【大家さん必見】補助金活用する賃貸物件のリフォーム! 改善事例も紹介
2023.12.05賃貸物件を所有している大家さんにとって、リフォームにかかる費用は最小限に抑えたいものです。リフォームがいかに大事なことと認識していても、実施しようとすると資金調達に苦労することも少なくなりません。どこまでのリフォームを実施すべきなのか、一般的な費用相場や対応内容が分からない大家さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、大家さんが資金調達することが困難な場合にも活用できる、補助金を使ったリフォームについて解説します。あわせて賃貸経営における課題をリフォームによって解決した改善事例も紹介していくので、空室やリフォームでお悩みの大家さんは参考にしてください。
▼この記事の内容
●大家さんが賃貸物件をリフォームする目的は、「退去後の原状回復」「建物の維持管理」「空室対策」の3つ
●大家さんが賃貸物件をリフォームするメリットは①空室対策になる②資産価値を高められる③時代のニーズに合う④さまざまなリスクに対応できる
●賃貸物件のリフォームを安く抑えるには、補助金制度を活用したり、リフォーム可の物件として貸し出したり、『割賦工事』の利用などが挙げられる
●賃貸物件をリフォームする際は、入居者ニーズを意識して費用の回収期間も考慮し、リフォームの必要性について考えよう
目次
大家さんが賃貸物件をリフォームする目的
大家さんが賃貸物件をリフォームする目的は、主に以下の3つが考えられます。
- 退去後の原状回復
- 建物の維持管理
- 空室対策
原状回復や建物の維持管理を目的としたリフォームは最も頻度が高く、物件価値を維持して入居者様を集めやすくする役割があります。傷んだ内装や設備をそのままにしておくと収益悪化につながりかねないため、適切なタイミングでリフォームを依頼することが大切です。
次に多く見られるのが、空室対策を目的としたリフォームです。アパートに空室が続いている場合、間取りや設備などが入居者様のニーズを捉えていない可能性があります。競合物件などを調査し、地域の特性に合った部屋へアップデートすることで、空室率が改善できるケースも珍しくありません。
リフォーム以外にも、アパート経営を軌道に乗せる方法はあります。成功のポイントを知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
■参考記事
【アパート経営入門】メリット・リスク・成功の秘訣をわかりやすく解説!
リフォームとリノベーションの違い
リフォームとは、老朽化した箇所を新築当時の姿に戻す工事です。例えば退去後の原状回復や老朽化したユニットバスの交換、クロスの張り替えなどが挙げられます。リフォームはあくまで資産価値の維持を目的としており、基本的には用途やデザインなどを大きく変えることはありません。
一方、リノベーションとは建物に新しく付加価値を加える工事です。例えば、間取りの変更や設備のグレードアップ、和室の洋室変更などが挙げられます。リノベーションは資産価値の向上を目的としており、構造以外すべてに手を加えるような大掛かりな施工を行うことも珍しくありません。
大家さんが賃貸物件のリフォームに取り組むことのメリット
賃貸経営において物件のリフォーム(リノベーション)は重要とされています。賃貸物件でリフォームに取り組むメリットとは何か見ていきましょう。
賃貸経営におけるリフォームの重要性は以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて収益物件の具体的なリフォーム事例を紹介しています。ご興味のある方はご覧ください。
【関連記事】
不動産投資成功の鍵はリフォームにある! 戦略的なリフォーム投資で資産価値向上を
アパート経営で設備投資やリフォームする理由とは?ミニマム投資の秘訣
【関連事例】
満室経営にする賃貸経営リフォームとは? 4つのリフォーム事例を紹介
賃貸物件のリフォームは空室対策になる
賃貸経営における最大のリスクは空室リスクといえます。空室が増えると家賃収入が減ってしまい、賃貸経営の悪化に直結してしまうためです。リフォームを行うと物件の魅力を維持することができ、一定の築年数が経過した物件でも空室リスクをヘッジできる可能性があるでしょう。
【リロの不動産】が重要視する『4つの空室対策』でも「設備・工事対応」を空室対策要素の1つとして挙げており、リフォームやリノベーションが空室対策として有効なことを示しています。
『4つの空室対策』と具体的なアイデアはこちらの記事で詳しく解説しています。リフォームを実施した各種改善事例とあわせてご覧ください。
【関連記事】
空室の原因を改善する「4つの空室対策」と「15のアイデア」
【関連事例】
リフォーム改善事例・お客様の声
空室リスクを低減するには、ご入居されるお客様に求められる部屋を提供し続けることが重要です。お客様に求められる部屋とは、お客様のニーズに対して適切に応える部屋のこと。
近隣の競合物件と比較検討をされた際に、最低限の入居者ニーズに応えられる状態を維持することで競争力を生み、長く適正賃料を得ることができるため、リフォームによる空室対策は、最も即効性があり、効率的ともいえます。
すべてのお客様のニーズに応えるのは難しいため、一定の範囲でターゲットを決めたうえで該当するお客様のニーズに優先して応えるなど、独自の戦略でほかの物件と差別化することが空室対策につながります。
収益物件の資産価値を高めることができる
リフォームをさらに進化させた「賃貸経営リノベーション」を実施すれば、収益物件の資産価値を、より高めることも可能です。
一般的な「リフォーム」では、故障や老朽化などで不具合が発生した内外装や設備を修復します。機能面でマイナスの状態にある建物を、新築時に近い状態(プラスマイナスゼロ)に回復させる修繕がリフォームです。
対する「リノベーション」は、建物が従来持つ機能を回復するだけでなく新たな付加価値を生み出す修繕を指します。例えば、間取り変更によって現代的な広さの間取りで利用しやすいキッチンに変更する、リモートワークに対応できる新たなワークスペースを設けるなど、プラスアルファの価値を実現して新しい入居者層の獲得や賃料改善が代表的な目的といえるでしょう。
賃貸経営リノベーションでは、賃貸経営を無理なく、継続して頂けるように、入居者様のニーズを反映した価値創造に重きを置いています。新たな付加価値が上乗せされた物件は競争力が強化され、空室率の改善や家賃下落の低減、ひいては賃料アップなどの効果が期待できます。
関連記事や改善事例として、賃貸経営リノベーションのポイント、効果的な方法について解説しています。リノベーションに興味のある大家さんはぜひご覧ください。
【関連記事】
古いアパートにリノベーションは必要?効果的な賃貸経営とは
【関連事例】
リノベーション改善事例・お客様の声
ただ、リノベーションはリフォームに比べて費用が高くなる傾向にあります。一定の投資を行って物件価値や収益性の向上を図る方法であるため、より経営的な視点で戦略的に決定することを心がけましょう。
時代のニーズに合わせることができる
ライフスタイルは時代とともに常時変化しており、住まいに求められる設備や間取り、デザインも時を経て変わっていきます。新築時は最先端の設備・間取り・デザインだったとしても、築年数が経過してニーズが変化すれば「時代遅れ」の物件になってしまう地域もあるでしょう。リフォームは、変化する時代のニーズに合った物件へアップデートする方法としても有効です。
最近の新築物件で当たり前のように設置される設備としては、エントランスのオートロック、入居者様向けの宅配ボックス、無料インターネットなどが挙げられます。これらが備わっていることを前提とする入居者様も多く、お部屋探しの検討候補にも挙がらない可能性も否定できません。
適正なタイミングで、計画的にリフォームを実施することで時代のニーズに合わせられ、物件としての競争力を維持できるでしょう。また、入居中のお客様の満足度を向上させることで、長期入居者様の獲得に繋がり、賃貸経営の安定化にも寄与できます。
逆にリフォーム対応を放置し続けると…
賃貸経営におけるリフォームのメリットを3つ紹介しましたが、反対にしかるべきリフォームを行わないと賃貸経営が立ち行かなくなるリスクに対応できなくなります。
建物や設備の老朽化、内外装の劣化などがみられたら、本来はリフォームを検討すべきタイミングです。このタイミングでリフォームを放置し続けると、外観の劣化や設備の古さが目立つようになって近隣の競合物件と比較した際の競争力が低下します。家賃下落、入居率低下により、家賃収入は減少するでしょう。
そうなると大規模修繕で必要になる修繕費用の積み立ても難しくなり、大規模修繕が必要な時期になっても十分な資金を用意できず、いっそう老朽化が進んでしまうリスクが増大します。老朽化に対応できないのでますます競争力が下がり、家賃収入の下落に歯止めがかからないという「負のスパイラル」に陥りかねません。
適切なタイミングでリフォームを実施することは、賃貸経営の安定化に欠かせない要素なのです。
大家さんが賃貸リフォームにかける費用相場
ワンルームの場合、賃貸リフォームでの費用相場とタイミングの目安は以下のとおりです。
リフォーム項目 | 費用相場 | リフォーム時期の目安 |
フローリング・畳の張り替え | 5万~20万円程度 | 10〜20年程度 |
クロスの張り替え | 3万~5万円程度 | 5〜10年程度 |
キッチンの交換 | 1万~50万円程度 | 10〜20年程度 |
トイレの交換 | 1万~20万円程度 | 10〜15年程度 |
浴室設備の交換 | 15万~50万円程度 | 15~20年程度 |
給湯器の交換 | 10万~20万円程度 | 10〜15年程度 |
比較的安価で施工できるのは、フローリングや畳、クロスの張り替えリフォームです。部屋の広さや素材、グレードなどによって費用が変わるものの、フローリング・畳の張り替えは5万~20万円ほど、クロスの張り替えは3万~5万円ほどが目安となります。
キッチンやトイレ、浴室、給湯器などの水回りの設備交換は、ある程度まとまった費用が必要です。部分的な修繕や部品交換などであれば安くすみますが、一式リフォームとなると数十万〜100万円ほどの費用がかかるケースも見受けられます。
「リフォーム後にどれくらい賃料をアップできるか」「空室率の改善は見込めるか」などを考慮し、リフォームの範囲や設備のグレードなどを慎重に決めることが大切です。
賃貸物件のリフォーム費用を安く抑える方法
上述のとおり、リフォームは施工の種類によって費用が異なり、1箇所あたり数十万円ほどの費用がかかるものもあります。気になる箇所を1つひとつリフォームするとなると、予算オーバーになってしまうかもしれません。リフォーム費用を安く抑えるには、以下の方法が考えられます。
- 補助金制度を活用する
- 大家さんがDIYする
- リフォーム可の物件として貸し出す
- 家賃から工事費用を差し引く『割賦工事』を利用する
それぞれ詳しく解説していきます。
補助金制度を活用する
国や自治体が実施する補助金制度を活用することで、大家さんの支出を減らしつつリフォームを実施できます。補助金制度を活用するメリットは、物件が綺麗になるだけでなく、住宅の機能性を向上できる可能性があることです。
省エネ設備の導入や断熱性の向上など、入居者様の快適な暮らしをサポートしたり、光熱費を削減したりする補助金制度も充実しています。中には補助金制度を併用できるものもあるので、内容や条件をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。具体的な制度については、次の段落から解説していきます。
大家さんがDIYする
どうにかリフォーム費用を抑えたい場合は、大家さんが自分でDIYする方法もあります。資材を安く購入できれば、人件費や依頼費を抑えつつ、イメージどおりのリフォームができる可能性もあるでしょう。
しかし不具合が発生した場合、再度補修をするとトータル費用が高額になるケースがあります。また、大家さんが手直しをした部分については、保証の対象外になる可能性も少なくありません。扱いが難しい塗料などもあるため、リフォームは原則プロに任せることをおすすめします。
リフォーム可の物件として貸し出す
入居者様が自由に手を加えられる「リフォーム可の物件」としてアパートを貸し出すのも1つの方法です。近年、DIY可の賃貸物件が増えつつあり、「個性的でこだわりのある部屋に住みたい」「理想の室内空間を実現したい」という方に人気を集めています。大家さんの維持管理費用を抑えられるだけでなく、競合物件との差別化や入居者様の満足度向上などにも効果的です。
ただし、大家さんがDIYする手法と同様に不具合が発生した場合の対応や、売却時に想定価格よりも低くなる場合があります。あらかじめ、当該リスクも考慮したうえで検討しましょう。
家賃から工事費用を差し引く『割賦工事』を利用する
「入居率を上げるためにリフォームしたいが、多額の出費は厳しい」という大家さんにおすすめなのが『割賦工事』です。『割賦工事』とは現在の家賃収入から工事費用を差し引く方法で、手持ち費用0円でリフォームを検討できます。
割賦支払いとなるため一時的に家賃収入は下がるものの、低リスクで空室対策や資産価値向上を目指せるでしょう。大家さんは資金面の援助や賃貸経営のサポートを受けながら、無理のない支払い計画を立てられます。
『割賦工事』でアパートの空室改善を行った事例として、以下の記事もあわせてご覧ください。
■参考事例
オーナー様の負担を軽くした割賦払いとミニマムリフォームで空室改善
大家さんが使える賃貸リフォームの補助金制度
賃貸経営におけるリフォームの重要性は理解していても、資金調達で苦労するケースは少なくありません。先ほど紹介したように、補助金制度を活用することで賃貸物件のリフォーム費用を抑えられる可能性があります。
以下では賃貸リフォームで活用できる補助金を紹介します。活用の幅が広い「長期優良住宅化リフォーム推進事業」については詳しい内容にも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
賃貸住宅のリフォーム補助金4選
長期優良住宅化リフォーム推進事業
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、中古住宅の長寿命化・省エネ化による良質な住宅ストックの形成、子育て世代向けの改修支援などを目的とした補助金制度です。国土交通省により実施されており、共同住宅のリフォームも対象に含まれています。
補助対象となるのは住宅性能を向上させるリフォーム工事費などであり、特定の性能項目を規定の基準まで向上させる工事に対して補助金が支給されます。共同住宅において、特定の性能項目に該当するのは「構造躯体等の劣化対策」「耐震性」「省エネルギー対策」「維持管理・更新の容易性」「高齢者等対策」「可変性」の6点です。
また、バリアフリー改修やテレワーク環境整備改修などの性能向上工事、三世代同居対応改修工事や子育て世帯向け改修工事にかかる費用も補助対象となります。
補助対象となるリフォーム工事費等の1/3相当額が補助されますが、1戸当たり100万円(長期優良住宅認定を取得している場合は200万円)が上限です。補助を受けるには、このあと紹介する要件を満たしている必要があります。
出典:国立研究開発法人建築研究所 長期優良住宅化リフォーム推進事業【総合トップページ】
既存住宅における断熱リフォーム支援事業
環境省の補助事業である「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」は、中古住宅におけるエネルギー消費の効率性向上と低炭素化を図ることを目的とした補助金制度です。中古住宅において高性能建材を使用した断熱リフォームを実施した場合、一定の補助金が支給されます。当事業は、戸建て住宅・集合住宅ともに賃貸住宅も補助対象に含まれます。
事業は大きく「トータル断熱」「居間だけ断熱」の2つに分かれており、トータル断熱は、一定の省エネ効果が見込まれる高性能建材(断熱材、窓、ガラスなど)を使用した住戸全体の改修に対して支援。居間だけ断熱は、一定の省エネ効果が見込まれる高性能建材(窓など)を使ったリビングの断熱リフォームに対して補助金が支給されます。
補助率は対象経費の1/3以内となっており、上限額は戸建て住宅1戸当たり120万円、集合住宅1住戸当たり15万円(玄関ドア改修も実施する場合は20万円)です。
出典:公益財団法人北海道環境財団 既存住宅における断熱リフォーム支援事業
次世代省エネ建材の実証支援事業
経済産業省が実施する「次世代省エネ建材の実証支援事業」も、賃貸住宅を一棟所有する大家さんによる申請が認められている補助金制度です。
集合住宅で適用されるメニューは「内張り断熱(内断)」で、室内側から断熱材や断熱性のある建材などを使って施工する断熱リフォームに対して支援が行われます。当制度の適用を受けるには、「断熱パネル」「潜熱蓄熱建材」のうち事業で登録されている必須製品を用いる必要があります。
そのほか任意製品として、断熱材・窓・玄関ドア・調湿建材なども補助対象です。これらも補助対象に含めるには事業登録されている製品を用いなければなりません。
補助率は補助対象経費の1/2以内であり、上限額は戸建て1戸当たり200万円、集合住宅1戸当たり125万円に設定されています。当制度では補助下限額も設けられていて、補助額合計が戸建て・集合住宅とも1戸当たり20万円以上である必要があります。
出典:一般社団法人環境共創イニシアチブ 令和5年度 経済産業省による次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介
住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
国土交通省の補助事業で一般財団法人住宅保証支援機構が推進する「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」も、賃貸住宅の大家さんが利用できる補助金制度の一つです。
「住宅確保要配慮者」とは60歳以上の高齢者、障害者基本法で規定される障害者、子育て世帯、低額所得者などの住む場所に困窮している方々のことを指します。住宅セーフティネット法の規定により、上記の住宅確保要配慮者専用の住宅として10年以上継続して登録される物件が補助対象です。
補助を受けられる工事は、専用物件において行われるバリアフリー改修工事、耐震改修工事、間取り変更工事、子育て世帯対応改修工事、省エネ改修工事など。補助額は改修工事費用の1/3以内で、1戸当たり50万円(工事内容によって100万円〜200万円)が上限となっています。
子育て世帯や高齢者などのお客様をターゲットにした賃貸経営を行う大家さんは、活用を検討してもよいでしょう。
出典:一般財団法人住宅保証支援機構 令和5年度住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業 交付申請要領
長期優良住宅化リフォーム推進事業の詳細
賃貸物件のりフォームで利用可能な補助金制度でも、特に活用の幅が広いと考えられるのが「長期優良住宅化リフォーム推進事業」です。先述のように長寿命化・省エネ化を実現する性能向上リフォーム工事が補助対象となっています。この補助金の適用を受けるには要件を満たす必要があります。
以下では、長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助額や3つの要件について詳しく見ていきましょう。
出典:国立研究開発法人建築研究所 マンガでわかる長期優良住宅化リフォーム推進事業 共同住宅編
上限額と補助率
先ほど少し触れたとおり、長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助率は1/3 です。これは補助対象となるリフォーム工事費などの合計額のうち、1/3相当額が補助されるということ。ただし、補助額には上限額が設定されています。
上限額はリフォーム工事後に達成される住宅性能によって2段階の設定です。長期優良住宅としての認定は受けていないものの、一定の住宅性能向上を達成している場合(評価基準型)は1戸当たり100万円が上限。長期優良住宅の認定を受けた場合(認定長期優良住宅型)は1戸当たり200万円が上限です。加えて、1回の申請につき住宅全体で1億円という上限もあります。
インスペクション(現況調査)の実施
当事業による補助を受けるための3要件の1つ目が、インスペクション(現況調査)を実施することです。インスペクションとは、既存住宅状況調査技術者資格を持つ建築士(インスペクター)によって行われる建物診断を指します。インスペクションは目視や計測などで簡易的に行われ、建物の現況を客観的に把握するのが目的です。
中古の賃貸アパートでインスペクションを依頼する場合、基本の費用相場は6〜7万円ほど。規模の大きな物件や床下・屋根裏なども含めた詳細調査を行う場合、合計で10〜15万円程度かかるのが一般的です。
リフォーム後の物件が規定の性能基準を満たすこと
2つ目の要件は、リフォーム工事実施後の物件が規定の性能基準を満たすことです。そもそも補助対象となるのが「特定の性能項目を一定の性能基準まで向上させる工事」であり、工事によってしっかり達成されていることは当然に補助要件となります。
特定の性能項目のうち「構造躯体等の劣化対策」「耐震性」「省エネルギー対策」の3つは必須項目とされ、評価基準への適合が求められます。
住宅性能基準には一定の性能確保が見込まれる水準を表す「評価基準」と、長期優良住宅の認定のために必要な「認定基準」があり、3つの必須項目(構造躯体等の劣化対策・耐震性・省エネルギー対策)が評価基準に適合すれば「評価基準型」として補助が適用可能です。
「認定長期優良住宅型」として補助を受けるには、必須項目以外も含む全ての性能項目において認定基準を満たしていなければなりません。
リフォーム履歴と維持保全計画を作成すること
3つ目の要件が、リフォーム履歴と維持保全計画を作成することです。工事後にこれらの書類を作成したうえで完了実績報告を行う必要があります。
リフォーム履歴とは、その名のとおり実施したリフォーム内容の履歴情報を記録したものです。リフォーム工事の実施箇所を示す図面や工事写真、工事に際しての見積書や詳細図面といった図書などの保存が求められます。
維持保全計画は、建物部位ごとの劣化や不具合の有無や内容、今回の補修実施の有無、点検時期の計画などを記したものです。
なお、リフォーム履歴や維持保全計画は過去の修繕実績や今後の計画を証明するものであり、作成しておくと売却時や相続時にも有利です。
実際の賃貸リフォーム改善事例
賃貸物件の収益状況は、リフォームによって賃貸経営状況が大きく改善することがあります。【リロの不動産】が取り組んだ賃貸アパート・マンションの実績の中から、リフォームによる改善事例を3つ紹介しましょう。
11室中8室が空室のピンチからリフォーム後1ヶ月で満室に
1つ目の事例は東京都世田谷区にある1棟マンションの事例です。1Kの部屋11戸からなるRC造の物件で築年数は23年です。
ご相談を受けた当初、この物件は11部屋のうち実に8部屋が空室になっており、家賃収入が大幅にダウンしている状況でした。一刻も早く空室改善しなければならない状況でしたが、全部屋を大掛かりにリフォームするには資金的な余裕が不足していたため、1室あたりの費用を20万円の少額に抑え、合計費用160万円のプチリフォームを実施しました。
近くに大学があることから、若い学生のニーズが取り込める内装や防犯面の強化に注力したところ、リフォームから1ヶ月で満室を達成。予算に余裕がない場合でも、メインターゲットが要求する最低限の水準に応えるリフォームを行えば、空室リスクを低減できることを表す好例です。
11部屋中8部屋が空室で大ピンチ!リフォーム後1ヶ月で満室の秘訣
物件の持ち味を生かしたリフォームで成功
2つ目に紹介するのは、東京都府中市に建つ1棟マンションの事例。1K・15部屋からなるRC造の建物は築40年と古く、空室が目立つ状態でした。大家さんの「家賃をダウンせずに早期成約させたい」というご要望をもとに、入居者様の目線に立ってリフォームを計画しました。
フローリングの上貼り・キッチン交換・エアコン交換・壁塗装に内容を絞り、15部屋のリフォーム費用を120万円(1戸あたり8万円)に抑えることに成功。古い建物ならではの持ち味を生かしたこだわりのリフォームを実施しました。工事から1ヶ月経たないうちに、これまでほとんどアプローチがなかった社会人女性からの問い合わせがあり、見事即決となりました。
単に全てを新しく綺麗に作り替えるのではなく、あえて古い物件の持ち味を生かすことで、ほかの物件との差別化に成功した事例です。
古くても問題無し!資産価値UPのリフォームでターゲット変更!
3点ユニットのバス・トイレ分離工事で家賃アップ
最後に紹介するのは、2023年10月現在まさに工事中の事例です。東京都府中市にある1K・10戸の部屋からなる木造のアパート。築年数24年が経過し、人気・賃料とも下がる一方にあります。大家さんは「賃料を維持もしくは上げられる方法を考えてほしい」と【リロの不動産・リロの賃貸】にご相談をいただきました。
そこで、注目したのがアンケートで最も人気の低かった3点ユニットの水回りでした。お客様のニーズに応えられるよう、バストイレ別にリフォームする工事を進めました。リフォームにより増加した魅力を入居者募集時に活かすことで反響も増えており、早くも成約に結びつきました。
最低限の費用でお客様の一番のニーズに応え、最大限競争力をアップしているという点で、非常に効率的なリフォームといえます。
大家さんが賃貸物件をリフォームする際のポイント
大家さんが賃貸物件をリフォームするときは、入居者ニーズや出口戦略、リフォームの必要性などをあらためて検討するようにしましょう。
多くの選択肢から適切なリフォーム内容を決めるのは難しく、やみくもに行うと、思うような効果が得られない可能性があるからです。以下では、賃貸物件のリフォームで抑えておきたいポイントを詳しく紹介します。
入居者ニーズを意識する
リフォームの目的は入居者様の満足度を高めて、空室率を改善することです。入居者様の視点に立ってニーズを把握し、必要なリフォームや設備を洗い出す必要があります。インターネットでの調査や賃貸管理会社への相談などにより、まずは入居者ニーズをしっかりと把握しましょう。
例えば、近年人気を集めているのはテレビモニター付きインターホンやオートロック、インターネット無料、宅配ボックスなどです。ただし、単身者やファミリー層など、ターゲット層によってもリフォームの優先順位は変わるため、人気の設備が必ずしも適しているとはかぎりません。賃貸物件の地域やほかの条件も考慮しつつ、賃貸管理会社と相談してリフォーム内容を決めるのが望ましいでしょう。
回収期間を考慮して予算を決める
多くのリフォーム費用をかけても入居者様が集まらず、適切な空室対策ができていないケースもあります。賃貸経営では、投資した資金をどれくらいの期間で回収できるかを考えて、適切な予算を決めることが大切です。
一般的に、賃貸経営での資金回収期間は5〜10年ほどといわれています。リフォーム後に満室稼働できたとしても、相場より資金回収の期間が長くかかってしまうのであれば、予算やリフォーム内容の見直しが必要かもしれません。また将来物件の売却を検討しているのであれば、出口戦略を立てて収益性を逆算することも大切です。
本当にリフォームが必要か考える
賃貸物件の条件によっては、必ずしもリフォームが最適な経営改善の方法とはかぎりません。リフォームで投資した資金回収が見込めなかったり、回収期間が長くなってしまったりと、かえって収益が悪化するケースも考えられます。やみくもにリフォームをするのではなく、ほかの改善方法もあわせて検討することが大切です。
実際に家賃設定や賃貸募集時の条件を見直し、空室が早期に改善した事例もあります。どの方法が適しているのか分からない大家さんは、一度賃貸管理会社に相談してみることをおすすめします。
まとめ 賃貸物件のリフォームは出口戦略を立てて実施するタイミングが重要
どこまでの範囲・設備仕様のリフォームをどのタイミングで実施するかは、賃貸経営の成否を分ける重要なポイントです。リフォームは出口戦略を見据えて適切なタイミングを選ぶとともに、入居者様のニーズを反映した内容にすることで、空室対策や物件価値の維持・向上に影響を与えます。
大切なのは、前述したようなポイントを押さえたリフォームを提案して実行できるパートナーを選ぶことです。【リロの不動産・リロの賃貸】は空室対策に強みを持っており、空室率改善につながるリフォームやリノベーションの経験も豊富にあります。
出口戦略とあわせたトータルな提案が可能なので、空室増加やリフォームのことでお悩みの大家さんはぜひお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。