不動産管理会社の設立で賢く節税!事例でわかる仕組み・メリット・リスク・手順・判断基準を解説
2026.05.17
オーナー様による不動産管理会社の設立は、賃貸経営を続けるなかで「税負担をどう抑えるか」「将来の相続や承継をどう考えるか」といった課題に直面した際に、検討されることの多い選択肢です。一方で、仕組みを十分に理解しないまま法人化すると、期待していた効果が得られなかったり、かえって負担が増えたりするケースもあります。
本記事では、不動産管理会社の基本的な仕組みから、節税や相続対策といったメリット、注意すべきリスク、設立までの流れ、検討の目安となる判断基準までを解説します。
▼この記事の内容
●オーナー様が設立する不動産管理会社には、管理委託方式、不動産保有方式、サブリース方式がある。
●不動産管理会社を設立するメリットとしては、節税効果がある、相続・資産承継がスムーズにできる、融資で有利になる、がある。
●不動産管理会社を設立するデメリットとしては、法人の設立・維持に費用・手間がかかる、代表であっても法人の資金は自由に使えない、税務署に否認されることがある、不動産の移転には注意が必要、がある。
●不動産管理会社を設立すべきかの判断基準としては、課税所得が900万円超になった、相続・事業承継を考えている、事業拡大を計画している、すでに法人経営を行っている、がある。
●不動産管理会社設立を成功させるためのポイントとしては、税理士・司法書士・行政書士と連携する、実績のある賃貸管理会社のアドバイスを受ける、がある。
目次
不動産管理会社とは?基本的な役割と仕組み
不動産管理会社とは、賃貸物件の運営や管理を法人として行うために設立される会社です。オーナー様が自ら所有する収益物件を法人で一元管理することで、節税や資産承継を見据えた運営がしやすくなります。
運営方法にはいくつかの形があり、物件の持たせ方や役割分担によって特徴が異なります。
管理委託方式
管理委託方式は、個人が所有する物件の管理業務を法人が受託し、その対価として管理報酬を得る仕組みです。
最大の特徴は、不動産の名義(所有権)を変更せずに、管理という役割だけを法人へ任せられる点にあります。物件を個人から法人へ移転させる際に発生する登録免許税や不動産取得税などの初期コストを抑えられるほか、煩雑な登記手続きも不要なため、低コストで法人設立ができます。リスクを抑えて管理会社の基盤を作り、着実に運営をスタートさせたい設立直後のオーナーに選ばれている形態です。
管理委託方式では、個人から法人へ支払う「管理委託料」が法人の主な収入源です。管理料の設定は一般市場の相場が基準となり、賃料の3~8%程度、高くても10%前後が目安です。相場を大きく上回る高額な管理料を設定すると、個人側での経費計上を税務署に否認されるリスクがあるため、報酬額は実際の業務内容に合わせて適切に決めるのが一般的です。
不動産保有方式
不動産保有方式とは、個人が所有していた不動産の名義を法人へ移し、法人が物件を直接所有・運営する形です。家賃収入は法人の収益となり、管理や修繕、金融機関からの借入も法人名義で行います。
不動産そのものを法人の資産として持つため、複数物件を所有している場合でも、収支や資産状況を事業として一元的に把握しやすくなります。個人の家計とは切り離して管理できるため、収益性や投資判断を冷静に行いやすい点も特徴です。
また、法人が不動産を保有していることで、金融機関からは事業用資産として評価されやすくなり、融資や追加借入のハードルが下がる傾向があります。将来的には、株式を通じて資産と経営を引き継ぐ形も取れるため、相続や事業承継を視野に入れた運営にもつながります。
一方で、名義を法人へ移す際には、登録免許税や譲渡にともなう税金が発生します。負担の大きさは物件や状況によって異なるため、どの程度事業に影響が出るかを把握したうえで判断することが重要です。
サブリース方式
サブリース方式とは、個人が所有する不動産を法人が一括で借り上げ、法人が入居者へ再賃貸する形です。個人は法人から一定の賃料を受け取り、入居者対応や管理業務は法人が担います。
個人と法人のあいだで賃貸借契約を結ぶため、管理に関わる業務や収益を法人側に集約しやすくなります。法人に管理報酬や利益を残す構造をつくれる点はメリットですが、法人から個人へ支払う賃料は、市場家賃を基準に合理的な水準で設定することが前提です。
賃料が市場相場とかけ離れていると、「なぜこの金額なのか」を税務署に説明できず、取引の妥当性を疑われる可能性があります。そのため、金額設定には根拠を持たせることが重要です。
また、サブリース契約では、契約期間や賃料改定の条件をどのように設定するかによって、後から経営状況や税務方針が変わった場合でも、条件の見直しが難しくなることがあります。自社で管理会社を設立するのであれば、将来の運営方針の変更も想定したうえで、契約内容や条項の設計に注意を払う必要があります。
不動産投資による節税記事に関しては、以下もご参照ください。
【高額納税者必見】高所得者向け節税対策とは? 不動産投資と資産管理会社
不動産投資は法人化がお得?節税対策につながるメリット・デメリット
不動産管理会社を設立するメリット
不動産管理会社を設立することで、税負担の調整や相続・資産承継の進めやすさ、融資面での評価など、個人経営とは異なるメリットが生まれます。ここでは、法人化によってどのようなメリットが生じるのかを、具体的なポイントごとに見ていきます。
節税効果がある

不動産管理会社を設立すると、個人と法人で所得を分けて受け取れ、税率の違いや経費計上の仕組みを活かした節税が可能になります。利益をすべて個人に集中させず、法人も含めて配分することで、税負担を抑えながら手元に残る資金を確保しやすくなります。
法人設立によるメリットについては、以下の事例もご参照ください。
不動産投資における税金に関しては、以下の記事もご参照ください。
不動産売却税とは?信頼できるパートナーと考える効果的な節税対策
不動産投資に税理士への依頼は必要? 費用や不動産に強い税理士の見つけ方
【保存版】不動産投資で節税する仕組み!節税が向いている方を徹底解説
不動産売却時の税金を無料相談!譲渡所得税の基本知識と相談先の選び方を解説
不動産所得を節税するには?減価償却費など代表的な経費【一覧表】
家賃収入にかかる税金はいくら?設備投資と損益通算で考える節税対策
個人と法人の税率差を利用できる
個人と法人では、同じ利益であっても適用される税率が異なります。この税率の差を活かせる点が、法人化による節税メリットの一つです。
個人の場合、不動産収入は他の所得と合算され所得税の計算に含まれます。個人の所得税は累進課税のため、所得が増えるにつれて税率も上がり、最高税率は45%です。住民税を含めると、利益に対する税負担はさらに重くなります。
一方、法人の利益にかかる法人税の実効税率は、おおむね30%前後とされており、個人の所得税のように、所得額に応じて段階的に税率が引き上がる仕組みではありません。この点が、個人課税との大きな違いです。
法人化すると、管理料や役員報酬といった形で、事業から生じた利益の一部を法人側で受け取ることが可能です。すべての利益を個人に集中させるのではなく、税率が比較的安定している法人にも配分することで、全体としての税負担を減らせます。不動産から得られる利益が大きくなるほど、この税率差が全体の税負担に与える影響も無視できなくなります。
経費計上の幅が広がる

法人化すると、管理業務に関連する支出を経費として計上できる範囲が広がります。たとえば、物件の巡回や現地確認にかかる交通費・駐車場代、入居者や修繕業者との連絡に使う通信費、賃貸管理会社との打ち合わせ費用などは、業務との関係が説明できれば損金にできます。個人の場合は支出が私的なものと区別しづらいのに対し、法人では管理業務にともなう支出として扱われやすい点が違いです。
法人を設立した場合、社長に支払う役員報酬も、税務上の要件を満たせば会社の経費として計上できます。物件の現地対応など、管理業務の一環として日当を支給するケースでも、社内規程があり、金額が社会通念上相当であれば経費として扱われます。
不動産管理会社を設立すると、管理業務に関連する支出を幅広く経費として計上できるようになるため、その分課税対象となる法人の利益を圧縮する効果が期待できます。
家族に所得を分散できる
不動産管理会社を設立すると、家族を役員や従業員として迎え、管理業務の対価として給与を支払うことができます。この給与は法人側では経費となり、受け取る家族側では給与所得として扱われます。
個人で不動産を所有している場合、家賃収入はすべてオーナー様本人の所得となり、生計を一にする家族へは原則として給与という形で所得を分けることはできません。一方、法人では「会社が業務を行い、人が働く」という構造を取れるため、実際の業務内容に応じて家族に所得を配分することが可能になります。
所得税は累進課税のため、所得が一人に集中するよりも、複数人に分かれたほうが、世帯全体で見た税負担が軽くなる場合があります。そのため、家族で管理業務を分担している不動産経営では、法人化による所得分散が有効に働くケースがあるのです。
ただし、名義だけの役員や実態のない勤務に対する給与は認められません。業務内容や報酬額が実態に見合っていることが前提です。
損失の繰越期間を10年にできる
不動産管理会社を設立し、青色申告を行っている法人では、赤字(税務上は欠損金)を最長10年間にわたって繰り越せます。空室が続いた年や大規模な修繕を行った年などで欠損金が生じた場合、その金額は翌年以降に持ち越され、将来の黒字と相殺されます。翌年に利益が出ても、過去の欠損金が残っている間は、相殺後の金額に対して法人税が課される仕組みです(なお、法人住民税の均等割は別途発生します)。
欠損金の相殺は、その年に計上された黒字の範囲内で行われ、黒字が出なかった年は欠損金を消費せず、さらに翌年へ繰り越されます。繰越期間は最大10年間で、この期間内に使い切れなかった欠損金は失効します。
一方、個人の青色申告でも損失の繰越は可能ですが、期間は原則3年に限られます。そのため、赤字が出た後に十分な黒字が確保できない場合、損失を相殺しきれないまま期限を迎えてしまうこともあります。収支の波が出やすい不動産経営において、欠損金を長期間にわたって活用できる点は、法人ならではの特徴といえるでしょう。
出典:国税庁『青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除』
不動産の売却損が損益通算できる
法人を設立すると、損益通算という仕組みにより、事業全体の税負担を調整しやすくなります。法人では、不動産売却で生じた損失を、同一法人内で行っている他の事業の黒字と相殺し、差し引いた金額に対して法人税が課されます。事業ごとの収支を合算したうえで課税所得を計算でき、全体の税負担を抑えられる点が特徴です。
個人の場合は、不動産の譲渡所得は分離課税のため、給与所得や事業所得(総合課税)とは税金計算が別枠です。不動産の売却損は損益通算できません。
法人では損益通算を適用できるため、毎年の事業収支に加え、不動産を売却する年についても、他の事業の利益状況を踏まえて判断することも可能です。事業全体の流れや税負担を考慮しながら売却のタイミングを検討できる点は、法人ならではの利点といえるでしょう。
減価償却費を自由に決められる

法人の場合、不動産や設備にかかる減価償却費は任意とされており、毎年必ず計上する必要はありません。
個人の不動産所得では、減価償却は原則として毎年計上する前提で扱われます。帳簿上で償却費を計上していなくても、税務上は償却したものとして計算されるため、赤字だからといって減価償却を見送ることはできません。
一方、法人の場合は減価償却が任意とされているため、修繕費や人件費など他の経費がかさみ、すでに赤字となっている年度には、あえて減価償却費を計上しないという選択もできます。なお、任意償却といっても、法定耐用年数や償却限度額を超えて計上できるわけではありません。
このように法人では、収支状況に応じて減価償却費の計上時期を調整できるため、税負担が一部の年度に偏りすぎるのを防げます。
相続・資産承継がスムーズにできる

不動産管理会社を活用すると、相続や贈与の場面で「資産をどう分け、どう引き継ぐか」を考えやすくなります。法人を介して資産を管理することで、株式の分割や移転が可能となり、次世代への承継を計画的に進められる点が特徴です。
相続税・贈与税の軽減
不動産管理会社を設立すると、相続や贈与の場面で税負担を抑えられる可能性があります。理由は、課税の基準となる評価額の考え方が変わるためです。
個人で不動産を所有している場合、相続時には土地や建物そのものが相続財産となり、相続税評価額にもとづいて課税されます。不動産は時価より低く評価されるとはいえ、物件の規模が大きいほど、相続税の負担も重くなりがちです。
一方、法人を通じて不動産事業を行っている場合、相続や贈与の対象は法人の株式になります。株式の評価額は、不動産の評価額がそのまま反映されるわけではなく、会社の純資産や収益状況などをもとに算定されます。利益や内部留保を抑えた運営を行っていれば、株式評価が比較的低くなるケースもあります。
資産の持ち方を法人に切り替えることで、相続税や贈与税の計算に使われる評価額を抑えられる場合があります。こうした点から、将来の資産承継を見据えた資産防衛の手段として、不動産管理会社の設立が検討されることも少なくありません。
戦略的な事業承継が可能に
不動産管理会社を設立すると、株式を段階的に子へ移すことで、経営権と資産を計画的に承継できます。
個人名義で不動産を保有していると、相続の対象は土地や建物そのものとなり、「どの物件を誰が引き継ぐのか」「共有にするのか」といった点を相続人同士で決める必要があります。相続人が複数いる場合、物件ごとの評価額や今後の管理方針をめぐって意見が分かれやすく、話し合いが難航するケースも少なくありません。
一方、法人が事業の受け皿になっていれば、相続や贈与で引き継ぐ対象は不動産ではなく株式になります。株式は分割しやすいため、毎年一定数ずつ贈与するなど、あらかじめ決めた方針に沿って少しずつ移していくことが可能です。さらに、経営を担わせたい子には議決権のある普通株式を、それ以外の子には議決権制限株式を持たせることで、資産の配分と経営への関与を分けて引き継ぐこともできます。
不動産そのものの帰属を巡って調整する必要がなく、誰が事業を引き継ぐのかを明確にした形で承継を進められる点が、法人を使う大きな利点です。
融資で有利になる

不動産管理会社を設立すると、融資の場面で有利に働くことがあります。法人格を持つことで、金融機関から「事業として継続的に運営されている主体」として評価されやすくなるためです。
個人の場合、融資判断は年収や勤務先、既存の借入状況といった個人属性に大きく左右されますが、法人では決算書や事業内容、収支の安定性をもとに審査が行われます。家賃収入や管理料収入が安定していれば、法人の返済能力として評価され、借入金額や返済期間、金利条件などで選択肢が広がるケースもあります。
また、個人と法人で借入先を分けられるため、個人の与信枠を使い切らずに追加融資を検討できる点も特徴です。これは、今後の物件取得や大規模修繕、設備投資を進めるうえで大きな違いになります。
このように法人化は、節税だけでなく資金調達の面でも不動産経営の柔軟性を高め、事業拡大のチャンスを広げる手段といえます。
不動産投資の相続に関しては、以下の記事もご参照ください。
不動産投資が相続税対策に選ばれている理由は?5つの節税対策も紹介
相続税の基礎控除とは? 各種控除と賃貸不動産を活用した相続税対策
不動産を生前贈与したほうがいいケースとメリット・デメリットを解説
知っておくべき相続税対策! 不動産を活用した節税の仕組みを解説
不動産管理会社を設立するデメリット
不動産管理会社の設立には、節税などの利点がある一方で、費用や事務負担、法的な制約も生じます。良い面だけで判断せず、想定される負担も踏まえたうえで、長い目で経営を考えることが大切です。
法人の設立・維持に費用・手間がかかる

不動産管理会社を設立すると、個人で賃貸経営を行う場合に比べて、費用や事務の負担が増えます。まず、設立時には登録免許税や定款の作成・認証にかかる費用が発生し、株式会社の場合は数十万円程度の初期コストを見込む必要があります。合同会社であっても、登記費用などは避けられません。
設立後も、法人としての維持費が継続的にかかります。決算書の作成や税務申告が必要になるため、顧問税理士への報酬が発生するのが一般的です。また、役員報酬を支払う場合には社会保険への加入が必要となり、保険料の法人負担分も考慮しなければなりません。赤字であっても、法人住民税の均等割など最低限の税負担は生じます。
帳簿管理や各種届出、年次決算など、事務作業の量も増えます。節税や承継といったメリットを活かすには、こうした費用や手間を上回る効果が見込めるかを事前に検討することが重要です。
代表であっても法人の資金は自由に使えない
不動産管理会社を設立すると、たとえ代表者であっても、法人の資金を個人の感覚で自由に使うことはできません。法人の口座にあるお金は、あくまで会社の経営資源であり、私的な支出に充てることは認められていないためです。個人経営のときのように、生活費や私用の支払いをそのまま事業用資金から出すと、問題になる可能性があります。
法人の資金を代表者個人が使う場合は、役員報酬として支給する、立替金として精算するなど、必ずルールに沿った処理が必要です。これを曖昧にしたまま支出を続けると、税務調査で私的流用と判断され、経費否認や追徴課税につながる恐れがあります。また、役員報酬の扱いを誤ると、損金算入が認められず、法人税負担が増えるケースもあります。
法人化すると、資金管理や経理処理には個人以上に明確な線引きが求められます。節税メリットを活かすためにも、法人と個人のお金をきちんと分けて管理するよう意識しましょう。
税務署に否認されることがある
不動産管理会社を設立しても、その運営実態がともなっていなければ、税務署から否認されるリスクがあります。特に注意したいのが、「節税のためだけに作られた法人」と判断されるケースです。形式上は法人が存在していても、実際の業務内容や取引実態が乏しい場合、税務上は個人と同一視される可能性があります。
管理会社があるにもかかわらず、実際の管理業務はすべて個人が行っている、管理報酬の金額に合理的な根拠がない、業務委託契約が形だけになっているといった場合です。このような状況では、支払った管理料や役員報酬が経費として認められず、所得の付け替えと判断されることがあります。その結果、修正申告や追徴課税につながる可能性もあります。
法人化による節税効果を正しく得るためには、管理会社としての業務内容を明確にし、契約書や報酬設定に合理性を持たせることが重要です。実態をともなった運営を行っているかどうかが、税務上の評価を大きく左右する点には注意しましょう。
不動産の移転には注意が必要
不動産管理会社を設立する際、個人名義の不動産を法人へ移転する場合には、税負担や手続き面で注意が必要です。不動産を法人名義に変更すると、売買と同様の扱いとなるため、登録免許税や不動産取得税が発生します。あわせて、個人側では譲渡所得が生じる可能性があり、取得時期や取得価格によっては、譲渡所得税の負担が想定以上に大きくなることもあります。
そのため、法人化したからといって、不動産をすべて法人に移す判断が適切とは限りません。実際には、建物のみを法人へ移転し、土地は個人所有のままとする形を取ることもあります。建物は減価償却や修繕費の影響が大きい一方、土地は譲渡時の税負担が重くなりやすいためです。どこまで法人に持たせるかによって、税務上の影響は大きく変わります。
不動産の移転は、一度行うと簡単に取り消せません。法人化を検討する際は、移転の有無や範囲について税理士などの専門家に試算を依頼し、全体の税負担を把握したうえで判断することが重要です。
不動産管理会社の設立手順

不動産管理会社を設立するには、いくつかの法的手続きを順番に進める必要があります。手続き自体は難解ではありませんが、書類の不備や手順の抜けがあると、設立が遅れたり、後々の運営に支障が出ることもあります。ここでは、会社設立までの基本的な流れを、ステップごとに分かりやすく解説します。
STEP 1.会社形態を決める
不動産管理会社を設立するにあたり、最初に決めるべきなのが会社形態です。一般的には「株式会社」か「合同会社」のいずれかを選択しますが、どちらが適しているかは経営の目的や将来像によって異なります。
株式会社は社会的な信用度が高く、金融機関や取引先からの評価を得やすい点が特徴です。将来的に物件を増やしたい場合や、事業承継を視野に入れて株式を活用したい場合には、株式会社の方が適しています。
一方、合同会社は設立費用や運営コストを抑えやすく、意思決定がシンプルな点がメリットです。家族経営や小規模な管理業務からスタートしたい場合には、合同会社を選ぶケースも少なくありません。ただし、合同会社は株式という概念がないため、将来的な承継や出資の柔軟性という点では制約があります。
現在の規模だけで判断するのではなく、今後の事業拡大や承継の方針も踏まえたうえで、会社形態を選ぶことが重要です。
STEP 2.定款を作成・認証する

株式会社を設立する場合は、まず「定款」を作成し、公証役場で認証を受けます。定款は、会社の目的(何の事業を行う会社か)、商号、本店所在地、資本金、役員の構成など、法人運営の基本ルールを定める書類です。
不動産管理会社であれば、管理業務の範囲や関連事業(賃貸管理、サブリース、リフォーム手配など)を、実態に即して記載しておくことが重要になります。目的の書き方が狭すぎると、後から事業を追加する際に定款変更が必要となり、余計な手間や費用がかかる可能性があるため注意が必要です。
合同会社は定款認証が不要ですが、定款そのものは設立後の手続きや運営の前提になるため、内容は慎重に整えておきましょう。
STEP 3.書類を準備する
会社設立の登記に進む前に、必要書類を一通りそろえておく必要があります。主なものは、登記申請書、定款(認証済みのもの)、役員全員の印鑑証明書、代表者印、そして資本金の払込が確認できる書類などです。これらは法務局へ提出する正式書類となるため、記載内容に誤りがあると、その時点で登記手続きが止まってしまいます。
特に注意したいのが、氏名や住所の表記ゆれです。定款、登記申請書、印鑑証明書の記載が一致していないと、修正を求められることがあります。また、資本金の払込証明についても、通帳のコピー範囲や記載内容が不十分だと、再提出になるケースがあります。
書類の差し戻しが発生すると、設立日が後ろ倒しになるだけでなく、その後の口座開設や各種届出にも影響します。スムーズに手続きを進めるためにも、提出前に書類一式をまとめて確認しておきましょう。
STEP 4.資本金を払込む
定款の認証と必要書類の準備が整ったら、次に行うのが資本金の払込みです。設立時点では法人名義の口座は存在しないため、代表者個人の銀行口座に、定款で定めた資本金額を入金します。
払込みが完了したら、通帳の表紙、口座名義が確認できるページ、入金履歴が分かるページをコピーし、払込証明書を作成します。これらは登記申請時に提出する重要な書類であり、不足や不備があると手続きが進みません。入金日や金額が定款の内容と一致しているかも、事前に確認しておく必要があります。
資本金の額は、設立後の会社の信用力にも影響します。特に、不動産管理会社として金融機関との取引や将来的な融資を見据える場合、あまりに低額だと不利に働くこともあります。設立コストとのバランスを考えながら、現実的な金額を設定することが重要です。
STEP 5.会社の登記をおこなう

資本金の払込みが完了したら、会社設立の登記を行います。登記申請は、本店所在地を管轄する法務局に対して行い、これが受理されてはじめて法人として正式に成立します。申請書類には、定款、払込証明書、役員の就任承諾書、印鑑証明書など、これまで準備してきた書類一式を添付します。
登記申請日は会社の設立日となるため、事業開始のタイミングや契約との関係も考慮して日付を決めることが大切です。書類に不備がなければ、通常は申請から1〜2週間ほどで登記が完了します。
登記が完了した後は、税務署への法人設立届出書や青色申告の承認申請書、必要に応じて都道府県税事務所や市区町村への届出も行います。また、役員報酬を支払う場合や従業員を雇用する場合には、年金事務所での社会保険手続きも必要になります。設立後の各種届出まで含めて、不備がないように注意しながら、慎重かつ速やかに進めましょう。
不動産管理会社を設立すべきかの判断基準
不動産管理会社の設立は、すべてのオーナーにとって有利とは限りません。収益規模や将来の計画によっては、個人経営を続けたほうが適している場合もあります。ここでは、法人化を検討する目安となる代表的な判断基準を解説します。
課税所得が900万円超になった

不動産管理会社の設立を検討する一つの目安が、個人の課税所得が900万円を超えているかどうかです。個人の所得税は累進課税のため、所得が増えるにつれて税率が段階的に引き上げられます。
課税所得と所得税率の関係は、次の表のとおりです。
【課税所得と所得税率の目安】
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 1800万円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
出典:国税庁『所得税の税率』
表を見ると、課税所得が900万円を超えた段階で税率が33%に上がることがわかります。一方、法人税の実効税率はおおむね30%前後です。
そのため、課税所得が900万円を超えてくると、法人を活用して収益の受け取り方を分けた方が、結果として納付する税額を抑えられる場合があります。
相続・事業承継を考えている
将来的に相続や事業承継を見据えているかどうかも、不動産管理会社の設立を判断する際の基準の一つです。ここで重視したいのは、「直近で相続が発生するかどうか」ではなく、「数年後・十数年後に承継のタイミングが訪れる可能性があるか」という視点です。
早い段階で法人化しておくことで、株式の移転方法や役割分担を含めた承継の進め方を、状況に応じて調整できる余地が生まれます。また、法人を介して不動産事業を行う場合、相続や贈与の際に引き継ぐ対象が不動産そのものではなく株式になるため、税負担の見通しを立てやすくなる点もメリットです。
相続や事業承継を将来の課題として意識し始めた段階で、節税と承継の両面を踏まえ、法人化を長期的な資産戦略の一つとして位置づけられるかどうかが、不動産管理会社を設立するか判断するポイントになります。
事業拡大を計画している
新規物件の取得やリノベーション投資など、事業規模の拡大を視野に入れている場合は、不動産管理会社の設立を検討する一つの判断軸になります。個人で賃貸経営を行っている場合、資金調達は個人の与信枠に左右されやすく、収益が安定してきても、借入可能額に限界が生じやすい点が課題です。
一方、法人を設立すると、金融機関は代表者個人の属性だけでなく、賃貸事業としての収益性や継続性も含めて評価します。家賃収入が安定している法人であれば、事業そのものに対する信用が積み上がり、個人の与信枠とは切り離した形で融資を検討してもらえる可能性が出てきます。
こうした形で資金調達の枠組みが変わると、物件取得や改修のタイミングを事業計画に沿って判断しやすくなります。今後も借入を活用しながら物件数を増やし、収益規模を段階的に広げる意向があるかどうかは、法人化を検討するかどうかを考えるうえでの重要な判断基準です。
すでに法人経営を行っている
すでに不動産賃貸業を法人で行っている場合、管理業務を別法人に分けるという考え方もあります。物件の保有・賃貸運営・管理業務を一つの法人でまとめて行っている場合、事業が拡大するにつれて、収益構造やコストの内訳が把握しにくくなるケースも少なくありません。
管理会社を切り分けることで、賃貸経営を担う法人と、管理業務を担う法人の役割が明確になります。既存法人では家賃収入や借入残高・返済状況を中心に把握し、管理会社では管理料収入と人件費・業務コストを中心に管理できるため、どこで利益が出ているのかを整理しやすくなります。
また、管理業務を別法人にすることで、賃貸経営と管理業務に関するリスクを分けて考えられる点も特徴です。すでに法人経営を行っているオーナーにとっては、事業の見通しを立てやすくし、経営判断の精度を高める手段として、管理会社の設立を検討する価値があります。
不動産管理会社設立を成功させるためのポイント
不動産管理会社の設立を成功させるには、税務・法務・実務を切り離さず、一体として考えることが重要です。税理士や司法書士、行政書士といった専門家に加え、実際の賃貸管理を担う管理会社の視点も取り入れながら、設立後の運営まで見据えた形で設計していく必要があります。
税理士・司法書士・行政書士と連携する

不動産管理会社の設立では、税務・法務・契約実務が同時に関わるため、税理士・司法書士・行政書士と連携しながら進めることが重要です。法人化は、形式的な手続きを済ませれば終わるものではなく、設計の仕方によって、節税効果、将来の税務・法務リスクが大きく変わるためです。
税理士は、管理料や役員報酬の設定が税務上問題ない内容かを整理します。節税を意識するだけでなく、否認リスクを避ける視点で全体をチェックする役割です。
司法書士は、会社設立の登記手続きを担うほか、役員構成や株式の種類・持ち方など、法人の基本構造を形にします。将来の事業承継を見据えた株式設計も、設立段階で検討しておく必要があります。
行政書士は、管理委託契約や賃貸借契約など、日々の運営に直結する契約書や各種届出を扱います。金額設定や業務範囲に無理がないかを確認するのも、行政書士の役割です。
それぞれの士業が役割を分担し、全体像を共有したうえで進めることで、設立後の修正や想定外のトラブルを防げます。初期段階から相談先を揃えて進めることが、安定した管理会社運営につながるのです。
実績のある賃貸管理会社のアドバイスを受ける
不動産管理会社を設立する際は、実際に賃貸管理を行っている管理会社の意見を参考にすることも大切です。
実績のある賃貸管理会社は、家賃管理や入居者対応、修繕手配など、日々の管理業務を通じて実務の中身を把握しています。そのため、管理会社としてどこまでの業務を担うのか、管理料の対象とする業務範囲をどう設定するのかについて、運営の実情を踏まえた判断をしてもらえます。業務内容に対して管理料が過不足のない水準かどうかを、現場目線で確認できる点は大きなポイントです。
加えて、実際の管理現場を知っている管理会社であれば、契約上の区分と実務上の動きにズレが生じやすい点にも気づきやすくなります。現場の運用を想定せずに契約を定めてしまうと、判断の線引きが曖昧になり、日々の業務で確認や調整が増える原因になりかねません。
こうした点を踏まえると、設立前の段階で賃貸管理の実務を把握している管理会社に相談し、業務範囲や管理料の考え方を共有しておくことで、設立後の運営で判断に迷う場面を減らせます。
不動産管理会社設立で失敗しないために

不動産管理会社の設立は、節税だけを目的に進めると、かえって負担が増えるケースもあります。重要なのは、なぜ法人化するのか、どのような形で運営していきたいのかを明確にしたうえで、税負担と維持コスト、事務負担のバランスを見極めることです。
また、税務・法務・実務はそれぞれ切り離して考えられるものではなく、設計段階での判断が将来の経営や承継にも影響します。短期的な効果だけでなく、数年先・十数年先の事業の姿を想定しながら判断する視点も重要です。
【リロの不動産】では、現在の運営状況や将来の方針を伺いながら、不動産管理会社の設立が本当に必要かどうか、どのような形で進めるべきかをご相談いただけます。節税や承継だけでなく、日々の管理や将来の運営まで含めて検討したい方は、一度【リロの不動産】へご相談ください。
おすすめのサービス
おすすめのお役立ち情報
この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。
