公務員はアパート経営できる? 公務員が不動産投資を始める意外なメリット
2024.12.06アパート経営に興味はあるものの、公務員なので諦めているという方もいるのではないでしょうか。公務員はアパート経営ができないのか、公務員が賃貸経営を行う理想の条件があるのかも含め、公務員によるアパート経営のメリットと注意点を合わせて解説します。
なお、公務員の不動産投資におけるメリットや注意点を知りたい方は、「公務員の副業に不動産投資は向いているのか?メリットと注意点を解説!」の記事もご参照ください。
▼この記事の内容
●公務員も不動産投資やアパート経営は可能
●ただし、副業禁止規定があるため制限や条件あり
●副業に当らないアパート経営の条件(①5棟10室より小さい規模 ②家賃収入年間500万円未満 ③管理業務を賃貸管理会社に委託する)
●公務員がアパート経営を行うメリット(①ローン審査が通りやすい ②安定した副収入が得られる ③本業に影響しない)
●違反すると懲戒処分の可能性あり。在籍する地方自治体の規則を必ず把握する
目次
公務員はアパート経営できるのか
結論からいうと、公務員でも不動産投資やアパート経営は可能です。ただし、公務員には副業禁止規定があるため、無制限というわけにはいきません。万一、副業禁止規定に違反するようなことになれば、減給や免職・停職処分などの対象になることもあります。基本的には条件をクリアすれば、公務員でもアパート経営ができます。
国が働き方改革を推進する状況において、民間企業では社員の副業を認めるところも増えてきました。地方自治体でも、職員の副業や兼業を応援する制度が導入されているところがあります。実際に公務員が副業を行うときは申請が必要です。公務員の副業が禁止されている理由や認められる条件などについて、次章以降で詳しく解説します。
公務員副業禁止の法的根拠
公務員の副業が禁止されている法的根拠について、国家公務員と地方公務員の規定を確認しながら、注意するポイントを詳しく解説していきます。
国家公務員の規定
国家公務員法の規定から解説します。
出典:e-gov 国家公務員法
信用失墜行為の禁止
国家公務員法第99条では、信用失墜行為の禁止について規定がされています。国家公務員は国民全体の奉仕者という立場で、公共の利益のために勤務する存在です。一人の職員が信用を傷つけるようなことを行っただけでも、公務員全体に対する信頼を損ねることにつながりかねません。
そのため、公務員全体の信用を失うようなことをしないということが大事です。しかも、信用失墜行為の禁止は職務遂行中にかぎらず、勤務時間外の私的な行為も含まれます。
秘密を守る義務
国家公務員法第100条には「業務上知ることのできた秘密を漏らしてならない」という、秘密を守る義務も規定されています。守秘義務は退職後にも影響をおよぼすものであり、在職中はもちろん、退職してからも秘密を漏洩させるようなことがあってはなりません。
もし、秘密を漏洩させた場合は、刑事罰に処される可能性があるほど重要なものです。公務で得られた秘密を保持し、情報漏洩のリスクを抑えるためにも、副業が禁止されています。
職務に専念する義務
国家公務員には第101条で、職務に専念する義務も規定されています。国家公務員は本来、国家や国民のために奉仕するのが仕事です。職務に専念する義務があり、副業などを行うことで本業の職務に支障をきたしては本末転倒でしょう。
そのため、勤務時間中は職務に関係のない行為をしてはならないとされています。国民のために働く奉仕者として位置づけられている国家公務員に対し、副業が禁止されているのにはそれなりの理由があるのです。
私企業からの隔離
国家公務員法第103条では、私企業からの隔離が規定されています。つまり、国家公務員は営利目的の企業や団体の役員や顧問、評議員として兼業したり、自分で営んだりすることが禁止されています。名義のみであっても兼業に該当するため認められず、報酬の有無も問いません。
これは、国家公務員の立場が全体の奉仕者であるという性格を持ち、営利目的の兼業などとは相容れないからであり、営利目的のアパート経営も原則としては禁止です。
地方公務員の規定
地方公務員法の規定から解説します。
出典:e-gov 地方公務員法
地方公務員法第33条(信用失墜行為の禁止)
国家公務員同様に、地方公務員法第33条でも「その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」と定められています。地方公務員も国家公務員と同様に、職務に関連する行為はもちろん、職務外であっても職員全体の信用を損なう行為をしてはなりません。
一部の地方公務員の信用失墜行為が、全国の公務員への不信感につながるかもしれないことを自覚したうえで行動する必要があるということです。もし、禁止されている副業によって収入を得れば、信用失墜行為とみなされる可能性があります。
地方公務員法第34条(秘密を守る義務)
地方公務員も秘密を守る義務を負うのは、国家公務員と同じです。地方公務員法第34条で、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと規定されています。
日常的に住民の方々の個人情報に触れる機会がある地方公務員がその情報を外部に漏らすようなことがあれば信頼を損ね、行政の執行にも支障をきたしかねません。そのため、在職中はもちろん退職後も同様に秘密を守る義務があり、違反するようなことがあれば罰則もあります。
地方公務員法第35条(職務に専念する義務)
地方公務員法第35条でも国家公務員法と同様に「勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」と定められています。
地方自治体の運営や職務は住民の信頼のうえに成り立ち、費用も税金でまかなわれているものであり、職員はその職務に専念すべき責務があるからです。ただし、年次休暇や育児休業等、研修や厚生事業への参加など、法律や条令で特別な定めがある場合は、免除されます。
地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)
地方公務員法第38条でも、営利企業への従事等の制限が規定されています。国家公務員の場合と同様に、任命権者の許可を受けていなければ、営利を目的とする私企業や団体などで役員の地位を兼ねることや、自ら営利企業を営むことは原則禁止です。
ただし、短時間勤務の職員や非常勤職員などの場合はこのかぎりではないとされ、認められる場合もあります。任命権者が出す許可の基準については、人事委員会が人事委員会規則によって定められるとしています。人事委員会は、地方公務員法第7条第1項の規定に基づき設置される行政委員会であり、任命権者から独立した中立的・専門的な人事行政機関です。
なお、公務員の副業におけるメリットや注意点を知りたい方は、「公務員の副業はなぜ禁止?できる範囲と不動産投資が公務員に有利な理由」の記事もご参照ください。
副業に当らないアパート経営の条件とは?
公務員の副業に当たらないアパート経営の条件とは何でしょうか。公務員の方がアパート経営を行うために必ず押さえたいポイントをご紹介いたします。
5棟10室より小さい規模
人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)では、営利企業を営むことを目的とする会社や団体に関する定義がされています。不動産の場合、独立家屋の数が5棟以上、独立家屋以外の建物では居室数が10室以上であると、営利を主目的とした副業と判断されます。言い換えれば、これよりも小さい規模ならば営利目的の副業にはならないということです。
国家公務員も地方公務員も、奉仕者として私的に利益を上げるのはふさわしくないとみなされます。人事院規則に則るとアパートは4棟9室以下の規模までなら事業としては判断されず、副業にも該当しません。ちなみに土地の賃貸なら契約件数が10件以上、駐車場なら台数が10台以上になると営利目的と判断されます。
家賃収入年間500万円未満
アパートの規模だけではなく、家賃収入の金額でも営利目的かどうかを判断されます。アパート経営で得た家賃収入の年間金額が、営利を主な目的とする副業だと判断されるのは500万円以上です。収益を上げるために家賃の設定を高くすると、アパートの棟数や部屋数が5棟10部屋に満たないケースでも、年間の家賃収入金額が500万円を超えるケースもあり得ます。
例えば家賃5万円の部屋が8部屋ならば、年間の家賃収入金額は480万円で500万円を超えません。しかし、部屋数が同じでも家賃が6万円ならば576万円となり規定を超えます。また、賃料が同じでも9部屋あれば540万円となり500万円を超えてしまうため、人事院規則に違反してしまいます。公務員がアパート経営を行う際は、収入のバランスも考えておくことが大事です。
管理業務を賃貸管理会社に委託する
アパートの経営をするためには、建物のメンテナンスや入居者様の募集、家賃の回収など、さまざまな賃貸管理業務をしなければなりません。アパートの管理はオーナー様が自分ですることも可能ですが、自主管理は公務員の職務専念義務違反になる可能性があります。なお、民間企業に勤める方でも、本業に支障が出ないように不動産投資をされております。
公務員として職務を果たさなければならない立場ならなおさらでしょう。具体的な対策は、アパートの管理を賃貸管理会社に委託することです。アパートの管理業務は多岐にわたり、そもそも自主管理は簡単な業務ではありません。
管理業務を委託すれば費用として管理料が発生しますが、空室対策を筆頭とするアパート経営のリスクヘッジが可能です。賃貸経営の幅広いノウハウを有する賃貸管理会社に、アパートの管理を委託しましょう。
出典:人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
一定規模以上はアパート経営の申請を行う
前章で挙げた条件を超える場合でも、申請することで公務員でもアパート経営や不動産投資が認められるケースがあります。
収益物件を相続した場合
通常なら営利目的だと判断される規模のアパート経営でも、ご両親などが営んでいた賃貸アパート・賃貸マンションを相続した場合や生前贈与を受けた場合は、許可されることがあります。
公務員は営利を主目的とした副業を行ってはならないとはいえ、現実には相続や生前贈与などで親などが経営していた収益物件を受け継ぐケースは少なくありません。財産として現金や預貯金を所有しているよりも、不動産のほうが相続税評価額は低いため、実際に相続税対策としてアパート経営を行っている方もいます。
いくら公務員の副業禁止規定があるからといって、ご両親から相続した資産の売却を無理矢理促したり、退職を迫るのはいささか無理があるでしょう。そのため、前章で解説した規模を超えていたとしても、相続や生前贈与で取得したアパートの経営に関しては、比較的スムーズに許可がおりる可能性があります。
ただし、申請を行わなければならないため、相続や生前贈与を受けた場合は注意してください。
リロケーションの場合
アパート経営ではありませんが、転勤などのやむを得ない理由で自宅を賃貸に出すリロケーションの場合も許可されやすいケースです。
リロケーションとは、転勤や海外赴任などの諸事情でお引越しをされる際に、一定期間だけご自宅を空ける場合、留守宅を賃貸に出し家賃収入を得る「期限付きの」賃貸になります。契約期間が終われば、確実に家が戻ってくる点が賃貸との大きな違いです。
マイホームとして戸建て住宅や、マンションを購入することは、誰にでもあります。長く住み続けることを想定していても、思わぬタイミングで転勤を言い渡されることもあるでしょう。
当該理由により、リロケーションによる賃貸経営は認められることが多いのです。実際にリロケーションを行う場合、頻繁に自宅を確認しに帰ることは難しいため、賃貸管理会社との連携をしっかり行い、適切に管理してもらうことが大事です。
公務員がアパート経営を行うメリット
公務員がアパート経営を行うためにはいくつかの条件があり、申請もしなければなりません。それでもアパートを経営をするメリットや選ばれる理由とはどのようなポイントがあるのでしょうか。
ローン審査が通りやすい
自己資金でアパートを新築したり、購入したりできるほど金銭的に余裕がある方を除けば、通常はアパート経営を始めるためにアパートローン(不動産投資ローン)を利用します。
つまり、アパートの経営は、アパートローンの利用があってこそ成り立ちます。不動産を購入するためのローンでも、融資する目的によってローンの種類が異なります。アパート経営をするための物件は事業用資産になるため、居住用の不動産を購入する際に利用する住宅ローンは使えません。
事業用のアパートローンは住宅ローンに比べて審査項目も多く、アパートの担保価値や収益性なども審査の判断基準になっています。アパートローンの審査では、年収や貯蓄、勤務先や勤続年数などの個人属性も重要なポイントです。その点、公務員という属性は、審査でプラスに働く傾向があります。
審査条件や融資基準は金融機関により異なりますが、公務員は個人属性では信用度が高いメリットがあります。一般的な民間企業と異なり、倒産などのリスクが軽減されます。収入が安定していることもあり、比較的ローン審査に通りやすく、アパート経営を始めやすいといえるでしょう。
金利が低い設定のローンほど審査は厳しくなるのが一般的ですが、信用度の高い公務員は低金利のローンを受けやすい場合もあります。低い金利のアパートローンを利用できれば、月々の返済額を抑えて、節税を行いながらアパート経営を始められます。
安定した副収入が得られる
アパート経営は軌道に乗れば長期間にわたって安定した家賃収入を得られるようになるため、公務員としての収入とは別の収入源を確保できるのもメリットです。ローンの返済中は家賃収入を返済にあてる必要がありますが、完済すればアパートの維持管理などに必要な費用を差し引いた残りの多くが収益になります。
公務員のアパート経営では規模を4棟9室以下、年間の家賃収入を500万円未満に抑える必要があるものの、複数の部屋を貸し出しているため、ある程度のまとまった金額の収入源を確保できるでしょう。
同じ賃貸経営でもオフィスや店舗などのテナントが入居する事業系の物件は景気の変動を受けやすいのですが、アパートのような住居系の賃貸物件は景気に左右されにくいメリットもあります。アパートに一度入居してくれると長期間住み続ける入居者様も多く、周辺環境が大きく変わらないかぎり賃貸ニーズが安定しています。
公務員の地位という「盾」に家賃収入という「槍」を組み合わせることで、最強の資産形成の布陣を敷くことができるでしょう。
本業に影響しない
先述したように、公務員が所有しているアパートを自主管理すると職務専念義務違反になる可能性があります。前提として、多岐にわたるアパートの管理業務を、本業を持つ公務員の方が自分で行うのは難しく、専門の賃貸管理会社に委託する方が健全な賃貸経営を行えるでしょう。
空室が出た際に次の入居者様を探すのも、賃貸管理会社のノウハウやネットワークがあれば対応しやすいものですが、自分で探すとなると簡単ではありません。入退去時にかかる様々な業務に加え、入居者様のトラブル対応や家賃滞納などのトラブルが発生しても、全て賃貸管理会社に任せることが可能です。
賃貸管理会社に管理を依頼する場合は家賃収入の数%程度が相場の管理手数料がかかりますが、プロに任せることで賃貸経営のリスクである「空室リスク」「家賃滞納リスク」「老朽化リスク」などの対応をしてもらえると心理的に安心出来るのではないでしょうか。
アパートの経営にかかる時間や手間をかけずにすむメリットは大きく、アパート管理に関することは賃貸管理会社から管理状況の報告を受ける程度ですみます。必要に応じてアパート経営の知識も補填してくれる信頼できる賃貸管理会社に管理対応を一任すればアパート経営を仕組み化できるため、本業に影響せず継続的に家賃収入を得られます。
なお、公務員が不動産投資を行うその他のメリットを知りたい方は、「公務員はアパート経営できる? 公務員が不動産投資を始める意外なメリット」の記事もご参照ください。
公務員のアパート経営で注意すべきこと
公務員がアパート経営を行ううえで注意しておくべき点として、3つのポイントを抑えておいてください。
「武家の商法」になってはいけない
国や地方自治体は一般企業とは違い、営利組織ではありません。業務の仕組みや手順、担当者に望む資質などが、一般企業のものとは異なり、利益を追求する体系にはなっていません。
もし「利益を出す」ことへ執着が乏しいままアパート経営を始めても、うまくいかない可能性があります。いわゆる「武家の商法」になってしまってはいけません。あくまでもアパート経営はひとつの営利事業です。そのことを心に留めてアパート経営に臨むことが核心的に重要なことです。
事業規模を拡大できない
公務員が行うアパート経営は家賃収入の年間金額が500万円未満という制約があるため、アパート経営が軌道に乗っても事業拡大に制限がかかります。特に副業に関して制約がない方なら、最初は小規模な賃貸経営から始め、様子をみながら運用を行い、経営が軌道に乗った時点で所有アパートの棟数を増やして資産拡大することも可能です。
しかし、公務員は前述の手段が取れないため、せっかく金融機関のローン審査が通りやすいメリットがありながら、事業規模が制限されるもどかしさを感じるかもしれません。アパート経営による副収入を拡大したいと思っても限界があります。賃貸経営の事業拡大を展望に描ける公務員以外の方と比べると、公務員として勤務しながらのアパート経営では事業規模を拡大できません。
政府が推進する働き方改革によって副業を認める民間企業も増加する影響を受け、地方自治体の副業を地域貢献活動や公益活動が中心に、認めるところが出てきています。2023年時点の基本的な条件として、4棟9室以下、年間家賃収入が500万円未満ならば公務員でもアパート経営が認められています。
公務員という特性上、今後はルールが変更されることや地方自治体によって独自に規定が設けられている場合もあります。事業規模を拡大したい場合や確認する際は最新の情報をご確認ください。
違反すると懲戒処分の可能性
一定の規模以内ならば公務員でもアパートの経営が認められていますが、公務員であることの自覚はつねに持っておかなければなりません。国民の奉仕者という立場である公務員の特性上、先述したような信用失墜行為の禁止や秘密を守る義務、職務に専念する義務を踏まえたうえでアパート経営を行う必要があります。
万一、申請せずにアパート経営を行った場合や、認められている以上の規模に事業拡大したことが明らかになった場合は、減給や懲戒処分の対象になります。バレないと思って申請を怠っていると、住民の通報など思わぬところから明るみに出て、後々大きな問題に発展することも考えられます。
最悪、懲戒免職処分が下される可能性もあります。地方自治体によって、副業や兼業についてどう規定しているのか詳細はさまざまです。アパート経営を検討しているのなら、自分が在籍している地方自治体の規則を把握しておくことが大切です。
家族名義でアパート経営を行う場合の注意点
公務員が家族名義でアパート経営を行う場合に、注意すべきポイントを5つ解説します。
家族名義なら不動産投資は自由
自身が公務員であっても、その夫・妻・親など家族の名義であれば、事業として不動産投資やアパート経営をしても問題ありません。
家族は公務員本人とは別人格であり、公務員の副業禁止規定は適用されず、それぞれに職業選択の自由が認められているためです。
また、公務員の立場では禁止されている物件の自主管理、5棟10室以下、年間の家賃収入500万円以下などの制限もありません。家族名義にすることで個人としての合計所得を抑えられる場合は、節税につながるメリットもあります。
ただし、家族名義で不動産投資をするリスクやデメリットも十分に理解しておく必要があります。
たとえば、公務員の夫に代わって妻の名義で不動産投資をした場合、仮にその不動産から利益が出ていなくても配偶者控除を外れなければならず、支払う税金が増えてしまう可能性があります。加えて、もし離婚することになった場合は、夫の資金で購入した不動産であっても、名義人である妻の所有物になってしまう可能性があります。
これは配偶者に限ったことではなく、家族名義で不動産投資・アパート経営を継続する場合は、お互いの関係が良好であることが前提です。現在の関係性のみならず、先々の関係性やリスクなども念頭に置いておきましょう。
単なる「名義貸し」は違法になる
アパートが家族名義であっても、事実上単なる「名義貸し」の場合は違法になる可能性があるため注意が必要です。
アパート経営とひとくちに言っても、入居者の募集・物件の清掃・トラブル対応・退去精算などさまざまな仕事があります。賃貸管理の実務については賃貸管理会社に委託するとしても、経営判断は経営者が行う必要があるのです。
このような仕事を公務員自身が行っていたとしたら、このアパート経営は公務員本人の自営(=家族は単なる名義貸し)とみなされ、副業禁止規定に抵触する恐れがあります。それだけでなく、事実上の自営だった場合は脱税の嫌疑もかけられかねません。
このようなリスクを避けるためには、名義人である家族がアパート経営の仕事を実際に行う必要があります。
配偶者控除を利用する場合は所得額に注意
配偶者名義でアパート経営を行う場合は、配偶者の所得額にも注意が必要です。配偶者控除・配偶者特別控除を利用する場合は、アパート経営から得ている不動産所得が規定額以下に収まっている必要があるためです。
配偶者控除・配偶者特別控除には、それぞれ以下のような所得制限が設けられています。
- 配偶者控除:配偶者の年間合計所得が48万円以下
- 配偶者特別控除:配偶者の年間合計所得が48万円超133万円以下
配偶者が得ている所得が上記の金額を超過している場合は、配偶者控除・配偶者特別控除を受けられません。なお、配偶者がパートなどで所得を得ている場合は、不動産所得との合算になることも理解しておく必要があります。
3つの原則に違反しないことが必要
家族名義でアパート経営をする場合であっても、「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」「職務専念義務」の3つの原則は遵守する必要があります。
直接的にアパート経営に携わらないとしても、入居者様や関係者からの信用を失墜するような行為があれば、公務員そのものの信用を損なうことにもなりかねません。同様に、直接的に不動産の管理業務を行っていなくても、業務上知り得た情報をアパート経営に応用する、公務員としての職務に支障をきたすなどの行為は、いかなる場合でもあってはならないことです。
アパート経営に限ったことではありませんが、公務員でいる以上はつねに守るべきルールがあることを念頭に置いておく必要があります。
法人を設立する方法も有効
物件の所有や不動産経営を行うための法人を設立するのも一つの方法です。法人は個人とは別人格なので、5棟10室以下、年間の家賃収入500万円以下などの制限も適用されません。
ただし、公務員自身の名義で法人を設立したり、公務員本人がその法人から報酬や給与を受け取ったりすると副業禁止規定に抵触してしまいます。法人の代表を家族にすること、本人はその法人から報酬を受け取らないことが重要です。
設立する法人の所在地を自宅とは異なる住所にしておくこともポイントです。法人の所在地は国税庁「法人番号公表サイト」で公表されているため、調べると法人設立の事実がばれてしまう可能性があります。法人の所在地は、実家の住所や配偶者の実家の住所、バーチャルオフィスの住所などに設定しておくのが望ましいでしょう。
これらのポイントをふまえて法人を設立すれば、個人よりも経費の範囲が広がったり、所得を分散したりすることで高い節税効果が期待できるでしょう。
まとめ
公務員がアパート経営を行えば「盾」と「槍」の両方を得るようなもので、資産形成が軌道に乗りやすいメリットがあります。ただし、公務員ならではの注意しておくべきポイントもあるため、アパート経営には注意も必要です。賃貸経営にともなうリスクヘッジには、賃貸経営を中立的な視点でトータルサポートできる賃貸管理会社が求められます。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。