現金一括購入とローン活用によるアパート経営の違い!不動産投資判断のポイントを解説
2024.07.09不動産を購入する際はローンを組むのが一般的ですが、十分な資金があればキャッシュでの一括購入も可能です。ただし、アパート1棟は決して安い買い物ではありません。不動産投資の目的は人によって異なりますが、賃貸経営を始める以上、自分にとって便益性の高い購入方法を選ぶことをおすすめします。
本記事ではアパート経営を検討中の方に向けて、一括購入とローン購入それぞれのメリット・デメリットや、どちらの購入方法を選ぶべきかの判断基準などを紹介します。アパートの購入方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
一括購入でアパート経営を行うメリット
はじめに、一括購入でアパート経営を行うメリットを押さえていきましょう。不動産投資に関する以下の記事も、あわせてご一読ください。
【参考記事】
不動産投資ローンなしで賃貸経営?現金購入と比べるメリットと判断基準
【総集編】アパート経営の利回りの目安は?不動産投資の指標と注意点
【保存版】不動産投資の損益分岐点で着目するポイントは運用と売却!
アパートの一括購入は購入資金を抑えられる
一括購入した場合はローン金利が発生しないため、購入資金を抑えられるというメリットが挙げられます。例えば、5,000万円のアパート購入に返済期間35年・金利2.0%のフルローンを組んだ場合の総返済額は約6,956万円になり、約1,956万円もの利息を支払うことになります。
アパートローンは変動金利型の商品がほとんどなので、金利が上昇してさらに返済額が増える可能性もありますが、現金で一括購入した場合は利息の支払い負担がなく、金利の変動を気にする必要もありません。
引用元:ローン計算
アパートの一括購入は短期間での購入が可能
アパートローンで購入する際は、金融機関への相談・仮審査・申し込み・本審査・契約・融資実行と多くのステップを踏まなくてはなりません。全ステップにかかる期間は金融機関によっても異なりますが、1ヶ月半程度かかるのが一般的です。
一方、ローンを組まず一括購入する場合は上記の手間や時間を省けるので、アパート経営のスタート時期を早めることができます。また即時決済となるため、売主に対する交渉でも購入条件として有利に働きます。
アパートの一括購入は好きな物件の購入が可能
投資用物件の情報を集める途中で、驚くほど格安のアパートを見かけたことがないでしょうか。安すぎる物件は築古や再建築不可であることが多く、金融機関にとっては担保価値がほとんどないため、アパートローンを組めないケースが多い傾向にあります。
ところが、不動産投資上級者の中には、あえて格安物件を狙って、現金一括購入している方もいます。賃貸需要のある地域なら、最適なリフォームやリノベーションを行うことで高利回りの賃貸経営が実現できるためです。物件選びや経営戦略の選択肢が広がることも、一括購入のメリットといえるでしょう。
アパートの一括購入は指値に応じてもらいやすい
急にまとまった現金が必要になり、手持ちのアパートを手放すオーナー様もいらっしゃいます。少しでも早く現金化したい事情がある場合、融資審査などを待たずに現金が入る一括購入が歓迎されるケースが少なくありません。指値にも応じてもらえることが多く、交渉によっては相場よりも安く購入できる可能性もあります。
アパートローンの利用が難しい場合も購入可能
アパートローンの審査では事業性や物件の担保価値が重視されますが、契約者の属性も審査の対象です。審査の結果、低い評価しか得られなかった場合、融資可能額が引き下げられたり融資そのものを断られたりする可能性があります。ローン審査に落ちてしまうと希望のアパートを購入することはできません。
しかし、一括購入であればアパートローンの審査を受ける必要がないため、金融機関の審査基準を満たさない属性であった場合でも、気に入った物件を自由に購入できるでしょう。
一括購入でアパート経営を行うリスク
アパートを一括購入するメリットを把握したところで、次に注意したいリスクを解説していきます。
資金が手元にない場合、アパート経営の開始が遅くなる
すでに潤沢な資金がある方を除き、物件を一括購入するための資金を貯めるのには時間がかかります。例えばアパートの購入ならびに当面の事業資金として、3,000万円を目標に可処分所得(手取り収入)の2割を貯蓄するとします。
可処分所得は年収の80%前後です。計算すると年収1,000万円の方でも約19年かかることになります。一般企業に勤めるサラリーマンが数千万円のアパートを現金で一括購入するのは、あまり現実的とはいえません。
レバレッジ効果を得られない
レバレッジ効果の高さは不動産投資の魅力の1つです。レバレッジとは「てこの原理」を意味する言葉で、少ない投資で大きな利益を得ることを指します。アパートローンを組んだ場合、初期投資を少なく抑えられるのでレバレッジ効果を実感できますが、一括購入の場合は初期投資が高額になるため、レバレッジ効果は得られません。ローンを利用するのと比べ、投資効率は低いといえます。
手持ちの資金が減ると投資拡大スピードが遅くなる
アパートを一括購入して手持ち資金が残り少なくなると、次の物件を購入するのが難しくなり、投資拡大のスピードが遅くなります。また、アパート経営にはさまざまなランニングコストがかかることや、空室・家賃滞納などのリスクがあることにも注意しなければなりません。手元にある程度の資金を残しておかないとリスクに対応できず、経営が立ち行かなくなってしまう可能性もあります。
投資資金の回収に時間がかかる
ローンを組んでアパートを購入するのに比べ、一括購入は投資資金の回収に時間がかかります。以下のケースで回収期間をシミュレーションしてみましょう。ここでは物件購入にかかる諸経費は省略します。
● 物件:木造アパート(家賃7万円/月×6室)
● 物件価格:3,000万円
● 年間家賃収入:504万円
● 年間経費:100万円(経費率を約20%と仮定)
購入方法 | 投資資金 | 回収期間 |
一括購入 | 3,000万円 | 3,000万円 ÷(504万円-100万円)≒7.43年 |
ローン(頭金20%) | 600万円 | 600万円 ÷(504万円-100万円)≒1.49年 |
ざっくりとした計算ですが、頭金を入れてローンを組むのに比べ、一括購入は投資資金の回収に多くの年月を要することが分かります。プラスの収支となるまでに時間がかかるため、現金一括購入は資金面に余裕のある方の投資方法といえるでしょう。
アパートローンを組んでアパート経営を行う場合のメリット・リスク
次に、アパートローンを組んで物件を購入するメリットとリスクを把握しておきましょう。アパートローンや不動産投資ローンに関する詳細は、以下の記事を参考にしてください。
【参考記事】
アパートローンを上手に利用するコツと注意点|住宅ローンとの違いは?
不動産投資ローンと住宅ローンの違い!審査基準や注意点を徹底解説
アパートローンを組んでアパート経営を行うメリット
アパートローンを組んでアパート経営を行うメリットは以下のとおりです。
融資を活用することで早期アパート経営の開始や資産拡大スピードを向上できる
融資を活用することで、手持ち資金の何倍もの価格のアパートを購入できます。一括購入のように何年もかけて資金を準備する必要がなく、頭金が貯まった時点で早期のアパート経営開始が可能です。頭金は物件価格の1~2割程度が一般的ですが、金融機関や物件によってはフルローンが可能なケースもあります。
一括購入できるだけの現金がある場合も、現金の一部を頭金にしてローンで複数のアパートを購入すれば、資産拡大のスピードを加速させられるでしょう。
高いレバレッジ効果を得られる
株式や投資信託などは手元にある資金でしか投資できないのに対し、不動産投資では物件購入に融資が利用できるため、高いレバレッジ効果が得られます。不動産投資の対象物件にはいくつか種類がありますが、アパート1棟投資はマンション1棟に比べると物件価格が安めであり、区分マンションと違って月に得られる家賃収入は高額なケースが多いです。1棟アパートをローンで購入すれば収益が膨らみやすくなるでしょう。
手元の資金を残せる
アパートを一括購入できるほどの資金が準備できるとしても、数千万円単位の現金がなくなるのは不安です。前述のとおり、賃貸経営には空室や家賃滞納などさまざまなリスクが想定できます。また、想定外の修繕が発生することもあり、事業資金にある程度の余裕が必要です。アパートローンを組んで購入すれば手持ち資金の一部が出ていくだけなので、リスクにも備えられるでしょう。
団体信用生命保険に加入できる
団体信用生命保険(団信)とは、契約者に万が一のことがあったときに保険金で残債が支払われる保険です。アパートローンを利用する際に団信に加入した場合は、家族にローン返済の負担を残す心配がありません。アパートはそのまま相続資産となり、家族が売却して現金化することもできますし、アパート経営を引き継ぐことも可能です。
金融機関の信用を得られる
計画的な投資規模の拡大を考えるなら、アパートローンの利用がおすすめです。滞納せずに順調に返済を続けることができた場合、金融機関では「経営状況が良好」と判断します。金融機関の信用を得られるため、次の物件購入でローンを組む際に好条件の融資が引けるかもしれません。
アパートローンを組んでアパート経営を行うリスク
アパートローンを組んでアパート経営を行う際、注意したいリスクは以下のとおりです。
アパートローンに関する諸費用がかかる
ローンを組むと金利が発生するため、最終的な総支払額は物件価格よりも大きくなります。また、物件購入時には印紙代や登記費用などの諸費用がかかりますが、ローン契約時には保証料や金融機関に支払う事務手数料などが加わります。アパートローンを組む際は、一括購入に比べて購入時に必要な諸費用を多く準備しなくてはなりません。
アパートローン審査に時間がかかる
アパートローンの審査には1ヶ月前後の時間を要するのが一般的です。審査を申し込んで結果を待つ間に、ほかの投資家に購入される可能性があり、自分が気に入った物件を購入できないことがあります。同じような物件が何度も出てくるわけではないので、ローンを利用して購入する際は、物件の購入するタイミングを見極めて早めの決断が必要です。
毎月の収入より返済額のほうが大きくなる可能性がある
アパートローン返済の原資は毎月の家賃収入です。ただし、家賃が得られないからといって、返済を猶予してもらうことはできません。空室や家賃滞納が発生した場合、自己資金から返済を続けることになります。また、アパートローンは金利変動型の商品が多く、将来的に金利が上昇した場合は毎月の返済額が増える可能性があります。
アパート一括購入によるアパート経営の向き・不向き
先述のとおり、一括購入にもローン購入にもそれぞれメリット・リスクがあります。アパート経営を始めるときの自分の状況に置き換えて、リスクを回避する方法を選ぶことが大切です。ここからは、一括購入によるアパート経営の向き・不向きの判断基準を紹介します。「購入方法も気になるが、アパート経営を成功させるコツを知りたい」という方は、以下の記事を参考にしてください。
【参考記事】
アパート購入と賃貸経営の流れ! アパート経営成功のポイント【保存版】
失敗しない不動産投資の秘訣とは?メリットとリスクを徹底検証!
一棟アパート投資が不動産投資の成功者に選ばれる理由!判断基準を解説
アパート一括購入によるアパート経営が向いているケース
十分な資金があり、かつ借入リスクを避けたい方は、一括購入によるアパート経営がおすすめです。以下にて詳しく解説します。
資金に余裕がある
資金力に余裕のある方は、一括購入によるリスクをほとんど気にする必要がないため、一括購入によるアパート経営が向いています。例えば、元々資産家の方や、資産形成によってまとまった貯蓄がある方などが該当します。アパートの一括購入によって手持ち資金が底をつくようでは、賃貸経営に乗り出すのは少々不安です。潤沢な資金があれば、さまざまなリスクにも余裕を持って対応できるでしょう。
借入リスクを避けたい
ローンを利用してアパートを購入すると、高額の借入リスクを負うことになります。また、アパートローン返済中に空室の増加や家賃下落、金利上昇によってキャッシュフローが悪化する可能性がないとはいえません。物件を一括購入してしまえばローンの返済負担はなく、しっかりとした空室対策を施すことで安定したキャッシュフローを実現できます。
一括購入によるアパート経営が向いていないケース
反対に、以下のケースに該当する方は一括購入ではなく、アパートローンを利用したアパート経営を検討したほうがよいでしょう。それぞれのケースについて解説していきます。
自己資金が少ない
一括購入できるだけの資金がない方や、一括購入によって自己資金がゼロになってしまう方は、アパートローンを利用するほうがよいでしょう。前述のとおり、生活費からアパートの購入資金を貯めるには長い年月がかかります。融資を受けてアパート経営を早期にスタートさせたほうが、はるかに効率的です。
ただし、自己資金がゼロではアパートを購入できません。アパートの購入や経営に必要な自己資金の目安を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考記事:アパート経営に必要な自己資金はいくら? 成功に導く出口戦略と資金計画
安定した職業に就いている
公務員や一部上場企業の正社員で勤続年数が3年以上ある方は、金融機関の融資審査で高く評価される傾向にあります。安定した職業に就いていたり年収の高い企業で長年勤めていたりするなどローン審査における属性がいいと、審査に通りやすく、条件面で優遇される可能性もあるため、アパートローンの利用がおすすめです。
子育て世帯
子育て世帯では、子どもの成長につれて急な出費やまとまった資金が必要になる可能性があります。日々の生活や将来も見据えると、手持ち資金を多く確保しておくのが堅実でしょう。一括購入できる資金があったとしても、アパートローンを検討したほうがよいかもしれません。
アパート経営を行う際に購入方法に悩んだら
アパート一括購入の向き・不向きを紹介しましたが、自分はどちらが適しているのか判断しづらいという方のために、経営視点によるアパート購入方法の判断基準を紹介します。なお、状況によってはアパートではなくマンションの1棟購入、あるいは区分マンションの複数戸購入という選択肢もあります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
参考記事:賃貸マンションの一棟買いはあり? アパート経営・区分マンション経営との徹底比較
ポイント① 投資規模の拡大を考えているかどうかで決める
今後も物件を買い増して投資規模を拡大したいと考えている場合は、アパートローンの利用がおすすめです。融資を活用することにより不動産投資のレバレッジ効果が発揮され、よりスピーディーな事業拡大が可能になります。
反対に投資規模の拡大は考えておらず、資産運用や相続税対策のためにアパート経営を行いたい方には一括購入がおすすめです。相続税評価額の算出基準は資産の種類によって異なり、現金は100%、不動産は時価の80%ほどです。さらに賃貸物件は借家権割合なども加わり50%程度まで圧縮されるケースもあるため、アパートを一括購入して現金を減らしたほうがお得といえるでしょう。
ポイント② イールドギャップがどの程度かを考える
イールドギャップとは、投資利回りと長期金利との差を表すものです。投資判断の重要な要素の1つで、以下の計算式で求めます。
イールドギャップ(%)=実質利回り÷ローン定数
実質利回りとローン定数の計算式は、それぞれ以下のとおりです。
実質利回り(%)={年間家賃収入×(1-空室率)-年間諸経費}÷(物件価格+購入時諸費用)
ローン定数(%)=年間返済額÷総借入金額
イールドギャップの目標値は1.5%以上で、高いほど投資効率のよい物件といえます。金利を負担しても収益が見込めるため、アパートローンを利用するのがよいでしょう。反対にイールドギャップの低い物件は、一括購入のほうが適しています。
金利の変動によってイールドギャップの値も変わります。アパート経営が始まってからも今後の方向性を考えるために、定期的にイールドギャップを確認するようにしましょう。
ポイント③ どのような不動産投資を行いたいか目的を考える
一括購入とローン購入のどちらの購入方法も可能な場合は、不動産投資に何を求めるのか、不動産投資の目的を明確にしてみましょう。「効率よく収益を得たい」「より多くの収益を得たい」と考える方は、アパートローンの利用が向いています。「ローン返済のプレッシャーを感じたくない」「安定した賃貸経営を行いたい」「損益通算を行いたい」という方は、一括購入がおすすめです。
また、現在お抱えのお悩みを解消するための最適解を導くために「相続目的」「資産保全目的」などを大切にすることをおすすめします。目的を明確にすることで資産形成スピードや購入物件・建築物件などの建物選定基準や出口戦略がクリアになり、優先順位をつけやすくなります。
まとめ アパート一括購入によるアパート経営の成功は潤沢な資金を持つことが前提
アパートを購入する方法には、現金での一括購入とアパートローンでの購入の2種類があります。それぞれにメリットやリスクがあり、最適な方法は人によって異なります。どちらの方法で購入するのがアパート経営成功の近道か、慎重に判断して決めるようにしましょう。
【リロの不動産】には不動産投資家だけではなく地主のお客様が多いため、資産運用や相続対策のご相談にも対応しています。もちろん投資用物件の購入相談から運用中の賃貸管理、売却まですべてに対応可能です。アパート経営に興味のある方は、一度【リロの不動産】にご相談ください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。