公務員の副業はなぜ禁止?できる範囲と不動産投資が公務員に有利な理由

2024.11.21

不動産投資は副業としても注目されるビジネスモデルの1つ。成功すれば、あまり手間と時間をかけずに継続的な収益が手に入るため、副業としては理想的な収入源となり、老後資金の不足を補える「じぶん年金」にもなります。しかし、実際には副業禁止規定のある会社も多く、不動産投資をやってみたくてもなかなか手を出せない方も少なくありません。

会社員よりも副業が難しいのが「公務員」です。公務員は法律の規定で副業禁止とされていますので、原則として副業ができません。本業以外での副業をするためには、限られた条件をいくつもクリアする必要があります。

そこで、本記事では公務員と副業の関係性ついて、副業禁止の理由や可能範囲を含めて詳しく解説します。公務員のほうが有利だとされる「不動産投資」についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

▼この記事の内容

●公務員の副業は、「国家公務員法」「地方公務員法」にて法律上禁止されている
●副業を行い法律に違反すると「停職」や「減給処分」、最悪の場合「懲戒解雇」の処分
●任命権者の許可次第では一部の副業が可能なこともある
●3つの原則を守ったうえで行うアンケートモニターや不用品の売買、ブログ、投資などは公務員でも副業可能
●保有資産の運用とみなされる投資活動は比較的自由なため、不動産投資は公務員に向いている

目次

公務員が副業禁止の理由。バレたら処分される?

そもそも公務員はなぜ副業が禁止されているのでしょうか?公務員といえども「職業選択の自由」はあるはずですが、公務員は職務上「中立性」と「公平性」を重視されるため、副業禁止が法律で明文化されています。公務員の副業禁止の理由や、もしバレてしまった場合にどのような処分があるのか解説しましょう。

また、公務員と不動産投資については、こちらの記事も参照ください。

■参考記事

公務員の副業に不動産投資は向いているのか?メリットと注意点を解説!

公務員はアパート経営できる? 公務員が不動産投資を始める意外なメリット

公務員が副業を禁止される理由

公務員の副業については、国家公務員は「国家公務員法」、地方公務員は「地方公務員法」で、それぞれ法律上禁止されています。公務員はあくまでも国民のために働かねばならない存在であり、国民の信頼を失わないよう「公平性」や「中立性」を持たねばならない、と考えられているためです。

公務員は国民に対し義務の履行を求める立場にもあるので、特定の業種や会社とビジネス関係を結んで便宜を図ったように見える行為は許されないわけです。

もし法律に違反して副業がバレてしまうと、最悪の場合は「懲戒解雇」、そこまでの処分に至らなくても「停職」「減給処分」など、何らかの処分を受けることは避けられません。一般企業の会社員とは違って副業禁止が法律で明記されている以上、規定に反した副業がバレた場合の立場は厳しいものとなります。

国家公務員法による規定(法律)

国家公務員の副業禁止の根拠となる条文は「国家公務員法第103条(私企業からの隔離)」と「国家公務員法第104条(他の事業又は事務の関与制限)」の2つの条文です。

2017年6月12日に衆議院で提出された「公務員の副業に関する質問主意書」によると、国家公務員法第103条で「国家公務員は営利を目的とする企業や団体の役員等との兼業や自営業ができない」、同104条では「営利企業以外の事業の団体についても同様のことを規定しており、国家公務員の兼職、副業を禁止している」との解釈が確認されています。

以上を踏まえると、公務員が営利目的の私企業を経営したり、会社員として兼業したり、といった行為は原則禁止です。国家公務員法103条にある「営利企業以外」、つまり非営利団体の一員としての副業も禁止ですが、これについては内閣総理大臣や所轄省庁の長官からの許可がある場合には、一部可能となる事例があります。

地方公務員法による規定(法律)

地方公務員の副業禁止規定は、「地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)」が根拠となります。地方公務員法第38条には、「任命権者の許可がない場合には「役員兼業」及び「自営兼業」、そのほか、あらゆる報酬のある兼業への従事を制限する」とあるので、やはり副業は基本的にNGです。

国家公務員と同様に、国の奉仕者として職務に専念し、公共利益のため全力を尽くすこと、公僕としての公平性・中立性を保つことが重視されます。

しかし、地方公務員による副業禁止違反は毎年のように問題となっています。ちょっとしたことで知人や同僚にバレてしまったり、副業でのビジネス相手から情報が漏れたりなど、気軽に始めた副業のつもりが大ごとになる事例が少なくないようです。

また地方公務員の場合、任命権者の許可を得るプロセスが自治体によって違うこともあるため、副業をめぐる問題が生じがちです。もし本業とは別の業務を始めたい場合は、各自治体で認められている基準をよく確認したうえで、任命権者の許可を取るなどの対応が必要でしょう。

公務員の副業を解禁した自治体の事例

自治体の一部では公務員の副業を解禁する動きも出ています。代表的な自治体の1つが兵庫県の神戸市です。神戸市は全国的にもいち早く先進的な取り組みをする自治体として知られます。

神戸市の認める副業は「市の職員の持つ知識や経験を生かし、地域の課題解決に貢献できる活動」とのことで、具体的には須磨海岸の障がい者支援活動、阪神大震災後に活動を始めたNPO法人への参加など、公益性の高い活動が中心です。副業解禁といっても、ごく一般的なアルバイトとの兼業を認めているわけではないようです。

神戸市に続いて副業解禁に踏み切ったのが奈良県の生駒市です。生駒市の場合も「公益性の高く、市の発展に寄与する副業」に限定とされており、勤務時間外に限る活動であることや、報告書を義務づけるなどの規定が設けられています。

ただ、認められた事例には地域のサッカーチームやバレーボールチームの指導者としての業務(いずれも現役消防士さんの事例)も含まれており、副業の範囲自体は徐々に広がっている印象を受けます。

宮崎県新富町でも副業解禁となっていますが、新富町ではスポーツチームの指導者だけでなく、人出不足の農家や新聞配達の手伝いなども認められる方向のようです。

任命権者の許可を受ければできる副業もある

国家公務員、地方公務員を問わず、公務員は基本的に副業禁止ですが、任命権者の許可次第では一部可能となります。

もちろん、どのような副業が認められるかについては任命権者次第です。知事や市町村長の方針によって、今後解禁される副業の範囲が変わる可能性がありますし、そもそも公務員の副業に関心がある政治家がトップになるかどうかでも状況は変わります。

また、副業を解禁した自治体であっても「公益性の高い、地域の発展に貢献できる業務」に限定する姿勢は崩していません。今後、徐々に認められる業種は広がる可能性があるとはいえ、公務員として守るべきルールに反した副業は難しいと考えるべきでしょう。副業を始めたいとお考えの場合は、自分の勤めている自治体が副業の申請に対してどのような姿勢をとっているのか、必ずチェックしてください。

公務員でもできる副業の種類【10選】

ここからは公務員でもできる副業を10種類紹介します。ただし、どの職種であっても事前に職場の自治体に申請して許可を取り、公務員としての信用を棄損する振るまいを行わないことが大前提です。

公務員の副業として認められるかどうかは、3つの原則が守られているかどうかが重要な判断基準となります。その3つの原則とは以下の内容です。

「信用失墜行為の禁止(国家公務員法第99条)」
「守秘義務(国家公務員法第100条)」
「職務専念の義務(国家公務員法第101条)」

どのような副業であれ、以上の3原則を満たさない場合は処分対象となる可能性があります。

公務員が行う講師・講演活動

公務員の知見や自分の専門知識を生かした「講師活動」は認められています。スポーツチームのコーチや審判も基本的にはOKです。ただし、謝礼については注意する点がいくつかあります。

公務員の副業で謝礼を受け取るべきかに関しては、

・謝礼が報酬にあたるか
・謝礼の対象となる行為が事業・事務に従事することにあたるか
・事前に任命権者の許可を得ていたか

以上の3点が受領可否の判断基準です。講師活動で得られる講演料や交通費、原稿料などが「報酬」の大半は、そもそも講師活動は労務契約がない場合が多い、謝礼の多くは謝金、実費弁償に近く「報酬」にはあたらない、などの理由から受領を許される事例が多いです。

ただし、社会通念上、明らかに継続的、定期的にかなりの報酬を得ている場合は、事業活動とみなされる恐れがあります。また、近年は公務員でYouTube活動をされる方も増えていますが、広告を掲載する場合はグレーゾーンです。実際に活動される方のほとんどは広告非掲載のようです。

公務員が行う執筆活動

執筆活動も公務員として働きながらできる有力な副業のひとつ。公務員であっても「表現の自由」は尊重されるため、比較的認められやすい傾向にあります。公務員としての知見を活かした執筆はもちろん、趣味としての執筆活動も基本的に問題ありません。

ただし、任命権者の許可は原則として必要で、公務員としての信頼を損ねるような執筆活動はもちろんNGです。表現内容によっては情報の漏えいや政治批判など、公務員としての品位を損なうと判断される可能性がある点には注意したいところです。

また、雑誌などで小説などの長期連載をしている場合など、完全にプロとして執筆活動を行うケースについてはグレーゾーンといえます。「職務専念の義務(国家公務員法第101条)」の関係上、公務に影響のない範囲内での執筆活動であることも大前提です。

公務員が行うアンケートモニター

スマートフォンやパソコンで手軽にできる「アンケートモニター」も人気の副業の1つ。専用アプリやWebサイト内、登録メールに届くアンケートに答えることで報酬をもらう簡単な仕事です。

アンケートモニターは国家公務員法で制限されている「副業」にはあたらないと考えられます。そもそも営利目的の業務ではないうえ、アンケートに答えてもらえる「謝礼」も継続的な雇用関係から得られる報酬ではないため、特に問題視されません。

ただし、本業に支障の範囲内での活動に限られます。公務中にアンケートモニター業務を行うのは問題です。また、一件一件は微々たる報酬であっても、トータルで年間20万円を超えると確定申告が必要となります。

公務員が行う家業手伝い(無報酬)

実家が農業や飲食店などの商売をやっていて、土日や休日、繁忙期に手伝いをするケースです。明確な規定がある自治体は少ないですが、常識的な範囲内であれば副業・兼業にはあたらず、基本的に問題ないと考えられるでしょう。

ただし、公務に支障がない範囲内であることが前提となりますので、可能なかぎり任命権者の許可をとったほうが無難です。プライベートな活動に近いとはいえ、公務員法に規定されている義務は適用されます。

また、副業として容認されるケースでは基本的に無報酬であることが条件です。金額の大小にかかわらず、家業手伝いであっても報酬を受け取っていた場合、副業・兼業にあたると判断される可能性がありますので注意してください。

公務員が行う暗号資産(仮想通貨)

公務員の代表的な副業が「投資活動」です。投資活動は不動産投資であれ、暗号資産、株式投資であれ、基本的にOKです。投資活動は労働の対価として報酬を得る営利目的ではなく、あくまでも保有している資産を運用しているだけなので「報酬を得る業務」に該当しない、とされています。もちろん、副業ではないので任命権者の許可も不要です。

しかし、投資活動が本格化すると収益がどんどん大きくなるはずです。投資での年間所得が20万円以上になると、本業とは別に確定申告を行わなければなりません。もし確定申告をしないまま放っておくと、税務無申告とみなされ罰則が発生します。公務員としての信用失墜にもつながり、所属先から重い処分を受けるかもしれません。

また、常にチャートをチェックする必要のある投資は、公務との両立が難しいため困難といえます。暗号資産の投資では突然相場が変動する場合がありますが、業務中に投資活動を行うのは避けたほうが賢明です。

公務員が行うメルカリなどのフリマアプリ

フリマアプリなどを利用した「不用品の売買」も副業にあたりません。フリマアプリとは不特定多数の利用者同士で不要になったものを売買するアプリのこと。使わなくなった服や家電などの売却で、日常的に利用する機会は多いです。

日常生活の延長上にある不用品の売却は基本的に営利目的ではないため、金額の大小にかかわらず処分を受けることはないでしょう。法律上禁止されている副業にも該当しませんので、任命権者の許可も不要です。

しかし、明らかに「せどり」や「転売」目的の売買となると話は別です。物販ビジネスとみなされるような取引が発覚すると、懲戒処分の対象となります。特に継続的な売却をする意思が認められた場合は、副業禁止規定に抵触するとみなされる可能性が高いです。

小規模農業

郊外に小さな畑を借りたり、趣味で園芸をはじめたりする方も増えています。たまに余った作物などを販売することもあるでしょうが、営利目的でない趣味の範囲内での売り上げであれば、特別な許可は不要です。

ただし、農業の規模が大きくなると、任命権者の許可が必要になります。一般的には「販売農家」に区分される「耕作面積が30a以上、または農産物の年間販売額が50万円以上」が、許可が必要とされる基準です。農業については各自治体で細かく基準が異なるケースが多いので、所属する自治体に問い合わせたうえで必要な許可などを申請しましょう。

公務員が行う地域貢献などの公益活動

地域貢献を主とするものなど、公益性の高い副業に関しては、公務員であっても認められる可能性があります。昨今では実際に、公益性の高い副業を積極的に認める自治体も出てきている状況です。

総務省の資料によると、公益性の高い「社会貢献活動」に該当するのは次のような活動です。

・伝統行事や地域イベント振興などに関する活動
・地域ブランド、地場産品のプロモーション活動
・地域の防災、防犯に関する活動
・スポーツ、文化芸術活動の指導や支援に関する活動 など

出典元:総務省「地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について」

副業として認められるかどうかの重要なラインが「営利目的でないかどうか」という点。例えば、社会貢献活動の一つに数えられている「地域イベント振興」や「地場産品のプロモーション活動」であっても、イベントによる収入や地場産品の売上を受け取る場合は、営利目的と判断されるかもしれません。

収入を得るためではなく、地域や住民に貢献するため行う副業であれば、公務員でも認められる可能性は十分にあるでしょう。

公務員が行う株式投資

2024年1月から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートするなど、「貯蓄から投資へ」という社会的な流れが強くなっています。株式投資はあくまでも資産運用の一種。公務員にも当然投資を行う権利はあるため、営利目的の副業には該当しません。副業ではないので、実施にあたって自治体の任命権者からの許可を受ける必要もなく、自由にスタートできます。

個別銘柄投資のほかにも、FX取引、暗号資産取引、投資信託などさまざまな投資方法がありますが、なかでも公務員に広く選ばれているのが投資信託です。投資信託は銘柄選びから運用までプロに任せられるため「職務専念の義務」に抵触しにくいと考えられ、公務員でも取り組みやすいでしょう。

公務員という立場上、民間企業の未公開情報に触れる機会があるかもしれません。ただし、その情報を利用して株式投資を行うことはインサイダー取引に該当する可能性があり、「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」の2点に抵触するおそれがあります。

株式投資や投資信託も、3つの原則に抵触しない範囲で行うことが重要です。

公務員が行う不動産投資

不動産投資も条件はあるものの、公務員の副業として認められているものの一つです。

不動産投資とは、賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益物件を購入し、物件を第三者に賃貸することで家賃収入を得る投資ビジネスです。一般的な区分マンション投資のほか、一棟アパート・マンション投資、戸建て賃貸住宅投資、駐車場経営などさまざまな投資手法があります。

不動産投資や駐車場経営については、人事院の規定によって、営利目的の副業と見なされるかどうかのラインが決められています。賃貸経営の規模や不動産投資から得られる家賃収入が規定ラインを超える場合には、営利目的の副業として見なされ、自治体の任命権者による許可を受けなければなりません。

加えて、不動産投資で副業扱いにならないのは家賃収入(インカムゲイン)のみです。物件の売却益(キャピタルゲイン)を狙っての投資は完全なる営利目的と見なされ、禁止項目に該当するため注意しましょう。

不動産投資が副業扱いにならないための条件に関しては、あとの章で詳しく解説します。

公務員が不動産投資に向いているのはなぜ?

公務員は原則として副業が禁止されていますが、保有資産の運用とみなされる投資活動は比較的自由に始められます。その中でも公務員にとって「有利」とされるのが不動産投資です。なぜ公務員の副業として不動産投資が有利なのかについて、簡単に解説しましょう。

なお、不動産投資のメリットについては、次の記事も参考になります。あわせてご覧ください。

■参考記事

【初心者向け】不動産投資のメリット7選! リスクと対策を徹底解説

不動産運用は資産形成の王道! リスクを抑えメリットを活かす不動産投資

公務員は信用力が高く融資に有利

公務員が不動産投資に圧倒的に向いている理由の1つが、「信用力」の高さです。

不動産投資を始める際に自己資金だけで物件を購入するケースはまれで、通常は金融機関からの借り入れをして投資物件の購入費用を調達します。不動産は高額の買い物なので、よい物件を手に入れるためには資金が必要です。金融機関から好条件での融資がおりれば、目的達成をするための選択肢が広がります。

不動産投資のための融資は住宅ローンと同様に、借り入れする本人の返済能力を含めた「信用力」次第で融資条件が変わります。この点で、公務員は同レベルの収入の給与所得者と比べて断然有利です。

公務員は収入が安定しているうえにリストラや会社の倒産などのリスクもないため、金融機関から返済能力を高く評価される傾向にあります。低金利のローンでも審査に通りやすいので、かなりの好条件から不動産投資をスタートすることも可能です。

副収入が得られる

公務員が不動産投資を行うことで、本業での収入に加えて、家賃収入という副収入が得られる点は大きなメリットです。公務員による営利目的の副業は原則禁止されていますが、不動産投資はこのあと紹介する条件の範囲内であれば副業にカウントされず、そこから家賃収入を得ることも特に制限されていません。

不動産投資は一度軌道に乗ると、長期安定的に家賃収入を得られるのがうれしいポイントです。個別株投資、FX投資、仮想通貨投資のように値動きの激しい投資方法と異なり、不動産投資は短期的な収益が見込めない反面、極端に収益が落ちるようなことも少ないのが特長。

空室リスクや家賃滞納リスクをはじめとした特有のリスクを適切にコントロールできれば、一定の副収入を長期にわたって受け取ることが可能です。本業の収入が安定している公務員が、プラスアルファで家賃収入を得られれば、将来に向けた資産形成にも有利になるでしょう。

本業に影響しない

規定で認められている副業であっても、3つの原則を破らない範囲内であることが強く求められます。特に、手間がかかる副業は「職務専念の義務」に抵触する可能性が高く、公務員が実践するのは難しいでしょう。

不動産投資の場合、信頼できる賃貸管理会社をパートナーに迎えれば、大きな手間をかけずに実施可能。本業に影響せず賃貸経営を継続できる点も、公務員にとっての大きなメリットです。

本来、賃貸経営には入居者募集、家賃回収、クレームへの対応、日常的なメンテナンスなど数多くの管理業務が発生します。オーナー様が自主管理しようとすると多大な手間がかかるのですが、一連の運営管理業務はプロの賃貸管理会社に委託可能です。

賃貸管理会社と信頼関係を構築することで賃貸経営がシステム化され、ある程度放置していても定期的に自動で家賃収入が入ってくる状態を作れるでしょう。

公務員が不動産投資をする際の注意点

先述のとおり、公務員は金融機関から融資を受けやすい圧倒的な「与信力」を持つため、不動産投資に向いています。しかし、法律で副業を禁止されているため、どの程度の規模から副業禁止規定に抵触するのか気になるところです。ここからは公務員が不動産投資を始めるうえでの注意点について解説しましょう。

不動産投資の規模が「5棟10室以下」であること

公務員の行う不動産投資については、「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)について」が副業と認めるかどうかの線引きに関する根拠となっています。

事業の経営が「自営」(副業扱い)にあたるもの

イ :独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
ロ :独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
ハ :土地の賃貸については、賃貸契約の件数が10件以上であること

参考元:人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について

この規則によると、一戸建て住宅などの独立家屋で5棟未満、独立家屋以外の建物、つまりアパートやマンションなどの区画された部屋10室未満までが、副業禁止規定に違反しない資産運用の範ちゅうとの扱いになります。

同規則では賃貸の目的についても触れられており、賃貸目的が娯楽施設や旅館・ホテルの運営の場合は「自営」に該当します。つまり、住居目的での一般的な賃貸であれば副業禁止に直接引っかかりません。

まとめると、住居用目的の不動産賃貸で「戸建て」5棟未満、「マンション・アパートの一室」10室未満であれば、特別な許可なく、副業としての不動産投資が可能です。

不動産・駐車場の賃貸料収入の額が年500万円未満であること

副業として認められる不動産投資の範囲は、独立家屋5棟、独立家屋以外10室未満のほかに、「年間の家賃収入が500万円未満であること」も条件となっています。

事業の経営が「自営」(副業禁止に抵触する業務)にあたるもの

(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行っている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合

人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について 第1項関係4-2(3) 

注意したいのは、不動産投資の規模が5棟10室未満の条件を保っていたとしても、収益の総額が年間500万円以上になると「自営」に該当してしまう点です。例えばマンション4室を所有し、月額の家賃設定が12万円の場合、年間の賃料収入は576万円なので「自営」としての扱いとなります。

所有する不動産からの賃料収入がどれくらいになるかは、「賃貸予定の不動産の賃料収入額(月額)×室数×12ヶ月分」で計算しておきましょう。実際に賃料収入が500万円を超えてしまい、減給や懲戒処分を受けたケースも発生していますので、家賃設定を含めた経営プランには細心の注意を払ってください。

管理業務は賃貸管理会社へ委託する

公務員の副業では「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念の義務」の3つの原則を守る必要があります。この点は不動産投資に関しても同じです。特に3つのうち問題となりやすいのは「職務専念の義務」でしょう。

不動産投資では保有する物件を維持・管理する業務が必須となりますが、その業務範囲はかなり膨大です。入居者様の募集や家賃の集金、不動産の維持管理など、不動産投資に関わるすべての業務が関係します。このような管理業務を自力でこなそうとすると、本業に影響が出てしまい「職務専念の義務」に抵触するかもしれません。

そこで公務員の不動産投資では、管理業務全般をまかせられる「賃貸管理会社」の存在が不可欠です。不動産投資に関する業務の負担軽減だけでなく、副業禁止の規定違反を避ける意味でも、信頼できるパートナーである賃貸管理会社を見つける重要性は大きいといえます。

地方公務員についても同様の規定を守って不動産投資を行う必要があります。ただし、地方自治体は各自治体によっては異なる規定が設けられている場合もあるので、不動産投資を始める際に必ず細かな条件を確認してください。

公務員の副業が職場の人にバレてしまう理由

公務員が、人事院の規定の範囲を超えた副業を無断で行うことは禁止されています。隠れて規定に反した副業を行っていた場合、万が一職場の人にバレてしまえば、減給や停職などの懲戒処分が予想されます。副業はどのような理由でバレてしまうことが多いのか、具体例を紹介します。

不動産投資による家賃収入と副業収入に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

■参考記事

家賃収入は副業収入なの? 節税しながら賃料を得る不動産投資とは

勤務先に住民税の通知が来る

公務員に限らず、副業が勤務先にバレる要因になりやすいのが住民税の通知です。住民税は前年の所得額によって決定されるため、職場に通知された住民税額が本業所得に対して不自然に高いと、本業以外に収入があることを疑われてしまうでしょう。

公務員は源泉徴収を受けており、住民税は給料から天引きされることが一般的です。これを住民税の「特別徴収」といいます。所属する組織は各職員の住民税額を把握しており、不自然に税額が高くなっていれば、経理担当が気づく仕組みなのです。

住民税の通知によって副業がバレるのを防ぐには、確定申告時に住民税の納付方法を「普通徴収」に指定しておきましょう。普通徴収とは、自治体が発行する納付通知書により自分で住民税を納める方法のこと。確定申告書における住民税の納付方法選択欄で「普通徴収」にチェックを入れておけば、副業収入による住民税額が職場に通知されなくなります。

ただし、給与所得者の普通徴収は例外的な扱いであるため、自治体の担当者によるチェック漏れが起こる可能性もあります。普通徴収を選んだからといって、絶対にバレるのを防げるわけではないので注意が必要です。

副業を同僚・上司などに話した

副業の内容を同僚や上司などに話してしまった結果、職場に副業がバレるケースもあります。「まさか」と思うかもしれませんが、実は意外と多いパターンです。

不動産投資が軌道に乗ってくると、一定の家賃収入が毎月入ってくるようになります。収入が増えたことがうれしくなって、身近な同僚や上司などにうっかり自慢してしまう人も多いのです。

「信頼している人だからいいだろう」と思って話してしまうのかもしれませんが、相手が実際にどう思っているかはわかりません。副業収入を得ていることをねたまれ、組織内で告げ口される可能性もあります。

直接話した同僚や上司が秘密を守ってくれたとしても、まわりで偶然聞いていたほかの同僚が告げ口したり、副業に関するうわさを広げてしまったりするリスクもあります。副業がバレると困る事情があるなら、どれだけ同僚や上司を信頼していたとしても、同じ組織内で副業について話すのはやめたほうが賢明です。

SNSに投稿した

最近多いのが、副業に関するSNSの投稿をきっかけとして、職場に副業がバレてしまうパターンです。

匿名で投稿しているSNSであっても、過去の投稿内容や生活パターンなどから、知り合いに「身バレ」する可能性は十分にあります。職場の同僚に気づかれてしまった場合、直接話すのと同様、告げ口されたり噂が広まったりするリスクがあるでしょう。職場にバレると不都合のある副業に関することは、うかつにSNSへ投稿しないことも大切です。

なお、どれだけ注意していても、何がきっかけで職場に副業がバレるか分かりません。職場に内緒で行っている副業を100%隠し通すのは、不可能だと思っておいたほうがよいでしょう。

公務員は立場的に無断の副業に対するペナルティが厳しいため、リスクを避けたいのであれば副業は認められる範囲内で止めるようにし、規定を超える可能性があるなら、事前に上司へ相談しておくことをおすすめします。

公務員が不動産投資を始めるときのポイント

公務員が不動産投資を行う際の強み、副業禁止規定に抵触しないための条件などをご紹介したところで、実際の不動産投資でどのような点を意識するべきか、3つのポイントを挙げて解説します。いずれも不動産投資での成功に欠かせない重要なポイントになります。

不動産投資のリスクを理解しておく

不動産投資はリターンの大きい優れた投資ビジネスではあるものの、さまざまなリスクがつきまとうのも事実です。リスクを大まかに分けると「運用面」でのリスク、「経営面」でのリスク、そして「外的要因」からのリスクに分けられます。

まず「運用面」のリスクには、家賃収入に直結する「空室リスク」「家賃滞納リスク」「修繕リスク」があります。特に「空室リスク」は収益に直結するため、不動産投資では最大のリスクといっても過言ではありません。

立地周辺の需要を理解し、適切な集客を行うこと。入居者様の満足を高めつつ、必要に応じて大規模修繕工事や各種設備対応を、収益面を考慮して対応する投資を計画的に行う対策を行うこと。一見あたり前の対応を適切に実行することで、賃料の大幅な下落を抑制し、長く最適な賃料収入を得られます。

「経営面」でのリスクには、経営上の税務に関する問題、収益悪化リスクによる債務超過、売却リスクなどが挙げられます。専門的知識が必要となる局面が多いため、経営と税務に関する専門家の力が欠かせない分野です。

「外的要因」からのリスクも大きな課題です。災害の多い日本では地震や水害、火災への備えは不可欠でしょう。それ以外にも、不動産投資では経済状況の影響を受けて不動産価値が下落する、金利が上昇する、エリア需要が変わる立地リスクといった問題が起こります。

天災リスクに対しては、まず災害の少ない立地にある物件を選ぶことが大切です。コスパに優れた火災保険への加入を検討することも有効な対策となるでしょう。金利上昇や不動産価値の低下などの経済的リスクについては、立地の選定法や金利についての知識をしっかり身につけ、リスクがあるという前提に立った準備を積み重ねる必要があります。

副業の許可申請の必要性を確認する

公務員の不動産投資は、戸建て5棟、マンション・アパートの部屋10室未満で、年間の家賃収入500万円未満であれば、任命権者の許可なく経営することができます。しかし、この範囲を超える規模での運用を無許可で行うと、懲戒処分の対象になる恐れがあります。

実際に、2019年に仙台市で年600万円の賃料収入が発覚した仙台市職員が減給処分に、2013年には妻の経営する不動産投資会社の役員となって約7,000万円の年収を得ていた宝塚市の職員が停職6ヶ月と降格処分となっています。

副業で収益を上げるのはよいことですが、それが原因で本業を失うことになれば本末転倒です。自分が行う不動産賃貸業務の規模が許可を受ける条件に該当しているかどうか、細かな禁止規定に抵触していないかどうか、あらためてよく確認しましょう。

許可申請が必要であれば申請書の提出前に、所属部署の上司に一言相談しておくこともおすすめです。無用な誤解を生まないだけでなく、手続きについての情報を共有してもらえる可能性があります。

信頼できる賃貸管理会社を見つける

公務員が副業として、新たに不動産投資を始めるのであれば、信頼できる専門家に相談したいところです。不動産投資では数多くの専門知識が必要ですし、不動産の世界ではネットや書籍では分からない貴重な情報が膨大にあります。

公務員が与信審査に強いことも周知の事実のため、知識不足の状態だと高額でコスパの良い物件、悪い物件を判断できない可能性が高くなります。信頼できる専門家と出会えるかどうかは、不動産投資経営での成功のカギとなります。

優良物件を手に入れるほかに、公務員の不動産投資では、信頼できる賃貸管理会社を見つけることがきわめて重要です。「職務専念の義務」がある以上、管理業務全般を賃貸管理会社に委託せざるをえません。そのため、賃貸管理会社が行う管理業務の質が直接的に経営状況を左右する、と言っても過言ではないでしょう。

運営に関する設備・工事対応以外にも、売買や出口戦略・資産活用や税金の知見も保有するトータルサポートが可能なパートナーであれば、賃貸経営のリスクに備えることができます。

優れた賃貸管理会社を選ぶためには、まず候補となる会社に問い合わせたうえで、直接担当者と会って相談することをおすすめします。あなたの質問に対して真摯に分かりやすく応えてくれるか、不動産投資に関するメリットばかりでなくリスクについても率直に説明してくれるかどうかに注目し、会社の姿勢や雰囲気を慎重に判断しましょう。

家族名義で副業を行う際の注意点

公務員が職場にバレず副業を行う方法として、家族名義で事業に取り組むというやり方があります。本人名義ではないので公務員でも認められる可能性が高いものの、実践する際には気をつけるべき注意点も存在します。順番に内容を見ていきましょう。

家族名義なら副業が認められる可能性が高い

たとえ本人が公務員であっても、妻や夫、親などの家族名義であれば、通常どおり事業を行うことが可能です。公務員の家族であろうとも公務員本人とは別人格であり、それぞれに職業選択の自由があります。家族には公務員の副業禁止規定が適用されることもないため、家族が副業を行っても何ら問題はありません。

ただし、副業の名義人となる家族も公務員だった場合、当然副業は認められません。また、家族の勤務先で副業が認められているかどうかも重要なポイントです。企業や組織によっては公務員と同じように、就業規則で従業員の副業を禁止しているケースもあります。職場の規則に反して副業を行うと、解雇などの処罰の対象になる可能性があるため、家族の勤務先のルールも事前に確認しておきましょう。

単なる「名義貸し」はNG

家族名義であれば副業は認められる可能性が高いと紹介しましたが、ここで重要なのが「名義人となる家族が実際に業務を行うこと」です。単なる「名義貸し」は、公務員の副業禁止規定に反します。仮に名義貸しの事実がバレなかったとしても、後から事実が発覚した場合、ペナルティが予想されます。

さらに「名義貸し」は所得税法に違反する危険もあります。所得税には「実質所得者課税の原則」があり、実際に収入を稼いだ人が税金を納めるべきとされているからです。実質的に事業を行っているのが公務員であるにも関わらず、税金を納めるのはその家族となると、税法上の原則に反することとなり、より厳しい処罰が下されるかもしれません。

税法や副業規定に反さないようにするには、あくまでも事業主体は家族であり、家族が行う事業を無償で手伝っているという形にする必要があります。事業の重要な意思決定や指示も家族が主体であり、自分は決定や指示にしたがう立場であることも明確にします。

副業として疑われるのを避けるには、事務所の賃貸借契約や事業用車に関する契約、事業用の銀行口座など、副業に関する名義もすべて家族名義にしておくことも大切です。

配偶者控除を利用する場合は103万円以下に

副業を配偶者名義にして、配偶者控除の利用を検討するケースもあるでしょう。この場合、副業による年間収入を103万円以下にしておく必要があります。副業を含めた配偶者の年間収入が103万円を超えてしまうと、配偶者控除の対象から外れるため、副業分の所得に対して別途所得税が課せられてしまうからです。

さらに、副業込みの配偶者の年間収入が130万円を超過すると、配偶者が公務員本人の被保険者から外れることになります。副業を行う配偶者自身で別に健康保険へ加入する必要が生じ、ますます支出が増えてしまうでしょう。

収入額が月数万円程度の副業であれば特に問題ありません。しかし、年間収入が100万円を超えるようなまとまった収入が見込まれる副業の場合、課税額がどれくらいになるかもシミュレーションしたうえで、最適な手法を検討するのが得策です。

3つの原則に違反しないことが必要

家族名義の副業だとしても、公務員本人が「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念義務」の3つの原則に反してしまうと、副業規定に反することになります。

例えば、家族が実質的な事業主体となっていて、公務員本人は無償でサポートしているだけだったとしても、家業の手伝いが原因で遅刻が目立ったり、本業に十分集中できなかったりするようでは「職務専念義務」に反します。

自らに与えられた職務を全うして、社会に奉仕することが公務員に課せられた一番の使命です。本業に支障のない空いた時間を使って、家族名義の事業を無償でサポートする場合のみ、家族名義の副業が認められると考えておきましょう。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。