【事例付】不動産売却の譲渡損失の損益通算!基本知識と注意点を解説

2024.10.29

土地や建物などの不動産を売却する際、原則として売却によって得た金額よりも購入時に支払った金額のほうが高かった場合には、損失が生じることになります。

このように、不動産や投資信託、株式などの資産を売却した際に生じる損失を「譲渡損失」と呼びます。

譲渡損失が生じた場合には、確定申告の際に損益通算を行うことにより、節税できる可能性があるので覚えておきましょう。

この記事では、損益通算という会計上の考え方や、損益通算できる特例と注意点、法人における損益通算などについて解説していきます。

なお、投資用不動の売却事例については、以下でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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不動産売却に関する損益通算

会計上の考え方には、損益通算というものがあります。損益通算についてしっかり理解しておくと、結果的に納める税金を少なくすることができます。

まずは、不動産売却に関する損益通算について簡単に解説していきます。

損益通算とは

損益通算とは、赤字の所得をほかの黒字の所得と合算することです。赤字と黒字を合算すると、黒字部分が打ち消れて課税所得が減り、結果として支払う所得税・住民税を減らせることになります。

ただし、損益通算には細かいルールが決められており、すべての赤字を黒字と相殺できるわけではありません。例えば、株式投資による損失を、給与所得から差し引いて課税所得を減らすという行為は認められていません。

損益通算できる所得の種類

何らかの損失によって赤字が発生した際に、ほかの黒字の所得と損益通算できる所得は、以下の4種類です。

土地や株式などの資産は、購入時に支払った金額よりも少ない金額で売却した際に、譲渡損失が生じます。また、給与所得者が年度の途中で個人事業主となり、事業所得が赤字となるケースもあります。

このような際には、一定の条件を満たせばほかのプラスの所得と損益通算して節税することが認められています。

反対に、一時所得や雑所得など、その性質から損益通算が認められていない所得もあります。

不動産所得のうち損益通算できないもの

不動産所得とは、不動産の「売却」による所得ではなく、不動産の「貸付」による所得を指します。先ほど紹介したとおり、不動産所得が赤字となった際は、損益通算できる可能性があります。

例えば、会社勤めをしながら大家業を営んでいる方で、家賃収入から必要経費を差し引いた不動産所得が赤字だった場合には、給与所得と損益通算することで、給与所得にかかる税金を抑えることができます。

ただし、不動産所得の中でも以下に当てはまるものは、赤字であっても損益通算ができないので覚えておきましょう。

・別荘などのように趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付による所得
・不動産所得が赤字の場合の土地を取得するためにかかった負債の利子相当額
・国外に所有する中古不動産による損失の一部

譲渡所得のうち損益通算できないもの

不動産所得と同様に、譲渡所得もすべての赤字が損益通算できるわけではありません。

譲渡所得が赤字だったとしても、以下に当てはまるものは基本的に損益通算が認められていません。

・別荘やゴルフ会員権などのように通常の生活に必要ではない資産の譲渡による損失
・申告分離課税の株式
・土地・建物

土地や建物などの不動産の売却によって譲渡損失が生じた場合は、一定の条件を満たさないと損益通算はできないので注意が必要です。

他の不動産売却とは損益通算可能

不動産の売却によって譲渡損失が生じた場合には、同じ年のほかの不動産売却による譲渡益とであれば損益通算ができます。

例えば、土地Aを売却したことにより1,000万円の譲渡益が発生した年に、建物Bを売却したことによる800万円の譲渡損失があれば、二つの取引に損益通算を適用してトータルで課税所得を200万円のみに減らすことができます。

不動産や株式の譲渡、先物取引による損失など、同じ性質の所得の範囲内でのみ損益通算ができる所得もあると覚えておきましょう。

不動産売却の譲渡益が損益通算できる場合

「譲渡所得のうち損益通算できないもの」の節で紹介したとおり、土地や建物の売却による譲渡所得は、原則損益通算できませんが、一部特例として損益通算が認められるケースもあります。

以下の2つのケースでは、一定の条件を満たせば不動産売却による譲渡益が損益通算できます。

・特定のマイホームを買い換えたとき
・特定の事業用資産を買い換えたとき

それぞれわかりやすく解説していきます。

特定のマイホームを買い換えたときの特例

特定のマイホーム(居住用財産)を、2023年12月31日までに売って、かわりのマイホームに買い換えて譲渡益を得たときは、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる可能性があります。

この特例を「特定の居住用財産の買換えの特例」と呼びます。

例えば、1,000万円で購入したマイホームを4,000万円で売却し、別のマイホームに買い換えた場合には、売却の時点で3,000万円の譲渡益が発生しています。本来であれば3,000万円の譲渡益が課税対象になりますが、特例が適用されると、買い換えたマイホームを将来譲渡するときまで譲渡益に対する課税を繰り延べることができます。

譲渡益が非課税となるわけではないので、厳密には、損益通算ではなく繰延である点に注意してください。

特定の居住用財産の買換えの特例を適用するためには、以下のような要件を満たす必要があります。

・自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
・売却した年、またはその前年・前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を受けていないこと
・売主の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること
・マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること など

出典:国税庁 特定のマイホームを買い換えたときの特例

特定の事業用資産を買い換えたときの特例

マイホームだけではなく、事業用の不動産(収益物件・駐車場など)を買い換えたときにも特例の適用により譲渡益の繰り延べができる可能性もあります。

これを事業用資産の買替の特例と呼びます。マイホームの特例とは異なり、繰り延べができるのは譲渡益の80%に限られます。

また、マイホームの特例と同じように譲渡益自体が非課税となるわけではありません。

事業用資産の買替の特例が適用されるには、譲渡資産および買替資産について以下のような要件を満たす必要があります。

・売却した年の1月1日において、所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物または構築物を譲渡して、国内にある事業用資産に買い換えること
・買換資産を取得した日から1年以内に事業に使うこと
・買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が、原則として譲渡した土地等の面積の5倍以内であること など

出典:国税庁 事業用の資産を買い換えたときの特例

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不動産売却の譲渡損失が損益通算できる場合

これまで紹介してきたとおり、建物や土地などの不動産の売却によって譲渡損失が出た場合は、原則同じ不動産売却による黒字に対してしか損益通算できません。

ただし、以下の2つのケースでは、一定の条件を満たせば不動産売却による譲渡損失が損益通算ができます。

・住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
・マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき

それぞれわかりやすく解説していきます。

住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたときの特例

マイホームを住宅ローン残債を下回る金額で売却し、譲渡損失が生じた際には、その年の給与所得・事業所得などほかの所得と損益通算することができます。損益通算を行なっても控除しきれなかった損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除することができます。

例えば、4,000万円で購入した家を3,000万円で売却した場合には、1,000万円の譲渡損失が発生します。給与所得が700万円の方の場合は、売却した年の給与所得に損益通算することにより課税所得がゼロになります。(減価償却などを考慮しない場合)

さらに、売却年の給与所得を差し引いた残りである、1,000万円ー700万円=300万円の譲渡損失は、翌年の給与所得にも繰り越して損益通算することが可能であり、売却の翌年の課税所得は700万円ー300万円=400万円となります。この特例によって大きな節税効果が期待できます。

これらを特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。これらの特例は、譲渡益に関する特例とは異なり、新たにマイホームを購入しない場合であっても適用することができます。

マイホームの譲渡損失による損益通算の特例を受けるためには、売却したマイホームが以下のような要件にあてはまっている必要があります。

・譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えていること
・日本国内の物件であること
・譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること

出典:国税庁 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき

マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたときの特例

現在住んでいる(または以前住んでいた)マイホームを売却して新住居に買い換えた際に、譲渡損失が生じた場合には、その損失を給与所得や事業所得などと損益通算できます。

マイホームの買い換えにより譲渡損失が生じたときに特例を適用して損益通算をするには、以下の要件を満たしている必要があります。

・売却した年の1月1日において、そのマイホームの所有期間が5年を超えていること
・買い換える建物の床面積が50平米以上であること
・すでに居住していない家である場合、自分が居住しなくなってから3年以上経っていないこと
・新しいマイホームを購入した翌年の12月31日までにその家に居住すること
・新しいマイホームを購入した年の12月31日において、新しいマイホームについて償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。

出典:国税庁 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき

不動産売却の損益通算の特例を受ける際の注意点

不動産を売却した際には、損益通算の特例を受けて賢く節税するのがおすすめです。しかし、不動産売却の損益通算の特例を受ける際には、以下の2点に注意しましょう。

・マイホームの3,000万円特別控除が受けられない
・確定申告の際に手続きが必要

それぞれ簡単に解説していきます。

マイホームの3,000万円特別控除が受けられない

マイホームを売却する際には、所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から最大3,000万円まで控除ができる特例があります。

これは「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれ、会計上大きなメリットがある特例ですが、不動産売却による損益通算の各種特例とは併用ができない点に注意してください。

3,000万円の特別控除の特例か、損益通算の特例か、どちらを選択したほうが得になるか試算した上で慎重に適用するべきといえます。

■投資用不動産・収益物件の売却時の税金と節税対策に関連する記事
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確定申告の際に手続きが必要

不動産売却の譲渡所得は、特例を適用することによりほかの所得との損益通算が可能になりますが、特例を受けるためには確定申告の際に通常よりも多くの手続きが必要となります。

具体的には、譲渡所得の計算明細書や、マイホームに関する登記事項証明書や売買契約書の写しなどを確定申告書に添付して提出する必要があります。

適用を受ける特例によって必要書類は異なるため、確定申告の前に国税庁のホームページなどで確認をしておきましょう。

法人は不動産売却がすべて損益通算される

ここまでは、個人が不動産を売却する際の損益通算について紹介してきました。

法人と個人では経費計上などの会計の方法が大きく異なり、法人が不動産を売却した際にはすべての譲渡所得が損益通算されます。

ここでは、法人が不動産売却をした際の損益通算について解説していきます。

個人は所得の区分が10種類

個人の所得の区分は所得税法で定められており、以下の10種類に分類されます。

・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得

このうち、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得が赤字のときのみが損益通算が可能であり、さらに損益通算をする上でもさまざまなルールや特例が定められています。

法人には所得の区分がない

個人に対して法人は、所得の区分がないのが特徴です。柱となる事業によって生じた利益や不動産の売却による損失など、すべての損失や利益を損益通算することができます。

なお、法人が不動産売却をした際に発生する税金は、以下の5つが挙げられます。

法人は節税メリットが大きい

すべての収益や損失を損益通算できる法人は、個人と比べて節税対策を行いやすいといえます。

個人が不動産を売却した際には、損益通算をできるケースが限られており、譲渡損失が生じたとしても課税所得を圧縮できない可能性もあります。

それに対し、法人であれば、いかなる損失であってもほかの利益と相殺させることができるので、不動産売却によって譲渡損失が生じた際には法人税の税率を下げられます。

また、不動産売却によって利益が生じて課税所得が増えてしまう場合でも、役員退職金として支給したり、新たに購入した物件の減価償却費を計上したりして、所得を分散させることができます。

現在収益物件を所有しているオーナー様も、複数件の不動産を所有するなど、一定以上の事業規模以上になったら法人化の検討がおすすめです。

法人化して不動産投資をするメリットなどについては、以下の記事も参考にしてください。

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まとめ 不動産売却の損益通算は専門家に相談を

本記事で紹介したとおり、不動産売却の損益通算に関しては特例などもあり、専門的な知識が必要です。マイホームの売却ではなく、収益物件に関わる売却であればなおさらです。

不動産売却における損益通算についてお悩みの方は、専門知識を持ち、実績のある不動産会社に相談するのがおすすめです。【リロの不動産】は、豊富な実績を活かして、スムーズな不動産売却、税務対策、法人化、賃貸経営上の出口戦略などあなたのニーズに柔軟に応えます。

ぜひ一度【リロの不動産】にご相談を。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。