【事例付】一棟アパート売却の成功術!売却時期と諸経費・税金を解説

2024.09.17

不動産投資の出口戦略として一棟アパートの売却を検討しているけれど、どのような準備をすればいいのか、今が売却時期として適当なのか迷っているという方もいるのではないでしょうか。

この記事では、一棟アパート売却を成功させるために必要な事前準備、売却にかかる費用や税金などについて詳しく解説します。この記事を読めば、所有する一棟アパートの売却に向けて準備すべきことや気をつけるべきことが明確になるでしょう。

一棟アパートの売却事例や、売却に関する注意点や出口戦略の立て方などは以下の記事もあわせてご覧ください。

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一棟アパート売却の事前準備

一棟アパートの売却を成功させるには、事前準備を入念に行うことが重要です。一棟アパートの売却を行う際、事前に準備しておくべきことは何なのか、順番に解説します。

不動産会社に一棟アパートの売却相談をする

一棟アパートの売却を行う場合、不動産会社に仲介業務を依頼するケースが大半です。不動産会社は不動産売却におけるパートナーであり、不動産会社の営業活動や対応次第で売却価格や売却までにかかる期間が変わってきます。一棟アパート売却の成功は不動産会社選びにかかっているといっても過言ではありません。

一棟アパートを売却する事前準備は、パートナー候補となる不動産会社への相談からスタートします。売却対象物件の管理を委託している賃貸管理会社が不動産売却にも対応している場合、まずは賃貸管理会社に相談してみるとよいでしょう。

不動産会社を選ぶ第一歩として、複数社に査定を依頼します。査定に用いる基準は会社によって異なるため、当然査定価格も不動産会社ごとに異なってきます。あわせて、各社に直接買い取ってもらったときの買取価格も確認しておくのがおすすめです。

各社からの査定価格・買取価格、担当者の対応の良さ、査定内容などを比較検討し、信頼できる不動産会社を決定しましょう。

一棟アパートのアパートローン残債を確認する

一棟アパートを取得する際、アパートローン(不動産投資ローン)を利用したのであれば、残債がどれくらいあるかも必ず確認しておきましょう。売却価格が残債を上回る「アンダーローン」なのか、反対に残債が売却価格よりも高い「オーバーローン」なのかによって対応が異なります。

アンダーローン

アンダーローンとは、物件の売却価格がアパートローンの残債を上回っている状況のことをいいます。不動産会社の査定価格どおりに売却できれば売却代金で残債を完済できるため、金融機関が設定している抵当権を問題なく抹消可能です。

不動産を売却するには、原則としてローン残債を完済して抵当権を抹消しておく必要があります。仮に抵当権が残ったまま売却して、所有権移転後に金融機関による抵当権が実行された場合、買主様が所有権を失うリスクがあるためです。

アンダーローンなら残債を一括完済したうえで抵当権を抹消できるので、そのまま売買契約を締結しても問題ありません。

オーバーローン

一棟アパートの売却において問題なのは、オーバーローン状態にあるケースです。オーバーローンとは、物件の売却価格がアパートローンの残債を下回っており、売却代金だけではローン残債を返済しきれない状況のことをいいます。

オーバーローンに陥る原因としては、何かしらの理由で物件の資産価値が低下している、ローン借入時の自己資本比率が低かったために元金があまり返済できていないといったことが考えられるでしょう。

オーバーローンで売却するには、残債から売却代金を差し引いた分を自己資金などでまかなう必要があります。もし自己資金でまかなえない場合は、売却時期を後ろ倒しして残債を減らしつつ自己資金を確保するか、金融機関と相談のうえ「任意売却」を検討することになるでしょう。

一棟アパートの売却タイミングを図る

一棟アパートを売却すると一連の不動産投資が出口を迎えます。売却という出口でつまずけば、それまでの不動産投資自体が厳しい結果に終わるリスクがあります。出口戦略でつまずかないため、売却のタイミングはしっかり検討しましょう。

一棟アパートの所有期間が5年を超えたとき

アパート売却により譲渡所得が発生した場合、所得額に応じた譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税とは、譲渡所得に対してかかる所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。ベースとなる譲渡所得は、所有期間5年を境に「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」に分かれ、短期のほうが長期よりも税率が高めに設定されています。

短期譲渡所得
(売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合)
39.63%
長期譲渡所得
(売却年の1月1日時点で所有期間が5年超の場合)
20.315%

譲渡所得が発生するケースでは、所有期間が5年を超えてから売却したほうが節税につながります。

デッドクロスを迎えたとき

デッドクロスとは、月々のアパートローンの元本返済額が減価償却費を上回った状態のことをいいます。デッドクロスを迎えると所得税の負担が大きくなり、賃貸経営が厳しくなることがあります。そのため、一棟アパートがデッドクロスを迎えた段階で売却するのも有効な判断です。

毎月のローン返済額は利息支払い分と元本返済分からなります。元本返済分はあくまでも購入費用を分割払いしているだけなので、会計において経費計上できません。一方、減価償却は物件取得費を耐用年数に応じて分割計上する会計処理であり、減価償却費は経費として計上できます。

デッドクロスを迎えるというのは、経費計上できない元本返済額が経費計上できる減価償却費を上回ることを指します。結果、手元のキャッシュフローは変化しない中、計上できる経費が減る分だけ会計上の黒字額は増えてしまうのです。黒字が増えれば課税所得も増えるため、所得税・住民税の納税額も増加し、税引後キャッシュフローが悪化します。

なお、デッドクロス対策としては物件売却以外に、収益物件を買い増しして新たに借り入れを起こすことにより、減価償却費を生み出すという方法も有効です。

デッドクロスと節税についてはこちらの記事でも解説しているので、あわせてご確認ください。

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大規模修繕実施の前

建物は経年劣化するため、アパートの場合、13〜15年程度の一定の周期で大規模修繕を行います。大規模修繕とは建物の外壁塗装や共用施設の補修工事、設備更新など、比較的規模の大きなメンテナンス工事を行うことです。

大規模修繕は物件の規模に応じて数百万円以上のコストがかかるため、大きなキャッシュアウトが生じます。費用は家賃収入で回収していくことになりますが、数年間かけての投資回収が必要になるでしょう。

投資回収に時間がかかるようであれば、大規模修繕を実施する前のタイミングで売却を検討することをおすすめします。

一棟アパートの売却相場を算出する方法

一棟アパートの売却相場を算出するには、大きく「収益還元法」「原価法」「取引事例比較法」の3つの方法が用いられます。それぞれの算出方法について解説しましょう。

収益還元法

3つの算出方法は、主に対象となる不動産の種類が異なります。収益還元法は、その物件から得られる収益額に着目して物件の価値を算出する方法であり、収益物件の売却相場を算出するために使用されることが多くなっています。一棟アパートの売却相場を計算する際も、収益還元法を用いるのが基本。買主様となる不動産投資家は収益還元法で価格を見積もっています。

収益還元法では、対象不動産が将来生み出すと想定される収益の現在価値の総和を求め、そこから対象不動産の試算価格(収益価格)を算出。収益還元法には「直接還元法」と「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)」の2つがあります。

直接還元法の具体的な計算方法は次のとおりです。

試算価格(収益価格)= 1年間の純収益(収益 − 諸経費)÷ 還元利回り

上の式の還元利回りは「年間の純収益 ÷ 不動産価格」で求められる利回りです。つまり、一棟アパートが満室で運用できていれば資産価格は高くなる=高い価格で売れるということを意味します。

また、DCF法は、収益物件を運用することによって得られるであろう利益と売却時の想定価格を現在の価格に割り引き、その合計額を不動産価格とする方法です。

一棟アパートを少しでも高く売却するには、賃貸管理会社とともに空室対策をしっかり講じておくことが重要です。

原価法

原価法とは不動産の売却相場を算出する方法のうち、対象不動産の再調達原価をベースとして評価する方法です。原価法は「積算法」と呼ばれることもあります。

計算のもとになる再調達原価とは、対象不動産を取り壊し、まったく同じ物件をもう一度建築・造成した場合にかかると想定される費用のこと。原価法では再調達原価を求めたうえで、そこから築年数による価値の低下を割り引くことで、現在における物件の価値を推定します。

原価法の計算式は以下のとおりです。

現在の物件価値=再調達単価 × 延床面積 ÷ 耐用年数 × 残存年数(耐用年数-築年数)

原価法で求められる試算価格のことを積算価格と呼びます。建物もしくは土地・建物を合わせた価値を求める場合に使われることが多く、金融機関は原価法を用いて物件価格を算出するのが主流です。

取引事例比較法

収益還元法が収益物件を中心に用いられるのに対し、実需物件の売却相場を求めるのに使われることが多いのが取引事例比較法です。取引事例比較法で算出される試算価格は「比準価格」と呼ばれます。

取引事例比較法では、対象不動産と条件が近い類似物件の取引事例を収集し、各事例の取引価格をもとに価格を試算します。事例の平均価格をそのまま採用するわけではなく、必要に応じて対象物件の事情補正や時点修正などを行うことで精度を高めるのが基本。地域要因や物件の個別要因を含めて比較評価し、最終的な比準価格を算出します。

取引事例比較法は、中古マンションの売却相場を試算する際に多く用いられる方法です。

一棟アパートの売却にかかる費用

続いて、一棟アパートの売却時に発生する費用について詳しく見ていきましょう。

仲介手数料

一棟アパート売却の仲介を不動産会社に依頼し、売買契約を成立させた場合に支払う成功報酬が仲介手数料です。

不動産会社が受け取れる仲介手数料額は、宅地建物取引業法・国土交通省告示において上限額が定められています。不動産会社は、以下の計算式で求められる上限額の範囲内で仲介手数料を設定しなければなりません。

一棟アパート売却では多くの場合、売却価格が400万円を上回ると考えられるため、上の表の最下段の計算式にしたがって上限額を求められます。なお、上限額以外の定めは特になく、不動産会社ごとに手数料設定は異なります。

アパートローン一括返済手数料

一括アパートの売却時、アパートローンの残債がある場合、ローンを一括返済して金融機関による抵当権を抹消する必要があります。アパートローンを繰り上げ返済する際には、金融機関に対する事務手数料として一括返済手数料を支払うケースが一般的です。

一括返済手数料の金額は金融機関によって異なりますが、元金に対して0.5%〜2%程度というのが相場。5,000円〜5万円程度の定額で設定している金融機関もあります。また、ネットの銀行の一部では、一括返済手数料がいつでも無料という金融機関も見られます。

一部繰り上げ返済でなければそれほど大きな金額ではないものの、手元に残るお金をなるべく増やすためには、金利だけでなく手数料水準も比較して金融機関を選ぶとよいでしょう。

司法書士報酬

繰り返しになりますが、アパートローンを完済したら金融機関によって設定されている抵当権を抹消する必要があります。このあと紹介するとおり、抵当権抹消登記には登録免許税がかかるほか、登記手続きを依頼する司法書士に支払う報酬も費用として見込んでおきましょう。

登記手続きは自分で行うことも可能ですが、手続きが複雑なことや間違いがあってはならないことから、プロである司法書士に依頼するのが一般的です。

抵当権抹消登記を依頼した場合の司法書士報酬の相場は1万円〜2万円ほどです。

測量費用

一棟アパートを売却するにあたって、境界線が確定していない部分がある場合、土地家屋調査士に依頼して確定測量を行い、確定測量図を作成する作業が発生することがあります。

確定測量を依頼する場合の費用は35〜80万円程度。もちろんすべての境界線が確定していれば費用負担はありません。実施するとなれば大きなコストがかかるため、事前に境界が確定しているかどうかチェックしておいたほうがよいでしょう。

一棟アパート売却にかかる税金

一棟アパートを売却するにあたっては税金もかかります。どのような税金がどれくらいかかるのか、計算方法も含めて解説しましょう。

譲渡所得税

先述のとおり、アパート売却によって譲渡所得が発生した場合、譲渡所得額に応じた所得税・住民税・復興特別所得税が課せられます。譲渡所得に対してかかる3つの税金を総称して「譲渡所得税」と呼びます。

税額計算のベースとなる譲渡所得は、以下の計算式によって求めることが可能です。

譲渡所得=不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用)

取得費には取得時の物件価格のほか、仲介手数料をはじめとした諸費用が含まれます。また、譲渡費用とは前述の売却時にかかる諸費用や税金のことです。この計算式の通り、売却価格から取得費用を差し引いた利益に対して課税されるわけではないので注意しましょう。

上記で求めた譲渡所得に、前述の税率をかけて税額が計算されます。

取得費から減価償却費を差し引く

譲渡所得の計算式において1点気をつけたいのが、建物の取得費から「所有期間中の減価償却相当額を差し引く」必要があることです。

減価償却とは、建物を購入した際に取得費を一括で経費計上するのではなく、耐用年数に応じて複数年にわたって少しずつ資産価値を減少させていく会計処理方法のことです。資産価値の減少分は、減価償却費として毎年経費計上できます。

建物は使用するほど価値が減少していくため、所有期間中の減価償却相当分を価値から差し引く必要があるのです。物件が事業に使われていた場合「建物を取得してから売るまでの毎年の減価償却費の合計額」を取得費から差し引いたうえで、譲渡所得が計算されます。

消費税

一棟アパートのうち土地には消費税がかからないものの、建物分の売却代金に対しては10%の消費税がかかります。一棟アパートの売却代金は土地と建物を合計したものであるため、消費税に関しては土地代を除いた建物分の代金にのみ課される点に注意が必要です。

印紙税

不動産売買契約書に印紙を貼付する形で印紙税を納める決まりになっています。不動産契約書は通常売主・買主双方が保存するために2通作成するので、それぞれに印紙を貼らなければなりません。印紙税を誰が負担するかは特に決まりがないものの、1通ずつ売主・買主で折半することが多くなっています。

登録免許税

アパートローンを完済したら物件に設定されている抵当権を抹消するため、抵当権抹消登記が必要となります。登記にともなって納める税金が登録免許税です。抵当権抹消登記にかかる登録免許税は1つの物件につき1,000円となっています。

アパートローンを借り入れて一棟アパートを購入するケースでは、大半が土地・建物それぞれに抵当権を付与しているはずです。よって、土地1物件・建物1物件の計2物件というカウントになり、2,000円の登録免許税を支払うものと考えておきましょう。

まとめ

一棟アパート投資において、売却は投資の出口にあたる大きなイベントです。物件取得の段階から、売却をどうするのか出口戦略を考慮したうえで購入する必要があります。適切な資金計画や出口戦略を考えるには、伴走しながらアパート経営をともに考えてくれる、有能なパートナーとなる賃貸管理会社探しが欠かせません。

【リロの不動産】は、独自のデータと圧倒的な改善力で多くのオーナー様のパートナーを務めてきました。長年にわたり賃貸経営や賃貸管理に携わってきた【リロの不動産】なら、どなたでも安心してお任せいただけるはずです。一棟アパートの売却を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。