アパートリノベーションで収益改善!家賃アップ事例と費用相場も解説
2023.11.23築年数が古いアパートの賃貸経営を行うオーナー様は、老朽化や空室に悩み、リノベーションを考えることも少なくありません。リノベーションが賃貸経営の改善に大きく影響するのは事実ですが、実施するには多額の費用がかかるため、リノベーションを行うことが正しい選択なのか、どのようなリノベーションが効果的なのかをしっかり見極める必要があります。
本記事ではアパートをリノベーションするメリットや実施するタイミング、費用相場、成功の秘訣などについて解説します。あわせて成功事例も紹介しますので、リノベーションを検討する際の参考にしてください。
目次
リノベーションとは?
リノベーションとは、既存の建築物をつくりかえ、価値を高めることを指します。リノベーションと聞くと比較的広範囲の大掛かりな工事を連想する方が多いですが、壁や床を解体して家全体をつくりかえる工事は「スケルトンリフォーム」と呼ばれます。では、リノベーションとリフォームはどのように区別するのでしょうか。
英語圏では住宅改修はすべてリノベーション(renovation)と呼びますが、日本では次のように使い分けられるのが一般的です。
● リノベーション:建物や室内に新しい価値・魅力を加える工事
● リフォーム:内装や設備を交換して室内をきれいな状態に回復させる工事
例えば、人気のなかった2DKを1LDKに変更して賃料もアップする工事はリノベーション、トイレの古い便器を新しいものに交換するのはリフォームということになります。リノベーションとは「現代のライフスタイルや住む人のニーズに合った住まい」につくりかえる工事と考えるとよいでしょう。
賃貸経営に効果あり!アパートをリノベーションするメリット
老朽化したアパートをリノベーションすることにより、低迷気味だった賃貸経営においてさまざまな効果を期待できます。ここでは、主に3つのメリットについて詳しく紹介します。
アパートリノベーションは空室対策になる
間取りや設備などの内装は、入居率に大きく影響します。例えば、単身者向けの古いアパートでは浴室とトイレが一体になった3点ユニットバスをよく見かけます。居住スペースを広く取れるというメリットはあるものの、近年は浴室とトイレが別々の間取りを希望する入居者様が増えており、3点ユニットバスの時点で選択肢から外されてしまうことも少なくありません。
需要と乖離した原状回復やリフォームでは、手間や費用、時間がかかるばかりで入居者様を募ることが難しい可能性があります。入居者ニーズを捉えたリノベーションができれば、費用対効果の高い対策が可能です。入居希望者様を増やすことができ、空室になった場合も早期に対策できるでしょう。
ただし、注意したいのは入居者ニーズを間違えないということです。オーナー様は、周辺の人気物件や地域の特性などの情報収集に力を入れることが重要です。賃貸管理をお任せしている場合は、担当者さんとディスカッションしながら情報交換していただくことをおすすめいたします。
以下のコラムでは、古いアパート向けのリノベーションのヒントをまとめています。ぜひ参考にしてください。
参考記事:古いアパートにリノベーションは必要?効果的な賃貸経営とは
アパートリノベーションで家賃アップが見込める
一般的に建物は築年数の経過に応じて資産価値が下がります。アパートなどの賃貸物件の場合は家賃相場が築年数に応じて下がる傾向にあります。リフォームは資産価値や家賃を維持するのに役立ちますが、新しい魅力や価値を加えるリノベーションであれば、資産価値の向上だけでなく家賃アップも期待できるでしょう。
賃貸物件探しをしている方の中には「立地がよく、きれいな内装のお部屋であれば、築年数の古さはあまり気にならない」という方も少なくありません。築年数が古く空室が目立つアパートでも、リノベーションによって満室稼働と家賃アップが実現できれば、経営状態は大きく改善します。
アパートリノベーションで節税できる
リノベーションにかかった費用は減価償却できるため、一定の期間節税効果を得ることが可能です。資産価値を向上させるリノベーションの費用は税法上の「資本的支出」に該当し、減価償却の対象となります。決められた期間内に分割して経費計上でき、工事を行った翌年からは実際の支出がないにも関わらず経費として利益から差し引けるため、所得税・法人税の節税効果が得られるという仕組みです。
ただし、工事内容や金額によっては資本的支出にならないこともあるため、事前に税理士や賃貸管理会社などの専門家に会計上の処理も相談することをおすすめします。
アパートのリノベーションを実施するタイミング
アパートに次のような傾向が当てはまる場合は、リノベーションを実施するタイミングといえます。
● 築20年以上の建物
● 旧耐震基準の建物
● 空室が増えてきた
● 空室がなかなか埋まらない
● 全体的に劣化が目立つ
● 突発的な修理対応の頻度が増えた
● 近隣に新しい競合物件が増加した
● 改修する範囲が多岐にわたる など
築年数が古く耐震性に不安がある場合は、耐震補強工事と一緒にリノベーションを行うのがよいでしょう。ただし、状況によってはリノベーションではなく建て替えのほうがよいケースもあるため、費用対効果を考えて慎重に決める必要があります。
アパートリノベーションの内容・費用相場
リノベーションの費用相場は、1平方メートルあたり12万~20万円程度です。ただし、リノベーションのプランはさまざまで、工事範囲・工期・建材や設備のグレードなどによっても金額が大きく変動します。ここでは参考までに、工事箇所・内容別に工事費用の相場をまとめました。
後ほど詳しく解説しますが、リノベーションをする目的・要望を明確にしないと工事範囲や費用がムダに膨らむ可能性があります。上記を目安に複数業者からプランを取り寄せ、最適なリノベーションを行うようにしましょう。
リノベーション以外にも、リフォームや建て替えによってアパート経営の改善は可能です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【参考記事】
賃貸アパートの改修工事や大規模修繕費用はいくら?改修項目別に解説
アパート経営で設備投資やリフォームする理由とは?ミニマム投資の秘訣
アパートの建て替え時期はいつ?見極めポイントと費用の目安を解説
リノベーションによる改善事例
リノベーションを行うことにより、築年数の古いアパートでも賃貸経営の改善が見込めます。具体的にイメージできるよう、実際にリノベーションによって経営改善できた5つの事例を以下で紹介します。
アパートリノベーション事例①
間取り変更により賃料アップ
Before
築35年の古いアパートですが、オーナー様は「今後も長期保有を考えている」とのことで、現代の需要に合わせて和室2Kからフローリングの1LDKにリノベーションした事例です。
居室が2部屋あるので2人暮らしも可能ですが、事例の間取りは玄関からベランダに向かって部屋がまっすぐ続いているため、プライバシーの確保が難しい状態です。1LDKに変更したことでカップルにも1人暮らしにも対応できる間取りになり、お悩みだった空室の解消につながったほか、家賃がリノベーション前と比べて30%もアップしました。
改善事例:築35年の和室2Kをフローリング1LDKに変更で賃料30%アップ!
アパートリノベーション事例②
差別化したリノベにより施工前に成約
周辺に増えた分譲マンションの影響で、最寄り駅から徒歩3分という好立地ながら空室が増えたことにお悩みのアパートオーナー様の事例です。大学生からアイデアを募集し、リノベーションで差別化を図ることにしました。
キッチンにカウンターを設けるなど若い感性を盛り込んだおしゃれな部屋に生まれ変わり、家賃をアップしたにも関わらず工事完了前に成約となりました。
改善事例:賃料UPで施工前に成約!学生コラボの賃貸経営リノベーション第3弾
アパートリノベーション事例③
出口戦略を考慮したフルリノベで一新
築25年のタイミングで、建て替えまで一定期間あるためオーナー様の要望によりリノベーションを行った事例です。古い2Kの間取りを1LDKに変更し、壁・床・建具・水回り設備などすべてを一新しました。新婚さん向けに大容量の収納スペースを確保した点もうれしいポイントです。
おしゃれなカウンターキッチンが目を引くナチュラルで明るい部屋に仕上がり、成約するまでの期間が大幅に短縮されました。建て替え時期を迎えるまで、安定した家賃収入を期待できそうです。
改善事例:空室期間を大幅に短縮!出口戦略を考慮した賃貸経営リノベーション!
アパートリノベーション事例④
フルリノベ&差別化を図った間取りに変更
最寄り駅から徒歩3分の利便性の高さが魅力のアパートですが、人気のない間取りによって空室が増え、次の入居者様が決まらない状態が続いていたアパートオーナー様の事例です。築29年という建物の老朽化が空室の主な原因ですが、特に洗濯機置き場がベランダにあることや、ダイニングが暗いことが現代の入居者ニーズと乖離しているポイントでした。
リノベーションで間取りを2DKから人気の1LDKに変更し、明るい南国のリゾートホテルをイメージした部屋に仕上げたところ、工事が終わって即成約となり、入居者様にも満足いただけた事例です。
改善事例:2DK→人気の1LDKへフルリノベーション!完成後、即ご成約に!
アパートリノベーション事例⑤
和室を洋室に&間取り変更で経費削減しながら成約
工事費用を抑えつつランニングコストも節約できる、費用対効果の高いリノベーションの一例です。昨今、条例が定着して原状回復費用は基本的にオーナー様の負担となってきているため、退去が発生するたびにコストがかかる点についてお悩みでした。
退去のたびに補修している畳の部屋はコスト削減のためにフローリングへ変更し、2DKの間取りをおしゃれな1LDKに変更したところ、施工後すぐに成約しました。少額のリノベーションでも、賃貸経営の改善が実現可能です。
改善事例:畳の経費削減を踏まえた間取り変更!リノベーション直後に決まる!
アパートをリノベーションする際の4つのポイント
築年数の古いアパートを所有していて賃貸経営がうまくいっていないからといって、リノベーションを行うことが必ずしも得策とはかぎりません。リノベーションを実施したものの期待した結果が得られず、後悔するケースもあります。ここからは、リノベーションを決める前にチェックしておきたい4つのポイントについて解説します。
アパートをリノベーションする目的を考える
まずはなぜリノベーションをするのか、目的を明確にしましょう。家賃アップ・資産価値向上・税金対策・原状回復にかかるコストの削減など、お悩みによって優先すべき目的は異なるはずです。特に築年数が古いアパートはリノベーションの範囲も大きくなりがちで、当然ながら範囲が広がるほど費用もかかります。
相続を視野に入れた資産と考えるか、あくまで投資対象なのか、考え方によっては今後の経営戦略も変わってくるでしょう。目的をはっきりさせることで、リノベーションが本当に必要なのかを判断するようにしてください。
工事費用を家賃で回収できるか確認する
リノベーションでかかった費用は家賃で回収するのが賃貸経営の基本スキームです。どのくらいの期間でコストを回収できるのかなど、損益分岐点(BEP)や総収益率(FCR)などを試算して、リノベーションの予算を考えるようにしましょう。
高額な費用をかけたからといって極端に家賃を上げることはできません。どれだけ魅力的な部屋でも、相場からかけ離れた家賃では敬遠されてしまいます。リノベーション工事の耐用年数で回収時期を計算し、信頼できる賃貸管理会社や施工会社と相談しながら、現実的なプランと予算を考えるようにしましょう。
【参考記事】
【保存版】不動産投資の損益分岐点で着目するポイントは運用と売却!
【徹底解説】不動産投資の利回り計算! 賃貸経営を成功に導く指標とは
ターゲット層のニーズ調査を行う
工事内容を決める前に、リノベーション後に入居してほしいターゲット層のニーズを調査しましょう。せっかく多額の費用をかけて工事しても、エリアの入居者ニーズからずれてしまっていては空室対策として有効に働きません。
空室改善や賃料の是正が困難な場合は工事費用の回収時期が変わるうえに、根本的な賃貸経営の改善にならない可能性があります。不動産会社や賃貸管理会社から情報を集めるなどして、ニーズを捉えたリノベーションプランを考えてみてください。
なお、事例でも触れたように、リノベーションでターゲット層を変更したり幅を広げたりすることも可能です。幅広い層にアプローチできる汎用性の高い部屋であれば、より多くの入居希望者様を獲得できる可能性が高まります。さらに人気物件になれば、賃料アップもしやすくなるでしょう。
建て替えや売却も検討する
アパートの状態によっては、リノベーションをしても期待したような効果が得られない可能性があります。老朽化が激しく、リノベーションの費用があまりに高額になるようであれば、建て替えや売却も検討するようにしてください。
築古物件は年数が経つほど家賃が低下していく傾向にありますが、反対に清掃費や管理費、固定資産税などのランニングコストは一定でかかり続け、修繕が必要になるケースが増えて支出コストが上がっていく可能性があります。デッドクロスが起きそうな場合は売却の検討時期でもあるので、総合的に検討されることをおすすめいたします。
建て替えはリノベーションよりも多額の費用がかかりますが、新築物件は人気が高く即満室になるケースがほとんどです。また、再建築可能で需要のある立地であれば、売却でまとまった資金を得るのも有効な考え方といえます。出口戦略を鑑みて収益物件の保有期間や相続対策を考慮のうえ、対策を検討するようにしましょう。
【参考記事】
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リノベーションによる収益シミュレーションと出口戦略
建て替えかリノベーションかで悩む場合は、おおよその条件を想定してシミュレーションしてみることをおすすめします。例えば、次のような条件で「建て替え・リノベーション・現状維持」を比較してみましょう。
【物件条件】
● 構造:木造アパート
● 築年数:築30年
● 住戸数:2DK(40平方メートル)×10戸
● 延床面積(※):400平方メートル(約120坪)
● 家賃:6万円/月(1戸あたり)
● 残債:なし
● 空室率:50%
※補足
計算を簡略化するために、『専有面積(室内面積)=延床面積』として記載。木造アパートの場合、実際には延床面積の80~85%が専有面積の目安となります。
【シミュレーション条件】
● 立ち退き料:家賃6ヶ月分
● 解体費用:4万円/坪
● 建築費用:60万円/坪
● リノベーション費用:500万円/戸
● 空室率:建て替え、リノベーション後は満室稼働と仮定
● 家賃設定:建て替え後は8万円/月、リノベーション後は7万円/月と仮定
● 工事費の表面利回り=年間家賃アップ額÷工事費合計×100
● 工事費の実質利回り=(年間家賃アップ額-年間経費)÷工事費合計×100
● 回収期間=工事費÷年間家賃収入
建て替え | リノベーション | 現状維持 | |
立ち退き料 | 180万円 6万円×6ヶ月×5戸 | - | - |
解体費用 | 480万円 4万円×120坪 | - | - |
建築費用 | 7,200万円 60万円×120坪 | - | - |
建築諸費用 | 720万円 建築費用の10% | - | - |
リノベーション 費用 | - | 2,500万円 500万円×5戸 | - |
合計 | 8,580万円 | 2,500万円 | - |
年間家賃収入 | 960万円 8万円×10戸×12ヶ月 | 780万円 (7万円×5戸+6万円×5戸)×12ヶ月 | 360万円 6万円×5戸×12ヶ月 |
年間経費 | 96万円 年間家賃収入の10% | 156万円 年間家賃収入の20% | 72万円 年間家賃収入の20% |
表面利回り | 6.99% | 16.8% | - |
実質利回り | 5.87% | 10.5% | - |
回収期間 | 9年 | 3年 | - |
新築物件の表面利回りが4%前後なのに対し、新築同様の建て替えで7%弱、リノベーションだと17%弱の数値であることから、どちらも投資としてはよい条件であることがわかります。また、工事費用の回収期間としては一般的に4年以内が目安となりますが、上のリノベーションでは3年ほどで回収できるようになっているため、十分費用対効果の大きい方法といえるでしょう。
投資において利回りは強く意識すべき数値ですが、出口を考えるうえで同じくらい重要な指標となるのが損益分岐点です。より詳細な出口戦略を検討する際は、以下の記事も参考にしてください。
【参考記事】
【徹底解説】不動産投資の利回り計算! 賃貸経営を成功に導く指標とは
【保存版】不動産投資の損益分岐点で着目するポイントは運用と売却!
まとめ リノベーションでアパート賃貸経営の悩みを改善しよう
事例でも紹介したとおり、需要にマッチしたリノベーションは空室対策に効果的です。現状より高い家賃を設定しても入居申し込みが入りやすく、長引く空室に悩むことはなくなるでしょう。躯体は健康な状態で再利用できる素材があるにも関わらず、建物の古さや空室が目立ち、築古1棟アパートの賃貸経営に悩んだら、経営改善のためにもリノベーションを検討してみてください。
【リロの不動産】にはリノベーションによる賃料改善・空室改善の実績が数多くあり、賃貸経営のお悩みに対する的確なアドバイスが可能です。費用面でお悩みの場合には、工事費用の割賦支払いや空室保証などにも対応しています。ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。