管理会社の変更はあり?賃貸経営安定化のためにオーナー様がなすべきこと
2022.12.12賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益物件で賃貸経営をする大家業を営んでいると、なかなか思うようにいかない局面に出会うこともあります。賃貸経営がうまくいかない原因は一つではありませんが、実は賃貸管理会社にあることも少なくありません。
ここでは、賃貸管理会社に問題がある場合に変更するのは可能なのか、どのようなケースで賃貸管理会社の変更を検討することが多いのかを解説します。実際に賃貸管理会社を変更する際の手続きと注意点についても解説しますので参考にしてください。
▼この記事の内容
●不動産投資は金融資産運用と大きく違い、物件を取得してからがスタートとなり、賃貸管理がとても重要。自主管理には限界があり、優良な賃貸管理会社に動いてもらうのがおすすめ
●賃貸管理会社に不満がある場合、賃貸管理会社の変更は可能。
●賃貸管理会社が行う管理業務は、入居者募集業務・仲介業務や家賃回収代行などの入居者管理と、日常清掃・定期清掃やメンテナンス・大規模修繕計画などの建物管理に大別できる
●管理会社変更の際の注意点としては、入居者様への家賃振込先口座変更のお願いをすること、家賃保証会社との契約を確認すること、金融機関に事前に連絡すること、旧管理会社の「モチベーション低下」への対処することなどがある
●賃貸管理会社を選ぶポイントとしては、管理手数料と管理の品質を見極めること、『4つの空室対策』に対応できるかを見ること、大手不動産会社と地域密着型会社のハイブリッド型にすることがある
目次
管理会社の変更は可能か
不動産投資は金融資産の運用とは違い、物件を習得してから賃貸経営がスタートします。投資の成果が賃貸管理によって左右されることもあるため、管理を任せる賃貸管理会社選びは重要です。では、その賃貸管理会社を途中で変更するのは可能なのでしょうか。
結論・管理会社の変更は可能
結論からいうと可能です。それまでお世話になった賃貸管理会社に断りを入れるのは気が引けるかもしれませんが、賃貸管理会社を変更すること自体は法的には何の問題もありません。
ただし、賃貸経営を開始する際、オーナー様と賃貸管理会社の間で管理委託契約を結んでいるはずです。そのため、もとの賃貸管理会社との契約期間や解約による違約金が発生するかどうかなど、詳細は契約内容を確認する必要があります。
例えば「少なくとも3ヶ月前に文書により解約の申し入れを行う」という記載があれば、その約定に従わなければなりません。賃貸管理会社の変更を検討しているのなら、まずは新会社に相談してみるのがいいでしょう。事情や現在の賃貸管理会社との契約内容を踏まえたうえで、適切なアドバイスも受けられます。
賃貸管理の改善事例については、こちらの事例を参照ください。
適切な管理はアパート・マンションの資産価値を向上させる
不動産賃貸業は、入居者様に住環境というサービスを提供して対価を得る事業です。民法にも「賃借人に使用収益させる義務」が定められており、アパートやマンションを提供するということは、その義務を負っていることになります。
トラブルが頻繁に起こるような物件の場合、せっかく入居してくれたとしても、短期間で退去してしまうかもしれません。空室が数多く発生したり、長期間空室の状態が続いたりすると家賃収入が減り、不動産投資にも影響が出るでしょう。
また、建物の清掃が行き届いていない物件は、入居者様はもちろん、入居を検討している方に対してもいい印象を与えません。逆に賃貸管理が行き届いていれば、入居者様の満足度は上がります。
この物件に住み続けていたいと思ってもらえると、結果として空室は減り、物件の資産価値も向上します。つまり、物件の資産価値を向上させるためには、適切な管理が欠かせないのです。現在の賃貸管理会社の対応に疑問を感じているのなら、賃貸管理会社の変更も選択肢の一つでしょう。
管理会社はオーナー様のパートナー
賃貸経営がうまくいくかどうかは、賃貸管理にかかっているといえます。もし、十分な管理ができていないと感じるのなら、当然ビジネスパートナーとしての交代はあり得るでしょう。一言で賃貸管理といっても業務は多岐にわたり、賃貸管理会社には広く深い専門知識が求められます。
入居者様の満足度を上げ、入居を検討している方の目にとまる魅力のある物件であるためには、適切な管理が必要です。自主管理ではなかなかそこまで管理を行き届かせるのは難しく、信頼できない賃貸管理会社に任せるのも不安があるでしょう。
そこで賃貸経営のパートナーとして、優良な賃貸管理会社に動いてもらうのがおすすめです。優良な賃貸管理会社なら賃貸経営の流れを俯瞰してサポートするため、オーナー様と同じ目線での対応が期待できます。急な工事費用の捻出時も割賦対応による資金のバックアップや売却・資産活用・相続にまで対応しているところなら、賃貸経営に関連するトータルサポートが期待できるでしょう。
管理会社が行う管理業務とは
賃貸管理会社が行う管理業務は、大きく分けて入居者管理と建物管理の2つです。どちらもさらに、細かくさまざまな業務があります。ここからは賃貸管理会社が行う管理業務について、具体的な内容を解説していきます。
入居者管理
入居者管理は文字どおり、入居者様に関連する狭義の意味での賃貸管理業務です。後述する建物管理がハード面の管理だとすると、入居者管理はソフト面での管理だといえます。入居者様の満足度を高め、長く住んでもらうためには必須の取り組みです。
入居者管理には入居者募集業務や仲介業務から、家賃回収代行業務や各種契約業務まで、さまざまな業務が含まれています。家賃の滞納が発生すれば督促も行わなければなりません。トラブルやクレームの対応まで多岐にわたるため、以下で主な業務を解説します。
入居者募集業務・仲介業務(リーシング)
入居者募集から契約までの一連の仲介業務は、リーシングと呼ばれています。入居者募集業務は、物件の立地や特色を踏まえたうえで行うことが重要です。的外れな入居者募集を行っても、空室はなかなか埋まりません。
例えばターゲットが単身者なのか、ファミリー層なのかでもアピールポイントが違ってくるため、適切に入居者募集を行う必要があります。入居希望者が現われたら、引き続いて行うのが内見(物件案内)です。内見では、入居希望者に物件の設備などを詳しく説明します。
内見後に入居を希望してくれたら、入居者審査や契約業務を行います。ただし、リーシングについては賃貸管理会社では行わず、仲介業務を専門に行う不動産仲介会社(客付業者)に依頼するケースもあります。
家賃回収代行
入居者様が入金してくれる月々の家賃を回収し、オーナー様へ送金するのも賃貸管理会社の業務のひとつです。管理の仕組みによって異なる場合もありますが、一般的には毎月入金される家賃の合計から管理手数料を差し引き、残りをオーナー様に支払うことが多いでしょう。
家賃の回収だけではなく、入居時に入金される敷金の預かりも含めた資金管理も行います。また、家賃の滞納が発生した際は入居者様に連絡し、状況によっては内容証明を送付するなど、回収できるよう動くのも賃貸管理会社の業務です。
滞納家賃回収の事例については、こちらを参照ください。
各種契約業務
入居者管理としては、更新を迎えたときの契約手続きもあります。また、退去を申し出る方が出た際、オーナー様に代わって手続きを行うのも賃貸管理会社の業務です。退去の手続きは国土交通省が定める原状回復ガイドラインにそって行わなければなりません。
工事の手配を行うとともに、敷金を精算して余剰分を入居者様に返還する手続きも行います。入居者様の故意や過失、善管注意義務違反で生じた工事は入居者様の負担になりますが、経年劣化や通常の使用で発生する工事についてはオーナー様の負担です。
入居者トラブル、クレームへの対応
多くの方が生活するアパートやマンションでは、入居者様同士のトラブルや建物・設備に対するクレームなど、さまざまな問題が発生することがあります。入居者様に快適な生活を送ってもらえるよう、賃貸管理会社は迅速に対処しなければなりません。
具体的には騒音などの近隣トラブルやゴミ出しルールにまつわるトラブル、ペット可の物件ならペットに関連する問題なども発生しやすいでしょう。建物に関しては水漏れや設備の故障などが挙げられます。
入居者トラブルやクレームは、初期対応が肝心です。対処の仕方を間違えると、さらに状況が悪化することもあり得ます。ただ、トラブルやクレームを適切に対処すれば、賃貸管理の改善や入居者様の満足度アップにもつながるため、特に大切にしてください。
建物管理
建物管理は、文字通り建物や設備を管理する業務です。ビルマネジメントとも呼ばれ、ハード面の管理だといえます。一つの賃貸管理会社で入居者管理と建物管理の両方を担当することがあれば、建物管理の業務は専門の別会社に発注することもあります。
建物は年数が経過すれば、ある程度劣化しても仕方ありません。しかし、それまでの管理の品質が見た目や快適性の差として現われてくるため、長く良好な状態で維持するためにも建物管理は重要です。主な業務を以下で解説していきます。
日常清掃・定期清掃
日常清掃・定期清掃としては、建物の共用部分の清掃があります。例えばエントランスや廊下、ゴミ置き場や駐輪場などが清潔に保たれていると、入居者様は快適に住めるでしょう。良好な住環境が提供できれば長く住み続けてもらえる可能性も高まり、空室対策としても有効です。
逆に共用部分が汚いと、印象がよくありません。入居を希望する方が内見に訪れたとしても、選択肢から外されることもあり得ます。日常の清掃業務と定期的な清掃業務は、賃貸経営を行ううえで欠かせない業務です。
建物・設備の日常点検や法定点検
建物管理では日常清掃・定期清掃に加えて、日常点検と法定点検も重要です。共用灯の交換やゴミの回収状況などを、定期的に点検する必要があります。異常を早期に発見することで未然にクレームを防ぎ、顧客満足度のアップにもつながるでしょう。
日常の点検とは別に、各種法令に基づく設備施設の法定点検も行わなければなりません。具体的には建築基準法に基づくエレベーターの定期検査、消防法に基づく消火器具やスプリンクラー、火災報知器などの作動確認などがあります。
メンテナンス・大規模修繕の計画
建物や設備を日常的に点検し、劣化や汚損などの異常を発見した場合は、適宜修繕を行います。劣化や汚損が軽微であったとしても、裏に重大な瑕疵が潜んでいることも考えられるため、早めに対処することが重要です。
また、アパートやマンションは、十数年に一度のサイクルで大規模修繕を実施する必要があります。日常的な点検やメンテナンスを欠かさずにしていても、時間の経過とともに建物の躯体や設備はどうしても劣化してしまいます。問題を放置すれば劣化はさらに進み、より問題が大きくなりかねません。
大規模修繕には高額な費用がかかってくるため、賃貸管理会社の計画立案も重要な役割です。適切に大規模修繕を行うことで建物の状態を良好に保つとともに、寿命を延ばすことにもつながります。
管理会社の変更を考える理由
実際に賃貸管理会社を変更するとなると、なかなか踏ん切りがつかないこともあるでしょう。賃貸管理会社の変更は慎重であるべきですが、賃貸管理会社の変更を検討したほうがいいシチュエーションもあります。以下のようなところがないか、チェックしてみてください。
管理業務に不満がある
賃貸管理会社や担当者の対応に不満を感じることはないでしょうか。例えば入居者様からのクレームが発生しているにもかかわらず放置されている、家賃滞納者に対して適切な対処がされていないなど、対応力に問題のあるケースが挙げられます。
クレームを放置していることでさらなるトラブルに発展することもあり得ますし、家賃の滞納が続けば経営にも差し障りが出てくるでしょう。また、物件の清掃状況が悪いと、入居者様に心地よく住んでもらうことはできません。管理を任せているにもかかわらず適切な清掃が行われていなければ、オーナー様にとっても不満につながります。
物件の管理について、報告・連絡・相談が乏しいのも問題です。契約内容にもよりますが、例えば、相談もなく修繕工事などを実施されては予定外の経費が発生することもあるなど、コミュニケーションに問題があるとトラブルが発生する可能性も高まります。
昔からお願いしているから大丈夫と安心している場合でも、長い年月が経てば外部環境も大きく変わるため、小さい管理会社は事業承継問題が発生する場合もございます。以上のように適正な管理がなされていない、または不安に感じることがあるなら、担当者や賃貸管理会社の変更を視野にいれてもいいでしょう。
管理業務に関するトラブル・クレームについては、こちらの事例を参照ください。
空室が改善されない
賃貸経営で避けたいのは、長期間空室が続くことです。空室が出ること自体は仕方のないことですが、新たな入居者様が決まらなければ家賃がその分入ってきません。特に室数が少ない物件や、マンションの1室だけを投資用に所有しているケースでは致命的です。
賃貸管理会社では空室を埋めるために、さまざまな対策を施します。代表的な施策は住宅情報サイト(SUUMO・HOME‘S・at-home)に物件情報を出稿する方法です。住宅情報サイトは多くの人の目に触れるため、様々なテクニックで、賃貸物件を探す人に魅力的な物件を多くの入居希望者にお伝えできるのが大きなメリットです。
もうひとつ代表的な対策を上げると、仲介会社(客付業者)への依頼です。地元をよく知る仲介会社なら、近隣の競合物件も把握しつつ、アピールポイントを見いだして入居者募集に力を入れてくれます。
もし、以上のような募集活動に注力しているように見えなければ、空室はなかなか埋まらない可能性があります。自分の所有している物件が広告に出ているかどうか、賃貸管理会社が空室を埋めるためにどのような取り組みをしてくれているのかなどを確認してみましょう。
空室対策の改善については、こちらの事例を参照ください。
管理内容と管理手数料を見直したい
管理手数料は管理業務の範囲はもちろん、一般管理契約かサブリース契約かなどの契約形態によっても違いがありますが、一般的に家賃収入の5%程度が目安です。この相場よりも高い場合は、見直すことがあってもいいでしょう。サブリース契約は物件が持つポテンシャルを考えると、一般管理を推奨する場合もあります。
ただし、管理手数料は管理内容と比較してみることがポイントです。例えば家賃収入の3%など、一見安いように見えても、定期清掃や設備点検などの費用がオプションになっている場合や手数料の安さを優先して修繕積立金が想定より少なくなるケースもあります。管理手数料自体は低く抑えられていても、全体ではかえってコストがかかることもあるため注意が必要です。
賃貸経営をするうえで必要な部分は整えつつ、設備投資は抑えたい、大規模修繕を見据えた管理を依頼したい、工事費用の資金バックアップが欲しいなど、オーナー様によってさまざまな要望があります。買い増しで資産増加をしたい、将来発生する相続についても検討したいといった悩みを抱える人もいるでしょう。
自分のニーズに合った管理内容や管理手数料を知るためにも、まずは近隣相場をよく知る老舗などに確認するのがおすすめです。
管理費削減の改善については、こちらの事例を参照ください。
賃貸経営を見直したい
アパートやマンションなどの建物が時間の経過とともに劣化していくことは避けられません。そのため、入居者様に長く、快適に住んでもらうためには定期的な修繕工事が必要です。
その際、原状回復を図るだけではなく、ちょっとした工夫を施すことで居室空間の魅力がアップすることもあります。例えば、壁紙をワンポイントだけ変更したり、畳の和室をフローリングの洋室に替えたり、人気の設備を導入するだけでイメージが一新することも少なくありません。
新築から10年程度で大規模修繕を検討する必要があります。物件を維持するためには避けて通れませんが、工事が長期間にわたり、費用負担が大きい大規模修繕はオーナー様にとっては悩みでしょう。実際に大規模修繕を行う段階で資金不足になっていては困ります。
リフォームやリノベーションへの対応、建物のメンテナンスにより将来の大規模修繕を見据えた管理を依頼できる会社か見極めることも、賃貸経営を見直すきっかけの一つです。
また、築年数が古い建物のリノベーション資金を用意したい、物件を買い増して資産を増加させたい、売却することも考えておきたい、遊休地を活用したい、相続対策をしておきたいなどの多角的な視点から、賃貸管理会社の変更を検討したほうがいいケースもあります。
賃貸管理会社変更の手順
では、賃貸管理会社の変更が現実的になってきたら、実際にどのような手順で動けばいいのでしょうか。賃貸管理会社変更の流れは、基本的に以下のようになります。スムーズに変更手続きを済ませるためにも、確認しておいてください。
複数の管理会社候補から説明を受ける
賃貸管理会社をピックアップし、ある程度まで候補が絞れてきたら、まずは見積もりを取ります。賃貸管理会社によって業務内容の範囲や管理手数料をどのように設定しているのかが異なるため、契約を比較してみることが大事です。
賃貸管理会社を変更して、かえって望むサポートが受けられないようでは困ります。そうならないためにも、賃貸管理会社がどこまで対応してくれるのか、業務内容をしっかり確認することが大切です。
費用面では家賃収入の5%程度と比べて高いのか、安いのかがまず目安になります。ただ、管理手数料が安ければコストを削減できるメリットがありますが、管理手数料が高い分、サービスのレベルが高く、内容も充実している場合があります。
標準の業務内容で必要な管理をカバーしているのかどうか、オプションサービスがあるのかどうかなど、業務内容と費用をトータルで判断することがポイントです。見積もりだけでは判断できない事もあるため、各社から見積もりの説明を受けることをおすすめします。
現行の管理会社へ解約の通知をする
新しく契約する賃貸管理会社のメドがたったら、次は今の賃貸管理会社に解約の通知を行います。ただ、先述したようにオーナー様と賃貸管理会社は管理委託契約を結んでいるため、解約の手続きは契約内容に従わなければなりません。
基本的に契約の終了は解約通知を行ってから3ヶ月後と定めていることが多いですが、契約形態によりケースバイケースです。今の賃貸管理会社と交わしている管理委託契約に基づいて手続きを行う必要があります。
もし、契約内容に沿わない期間で無理に解約しようとすればトラブルに発展することも考えられるため、契約内容はあらかじめ確認しておいてください。
また、解約の申し入れを文書により行うことを管理委託契約で定めている場合もあります。新管理会社に相談の上、解約通知書などの書面を送付しましょう。文書による申し入れが盛り込まれていない場合でも、「言った」「言わない」のトラブルが起こらないよう、やはり書面で解約の申し入れを行うのがおすすめです。
新しい管理会社と管理委託契約を結ぶ
今の賃貸管理会社へ管理委託契約の解約を通知したら、速やかに新しい賃貸管理会社との管理委託契約を結びます。今の賃貸管理会社との間の契約が終了する日から空白ができてしまうと、万一その間にトラブルが発生した場合、新旧どちらの賃貸管理会社にも対応してもらえない可能性があります。
新しい賃貸管理会社と契約する際は空白ができないよう、今の賃貸管理会社との契約が終了する翌日に新しい賃貸管理会社との契約が開始するなど、管理開始日を設定します。あとは入居者様との間で締結している賃貸借契約書や建物のメンテナンスの記録などを確認し、賃貸管理会社の変更に備えて準備しておきましょう。
入居者様へ管理会社変更の通知をする
賃貸管理会社を変更すれば何かあったときの問い合わせ先が変わるなど、入居者様の生活にも少なからず影響を及ぼすため、入居者様にもその旨を通知します。家賃の振込先が変わる場合は、引き落としの変更手続きも必要です。手続きがスムーズにいかなければ、家賃が滞納になってしまう可能性もあるため、この点は慎重に、間違いなく行わなければなりません。
入居者様のなかには賃貸管理会社が変わると、管理の質が悪くなるのではないかと不安に感じる人もいます。振込先の変更で手数料の負担が増えたり、そもそも手続きをするのが面倒だと思ったりなど、不満を募らせることも考えられます。
入居者様へ通知を行うときは、「賃貸管理会社の変更はサービスを向上させるため」など、不安や不満を解消できるように努めることも大切です。管理会社や契約形態により「入居者様向けの付帯サービス」が付帯していることもあるので事前に確認しておきましょう。
新旧管理会社間での引き継ぎ
今の賃貸管理会社への解約申し入れから新しい賃貸管理会社との契約が開始するまでの間、両者の間で引き継ぎが行われます。建物の管理面では、鍵の受け渡しはもちろん、法定点検書類など、これまで実施してきた管理関連の資料、取引会社の連絡先や連絡方法も漏れなく引き継いでもらいます。
入居者管理では入居者様情報のほか、家賃滞納状況、敷金を預かっている場合はその分も引き継ぎが必要です。不明な点があれば説明を求め、解消しておきます。引き継ぎは基本的に新旧賃貸管理会社間で行うため、オーナー様が直接関わる必要はありませんが、トラブルを防ぐためにも引き継ぎがしっかり行われているか確認はしましょう。
新しい管理会社の管理がスタート
新旧賃貸管理会社間での引き継ぎが終了すれば、いよいよ新しい賃貸管理会社による管理がスタートします。引き継ぎが完了していれば、特に問題は発生しないはずです。しかし、引き継ぎが円滑に行われていなければ、管理業務を行う際に必要な対応が迅速にできないことも起こり得ます。
また、情報の把握不足で入居者様や取引会社とトラブルになり、不信感を抱かせてしまったなど、後々トラブルが生じるかもしれません。新しい賃貸管理会社での管理がスタートしてからも、オーナー様として引き継ぎがしっかりできているかどうか、注意しておく必要はあるでしょう。
管理会社変更の際の注意点
変更手続きがスムーズに進めばいいですが、賃貸管理会社変更の際はトラブルが発生することもあるため、注意を払う必要があります。最後に気をつけておきたい注意点について、対処方法も含めて紹介しますので新会社とよく話をしておきましょう。
入居者様への家賃振込先口座変更のお願い
家賃の振込先は通常、賃貸管理会社が指定する金融機関の口座です。先述したように賃貸管理会社変更に伴い、家賃の振込先口座も変わることが多く、入居者様に周知する必要があります。
万一、旧賃貸管理会社の口座に振り込まれてしまうと組戻し手続きをしなければならず、手間がかかるだけではなく、余計な手数料まで発生してしまいます。また、社会的な問題となっている「振り込め詐欺」と間違われるケースもあるため、家賃振込先口座変更のお願いは丁寧に行わなければなりません。
トラブルを回避するために、賃貸管理会社が変更になる時期に合わせて、新しい会社にあいさつ回りをしてもらうのも対処方法の一つです。トラブル回避のためにも、新しい会社の対応を確認しておきましょう。
家賃保証会社との契約の確認
家賃回収に関しては、滞納が発生するリスクに備えて保証会社と契約しているオーナー様もいるのではないでしょうか。一般的にオーナー様と賃貸管理会社、保証会社は三者間の契約になっている場合が多く、賃貸管理会社が変更されたとしても契約はそのまま引き継がれる形になっています。
ただし、賃貸管理会社によっては途中解約を避けるために、賃貸管理会社が変更されると保証会社との契約も切れる形になっているケースもあるため注意が必要です。契約が引き継がれない場合は、保証会社との契約を新規で締結することになり、その分、余計な手間と費用がかかります。保証なしで賃貸管理会社変更の手続きを進める選択肢もありますが、リスクが高く、おすすめはできません。
後になって損をしたり、トラブルが生じたりしないよう、賃貸管理会社を変更する際は保証会社との契約がどのようになっているのかもしっかり確認することが重要です。最善の方法を取れるように、新しい賃貸管理会社や保証会社とも相談してみましょう。
金融機関に事前に連絡する
賃貸物件を取得する際、金融機関から融資を受けている場合は、新しい管理会社に相談の上、賃貸管理会社変更の事実を事前に連絡しましょう。賃貸管理会社を変更すること自体、基本的に融資に影響はありません。ただ、金融機関にとっては、融資した分を確実に回収できるかどうかを重要視するため、賃貸物件では収益性が高いことが求められます。
返済が滞り、債権回収のために担保として売却する際は、より多く回収できる資産価値の高い物件であることも大事です。もし、収益性や資産価値に影響を及ぼす可能性がある賃貸管理会社の変更を無断で行うようなことがあれば、金融機関の印象を悪くするかもしれません。
賃貸管理会社の変更を考えているのなら、金融機関に対しても不安を与えないために、事前に連絡しておくほうが賢明です。金融機関への事前連絡についても、新会社と対応方法を確認したうえで適切に対処しましょう。
旧管理会社の「モチベーション低下」への対処
契約を打ち切られた賃貸管理会社側としては、納得いかないこともあるのでしょう。まれにですが、旧賃貸管理会社が規定業務を行わないことがあります。例えば、空室が出ても募集活動を行わない、建物の清掃もしない、不具合やクレームへの対処を放置するなどです。
引き継ぎに非協力的なケースもあります。特にクレームなどはしっかり引き継ぎされていないと、さらなるトラブルや不満を招くかもしれません。
予期せぬ事態を未然に回避するためにも、事前に新会社と対策を相談しておくのがおすすめです。場合によっては、解約通知書の送付時に、悪質な行為には法的措置をとる旨を盛り込んでおくのも対策の一つです。実際に「お困りごと」が発生してしまったときは、新会社の協力を得て、冷静に対処するようにしましょう。
賃貸管理会社を選ぶポイント
では、大事な収益物件の管理を任せる賃貸管理会社は、どのような視点で選べばいいのでしょうか。最後に賃貸管理会社の選び方として、3つのポイントを挙げて解説します。賃貸管理会社の変更を検討する際は、参考にしてください。
管理手数料だけで決めるのは危険
賃貸管理会社に物件の管理を委託すると、当然ながら管理手数料が発生します。管理手数料を安く抑えられれば、収益性は向上するでしょう。しかし、管理手数料が安い分、管理の質が悪くなるようなら、入居者様が減る可能性があります。
管理の行き届いていない物件は、入居者募集を行っても新たな入居者様がなかなか見つからず、長期間空室が埋まらないかもしれません。そのような状況では家賃収入が減るのはもちろん、資産価値も下がってしまいます。一方、適切な賃貸管理会社を選ぶことで、収益性を上げられる可能性があります。
賃貸管理会社を選ぶ際は管理手数料だけで決めず、管理の質を担保することが重要です。もちろん、高い管理手数料を取るからといって、必ずその賃貸管理会社が適切な管理をしてくれるとはかぎりません。物件の維持に支障がなければ、本当に無駄なコストだと判断できる部分を削減するのも手でしょう。
賃貸管理会社を選ぶ際は管理手数料の相場を把握しつつ、管理の内容も熟考することが重要です。次の段落では賃貸管理の重要なポイントである、『4つの空室対策』がどのようなものなのかを詳しく解説します。頼りになる賃貸管理会社を選ぶためにも、参考にしてください。
『4つの空室対策』に対応できるか
『4つの空室対策』とは賃貸経営に不可欠な要素で、具体的には「①入居者募集対応」と「②仲介対応」、「③管理対応(入居者管理/建物管理)」、「④設備・工事対応」の4つがあります。賃貸経営では収益性を確保し、物件の資産価値を維持するためにも、空室を埋めるノウハウを有しているかどうかが欠かせないポイントです。
空室が発生した際、限られた方にしか情報が届かないと、問い合わせや入居の希望者が現われにくいでしょう。入居者募集対応ではインターネットも駆使しつつ、部屋探しをしている方に十分な情報が届くようにしなければなりません。目にとまる工夫もする必要があります。
また、ニーズに合わなければ成約までは至らないことも多いため、ターゲット層を絞ったアプローチをすることも大事です。入居者様と物件の間でミスマッチがあると、入居後トラブルになったり、早期に退去してしまったりすることもあり、賃貸管理会社には仲介力も問われます。
「管理会社が行う管理業務とは」の段落で解説したように、管理対応の良し悪しが空室の発生に影響をおよぼすケースもあります。空室対策の4つの要素は、どれが欠けてもうまく機能しません。逆に『4つの空室対策』に対応できる賃貸管理会社は頼りになります。
おすすめは大手不動産会社と地域密着型会社のハイブリッド型
賃貸管理を任せられる会社には、誰もが知るような大手不動産会社もあれば、地域密着型の会社もあります。オーナー様のなかには、どちらを選べばいいのか、迷う方もいるのではないでしょうか。どちらにもメリットがあればデメリットもあるため一概にはいえませんが、大手と地域密着型それぞれの良さを持ち合わせているハイブリット型がおすすめです。
大手不動産会社のメリットは、何よりもその強いブランド力でしょう。大手不動産会社は仲介・売却の幅広いネットワークを持っており、知名度を活かした集客も可能です。大手としてのブランドイメージも、入居者様の安心感につながります。また、賃貸管理に関するノウハウを豊富に蓄積していることも多く、高いレベルでのサポートが可能です。
一方で、地域密着型の賃貸管理会社は地域情報に詳しく、柔軟な対応ができます。人の流れなども把握し、大手にはない独自のネットワークを持っていることも珍しくありません。オーナー様との距離が近く、良好な関係性を築けるのも地域密着型ならではの特徴です。
両者のメリットを合わせ持つハイブリッド型の賃貸管理会社なら、心強いパートナーになってくれるでしょう。賃貸経営のトータルサポートも可能です。
不動産や賃貸経営のお困りごとを解決する【リロの不動産】
不動産賃貸経営を行うなかで、賃貸管理会社を変更することは可能です。ただし、トラブルを発生させないためにも、適切な対応をする必要があります。
多くのオーナー様にとっては賃貸経営そのものが目的ではなく、収益を得ることで実現したい人生があることと思います。同じ目線で同じ目標に向かって伴走できるパートナーを選ぶことこそが、オーナー様が思い描く理想の人生につながるのではないでしょうか。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。