サブリースの解約ができない原因とは?事例から知る解約方法・トラブル防止法
2024.11.15サブリース契約(一括借上)はご多忙の方に安心な賃貸経営を提供できる仕組みである反面、契約内容によりトラブルに発展しやすいといわれています。所有している不動産をサブリース契約中で、解約を希望するもののトラブルを恐れて解約できずに悩んでいるオーナー様も少なくありません。
本来、サブリース契約はオーナー様にとってメリットの多い契約のため、トラブルが発生しやすい事例や原因について理解し、対策を取ったうえで解約すべきか検討する必要があります。
今回はサブリースの仕組みやトラブル事例、解約手続きの流れ、解約におけるメリットデメリットなどについて解説します。サブリースの解約を検討している方や、これからサブリース契約を検討している方はぜひ参考にしてください。
▼この記事の内容
●「サブリース」とは、賃貸管理会社がオーナー様からアパートやマンションを一括借上し、賃貸管理会社から入居者様に転貸する管理形態のこと
●サブリース契約時は、「契約内容」、「目的や計画に沿っているか」どうかを確認し、信頼できるサブリース会社を見つけましょう
●サブリース解約で正当事由が認められるのは、「立ち退き料を支払う」「物件の老朽化で取り壊しの必要がある」「売却せざるを得ないやむを得ない理由」「オーナー様が自分で居住、もしくは親族が居住する」といった限られたケースのみ
●サブリースの解約は、解約に関する条項を確認して解約通知書を送付し、サブリース会社との話し合いを行うだけ
●解約のメリットやリスク・注意点も把握したうえで慎重に判断を
目次
- 1 サブリース(一括借上)の仕組みについて
- 2 サブリース契約(一括借上)によるトラブル
- 3 サブリース(一括借上)の解約を実現させる正当事由とは
- 4 サブリース(一括借上)解約手続きの流れ
- 5 サブリース(一括借上)解約後にオーナー様が行うこと
- 6 サブリース(一括借上)の解約によるメリット
- 7 サブリース(一括借上)の解約にともなうリスク
- 8 法改正された「サブリース新法」
- 9 サブリース(一括借上)解約の注意点
- 10 サブリース(一括借上)の契約・解約によるトラブルを最小限に抑える方法
- 11 まとめ サブリース(一括借上)の解約が必要か慎重に判断しよう
- 12 関連する記事はこちら
サブリース(一括借上)の仕組みについて
サブリースとは、賃貸管理会社がオーナー様からアパートやマンションを一括借上し、賃貸管理会社から入居者様に転貸する管理形態をいいます。サブリース契約を行うことにより、賃貸管理会社が入居者募集や契約手続きのほか、退居手続きや清掃、点検などといった管理をすべて行うことになり、オーナー様の代理的なポジションに位置します。
アパートやマンションを一括で借り上げる賃貸管理会社がオーナー様にかわってすべての管理業務を行い、オーナー様に対しては賃料の保証として一定の額が支払われ、残りは賃貸管理会社の手数料となる仕組みです。サブリースの手数料は、一般的な管理手数料よりも高いといわれています。
オーナー様が自主管理を行うにあたって、空室リスクやトラブル対応、建物のメンテナンスなど物件の規模が大きくなるほど負担が大きくなり、自主管理を行うにも限界があります。一般管理でなくサブリースを利用すれば、賃貸経営における運営全体を引き受けてもらうことが可能です。
サブリースの仕組みが存在することにより、賃貸経営のノウハウや経験のない方でもはじめやすい点が大きな魅力といえるでしょう。
サブリースに関する関連記事や改善事例の詳細は、以下の記事を参考にしてください。
■参考記事
サブリースとは?不動産経営や賃貸管理で損しないための6つの注意点
サブリース契約(一括借上)によるトラブル
オーナー様にとってサブリース契約は家賃を保証してもらえ、管理業務を一式任せられるため非常にありがたい契約形態ですが、サブリース契約によるトラブルも多く発生しています。
以下では、サブリース契約において特に発生しやすいトラブル事例や主な原因、トラブルを防ぐためのポイントについて紹介していきます。
トラブル事例
サブリース契約によるトラブルは、主に以下のとおりです。
● 家賃の減額請求
● 想定外に高額な工事対応
● 解約の拒絶
● サブリース会社からの賃料未払い
それぞれのケースについて詳しく解説します。
家賃を減額請求された
サブリース契約では、オーナー様の空室リスクの負担を低減するためにあらかじめ決めた家賃に基づいた手数料を支払うのが一般的です。家賃保証は保証期間と期間中の家賃が契約で決められますが、家賃保証の期間が残っているにもかかわらず、家賃を値下げされたというトラブルが多くみられます。
契約の際には「〇年間家賃収入は変わらない」と告げられたにもかかわらず、実際には家賃の定期的な見直しが行われる旨が契約書に記載されており、サブリース会社がオーナー様への説明を怠ったことが原因で起こるケースです。
想定外に高額な工事対応
サブリース会社は自社のブランド保全と、建物の品質保証を行うため、空室状況が改善しない場合に、設備の入れ替えや各種工事に対応することを契約で定める場合があります。
通常は契約前に担当者から丁寧に質問がありますが、担当者の誠実さや素直さ、本当に工事が必要な状況なのか、1回かぎりの工事なのか、ランニングコストに影響するのか、目指したい出口戦略を描けるかなど、契約前にご確認ください。
賃貸経営で一番大事な「想定外をなくすこと」を徹底できれば、未然にトラブルを防げるでしょう。
サブリース会社に拒まれ解約できない
オーナー様としては現状のサブリース契約を解約したいと思っているにもかかわらず、借主であるサブリース会社に拒否されて解約できないトラブルもあります。オーナー様は所有する物件を売却したいのに、サブリース契約を解約できないことで物件を売却できません。
サブリース会社はオーナー様からみれば借主という立場にあるため、借地借家法によって守られており、貸主という立場であるオーナー様から一方的な解約は法律上できないことになっています。サブリース会社が解約を拒否することは違法ではないものの、その分オーナー様の負担が大きくなってしまうでしょう。
サブリース会社からの賃料未払い
サブリース会社からオーナー様に対して家賃の入金がないケースも、トラブル事例として少なくありません。サブリース会社としての歴史が浅く、経営基盤がしっかりしていない会社だと、経営破綻に陥るリスクも想定しておく必要があるでしょう。
一般的に賃料未払いの状態が3ヶ月以上続けば、債務不履行によって信頼関係が保たれなくなったことを理由に、オーナー様から契約の解除を申し出ることができます。オーナー様の生活状況によっては、3ヶ月以上家賃が入金されないのは死活問題にもなりかねません。
賃料未払いのトラブルを回避するには、サブリース会社の財務状況に注意することはもちろん、サブリースの実績がある大手の会社を選んで契約することが大切です。
主な原因
サブリース会社とのトラブルが発生しやすい大きな原因となっているのは、サブリース会社を守る「借地借家法」の存在が挙げられます。借主(サブリース会社)を守る立場の法律である借地借家法とは土地や建物の賃貸借に関して定められ、従来は借地法と借家法に分かれていたものが1つにまとめられた法律です。
借地借家法では賃貸借契約において、借主が弱い立場になりがちな状況を保護する目的で、安心して借主が入居し続けられるような内容になっています。
仮に借主から契約を更新したいと申し出た場合、貸主は借主の主張を拒絶できず、拒絶する場合には正当な理由が必要だとされています。契約期間が1年未満の場合は期間の定めがない契約とみなすこともできるのが特徴です。ここで問題になるのは、サブリース会社は契約上、借主の立場になるため、借地借家法によって保護される面が強いことです。
貸主であるオーナー様が解約を申し出るのに相当な事由と立ち退き料が必要な理由は、借地借家法によるオーナー様とサブリース会社との関係性によるものといえるでしょう。
サブリース契約時のポイント
上で挙げたようなトラブルを未然に防ぐためにも、サブリースの契約を交わす際にはいくつかの注意点があります。最低限、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
● 契約内容を事前に確認する
● 契約内容が賃貸経営の目的と計画にそっているか考える
● 信頼できるサブリース会社を見つけて契約する
それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
契約内容を事前にしっかり確認する
通常、サブリースの契約を締結する前にサブリース会社から契約内容について説明があります。しかし、サブリース会社の説明を鵜呑みにするのではなく、自分で契約内容を詳細までしっかりと確認することが、後々トラブルを引き起こさないための重要なポイントです。
契約後に「契約時に説明しました」といわれ、反論したとしても契約書に記載されてあれば有効になります。オーナー様に不利な内容を契約後に知る事態を防ぐためにも、特に契約書については以下の内容を事前に確認しておきましょう。
● 免責期間
● 修繕費用などの負担先
● 解約条件
● 保証賃料の設定および見直し
● 違約金
賃貸経営の目的と賃貸経営計画にそった内容か考える
オーナー様が賃貸契約を行う目的に合致し、自分で立てた賃貸経営の目標や計画がサブリース契約することによって果たせるのかどうかをよく検討しましょう。
賃貸経営に掲げる目的は人それぞれ異なります。とにかく時間がなく、手間暇をかけずに家賃収入を得たいという場合や、賃貸経営についての知識がないものの、少しでも副収入がほしいため家賃設定など管理全般を任せたいという場合には、サブリース契約が向いています。
しかし、集客力のある物件やオーナー様が賃貸経営に時間を費やせる場合、勉強しながら自分で物件を育てたいと考える場合には、サブリース契約を選択しなくてもよいでしょう。サブリースの契約内容によっても異なるため、オーナー様のライフイベントを見据えた出口戦略を考慮しながら契約の内容を確認することが大切です。
賃貸経営の目的や計画の必要性については、以下の記事を参考にしてください。
■参考記事
【必読】不動産投資・賃貸経営の目的が明確なほど成功確率が上がる理由
信頼できるサブリース会社を見つける
トラブル事例からも分かるとおり、サブリース会社の見極めはとても重要です。契約時の内容説明が丁寧かどうかや、サブリース会社の財務・経営状況が健全かどうか、さらには過去の実績が豊富かどうかなども確認し、最終的に契約を結ぶサブリース会社を決めるようにしましょう。
ほかにも、管理戸数や入居率、従業員数なども参考にすることができます。相談する担当営業者の質や提案力なども考慮して、信頼できるパートナーとして選定するようにしましょう。
サブリース(一括借上)に関するトラブル改善事例
サブリース契約は必ずしもトラブルの原因となるわけではありません。中には自主管理からサブリースに切り替えることで、問題が解決した事例もあります。
以下では、サブリースに関するトラブル改善事例を紹介します。賃貸経営にまつわる課題や解決策をより詳しく知りたい方は、以下からコラムや事例を検索してご覧ください。
■改善事例
法人契約のマンション33戸がすべて解約!期限付きの条件見直しで即満室!
サブリース変更により収益アップした事例
埼玉県で1棟アパート経営を行うオーナー様は、賃料の値下げが発生し、サブリースを継続するかどうか悩んでいました。相談を受けたサポートチームは契約を解除した場合のメリット・デメリットをオーナー様にお伝えしたうえで、賃料査定やシミュレーションなどを実施しました。
オーナー様との情報共有を徹底し、需要に合った賃料を設定できたことでサブリース会社を切り替えた後の入居率は100%に達しています。
事例:サブリース変更で収益アップ!需要を捉えたシミュレーションと入居者募集
借上解約となった部屋をサブリースして安定した収益確保に成功した事例
東京都にある築20年の1棟マンションでの改善事例です。一部の部屋で区民住宅の借上契約が解約となり、オーナー様はどのように賃貸経営を行っていくべきか悩んでいました。
ファミリー層の需要が見込める物件であること、大掛かりな工事が不要であることなどを踏まえ、サブリース契約を提案しました。オーナー様は安定した収入を得られるようになり、ローン返済も計画どおり進められています。
事例:区民住宅の契約終了後は東都で継続!柔軟な管理対応で安定収支を確保
全室空室・競売の危機から建物の再稼働に成功した事例
東京都にある築15年の1棟マンション経営における改善事例です。オーナー様は親族の所有物件を引き継いだものの、全室空室となっており、滞納している税金もあることが発覚しました。
リフォーム費用と税金費用を用意するためにサブリース条件付きの追加融資を申請し、マンションの再稼働に向けて準備を進めました。稼働後は2ヶ月ほどで満室となり、安定した家賃収入を得ることができています。
事例:疎遠だった親族の物件!家賃保証リフォームで賃料アップの空室改善!
築古物件でもサブリースによって安定収益を得た事例
宮城県で築24年のアパートを経営するオーナー様から「安くてもいいので安定した収入を得る方法はないか」とご相談を受けました。
オーナー様と話し合い、サブリース契約でしっかりと収入を得ながら、割賦支払いで物件をリニューアルすることを提案しました。築年数の古い物件でも安定収益が見込める点は、サブリースならではの魅力といえます。
事例:築後24年でも『サブリース』プラス『割賦支払リニューアル』でピカピカに
急な1棟借上解約となった事態を満室になるようプランニングした事例
東京都にある築24年の1棟マンションでの改善事例です。会社の寮として借り上げられていたマンションが急遽解約となり、全36部屋が空室となってしまいました。限られた費用でリフォーム工事を実施し、TVモニターインターホンやアクセントクロスなどを施しました。
1部屋あたり平均16万円と限られた予算ではありましたが、半年ほどですべての部屋が成約となり満室稼働中です。
事例:36部屋の1棟借上が解約に!東都さんどうしたらいい?に応えて満室経営
サブリース(一括借上)の解約を実現させる正当事由とは
先述のとおり、サブリース会社はオーナー様からすると「借主」という立場であり、借地借家法によって保護されています。サブリース契約を解約しようとしても原則オーナー様の都合では難しく、解約にともなう相当な正当事由が必要です。
正当事由については物件やオーナー様の事情などによって異なり、最終的には裁判所が判断することになります。これまでの裁判でもさまざまな判例が出ています。具体的にどのようなケースが正当事由として認められたのか、また認められなかったのか、判例とあわせて紹介するので参考にしてください。
正当事由が認められるケースと判例
正当事由が認められるケースとして、以下のようなものが挙げられます。
● 立ち退き料を支払う
● 物件の老朽化にともない、取り壊しの必要がある
● 売却せざるを得ない、やむを得ない理由がある
● オーナー様が自分で居住、もしくは親族が居住する
以前正当事由が認められた判例の中には、オーナー様の老朽化した自宅を補修工事するための資金繰りとして、サブリース契約中だった不動産を売却するためにサブリース契約の解約を希望する事案がありました。
通常であれば正当事由として認めるには不十分ですが、当時契約していたサブリース会社の経済的利益は月3万円程度と、解約することで重大な不利益を生じるとは認められなかったため、立ち退き料の支払いを条件にすることで正当事由を補完できると判断されました。
サブリース契約の解約がやむを得ないと判断される状況であるかどうか、あるいは正当事由を補完できるほどのオーナー様の負担が可能かどうかが決め手といえるでしょう。
正当事由として認められないケースと判例
一方、以下のようなケースでは正当事由としては認められません。
● 利回りをもっと向上させたい
● 高い価格で売却したいと考えている
● できるだけ売却しやすい状態にしておきたい
上記のケースではすべてオーナー様、いわゆる貸主の希望です。借地借家法に則っていても借主であるサブリース会社を保護するものではないため、正当事由としては認められません。
正当事由が認められなかった判例の1つとして、オーナー様がサブリース会社に対して契約期間の満了による契約終了を主張した事案があります。
しかし、サブリース会社は当時事業として建物の転貸を行い利益を得ているうえに、建物に入居している転借人もいたため、継続して建物を使用する必要性があると判断され、オーナー様の要望は契約期間の満了や立ち退き料の申し出を考慮しても正当事由ではないとされました。
サブリース(一括借上)解約手続きの流れ
ここからは、サブリース契約の解約までの手順について解説していきます。サブリース契約の解約を行うには、以下のような一般的な流れにそって手続きを進める必要があります。解約手続きについては、後からどのようなやりとりがあったかが見直せるよう、できるだけ書面やメールに残しておくことが大切です。
解約の手順を知っておくことでスムーズに手続きを進められるため、以下の内容をしっかりと把握しておきましょう。
サブリース契約書の条項を確認する
はじめに行うことは、サブリース契約書に記載されている「解約に関する条項」の確認です。サブリース契約書の中に次のような項目があるので、内容を確認しましょう。
● 解約申し出の期限
● 解約にともなって発生する違約金の額
● サブリースの契約期間
契約書に記載されている内容は解約手続きにおける交渉の材料にもなり、解約日の設定などに役立ちます。何より契約の内容を確認することで、急な支出や交渉のうえでの齟齬が生じるリスクを防ぐことにつなげられるでしょう。
解約通知書をサブリース会社に送付する
契約書の内容を確認した後は、解約通知書を作成してサブリース会社に送ります。解約通知書を作成する前にサブリース会社に対して解約したい旨を伝え、必要に応じて打ち合わせを行うことも大切です。解約通知書を作成する際は、以下の内容を漏れなく記載するようにしましょう。
● サブリース会社名
● オーナー様の氏名・住所・捺印
● 解約対象となる物件の名称・所在地など
● 解約通知日
● 契約終了希望日
● 契約書の第何条に基づく解約であるか
● 違約金もしくは立ち退き料(必要に応じて)
後々のトラブルを防ぐためにも、解約通知書を送付するときは送付記録を残すほか、郵送した旨をメールで伝えるなど履歴を残しておくことをおすすめします。
サブリース会社と話し合いを進める
サブリース会社に解約通知書が届いたら、オーナー様とサブリース会社との間で話し合いに進みます。合意が得られれば契約終了日を決めて合意書を作成し、期日をもって解約が成立します。違約金もしくは立ち退き料が発生する場合は、期日内に振り込むようにしてください。
合意が得られない場合は、サブリース会社との話し合い(交渉)を進めていくことになります。専門知識のある弁護士や不動産会社に相談し、交渉に立ち会ってもらうことで交渉をスムーズに進められるでしょう。
サブリース(一括借上)解約後にオーナー様が行うこと
サブリース会社との交渉が進み、契約解除が成立した際にはオーナー様が以下の手続きを速やかに行わなければなりません。
● 新たな賃貸管理会社を見つけて契約する
● 賃貸借契約書のまき直し
● 空室部分の募集活動
以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
賃貸管理会社を見つけて契約する
サブリース契約を解約した日と同じ日に、別の賃貸管理会社に管理業務を委託するようにしましょう。スムーズに契約手続きができるよう、解約前の段階から管理業務を委託したい賃貸管理会社の候補をいくつか挙げておき、内容を比較検討したうえで解約後速やかに契約手続きを行うことをおすすめします。なお、各種手続きを賃貸管理会社に対応してもらうことで対応漏れを防ぐようにしましょう。
必ず賃貸管理会社に管理業務を委託しなければならないわけではなく、自主管理という方法もあります。しかし、サブリースからの自主管理は修繕が必要になったり空室対策が必要だったりとオーナー様にかかる負担やリスクが大きいため、あまりおすすめできません。賃貸経営の運用を安定させるためにも、サブリース契約を解約して間を空けずに賃貸管理会社と契約するようにしましょう。
賃貸管理会社の選定に迷った際は、以下の記事を参考にしてください。
■参考記事
【必読】賃貸管理会社の選び方!運用益と出口戦略を見据える賃貸管理
賃貸借契約書のまき直し
サブリース契約期間中の賃貸借契約は、入居者様(借主)から見た貸主はサブリース会社になっており、サブリース契約の解約後は本来の貸主であるオーナー様と入居者様との賃貸借契約に変更しなければなりません。
貸主と借主間の契約条件がサブリース契約時と変わらないようであれば、締結済みの賃貸借契約を継承する合意書の締結でも対応できます。しかし、契約内容によっては多少手間がかかりますが、新たに賃貸借契約書を作成したうえで、契約変更の手続きを行うほうがいい場合もあるでしょう。
賃貸借契約書のまき直しは、新しく契約した賃貸管理会社に対応してもらうとスピーディーに手続きを進められます。事前に賃貸管理会社を吟味しておくことで、契約内容もしっかりと確認できるでしょう。
空室部分の賃貸募集
物件に空室部分があると、オーナー様の家賃収入にダイレクトに影響します。空室がある場合は賃貸管理会社や仲介業者に依頼して、早急に賃貸募集をかけるようにしましょう。すぐに募集活動を開始できるように家賃設定などの募集条件を決めておくほか、原状回復工事やクリーニングについてもすぐに対応できるよう手配しておくことが大切です。
サブリース(一括借上)の解約によるメリット
サブリース契約を解約することで、オーナー様には次のようなメリットを享受できます。
● 収益を上げやすくなる
● 売却しやすくなる
● 賃貸管理会社を見直しやすくなる
解約にともなうリスクと引き換えに、どのようなメリットが得られるのか把握しておきましょう。
収益を上げやすくなる
集客力のある物件ほど、サブリース契約を解約することで、オーナー様の収益を上げやすくなります。サブリース契約の場合、家賃設定が相場の80~90%となるのが一般的です。サブリース契約を解約することで相場の家賃収入を得られるため、オーナー様に入る家賃収入が上がるほか、礼金や更新料も収入として入ってきます。
立地条件がよく入居者様のニーズを押さえた物件であれば、サブリースでなくても空室リスクは下げられます。オーナー様が管理に充てられる時間がない場合は賃貸管理会社に管理を委託でき、手数料は家賃の5%前後なのでキャッシュフローの改善にもつながるでしょう。
売却しやすくなる
サブリース契約している物件は、通常の家賃設定の物件に比べて収益率が低くなるため、売却する際に買い手がつきにくい傾向があります。サブリース契約を解約することによって家賃収入も通常に戻り、利回りが上がるため売却しやすくなるでしょう。
投資家によっては物件の管理を委託する賃貸管理会社は自分で決めたいと考えている場合や、すでにほかの物件の管理をお願いしている賃貸管理会社に依頼したいと考えていることが多いため、賃貸管理会社を選択できないサブリース契約の物件は避けられやすい傾向にあります。総じてサブリース契約を解約した後のほうが、売却物件として選ばれやすくなるでしょう。
ただし、解約する前に諸条件や対応をパートナーになる不動産会社と決めておくことをおすすめします。
賃貸管理会社を見直しやすい
賃貸管理会社は賃貸経営を成功させるために重要な役割を担っていますが、サブリース契約中の場合、管理状態や内容に不満があったとしても賃貸管理会社を変更することはできません。
サブリース契約を解約することで、オーナー様が自由に賃貸管理会社を決められます。賃貸経営がうまくいっていない場合は見直しがしやすく、すでに信頼できる賃貸管理会社がある場合は変更も可能です。結果として管理手数料を抑えられるなど、管理内容や委託条件の改善に加え、賃貸経営におけるさまざまなリスク防止にもつながるでしょう。
サブリース(一括借上)の解約にともなうリスク
サブリース契約の内容に不満を持っていると、解約後のメリットが多く感じるものですが、サブリース契約の解約には以下のようなリスクをともなうことも知っておくことが大切です。
● 違約金や立ち退き料が発生する
● 家賃収入が減る可能性がある
● 必要な修繕箇所が見つかる可能性がある
リスクが生じる可能性があることを理解し、解約するかどうか判断するようにしましょう。
違約金・立ち退き料が発生することがある
サブリース契約の内容によっては、解約の際に違約金もしくは立ち退き料の支払いが発生するケースがあります。違約金の額については、賃料の数ヶ月分~1年分などサブリース会社によって価格設定はさまざまです。
オーナー様の都合による解約のケースでサブリース会社が合意しない場合は、立ち退き料を上乗せして支払うこともあります。正当事例として認められた判例にもあったように、オーナー様が立ち退き料を支払うことでサブリース解約の交渉がスムーズに進むためです。
ただし、違約金や立ち退き料の額によっては解約するメリットが低減する可能性もありますので、慎重に判断するようにしましょう。
家賃収入が減る可能性がある
一般的にサブリース契約を解約することで家賃保証がなくなるため、実際にオーナー様が手にする収入は増えるとされています。しかし、保有している物件の入居率が低く空室が多い場合には、サブリース契約を解約することでサブリースの賃料を下回る可能性があります。
入居者募集による広告費の支払いや家賃の値下げを検討しなければならない可能性もあり、結果的にサブリース契約時より家賃収入が減ってしまうケースもあることを想定しておきましょう。サブリース契約であろうとも、常に満室経営を目指してさまざまな空室対策をミニマムコストで実行することも重要です。
修繕が必要な箇所が発覚することがある
サブリース契約の期間中はサブリース会社(賃貸管理会社)が物件の修繕やメンテナンスを行います。しかし、サブリース会社の管理状態が悪ければ建物の不具合に気づかず、放置されたままになっている可能性があるでしょう。
サブリース契約を解約した後に修繕の必要な箇所が発覚した場合、オーナー様は予期せぬ出費に見舞われることになります。修繕の内容や緊急性によっては早急にまとまった資金を調達する必要があるため、サブリース契約を解約する前に物件の状況をチェックしておくことが大切です。
法改正された「サブリース新法」
サブリースによるトラブル急増を受け、2021年6月15日に「賃貸住宅の管理業務などの適正化に関する法律」が全面施行されました。通称「サブリース新法」と呼ばれており、悪質なサブリース会社によってオーナー様が損をしないよう、新たにいくつかの項目が設けられました。法改正による主な変更点は、以下の3つです。
●誇大広告等の禁止(第28条)
●不当な勧誘等の禁止(第29条)
●重要事項説明の義務化(第30条)
出典:国土交通省 サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン
サブリース会社は契約締結前にしっかりとリスクや注意点などを伝えたうえで、重要事項を書面で説明しなければならないと義務付けられました。法改正によってオーナー様の安全性が向上し、トラブル発生件数は減少傾向にあります。
しかし、オーナー様の中には法改正の前から契約を継続している方も多くいらっしゃいます。サブリースはリスクをともなう可能性があることを理解し、引き続き注意が必要です。
サブリース(一括借上)解約の注意点
サブリースの解約にともなうリスクで述べたとおり、サブリース契約を解約する際にはさまざまなリスクが想定されます。事前にどのようなリスクがあるのかを把握して対策まで考えておくことで、トラブルが発生した際に適切な対応を取れるでしょう。
トラブルの対策方法を考えるにあたっては、以下のような点に注意が必要です。
違約金などが高額になることがある
先述のとおり、サブリースの解約には違約金や立ち退き料が発生することが多々あります。違約金や立退き料の設定はサブリース会社によって異なり、金額に明確な基準や決まりはありません。
違約金や立ち退き料が高額に請求され、解約時にかかる出費が想定よりも大きくなってしまうと、物件の売却が叶ったとしても最終的には収支がマイナスになってしまうことも考えられます。立ち退き料の金額や支払いの決定は、総合的に判断して決めるようにしましょう。
サブリース解約にともなって入居者様の立ち退きもできるわけではない
サブリース契約を解除できるからといって、入居者様との賃貸借契約も必ず解約できるわけではありません。サブリース契約で借主保護の内容が強かったように、賃貸借契約の場合も、借主となる入居者様にオーナー様の都合で物件を明け渡してもらうには、相当の正当事由が必要です。
入居者様に立ち退き依頼をしてから実際に明け渡しとなるまで、約半年などと時間がかかります。加えて入居者様に対する立ち退き料が必要になる可能性があるため、オーナー様にとって負担が大きくなりやすいでしょう。
入居者様に対して明け渡しを請求する際は、ある程度資金を用意して出費に備えておくことが必要です。入居者様の都合も考慮し、できるだけ早めに通知を行うようにしましょう。
交渉が長期になる可能性がある
サブリース会社によっては、サブリース契約の解約通知に対してスムーズに対応してくれる会社もあれば、解約を拒否する会社もあります。解約を拒否する場合の交渉は長引くことが多く、条件の合意に至らず1年以上かかることもあるでしょう。
物件の売却を検討していて「いつまでに売りたい」と期限を設けている場合は、交渉に時間がかかることを想定して早期に交渉を始めることをおすすめします。
サブリース(一括借上)の契約・解約によるトラブルを最小限に抑える方法
サブリースに関するトラブルを抑えるには契約内容をよくチェックし、オーナー様に不利な要件が盛り込まれていないかを確認することが大切です。事前に注意点がわかっていれば、トラブルを未然に防ぐこともできます。
サブリースの契約時は下記のポイントを押さえ、慎重に判断するようにしましょう。
情報収集を行い契約内容を吟味する
契約時のポイントでも紹介したように、トラブルを防ぐには契約内容の確認や事前の情報収集がとても大切です。法改正によって悪質なサブリース会社は減少しているものの、オーナー様の安全が保証されているわけではありません。
分からない点があれば積極的に質問し、担当者に契約内容を噛み砕いて説明してもらいましょう。特に下記の内容はトラブルにつながりやすいため、注意が必要です。
●サブリース契約によってどのようなリスクが考えられるのか
●サブリース会社が提案する事業計画は適正か
●解約条項はどのようになっているのか
●オーナー様にとって不利な条件になっていないか
長期的な視点を持って投資する
サブリースは長期契約となるケースが多く、原則として契約期間中の解約は難しいでしょう。加えて、契約期間が長くなるほど保証家賃の見直しが行われ、収入が下がっていくことも特徴の1つです。あらかじめどの期間にどれくらいの収益が見込めるのかを把握し、長いスパンで投資を行う必要があります。
またサブリースを契約すると、オーナー様のタイミングで物件を売却できない可能性があります。契約前の段階で出口戦略を検討し、収支計画を立てておきましょう。
サブリース以外の管理方法も検討する
オーナー様の都合や物件の特徴などによって、適切な管理方法は異なります。契約内容を見て納得できない点が多いのであれば、「そもそもサブリース契約をすることが最善の選択か」という点を考え直す必要もあるでしょう。
オーナー様が管理業務を行う「自主管理」、賃貸管理会社に業務を任せる「委託管理」など、管理方法はほかにもいくつかの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを把握し、どの方法が適しているのかを検討してみてください。
トラブル発生時の対処法や相談先を把握しておく
トラブルの被害を最小限に抑えるには、対処法や相談先をあらかじめ把握しておくことが大切です。先述のとおりサブリース会社は借地借家法に守られているため、オーナー様が不利な立場になってしまうケースも珍しくありません。できるだけ早い段階で以下のような機関に相談し、問題解決に向けて行動を開始しましょう。
●ほかの管理会社
●サブリース経営相談センター
●公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会
●国土交通省等の窓口
●公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会
●法テラス など
まとめ サブリース(一括借上)の解約が必要か慎重に判断しよう
サブリース契約はサブリース会社とのトラブルがなければ、安定した賃貸経営を行えるオーナー様にとってメリットの多い管理プランです。サブリース契約の解約を検討している場合は、オーナー様が自分にとってサブリース契約におけるメリットとデメリットのどちらが多いかなど、総合的な判断が重要なポイントになるでしょう。
【リロの不動産】は、オーナー様の賃貸経営の目的を実現するための最適なプランをご提案できます。サブリース契約についてお悩みのオーナー様や、これから賃貸経営を行っていくうえでどの管理プランがいいのか悩まれているオーナー様は、ぜひ一度【リロの不動産】にご相談ください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。