賃貸経営の核心となる不動産の賃貸管理! 管理会社の対応力と長期視点が大事
2025.02.09
不動産投資における賃貸管理は、入居者満足度の向上や建物を健全な状態で維持するために必要不可欠な要素です。実際に、近年は賃貸管理の重要性が見直され、法改正も行われています(※)。
一方で、賃貸管理の業務内容が曖昧だったり、なかなか手が回らなかったりしている自主管理オーナー様が多いのも実情です。
本記事では、賃貸管理の重要性や具体的な仕事内容を解説します。管理を委託したい場合の賃貸管理会社の選び方もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
※出典:e-Gov「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」
▼この記事の内容
●日々の管理が行き届いた物件は入居者様の顧客満足度が高く、「長く住み続けたい」と考える入居者様が増え、家賃収入も安定する。
●賃貸管理業務はソフト面である「入居者管理」とハード面にあたる「建物管理」の2つの領域に分けられる。
●入居者管理の業務には、リーシング業務(入居者募集・仲介業務)、家賃回収代行、入居者トラブル・クレームへの対応、更新手続き、退去手続きなどがある。
●建物管理の業務には、日常清掃・定期清掃、建物・設備の日常点検や法定点検、メンテナンス・修繕、大規模修繕計画の立案がある。
●信頼できる賃貸管理会社を選ぶ際のポイントは、「賃貸住宅管理業者」に登録されているか、管理手数料と業務内容は見合っているか、空室対策の提案力を持っているか、出口戦略や相続対策などの賃貸経営サポートをしてくれるか、である。
不動産投資における賃貸管理とは
賃貸管理は不動産投資における基本ともいえる要素です。まずは賃貸管理の重要性と、施行されている賃貸管理業法について解説します。
賃貸管理の重要性
以前は賃貸管理の重要性があまり認知されておらず、不動産仲介会社がアフターサービスとして対応する程度のものとして認識されていました。
不動産賃貸業が近代化されてくるにつれ、賃貸管理の内容によって空室率や入居者満足度に違いがあることがわかってきました。
入居者対応が丁寧な物件は口コミによる評判が良くなり、入居希望者が自然と増えます。日々の管理が行き届いた物件は入居者様の顧客満足度が高く、「長く住み続けたい」と考える入居者様が増え、結果的に家賃収入も安定しやすくなるのです。
また、建物や設備のメンテナンスを適切に行うことで物件を良好な状態に保てるため、物理的な保全や資産価値の維持向上などにも良い影響を与えます。
このように、賃貸管理は単なる日常的な作業ではなく、資産の長期的な価値を守り、投資効率を向上させる重要な役割を果たしているため、年々その役割が見直されるようになりました。
賃貸管理業法
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賃貸管理業務におけるトラブルの増加を受けて、オーナー様と入居者様の双方を守る目的で制定されたのが「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」、通称「賃貸管理業法」です。
2021年に施行された賃貸管理業法では、賃貸管理会社に対して登録義務が課され、賃貸管理業務に関するルールが明確化されました。賃貸管理会社が行う管理業務に一定の基準が設けられたことで、適切な運営を行える体制を整える必要性が生まれました。
このような施策により賃貸管理業務の透明性が向上し、以前よりも安心して賃貸管理会社を選べる環境が構築されたといえます。同時に、この法律は賃貸住宅市場全体の信頼性向上にもつながっているため、オーナー様方・入居者様方の双方にとって一つの安心材料になっています。
賃貸管理業法は不動産業界全体が適用範囲に含まれているため、業界内のサービスクオリティの底上げや市場全体の信頼性向上にいい影響を与えています。
出典:e-Gov「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」
賃貸管理業務の仕事内容
賃貸管理業務は主にソフト面である「入居者管理」とハード面にあたる「建物管理」の2つの領域に分けられます。ここからは、それぞれの領域を掘り下げて具体的な業務について解説していきます。
入居者管理
入居者管理とは、入居者様に直接関係する管理業務のことで、以下のようなものが挙げられます。
●入居者募集・仲介業務(リーシング)
●家賃回収代行
●入居者トラブル、クレームへの対応
●更新手続き、退去手続き
入居者募集・仲介業務(リーシング)
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入居者募集業務は、物件の特性や立地条件などを最大限に活かして新規の入居者様を募る重要な業務で、賃貸仲介・リーシングとも呼ばれています。
入居者募集業務は、適切な家賃設定などに不可欠なマーケティングや、物件を魅力的に見せるための写真撮影・広告作成などから始まります。続いて、入居希望者に対する内見(物件案内)対応を行い、周辺環境や物件の利便性などといったその物件の魅力を直接説明します。
その後、入居希望者からの申し込みを受け、信用性や支払い能力などの審査を行い、問題なければ重要事項説明や賃貸借契約の締結の手続きに進みます。
入居者募集・仲介業務については、賃貸管理会社(元付け)のみが行うケース、依頼する不動産仲介会社(客付け)のみが行うケース、双方が行うケースとがあります。
なお、空室対策については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
関連記事:
空室の原因を解決する『4つの空室対策』とは?14種類の手法を徹底解説!
家賃回収代行
家賃回収代行とは、オーナー様に代わって毎月の家賃を回収してオーナー様へ送金する家賃管理の業務であり、敷金・礼金・更新料や大規模修繕費用の積立などの資金管理も含まれる場合があります。
家賃滞納が発生した場合は、速やかに滞納者に対する督促を行うなど、迅速に対応して確実に家賃を回収できるよう対応する必要があります。状況によっては法的措置を検討しなければならないケースもあるため、適切な知識と判断力が求められます。
また、滞納を未然に防止するうえで入居前を厳密に審査することも非常に重要なため、家賃回収代行は入居者募集業務からすでに始まっているといっても過言ではありません。
なお、滞納家賃の回収については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
関連記事:滞納家賃回収の改善事例
入居者トラブル、クレームへの対応
物件の管理・運営において避けられない課題の一つが、入居者様同士や近隣との間で発生するトラブルやクレームへの対応です。
具体的には、騒音問題・ゴミの出し方・ペット問題などが挙げられます。設備の不具合や故障などがクレームに発展するケースも少なくありません。
騒音トラブルの対応では、当事者同士からのヒアリングや調整、状況によっては警察や弁護士などの専門機関への依頼が必要になる場合もあります。設備トラブルの場合は、速やかに現地の状況を確認し、いち早く修理会社などへの手配をすることが重要です。
物件内におけるルールを明確化したり、契約時に十分な説明を行ったりと、トラブルが発生しにくい環境をつくる努力も大切です。
以下の記事で入居者トラブルやクレームの改善事例をまとめているので、こちらもぜひ参考にしてください。
更新手続き、退去手続き
契約更新や退去時の手続きも賃貸管理業務に含まれます。
契約を更新する場合は、既存の契約の見直しを行った上で契約書の作成、契約の締結を行い、必要に応じて更新料の徴収も行います。また、物件の状態やオーナー様・入居者様の事情に応じて、家賃の見直しをしなければならないケースもあるでしょう。
退去時は現場の確認や原状回復工事やハウスクリーニングの手配、敷金の精算、鍵の返却確認などを行い、速やかに入居者募集業務に移行することが求められます。
退去時の精算はトラブルが発生しやすいため、あらかじめ賃貸借契約の特約で原状回復工事費用の負担を明記しておくことが重要です。
建物管理
建物管理とは、物件の建物や設備を良好な状態に保つための管理業務を指し、以下のようなものが挙げられます。
●日常清掃・定期清掃
●建物・設備の日常点検や法定点検
●メンテナンス・修繕
●大規模修繕計画の立案
日常清掃・定期清掃
建物の清掃業務は、日常清掃と定期清掃に大別されます。
日常清掃は、共用部・エントランス・廊下・階段・ゴミステーションなど、頻繁に使用されるスペースを清潔に保つための清掃で、入居者様や訪問者に対する印象を良くする効果も期待できます。
一方、定期清掃は床のワックスがけや高所の窓ガラス清掃など、日常清掃よりも専門的な技術が必要な清掃を指します。定期清掃はあらかじめスケジュール立てて実施するのが一般的で、建物全体の美観を維持し、劣化を防ぐことを目的としています。
このように、手間や目的の異なる2つの清掃を定期的に行うことで、建物の状態を良好に保てるだけでなく、付加価値の向上にもつながります。
建物・設備の日常点検や法定点検
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建物の機能や安全性を維持するための日常点検や法定点検も建物管理業務の一環です。
日常点検は、共用灯やゴミ置き場などの状態をチェックし、異常を発見した場合はその対処にあたります。早期発見と丁寧な対処を行うことで、大きなトラブルへの発展を防止できるため、日頃からこまめに丁寧な点検が重要です。
一方、法定点検は各種法令に基づいて実施するもので、消防設備点検・エレベーターの定期検査・水質検査などが挙げられます。これらの点検は専門知識が必要なため、専門会社に委託するのが一般的です。
いずれの点検も、入居者様の安全を守るために欠かせない業務であり、適切に実施することで信頼性の向上にもつながります。
メンテナンス・修繕
点検業務と合わせて、建物や設備のメンテナンスや、点検によって発見された異常・損傷の修繕も重要な建物管理業務です。
小さな異常を見逃さず、早めにメンテナンスや修繕を行うことで物件の寿命を伸ばせる可能性が高まるうえ、故障や問題の拡大を防止できることから、結果的に修繕コストの軽減につながります。
また、この業務には上記のようなメンテナンスのほか、壁紙の貼り替えやフローリングの補修など、退去時の原状回復工事も含まれます。空室期間が長引くと収益性が低下するため、次の入居者様に引き渡せるよう速やかに実施することが重要です。
大規模修繕計画の立案
建物の寿命を最大化しつつ、快適な住環境を維持するためにも、大規模修繕計画が必要不可欠です。
大規模修繕は10〜12年サイクルで実施するのが一般的で、外壁の補修・塗装・防水工事・給排水管の交換など、建物全体におよぶ比較的大掛かりな作業が行われます。規模が大きいぶん修繕費用も高額になるため、専門家の診断にもとづいて建物の現状を評価し、修繕費用を積み立てるなどの綿密な計画を立てる必要があります。
長期間にわたって建物を建物を良好な状態に保つことで、細々とした修繕の負担を軽減できます。加えて、資産価値の維持・向上、新たな入居者様の確保にも影響する重要な要素といえるでしょう。
信頼できる賃貸管理会社を選ぶ際のポイント
賃貸管理業務は多岐にわたり、専門知識を求められる業務も少なくありません。これらの業務をスムーズに実施するために、賃貸管理会社にサポートを依頼するのも一つの方法です。
ここからは、信頼できる賃貸管理会社を選ぶ際に知っておくといい5つのポイントを解説します。
「賃貸住宅管理業者」に登録されているか
賃貸管理会社を選ぶ際は、「賃貸住宅管理業者」に登録されているかを確認しましょう。
200戸以上の物件を管理する事業者は国土交通大臣への登録が義務付けられており、一定の基準を満たした事業者のみ登録される仕組みになっています。つまり、賃貸住宅管理業者に登録されている業者は相応の管理実績があり、その内容も一定水準以上であることを意味しています。
逆に、賃貸住宅管理業者に未登録の事業者は信頼性に欠ける可能性があるため、登録の有無は必ず確認しましょう。
合わせて、「賃貸不動産経営管理士」資格を持つスタッフが在籍しているかも確認するのがおすすめです。この資格があることが賃貸管理業務に必要な知識やスキルがあることの証明になるため、より安心して管理業務を任せられる基準になります。
このように、「賃貸受託管理業者」ならびに「賃貸不動産経営管理士」の2点をチェックすることで、信頼できる賃貸管理会社かをある程度判別できます。
管理手数料と業務内容を確認する
賃貸管理会社を選ぶ際は、管理手数料と提供している業務内容をしっかり確認することが大切です。
管理手数料は賃貸管理会社によって異なりますが、家賃の5%程度が相場とされています。手数料が相場から乖離していないかどうかに加えて、その費用でどこまでの業務を行ってくれるかも確認する必要があります。手数料や業務内容が不明瞭だと、業務を依頼した際に追加費用を請求されるなどのトラブルに発展する可能性があるためです。
例えば、入居者募集業務・家賃回収代行・トラブル対応・契約更新業務・建物の点検業務などの業務は基本サービスに含まれる傾向にあります。後々の線引が曖昧にならないよう、双方誤解のないよう十分確認したうえで、管理委託契約書にもその旨を明記するのが理想です。
なお、管理費は様々な観点で削減が可能です。以下の記事で管理費削減の改善事例をまとめているので、こちらもぜひ参考にしてください。
空室対策の提案力を持っているか
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空室対策に関する提案力があるかどうかもチェックしておきたいポイントです。空室リスクは収益性に直結することに加え、賃貸管理をするうえで避けては通れない重要な課題であるためです。
単に建物や入居者様の住環境を保つだけでなく、空室発生時に迅速かつ的確な対策を提案できる賃貸管理会社を選ぶことで、より健全な賃貸管理と安定的な収益性の両立が可能になります。
空室対策においては、以下「4つの空室対策」に対応できる会社かどうかを見極めるのがポイントです。
1.入居者募集対応
2.仲介対応
3.管理対応(入居者管理・建物管理)
4.設備・工事対応
上記はいずれも不動産そのものの健全性を保ち、安定経営するために欠かせない要素です。そのため、これら4つの空室対策すべてに対応できる会社は対応力が高く、かつ賃貸管理業務においてバランスが取れている会社であると判断していいでしょう。
信頼できる賃貸管理会社を比較する基準として、上記のポイントを確認してみてください。
管理戸数と仲介件数の実績を確認する
賃貸管理会社を選定する際は、管理戸数や仲介件数の実績を確認しましょう。管理戸数や仲介件数が豊富な会社は経験に裏打ちされたノウハウを持っており、様々なケースに柔軟に対応できる可能性が高いためです。
管理戸数が多い会社は多くのオーナー様の多様なニーズに対応してきているため、十分な管理業務を実施できる体制が整っていると考えられます。トラブル対応や入居者様との信頼関係構築に関する経験値も高く、質の高い管理業務が期待できます。
また、仲介件数の実績は空室対策における実力を示す指標です。仲介実績が豊富な会社は、地域の特性に明るいなど有効な入居者募集のノウハウを持っていることに加え、新規契約や更新業務にも慣れている可能性があります。
このように、管理戸数と仲介件数の実績はその賃貸管理会社の信頼性や実力を測る重要な指標となるため、必ず確認するようにしましょう。
出口戦略や相続対策などの賃貸経営サポートをしてくれるか
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不動産経営における出口戦略や相続対策など、賃貸経営をさまざまな方面からサポートしてくれる賃貸管理会社は、実力が高く信頼性が高いと判断できます。
このようなサポートが可能な賃貸管理会社は賃貸経営の何たるかを良く熟知していることに加え、オーナー様の将来的な成功まで伴走してくれる可能性があります。
出口戦略では物件を売却する適切なタイミングや方法を提案し、最大の利益を得る計画を立案してくれるでしょう。相続対策では節税や納税資金の確保を提案してくれるといった活躍が期待できます。
自分や経営している不動産の状況に合わせて、このような出口戦略や相続対策にも対応できる賃貸管理会社を選定しておくと非常に心強いパートナーになってくれるでしょう。
なお、出口戦略や相続対策については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
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不動産経営における賃貸管理は、物件の健全性や価値を保つうえで欠かせない要素です。一方で、入居者募集、確実な家賃の回収、さまざまなトラブルへの対応や建物管理など、その業務内容は多岐にわたり、専門知識が必要な業務も存在します。
これらの業務を滞りなく行い、安定した経営と収益性を実現するためには、信頼できる賃貸管理会社に巡り会えるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。
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賃貸管理会社の選び方をお探しの方は以下の記事や事例も参考にしてください。
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この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。