、分割しても利用価値のある広さの敷地でなければなりません。また、建物が建っている敷地は分割できないため、建物部分を除いた土地に十分な広さがあることも求められます。
借地人から借地権を買い取る
3-1で紹介した方法の逆で、地主側から借地人の持つ借地権を買い取る方法も考えられます。借地権が返還されれば底地は地主の完全な所有地になるので、売却しようが有効活用しようが地主の自由です。
この方法においても、借地人に借地権を譲渡する意思があることが前提となります。当然、地主と借地人の関係が良好であるというのも条件となるでしょう。借地権を買い取る際の価格は等価交換の場合と同様、借地権割合をベースに考えるのが基本です。最終的な価格も同じようにお互いの交渉で決定します。
1点注意しなければならないのが、底地上にある借地人が所有する建物の取り扱いです。地主から借地権の買い取りを持ちかける場合、借地人から建物の買い取りもしくは解体費用の負担を求められる可能性があります。
建物ごと借地権を買い取るのか、解体するのであれば費用をどちらが負担するのか、借地人と十分に協議する必要があるでしょう。
専門会社に売却する
一般市場での売却が困難な底地ですが、不動産会社の中には底地をはじめとした訳あり物件を専門で買い取る会社が存在します。こうした専門会社に売却するのも有効な方法です。上記3つの方法と異なり、借地人との交渉が不要なため、地主と借地人の関係があまり良好でない場合でも売却を検討できるでしょう。
専門会社が底地を購入してくれるのは、彼らが事業用の土地取得を目的としているからです。自ら居住するための土地を探している一般消費者と違って、専門会社はすぐに活用できなくても、いずれ収益化が期待できると判断できれば買い取ります。専門知識やノウハウを武器に借地人との交渉を行うなどして、長期的な目線で収益化を図るのです。
専門会社に買い取ってもらう場合、売却価格は市場よりも低くなる可能性があるものの、手間をかけずスムーズな売却が可能です。なお、売却時には借地人へ事前に伝えておくと、無用なトラブルを回避できて安心でしょう。
不動産買取と仲介の違い、メリット・デメリットなどはこちらの記事で詳しく解説しています。売却に関する情報をお探しの際は参考にしてみてください。
■投資用不動産・収益物件の売却関連記事
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借地人と同時に第三者に売却する
もう一つの方法として、借地人と協力して底地・借地権を同時に第三者へ売却するやり方が挙げられます。買主は完全な所有権を取得できるため、通常の土地と同じように自由な利活用が可能。買い手が見つかりやすくなり、周辺相場と変わらない価格での売却もできるでしょう。
この方法でも、やはり借地人に借地権を売却する意思のあることが大前提となります。次にハードルになりやすいのは、売却代金をどのような割合で分配するかという点です。借家権割合をベースに決めるのが基本であるものの、ずっと土地を所有してきた地主からすれば、借地人よりも多くお金を受け取りたいと考えるのは自然な流れでしょう。
加えて、建物を解体してから売るのか、それとも建物ごと売却するのかも問題です。解体費用を借地人が負担してくれるかどうかで地主の負担が大きく変わります。いずれにせよ、借地人との信頼関係が構築されていないと実現は難しいでしょう。
まとめ
借地権とは、建物所有を目的として第三者から土地を借りる権利のことをいいます。旧借地法にもとづく借地権や普通借地権が設定されている場合、半永久的に借地人の利用が可能であるため、底地の自由な活用や売却は難しいといわざるを得ません。おまけに地代収入は極めて少ないケースが大半で、所有していてもメリットは少ないのが実情です。
借地人に売却する、専門会社に買い取ってもらうなど底地を売却する方法もありますが、活路を見出すにはプロの協力が欠かせません。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。