地主の資産承継は資産管理会社が重要!土地持ち資産家・農家・投資家は必読

2024.04.05

たくさんの土地を所有する地主は、何もせず資産を放っておくと世代交代のたびに相続税によって資産を削られ、どんどん目減りしてしまいます。世代を超えた資産承継のためには、なるべく早い段階から税金対策を講じる必要があります。

この記事では、不動産をいくつも保有する地主向けに、効果的な資産承継の方法や準備のやり方について、わかりやすく解説します。

地主の主な3つのタイプ

地主とは保有する土地を他人に貸して収入を得る人のことです。地主は大まかに分けると「土地持ち資産家」「農家」、そして「不動産投資家」の3つのタイプが存在します。それぞれのタイプ別に、地主の特徴を解説しましょう。

土地持ち資産家

土地・不動産だけでなく、金融資産も多く保有する資産家タイプの地主です。このタイプは先祖代々土地を受け継いでいる方が多く、旧大名家や旧華族など歴史の長い一族にゆかりある方も少なくありません。

もともと広大な土地を保有していた大地主でしたが、その財力を活かし、事業投資や株式運用、不動産経営などに規模を広げ、現在でも大きな資産を保有する事業家として活躍されている方が多くいます。

農家

地方の土地持ちといえば農家が思い浮かぶでしょう。日本の農家の多くは戦後の農地改革をきっかけに土地を入れた方が大多数です。

戦前までは広大な山地や田畑を所有する大地主が小作人に土地を貸付け、小作人は借りた農地で農業を営む形式が主流でした。第二次世界大戦後の1946年にGHQによる農地改革が実施され、大地主の農地を政府が買い上げて小作人に安値で売り渡します。その結果、日本の農家の多くが自分の田畑を保有する自作農となりました。

現在も所有地で農業を営む方はいますが、農家を廃業し、土地の売却や土地活用によって大きな資産を得ている方も増えています。

不動産投資家

不動産投資のために土地を取得した人です。地主ではありますが、土地を活用して収益を得ることを目的とした投資家としての側面が強く、保有する土地のある地域に新しく地主として参入してくるパターンが多いです。地域に根差した地主とは違い、都心や大都市に本拠を置く法人などが所有名義となっていることもあります。

不動産投資は数々の投資の中でもレバレッジ効果が高い(少ない投資金額で大きなリターンを得ること)投資のため、不動産投資で成功者となった方には一代で財産を築いた方や比較的若い世代の方も存在します。

資産の棚卸し・分類・整理を行う

複数の土地を保有する地主が正しく資産承継を行うには、まず保有する資産(土地)の特徴ごとに棚卸しを行い、分類・整理することから始めましょう。

収益性と関係なく後世に継承させたい土地、収益が期待できる土地、問題を抱えている土地の3つに分類し、今後どのように運用するかを決めておくことが大切です。

後世に残す土地

資産運用や税金対策を考える以前に、後の世代にどうしても残しておきたい不動産があるかもしれません。先祖代々受け継いだ大切な土地や、子や孫世代が継承する予定の自宅などが代表的でしょう。特に何代にもわたり土地を守り継いできた地主ほど、所有地を手放したくないと思うものです。

不動産は放置していても、毎年固定資産税などの租税公課が発生します。中でも注意すべきは相続税です。面積が広大だったり、周辺の開発が進んだりなどの理由で、想像以上に高い相続税評価額となる可能性もあります。結果的に相続税の納税額が高くなり、後の世代に大きな負担をかけてしまうかもしれません。

後の世代に継承してもらいたい不動産がある場合は、その土地にかかる租税公課や維持費、相続発生時の相続税負担などの具体的な数字をあらかじめ試算しておくことが大切です。

収益の見込める土地

賃貸需要があり、将来的にも有効活用が見込まれる土地です。すでに賃貸アパート・マンションや駐車場といった収益物件として収益を上げている不動産も含まれます。

このような優良不動産は売却以外にも使い道が豊富なだけでなく、相続税対策でも大いに活躍してくれます。もともと不動産は金融資産と比べて相続税対策では非常に有利です。

最大の強みは、相続税評価額が7割程度に減らせる点にあります。例えば現金1億円は相続税評価額も1億円ですが、土地の相続税評価額は路線価をもとに、建物の相続税評価額は固定資産税評価額をもとに計算されるため、同じ時価1億円の不動産であっても7,000万円程度の相続税評価額に下がります。

さらに不動産は他人に賃貸することで相続税評価額が下がる点も見逃せません。他人に使用される不動産は持ち主に使用の自由がないと評価されるので、相続税評価額が割り引かれます。

賃料収益分を相続税支払いの原資にするなど、収益不動産は相続税対策にとても有効なのです。

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対策しておくべき土地

あまり収益を生まないにもかかわらず、固定資産税はかかり、将来相続税の課税が予想される土地です。具体的には、借地権が設定されている土地(底地)、有効な活用方法が見つからない山地や荒地、住宅需要の乏しい立地の土地などが代表的です。

このような土地をただ保有しているだけでは赤字続きとなるうえに、立地条件や面積規模によっては相続税の支払い額が高額となることも少なくありません。特別な理由がなければ相続発生前の売却、底地なら借地権者との等価交換などを目指す必要があります。

資産価値の低い土地の売却はなかなかスムーズには進みません。信頼できる不動産会社などとタッグを組み、時間的な余裕をもって売却計画を立てなければならないでしょう。

関連して、相続と土地活用についての具体的事例をご参照ください。

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地主の資産承継に立ちはだかる壁

遺産相続に際しては、さまざまなトラブルがつきもの。特に相続税の支払いや遺産相続分割をめぐる争いは、後の世代に大きな遺恨を残します。地主の資産承継に立ちはだかる壁について、3つほど取り上げてみましょう。

莫大な相続税の存在

1つめの壁は莫大な相続税の存在です。地主のように資産をたくさん保有する場合は、きちんと対策を立てないと資産を大きく減らしかねません。

2015年に実施された税制改正によって、相続税の基礎控除の範囲が縮小されました。従前では「5,000万円+1,000万円×相続人」までだった基礎控除額は、現行で「3,000万円+600万円×相続人」となっています。税率も引き上げられ、総額6億円超の相続財産に対しては50%から55%に変更されています。

相続税によって「3代で財産がなくなる」といった格言があるほどです。ざっくりいえば、相続のたびに資産が半減することになるので、3代目が継ぐころには財産が1/4になっている計算です。

遺産相続の争い

遺産相続では相続人間での紛争も起きやすいです。その深刻さは冗談交じりに「相続」が「争族」になると語られるほど。財産規模に関わらず相続トラブルはやっかいですが、数千万から数億円規模の不動産を持つ地主の家で相続問題が起こると、大きな紛争となってしまいます。気をつけておきたいのが土地・建物の財産としての特性です。

不動産が相続で特に問題となりやすいポイントには以下のような特徴があります。

1.相続人の誰にどの不動産を分けるかで紛糾しやすい
2.不動産の評価方法が定まりにくい(時価評価額は流動的になりがち)
3.分割方法でもめやすい(代償分割か換価分割かで意見が合わない)
4.共有状態にしてしまい、売却や運用に必要な合意が取れない
5.遺産分割方法が定まらない状況が長期化し、結果的に長年放置状態に

不動産は金銭のように3等分、4等分といった切り分けができないため、財産の振り分け方が非常に難しいといえます。相続人全員で共有状態になったとしても、不動産の処分をするために共有者全員の同意が必要となるなどの問題が生じます。

このような相続トラブルを避ける基本は、きちんとした遺言書を生前に準備しておくことに尽きます。万全を期すなら、公証人が立ち会う公正証書遺言を作っておくといいでしょう。

認知症になるリスク

これからの日本人にとって深刻な問題となるのが認知症リスクです。現段階で認知症を発症している日本人は600万人以上と推計されており、内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によれば、2025年には高齢者の5人に1人、約700万人以上が認知症となると推計されています(※)。どんな方であっても、将来認知症になるリスクを完全に避けることはできないのが現実です。

特に資産家の認知症で気をつけたいのが資産凍結でしょう。金融機関は認知症リスクのある方の財産を保護する目的で、その方の預金口座を凍結する措置をとります。資産凍結をされると本人が自由にお金を出し入れすることができません。

さらに認知症と判断されると、単独では不動産取引などの重大な契約もできなくなります。判断能力の低下した状態での重大な取引は無効となるため、不動産の運用自体も実質不可能となり、資産運用に大きな支障をきたしてしまうでしょう。

認知症リスクを回避するための方法としては成年後見制度が有名です。成年後見制度とは、認知症発症などによって十分な判断能力を保てなくなった方に対し、成年後見人を立てることで法的に保護・支援する制度。いざという時のために、遺言書の作成と合わせて成年後見制度の活用も想定しておきましょう。

内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版)

資産管理会社を設立して資産承継に備える

地主が資産を円滑に承継するための方法の1つに、資産管理会社の設立があります。法人と個人事業主を比べると、法人のほうが所得税や相続税に関して圧倒的な節税効果を生みやすくなります。

資産管理会社の活用法について、その中身と役割を簡単に解説しましょう。

資産管理会社とは

資産管理会社とは資産を所有・管理することを目的として設立する法人のことです。「プライベートカンパニー」とも呼ばれます。外見上は通常の法人と変わりませんが、地主の資産管理のために存在している法人なので、通常の会社のような営業活動は行いません。

相続税の節税

地主に相続が発生した場合、保有不動産に対する資産評価が高いと相続税負担も大きくなります。そこで有効なのが資産管理会社へ土地の所有権を移す方法です。不動産の所有権は資産管理会社に移るため、地主個人としては不動産を失います。そのかわり、自らが大株主となる資産管理会社の非上場株式が新たな相続財産となります。

資産管理会社の株式は会社全体の資産評価に基づいて評価されるので、会社の資産評価を下げることでどんどん相続税評価額を下げることができます。そもそも、株式の評価額は会社の純資産価額から法人税相当額(37%)を差し引いた金額がベースとなるので、法人に所有権を移した時点で不動産の相続税評価額を下回ることがほとんど。

さらに所有権を移す際に資産管理会社が行った借入金の金利部分や会社の人件費なども経費として計上することができますから、資産管理会社の資産評価を下げるための手段は豊富です。人件費についても相続人を資産管理会社の役員にすれば、賃料収益を役員報酬という形で分配できます。

相続の手続きが簡易

土地や建物は分割が難しい資産ですので、遺産分割協議が複雑化し、相続人同士で分割方法をめぐる紛争が生じることがあります。収益不動産の相続では賃料収入や必要経費の管理、修繕費用なども争点となりやすいです。

このようなトラブルを回避できるのが資産管理会社の設立です。資産管理会社に不動産の所有権が移ることによって、相続対象となる財産は被相続人(地主)の保有する資産管理会社の株式となります。株式の相続は不動産の相続と比べて手間がかからず、相続登記などの手続きも必要ありません。

さらに株式の譲渡方法にはバリエーションを付けられます。

例えば長男が不動産経営事業の承継者となるケースでは、経営主体となる長男に法人の「普通株式」を承継させ、それ以外の相続人に対しては「無議決権株式」を相続させることで、経営権の所在を明確にしながら公平に財産分配することも可能です。株式の相続割合なども柔軟に変更できるため、不動産の相続と比べると財産の分配も比較的簡単です。

所得税の節税

資産管理会社の設立は、相続税だけでなく所得税・住民税の節税につながる点も大きなメリットです。そもそも個人にかかる所得税・住民税は最大で約55%、個人事業税がさらに5%かかるので、トータルすると最大60%もの課税率となります。

一方、法人税は実効税率で最大30%台。資本金1億円以下の中小企業であれば法人税・住民税・事業税を合計しても利益800万円分までは約23%で済みます。個人と法人の間の課税率のギャップの大きさは不動産投資家にとって無視できないポイントです。

もう1つの強みは法人からの給与所得として収益を還元できる点でしょう。給与所得は年間65万円以下だと課税対象外、そのほかにもさまざまな控除を利用して課税対象額そのものを縮小することができます。家族を従業員・役員にして給与や報酬といったかたちで賃料収入を分配すれば、家族に収益を還元できるだけでなく給与・報酬分を法人の経費として計上できて一石二鳥です。

ただし、勤務実績のない家族を従業員・役員にするのは違法行為ですので、注意してください。

結果的に所得分配だけでなく法人税の節税にもつながるため、所得税・住民税、そして法人税の節税においても資産管理会社を有効活用することができます。

資産管理会社設立の注意点

節税上のメリットの大きい資産管理会社ですが、法人の設立・運営にともなう注意点も存在します。特に法人設立にかかるコスト、賃貸経営に関する意思決定が法人に移ることにともなう経営自由度の問題などを理解する必要があります。

設立には手間と費用がかかる

法人の設立にはさまざまな手間と費用がかかります。まずは設立時にかかるコストを見てみましょう。

会社の設立時には会社設立登記を必ず申請しますが、申請には定款印紙代、定款認証手数料、登録免許税、司法書士への報酬などが必要となります。さらに地主の資産管理会社の設立では個人所有の不動産を法人へ移す所有権移転手続きを取るので、その際にかかる登録免許税、不動産取得税などもかかります。

ちなみに不動産の所有県移転登記の登録免許税は不動産の課税標準額の1000分の15(2024年3月31日まで)です。例えば評価額1億円の土地を法人に移す場合であっても、登録免許税だけで150万円かかるということです。

次に法人の維持コストです。法人を維持するためのコストには、税理士顧問料、役員・従業員の社会保険料、そして法人税・事業税・住民税などの租税公課があります。法人の税務・会計処理については税理士や公認会計士に依頼することになりますが、そのコストだけで年間数十万円はかかります。

法人は資本金0円から設立できるようになったとはいえ、一定のコストがかかることを十分理解したうえで設立計画を立てるようにしましょう。

保有資金の使用には一定の制限がかかる

地主が保有する不動産の所有権は資産管理会社に移りますので、地主がこれまでどおりに不動産を自由に扱うことができなくなります。不動産運用に関する決定には会社法上の決議(定款または株式総会決議)が必要ですので、地主の経営裁量には一定の制限がかかることを理解しておきましょう。

また、不動産の所有権を失うかわりに、地主には資産管理会社からの役員報酬、株式配当といった形で資産分配されます。しかし、これらの報酬・配当金に対しては所得額に応じて所得税・住民税が課される点には要注意です。役員報酬の改定についても原則として会社法上の決議が必要となり、税法上においてもさまざまな制限が生じます。

法人となった以上、その代表取締役、筆頭株主であっても勝手に会社の資産を動かすことは難しくなる点に気をつけましょう。

まとめ

現代の地主とは単なる身分ではなく、不動産経営者としての一面が大きくなっています。事業面、税制面でも計画的に土地を運用し、資産をすり減らしてしまうことのないように資産承継に備えることが大切です。

ただ、これまであまり資産活用を意識せずに不動産を保有してきた方にとっては、税金対策や不動産賃貸事業と言われても分からないことだらけではないでしょうか。そこで頼りになるのが土地活用についての専門的な知見と実績を持つパートナーの存在です。

【リロの不動産】は土地活用でお悩みのオーナー様にとってのベストパートナーです。全国トップレベルの賃貸管理会社としての実績に加え、不動産賃貸事業へのサポート経験も豊富です。関連する専門家とのネットワークも強力ですので、オーナー様のお悩みをあらゆる角度からサポートいたします。資産承継にお悩みの方はぜひ一度【リロの不動産】までご相談ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。