アパート経営に必要な自己資金はいくら? 成功に導く出口戦略と資金計画

2023.04.12

アパート経営に興味があり、始めてみようかと思っている方は、はじめに自己資金がいくら必要なのかを心配されるのではないでしょうか。

今回はアパート経営を始めるにあたり、自己資金はいくら必要なのかについて、アパート経営にかかる資金と用意すべき自己資金の考え方を解説します。

アパート経営にかかる資金・初期費用編

アパート経営に必要な資金についてご紹介します。物件を購入して取得する場合は「諸費用」と言われる初期費用が発生します。ここでは、初期費用としてかかる資金を解説します。

共通してかかる諸費用

アパート経営を行ううえで、共通してかかる費用には以下のものがあります。収益物件であるアパートを取得する際の費用を一つずつ見ていきましょう。

登録免許税

登録免許税とは登記をする際に必要になるもので、アパート経営を行う際にはさまざまな登記を行う必要があります。例えば土地付きの1棟アパートを購入した場合であれば、土地および建物の所有権移転登記を行わなければなりません。アパートが新築であれば建物部分は所有権の保存登記になります。

すでに所有している土地にアパートを建てる場合は、建設したアパートに対して所有権の保存登記が必要です。

・所有している土地にアパートを新しく建築する
・土地を購入してアパートを建築する
・土地込みで新築アパートを購入する
・土地込みで中古アパートを購入する

それぞれの方法で、登録免許税の税率は異なります。
ちなみに土地の所有権移転登記の登録免許税率は、不動産価額の2%です。建物を新築したときの所有権保存登記は不動産価額の0.4%、中古の建物を購入した際の所有権移転登記は不動産価額の2%になります。

また、金融機関から融資を受けて建築もしくは購入した場合、土地や建物に対して抵当権設定登記を行います。その際の登録免許税は金融機関からの借入金額✕0.4%です。

登記手続きは自分で行うことも可能ですが、一般的には司法書士に依頼するケースが多く、その際には司法書士に対する報酬も発生します。司法書士に対する報酬は、5万円~10万円程度と思っておくといいでしょう。

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得した際に1度だけかかる税金で、地方税の一つになります。税率は土地そして家屋ともに取得した不動産価格✕3%(軽減税率)です。

ただし、土地および家屋ともに軽減措置が設けられており、土地の場合2024年3月31日までに宅地および宅地評価された土地を取得した場合、その土地の課税標準額が2分の1となります。

また、土地を取得してから3年以内に住宅を新築する場合は、以下の軽減制度が適用されます。

・家屋:不動産の価格-1200万円✕3%
・土地:不動産の価格✕1/2✕3%を当初税額とし、以下で計算した金額のうちどちらか多い方を減額します。

1.45,000円
2.(不動産の価格✕1/2÷土地の面積)✕住宅の床面積の2倍(上限200平方メートル)✕住宅の持ち分✕3%

水道分担金

水道分担金とは、新たに上下水道工事を行う際に必要となる費用です。中古アパートを購入するのであれば、すでに工事が行われているため原則として発生しませんが、新築する際には支払う必要があります。

金額については、各自治体によって条例などで決まっており、水道分担金の支払いが不要な自治体もあります。

火災保険料・地震保険料

建物に対する火災保険および地震保険への加入はしておくべきです。特に収益物件として入居者様に利用していただく以上、火災や地震による災害の補償は備えておかなければなりません。

火災保険は最長5年間の契約が可能ですので、保険料を安くするためにも5年間で加入することをおすすめします。地震保険は火災保険に付随して加入するもので、地震保険単独での加入はできません。

アパートローン(不動産投資ローン)の手数料

アパートを購入する際に不動産投資用のアパートローンを組む場合は、金融機関との契約時に手数料がかかります。具体的には保証料や事務手数料、印紙税などですが、金融機関によって手数料は異なります。できるだけ初期費用の負担を抑えたいなら、金利とともに手数料を比較してから、最終的に利用する金融機関を決めるようにしましょう。

団体信用生命保険料

アパート経営を行うための融資は住宅ローンではなく、アパートローンです。住宅ローンと同様に、アパートローンでも団体信用生命保険への加入を求められるケースが多く見られます。

団体信用生命保険の保険料については、アパートローンの金利に含まれることが一般的です。

土地を所有していて、アパートを新しく建築する場合

相続などですでに土地を所有しており、土地の上にアパートを新しく建築する場合は、アパートの建築費用と諸費用のみを考えることになります。

建設費用は本体工事費と付帯工事費に分けられます。

本体工事費

本体工事費とは建物の建築にかかる費用で、どの構造で建てるのかにより金額が異なります。

例えば木造で建築するなら、坪単価の相場は50万円~70万円程度です。他の構造なら、以下が相場となっています。

・軽量鉄骨:坪単価60万円~90万円程度
・鉄筋コンクリート:坪単価80万円~120万円程度

ただ、相場は地域によって異なり、資材の高騰により建築費用も上昇傾向にあります。

どのくらいの規模の建物を建設するかも建築費用を左右する重要な要素になります。土地にマッチする入居者ターゲットはどうすのか、戸数をいくつにするのか、間取りや階数など、立地や建築費用によってどのくらいの規模であれば採算が取れるかを考えることが大切です。

付帯工事費

付帯工事費とは、建物以外の部分、例えば外構の工事費や地盤改良工事費などの費用を指します。目安としては、本体工事費の20%程度を見ておくとよいでしょう。

また、建築費用に諸費用が加わることも忘れないようにしておきましょう。

土地を購入し、アパートを新しく建築する

土地を購入し、アパートを新しく建築するには、アパートの建築費用(本体工事費と付帯工事費)に加え、土地の購入費用が発生します。また、土地の購入費用にも諸費用が加算されるので、注意しましょう。

一般的に土地の費用は、賃貸需要のある地域だと高い傾向にあるため、土地をすでに保有している場合と比較すると利回りは低くなる傾向にあります。

とはいえ、自分が理想としているアパート経営に即した立地を探すことができ、建物を建設してアパート経営を行える点は大きなメリットです。

土地込みの新築アパートを購入する

土地込みの新築アパートを購入する場合、土地と建物がセットで販売されるため、いろいろと手間が省ける点がメリットです。販売されている土地込みの新築アパートは、不動産販売会社がアパート需要の高い土地を調査しており、建物の間取り、設備も企画して建てられたものになります。当該理由により、賃貸経営の事業性は高いアパート経営ができるといえます。

費用としては、土地代と建物の建築費用、諸費用に不動産販売会社の利益分が上乗せされます。プロの目を通して企画された物件なので、魅力的ではありますが、不動産会社に支払う利益が費用に上乗せされることから、最終的な費用は多くかかる傾向にあります。

土地込みの中古アパートを購入する

土地込みの中古アパートを購入する方法は、先述した3つの方法と比べると一番費用を安く抑えられます。しかし中古物件特有のリスクも存在するため、物件選びは慎重に行う必要があります。

特に中古アパートであれば修繕リスクに着目しましょう。建物や設備に傷みが目立ち、購入後に修繕費用が多くかかることが予想される物件なら、事前に交渉を行う必要が出てきます。

アパート経営にかかる資金・維持費用編

アパート経営では購入したあとも、入居者様が入居したいと思えるような工夫をしたり、入居者様を集める宣伝を行ったり、建物の維持管理を行ったりするための費用がかかります。ここでは具体的な費用項目について解説します。

仲介手数料

入居者様を見つける業務、つまり入居者募集業務と賃貸仲介業務を不動産仲介会社に依頼し、入居者様ご契約された場合は、不動産仲介会社に仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料について、不動産仲介会社が受け取れる額は、宅建業法でオーナー様および入居者様合わせて家賃1ヶ月分までと決められています。

管理委託料

アパート経営における管理業務を賃貸管理会社に依頼するケースもあります。管理委託を行う場合は、賃貸管理会社への管理委託料の支払いが発生します。賃貸管理会社によって費用は異なるものの、共用部分の清掃や設備のメンテナンス、入居者様の契約更新対応なども対応してもらえるため、管理になかなか時間が取れないご多忙な方は賃貸管理会社に管理を依頼することも検討しましょう。

自主管理オーナー様でも手間がかかることがあるので、資産拡大を視野に入れ、将来の想定リスクに対応できるなら、非常に低コストであるという考えもあります。

管理委託料は、賃貸管理業務の範囲によって異なりますが、一般的には家賃の5%が相場となっています。

修繕費

建物の躯体や屋根・外壁、設備などは経年劣化によって修繕や改修が必要です。その際にかかる費用が修繕費です。原状回復工事費用には「入居者様負担分」と「オーナー様負担分」があります。なお、オーナー様が負担するとなった部分の原状回復工事費用も修繕費に該当します。

ただ、修繕費でも20万円を超える部分については、「その資産の価値を高める工事費用」とみなされ、資本的支出として扱う場合があります。資本的支出については意外と知らない方もおられますので注意しておきましょう。

水道光熱費

共有部分の電気料金や水道代で、毎月発生する費用です。入居者様からいただく管理費や共益費から支払うのが一般的です。

もちろんこれらの費用はアパート経営における経費として計上できます。

アパートローン(不動産投資ローン)の利息

アパートローン(不動産投資ローン)を利用している場合、毎月の返済が発生します。そのうちの利息部分は経費計上できるため、毎月の利息負担分はきちんと把握しておくようにしましょう。

現在は歴史的低金利の時代なので、アパートローンの場合も比較的低金利ではありますが、昨今のインフレ傾向から金利上昇が懸念されます。融資額や返済期間、固定金利か変動金利かによっては利息の負担が大きくなる可能性もありますので、注意が必要です。

アパートローンの返済は家賃収入の中から行いますので、毎月の返済額をどのくらいに設定するかを考えておきましょう。その際には空室率も加味することを忘れないようにしてください。

アパートローンの元本部分

アパートローンの利息の支払いがあるということはもちろん元本部分の返済も発生します。しかし元本部分の返済額は費用としては計上できません。計上できるのは利息部分のみであることを覚えておきましょう。

費用としては計上できないものの毎月の支出となりますので、キャッシュフロー上の負担にならない額の返済額に設定することが大切です。なお、元本部分の返済が経費計上できないかわりに、次に述べる減価償却費で経費計上することになります。

減価償却費

アパートなどの固定資産を購入した場合、その取得金額を固定資産の法定耐用年数に応じて、各年分の必要経費として計上できます。これを減価償却費といい、実際の支出は発生しないにもかかわらず、経費として計上できることから最終的な節税効果を生み出します。

アパート経営だけでなく、不動産投資全体において減価償却の仕組みを理解しておくことはとても大切ですので、仕組みをしっかりと理解しておきましょう。

固定資産税

固定資産税とはその年の1月1日時点で不動産を所有している方に対して課税されるもので、税額は課税標準額 × 税率(1.4%)で計算します。

固定資産税には軽減措置が用意されており、新築戸建て住宅の場合、購入から3年間は固定資産税の2分の1が減額され、新築マンションなどでは5年間2分の1が減額されます。

さらに、土地にも軽減措置が用意されており、小規模住宅用地の場合は評価額の6分の1に、一般住宅用地なら評価額の3分の1の減額となります。

都市計画税

都市計画税は基本的に固定資産税と合わせて支払います。税額は、課税標準額 × 税率(0.3%)で計算された額です。

都市計画税にも固定資産税と同様に軽減措置が設けられており、土地だと小規模住宅用地の場合は評価額の3分の1に、一般住宅用地なら評価額の3分の2に減額されます。ただし住宅の軽減措置はありませんので注意しておきましょう。

事業税

10室以上のアパートの貸付を行った場合、それは事業規模とみなされます。結果、事業税がかかることになり、より支出が多くなります。事業税の額は以下の計算式で求められます。

(総収入金額-必要経費-290万円)✕5%

所得税

確定申告で、各所得金額を計算し、さらに各所得控除を適用させた最終的な課税所得金額に対し、課税所得金額に応じた税率を乗じた所得税がかかります。日本の所得税率は所得金額が大きいほど税率も高くなる累進課税制度を採用しています。最終的に所得税がどのくらいかかるのかについては、国税庁の所得税率一覧表を参考にしてください。

国税庁 所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

現在では東日本大震災からの復興ための施策実施の目的で、財源確保の手段の一つとして「復興特別所得税」が課税されています。2037年までの各年分の基準所得税額が対象です。復興特別所得税の税額は以下の計算式で求められます。

復興特別所得税=基準所得税額✕2.1%

復興特別所得税は、所得税と合わせて納める必要がありますので、計算を忘れないようにしておきましょう。

住民税

住民税は、所得金額にかかわらず一律の額が課税される「均等割」と、所得金額の10%で計算された「所得割」の合計額です。均等割額は自治体によって異なりますが、多くの自治体は5,000円に設定されています。またこの5,000円は県民税と市民税を合算した額ですので、市民税が不要な地域に住んでいる場合はもっと安くなります。

アパート経営に必要な自己資金は

では、最終的にアパート経営を行うにあたって必要な自己資金はいくら用意すべきなのでしょうか。自己資金は金融機関から融資を受ける際の頭金や諸費用、物件の購入の際の諸費用などにあてられます。

フルローンやオーバーローンなどのように、自己資金がなくてもアパート経営を始めることも不可能ではありませんが、現在の金融機関の融資姿勢では難しいでしょう、また仮に認められたとしても、リスクが高くなります。不測の事態に対応できるように、ある程度の自己資金を用意しておいたほうがよいでしょう。

自己資金の目安は10~30%

一般的に自己資金の目安は、物件価格の10~30%といわれています。頭金は物件価格の10~20%を想定し、残りを購入時の諸費用に充当します。新築の場合は物件価格の7%程度を目安に、中古の場合は物件価格の10%程度を目安と考えておけばいいでしょう。

実際に金融機関からも10~20%程度の頭金を入れることを求められるケースが多いとされています。

融資額が大きくなればリスクも大きくなる

融資額が大きくなるほど、必要な自己資金をあまり準備できず、結果として融資額が大きくなれば「自己資本利回り」は高くなります。自己資本利回りの計算式は以下で求められます。

年間キャッシュフロー÷自己資本×100

例えば、物件価格が4,000万円で年間の家賃収入が180万円、維持の経費が50万円かかったとします。

もし、物件価格の20%である800万円を頭金で支払い、3200万円の融資を受けたと仮定すると、自己資本利回りは(180万円-50万円)÷800万円=16.25%です。

頭金10%で購入した場合は、(180万円-50万円)÷400万円=32.5%となり、自己資本利回りが頭金20%を入れた場合と比べて倍になったことがわかります。

投資の原則では、リスクとリターンは比例の関係にあります。つまり、自己資本利回りが高いということはそれだけレバレッジをかけている状態となり、最終的なリスクが大きくなるといえます。

頭金の目安は10~20%といわれていますが、リスクヘッジを考えるなら20%の頭金を自己資金で準備することを考えましょう。

出口戦略も含めた資金計画が大切

アパート経営を始める前に、将来のビジョンを考えておくことが非常に大切です。例えば、経営するアパートを収益物件として子どもたちに相続させるのか、それともタイミングを見て売却するのか、アパート経営の出口戦略を決めておくことで成功確率が高くなります。

事前に出口戦略を決めたうえでアパート経営を行うことにより、収支のシミュレーションも行いやすくなります。売却方法も収益物件のままで売却する方法もあれば、更地にして売却する方法もあります。

融資期間を長くすると月々の返済額が低くなるので、キャッシュフローは良くなりますが、売却時にローン残債が多いということもあります。売却を前提とした出口戦略も含めて金利や融資期間、自己資金額などを総合的に考える必要があります。

不動産投資を成功させるためには、自己資金がどのくらい用意できるかを考えながら収支計画を立てて、どのような経営を行うか、また出口戦略についてはどうするかを購入前に考えることが重要なポイントといえるでしょう。

まとめ アパート経営をサポートしてくれる賃貸管理会社

アパート経営では金融機関からの融資が、レバレッジ効果を生み出す武器になりますが、リスクもあるので慎重に検討する必要があります。そしてアパート経営の成功確率を上げるためには、リスク対策を行う優秀なパートナーの存在が欠かせません。

賃貸経営のサポートとして、経営計画の策定、空室対策、入居者ニーズの把握とサポートなどさまざまな場面で頼りになるパートナーがいると、自ずとアパート経営の成功確率は高まります。

信頼できるパートナーとしておすすめできるのは、賃貸経営に関連する対応範囲が広い賃貸管理会社です。中立的な視点になりやすいビジネスモデルのため、オーナー様と同じ目線で資金計画も含めて賃貸経営をサポートしてくれるパートナーがいると心強いでしょう。

【リロの不動産】では、常にオーナー様の立場で考えたサポートを心がけており、お客様の声から生まれたサービスや、顧客満足度を向上する取り組みにも力を入れています。相続、税務、建築などの専門分野のパートナーと一緒に伴走させて頂きます。

アパート経営に興味をもち、これから始めてみようと思われている方は、ぜひ【リロの不動産】にご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。