地主が土地を売却するときの注意点を解説!広大な土地や底地の売却方法

2024.03.19

相続税対策や使わなくなった土地の処分などを理由に、土地売却を検討される方が増加中です。しかし、土地をたくさん所有する地主の場合、土地売却には地主特有の数多くの課題が生じます。特に広大な土地や借地権付きの土地はなかなか売却先が見つからない事態になりがちです。

そこで今回は、保有する土地の多い地主が土地売買で直面する課題についてわかりやすく解説します。

なお、土地の相続に関しては、次の記事が参考になります。ぜひ、ご参照ください。

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広大な土地は売却が難しい

広大な土地の売却は予想以上に難しいです。購入希望者が限定されるうえ、用途地域によって建てられる建物の制約があるなど、売り手が不利になりやすい条件がいくつか存在します。

購入者が限定される

国土交通省が発表した「2022 年土地保有・動態調査」によると、日本全国の土地購入者のうち63.0%が個人での購入者です(※)。個人で土地を購入する方のほとんどは居住目的で土地・建物を購入します。

そのため、土地購入希望者の需要は戸建て住宅を建てられる100~200m2(約30~50坪)程度の規模に集中するのが実情です。これ以上の広さだと個人での購入はまれですから、売却予定地の面積が広大というだけで全購入希望者の4割ほどに候補が絞られてしまうのです。

では具体的に誰が広大な土地を購入するのかというと、不動産会社などの法人です。広い土地の場合、土地の活用方法は戸建て住宅の分譲地化やマンション・アパート、倉庫や商業施設の建設などが主流となります。

こういった土地活用を行うには豊富な資金力と集客ノウハウを持つ専門の不動産会社でなければ難しいです。取引規模も億単位レベルとなってきますので、不動産会社をはじめ、さまざまな専門家が集まっての交渉となるでしょう。収益化が難しいと判断した場合の撤退判断も早いので、評価の低い土地だとなかなか買い手がつかないこともあります。

※出典:国土交通省 2022 年土地保有・動態調査

用途地域の制限

広大な土地があれば、商業施設や工場、マンションなど活用方法は豊富のようにみえます。しかし、ここで問題となるのが用途地域による制限です。日本の国土は計画的な街づくりを進めるために、都市計画法で13種類の用途地域を設定しています。住宅に関する地域は8種類あり、それぞれ建物の大きさや高さが制限されているのです。

1.第一種低層住居専用地域
2.第二種低層住居専用地域
3.第一種中高層住居専用地域
4.第二種中高層住居専用地域
5.第一種住居地域
6.第二種住居地域
7.準住居地域
8.田園住居地域

例えば売却予定地が「第一種・第二種低層住居専用地域」に該当する場合だと、広大な敷地であってもマンションなどの高層建築物を建てられません。マンションを建てられない広い土地に需要はあまりないため、住宅地といえども売却先を見つけるのは難航します。

もしマンションが建てられないのであれば戸建て住宅の分譲地化などが有力候補となりますが、その場合は建築基準法の規定により敷地内に道路を作らなければなりません。

ところが、道路分の敷地については価格がつかないのが原則となっていますので、土地全体での価格は道路分の面積を差し引いた分にまで目減りしてしまいます。結果的に周辺の土地相場よりもかなり低い価格での売却となる可能性があるため、この場合は土地の分筆や不動産会社への直接買取などを模索したほうが得策でしょう。

このように用途地域による制限によって、建築可能な建物の種類が限定されてしまう点には要注意です。

広大な土地を売却する方法と注意点

広い土地の売却では購入希望者が限定される点と、用途地域の指定による建築制限に注意しなければなりません。もし問題がある場合、スムーズに土地を売却するためにはどのような方法があるのでしょうか。

なお、広大な土地を売却した事例については、以下をご参照ください。

敷地面積777㎡と開発を要する土地売却!希望価格で売却した成功事例

分筆して売却する

土地を分筆し、小さく分けて売却する方法です。土地の登記簿上の土地を「1筆」「2筆」と数えますが、1つの土地を複数の土地に分けることを分筆といいます。

分筆を考える事例としては、第一種低層住居専用地域にある土地の売却が典型例です。そのままの状態ではマンションなどの高層建築を建てられず売却先が限られてしまうので、戸建て住宅一軒分相当の100~200m2程度に土地を分割・分筆して売却します。分筆後の土地なら戸建て住宅需要に応えることができ、一気に売却先の選択肢が広がるでしょう。

ただし、土地の分筆にはデメリットもあります。

1つめのデメリットは費用と時間の問題です。分筆に際しては専門家(土地家屋調査士)による測量ののち、分筆登記の申請などが必要となります。登記申請にかかる登録免許税は土地1筆あたり1,000円で済みますが、確定測量から分筆登記までの一連の報酬額は数十万から数百万円になることも少なくありません。

また、分筆登記完了までの期間も依頼から数ヶ月かかることもあるため、売却まで時間をかけたくない場合のデメリットは大きいです。

2つめのデメリットは宅地建物取引業法違反のリスクです。土地を分筆して立て続けに複数人相手に土地売却を行うと、土地売却に事業性があると判断されます。事業性のある土地売却は、宅地建物取引業免許を取得した宅建業者でなければなりません。取引は必ず不動産会社(宅建業者)と組んで進めなければならない点にも注意しましょう。

不動産会社に買い取ってもらう

自力で売却先を見つけるのが難しい場合、不動産会社に直接土地を買い取ってもらう不動産買取も有効な方法です。この方法では不動産会社に直接土地を買い取ってもらえるため、独自に売却先の募集などを行う必要なく迅速に土地を現金化できます。

売却は一度きりですので宅建業法違反などのリスクもなく、仲介手数料も取られません。面倒な手続きを省いて買い手をできるだけ早く見つけたい方に向いている手法です。

ただし、不動産会社の直接買取には、買取価格が安いという大きなデメリットがあります。一般的に買取額は市場価格の7~8割程度となることがほとんど。売却までの手間がかからないかわりに、安く買い叩かれてしまう点には要注意です。納得できる売却価格を提示してくれるかどうか、しっかりと見極める必要があるでしょう。

借地権が設定されている土地(底地)の場合

先祖代々から受け継いでいるような古い土地の場合、売却予定地に借地権が設定されていることが多いです。借地権付きの土地を底地と言いますが、底地は借地権者がいる以上、その売却は通常の土地よりもはるかに難しいのが実情です。ここからは底地の売却に関する問題点について解説しましょう。

底地の売却は自由だが…

借地権の付いた土地(底地)でも売却は可能です。売却に際して借地権者の同意も不要ですので、形式的には地主が自由に売却できます。しかし、実際に底地の売却にはさまざまな困難に直面するでしょう。

底地の売却が難しい最大の理由は、やはりその土地を利用している借地権者の存在にあります。借地権とは、建物の所有を目的として土地を借りる権利のこと。借地権者は地主に地代を払って、その土地の上に建つ建物を使用しています。実質的にその土地を使用しているのは借地権者なのです。さらに借地権者は、借地借家法で権利が保護されています。

借地権者がいることで地主側にどのような制限があるのか、順番に解説しましょう。

底地は自由に利用できない

法律上、土地を所有しているのはあくまでも地主ですが、借地権付きの土地(底地)の所有にあたっては地主側にさまざまな制限が生じます。

通常の所有権のある土地だと、土地の使用収益権と処分(売却や相続など)を所有者が自由に行えます。ところが、底地は地主の使用収益権に制限がかかっています。実際にその土地に建物を建てて使用するのは借地権者だからです。建物自体の所有権も借地権者にありますので、土地の所有者といえども勝手に建物を建て替えたり売却したりすることはできません。

仮に定期借地権のように賃貸借期間があらかじめ決められた契約であったとしても、期限到来までは地主側が土地を自由に使用することはできなくなっています。

さらに借地権契約の解除についても地主側が不利です。原則として地主側から借地権者に対して、正当な事由なく一方的な契約解除を通告することができません。

以上のような理由から、単なる売却を口実に地主が借地権者を追い出すことは原則として不可能です。したがって、底地の売却とは買い手が自由に使用収益できない土地を売るということを意味します。使用収益権に制限のある土地をあえて購入したい買い手は当然少ないため、底地の売却先はなかなか見つからないことが多いのです。

借地権者とトラブルになる可能性

借地権者とトラブルになるリスクもあります。特に借地契約の更新料や地代の変更などをめぐってもめることが多いです。トラブルになりやすい事例をあげてみましょう。

更新料に関するトラブル

借地権は特に合意がない場合、契約後20年、2回目以降はさらに10年ごとに更新時期がやってきます。更新時に更新料の値上げを求めることはできますが、借地権者との合意が成立しないと無効ですので、一方的に値上げを要求しても納得してもらえないことが多いです。

地代の値上げ要求でのトラブル

借地権はかなりの長期間にわたって設定されていることが多く、現在の土地相場、固定資産税の負担に対してかなり安い地代設定となっています。地代の値上げを求めても借地権者がすんなり要求を受け入れてくれるとはかぎりません。交渉がこじれると、裁判になることもあります。

明渡し要求でのトラブル

借地権の更新を理由に借地人に対して明渡しを求めることも困難です。借地借家法5条によると、

①期間満了時に借地権者が更新を請求する+建物が存在する
②期間満了後、借地権者が土地の使用を継続する+建物が存在する

以上2つの要件のいずれかに該当する場合は、借地契約は従前の契約と同一条件で更新したものとみなされます。

これを阻止すべく契約終了と明渡しを請求するには、地主側が正当な事由をもって異議を申し立てる必要があります。しかし、実際のところ正当な事由が認められるハードルは、過去の裁判例を見ても相当高いのが実情です。

地代収入は極めて低い

借地権の契約はかなり古い時代に交わされていることが多く、中には戦後間もなくの時期に契約したケースも決して珍しくありません。当然、数十年前と現在では相場も違っていますので、当時の契約で定められた地代は現在では極めて低くなりがちです。

しかし、地代の増額請求はハードルが高く、借地権者に対して一方的な値上げ要求をすることは原則としてできません。地代の増額請求をするためには

・土地に対する租税公課(固定資産税など)が大幅に増額された
・土地の評価価格が上昇した
・経済事情の変動により価格設定が現状の相場と乖離している
・近隣地域の相場と比較して、あまりにも地代が安すぎる

などの理由により、地代が不相当に低いと評価できる場合に限られます。しかし、具体的な計算方法や不相当の細かな基準が定まっていないこともあり、実際に増額請求が行われることは少ないのが現状です。

相場と比べるとかなり低い地代設定のまま動かせなくなっている事例も少なくありません。

底地を売却する方法

売却対象の土地としてはかなり不利な条件と言わざるを得ない底地ですが、できるだけ高く売却するにはどのような方法があるのでしょうか。代表的な方法を5つご紹介します。

借地権者に売却する

底地を借地権者に買い取ってもらう方法です。借地権者側に土地・建物を自由に使いたい意思がある場合は交渉を進めやすいです。借地権者にとっては、底地の買い取りによって地代や更新料の支払い、売却の際の地主の承諾、承諾料の支払いなどがなくなる点が大きなメリット。土地と建物の所有権が借地権者に一本化されますので、金融機関の融資も下りやすいです。

あくまでも借地権者の購入意思次第ですので、交渉の主導権は借地権者側にあります。借地権者側は資金を準備する必要がありますので、借地権者側にとってはハードルの高い選択である点は否めません。借地権の更新時期、あるいは借地権者に相続が発生したタイミングを見て、借地権者側に底地買取の意思があるのか確認する必要があります。

底地と借地権を等価交換する

借地権者の使用部分が底地全体の一部に限られるケースなどに向いている手法が「等価交換」です。

等価交換とは土地の一部と借地権の一部について、地主と借地権者で相互に交換する方法のこと。借地権者の住む家の建つ底地部分の所有権と、借地権者があまり使っていない底地上にある借地権を交換するイメージです。

結果として、建物の建つ部分の土地と建物の所有権が借地権者に、建物の建っていない部分の土地所有権と借地権が地主側に振り分けられます。一筆の土地を地主と借地権者がそれぞれ完全所有権を持つ土地に分け合うかたちです。

原則として等価交換はお互いの権利を交換する手続きとなるため、底地や建物を別途金銭で買い取る必要はありません。細かな条件は交渉次第となりますが、基本的にはお互い大きな資金を準備することなく、完全所有権となった土地が手に入ります。

完全所有権の土地は底地と比べて売却時の評価が上がりますので、完全所有権を手に入れるメリットは大きいといえるでしょう。もちろん、手に入れた土地は売却せず使用収益することも自由ですので、土地活用の面でも選択肢が広がります。

ただし、等価交換を実現するためには、お互いの保有分をうまく切り分けられる建物配置であることや接道条件がよいことなど、物理的な土地条件をクリアしなければなりません。

さらに一筆の土地を切り分けた結果、土地があまりに小さくなりすぎてしまい、かえって使用用途に困ったなどの事例もあります。土地の切り分けができるかどうかだけでなく、等価交換後の土地をどのように活用できるかも想定したうえで、手続きを進める必要があるでしょう。

借地権者から借地権を買い取る

地主側が借地権者から借地権を買い取り、完全な所有地にする方法です。完全所有権となる土地を手に入れる点では借地権者への売却や等価交換と同じですが、この方法では地主側が資金を準備して所有権を手に入れることになります。

土地全体の所有権を取得することによって底地を大幅に超える価格での売却を期待できますし、あえて売却せずに新たな土地活用を行うなどの選択肢も広がるでしょう。条件のいい土地であればアパートやマンションなどを建てて収益性を見込むこともできるはずです。

ただし、ここでも問題となるのは借地権者側の売却意思です。借地権者が借地権を手放すつもりがないにもかかわらず、一方的に借地権の売却を持ち掛けてもなかなか交渉は進みません。借地権者が建物を手放したいと考えそうなタイミングを見て、買取り交渉を始める必要があります。

ベストタイミングとして考えられるのは、借地権者に相続が生じた時です。借地権も相続の対象となりますが、相続人が引き続き建物を利用する意思がない場合、地主側に建物や借地権を買い取ってもらえないかと考えているケースがあります。借地権者の相続人からも相談されることがあるので、その際は相手側の意思をくみ取りつつ地主側からも借地権の買い取りを持ちかけてみましょう。

専門会社に売却する

借地権者との交渉による売却・買取は、借地権者側の意思や資金力、タイミングに大いに左右されてしまうので、地主側の都合だけで手続きを進められません。しかし、底地だけを売却しようとすると買い手がつきにくく、仮に売却先が決まったとしても相場よりも大幅に低い価格で決着してしまいがちです。

そこで頼れるのが底地でも買い取ってくれる底地買取専門の不動産会社です。借地権付きの土地売却に関する実績が豊富なので、かなりのスピード感を持って対応してくれるでしょう。さらにこのタイプの会社は底地活用について独自ノウハウを持っていることが多く、通常の不動産会社よりも高い査定価格で買い取る傾向にあります。

底地をできるだけ早く手放したいなどの理由があれば、専門会社に売却する方法がもっともスムーズだといえます。

借地権者と同時に第三者に売却する

借地権者と協力し、底地と借地権を同時に第三者に売却する方法です。地主と借地権者、双方の負担をかぎりなく少なくできるうえに、完全所有権となった土地を売却するため高値で売れる可能性があります。地主と借地権者ともに得する方法ですので、底地の売却手段としてはおすすめです。底地と比べてはるかに高く評価されるため、購入希望者も見つかりやすい傾向にあります。

ただし、第三者への売却に関しても借地権者と地主が協力して手続きを進めることが必須です。もちろん、地主と借地権者が同じタイミングで売却したいと考えていることも重要となります。ここでも借地権者に相続が発生した時や借地権の更新期などがベストタイミングです。

売却に至るまで地主と借地権者は協力しなければなりませんから、双方ともに普段から友好な関係を構築しておくことも大切になります。

まとめ

土地が広大過ぎる、あるいは借地権が設定されている底地などの事情で売却先が見つかりにくいなど、大地主には売却に関連する特有の問題が起こることがあります。

売却交渉をスムーズに進めるためには複雑な法的知識の理解や買い手の募集、借地権者との交渉など難易度の高い課題を一つずつクリアしなければなりません。所有地の状況や地主側の希望にぴったり合う方法を選んで、計画的に売却交渉を進める必要もあります。

こういった専門性の高い課題を乗り越えるためには、地主のご希望に寄り添える不動産会社をパートナーに選ぶことが大切。頼りになる不動産会社に売却交渉を依頼することで、オーナー様の予想を超える成果を得られます。

【リロの不動産】は多種多様なオーナー様のニーズを理解し、土地活用や売却のお手伝いできるベストパートナー。全国トップクラスの物件管理実績を活かし、これまで数多くの土地・建物オーナー様の土地活用をお手伝いして参りました。土地の売却や土地活用でお困りの方は、ぜひ一度【リロの不動産】まで気軽にご相談ください!

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。