マンション経営の利回りを徹底解説!指標の種類・平均値・計算方法を事例で確認

2025.09.07

マンション経営における「利回り」とは、投資額に対して1年でどれくらいの金額を回収できるのかを数値化したものです。購入物件を決めるときや、経営の良し悪しを判断するときなどに使用されることが多く、投資家の方は利回りを重要視しています。

ただし、利回りにはさまざまな種類があり、計算方法を誤ると正しい数値を把握できないため注意が必要です。誤った利回りの数値で判断した結果、物件の収益性が低下してしまうケースも少なくありません。

この記事では、利回りの種類や計算方法、マンション経営における利回り平均、注意点などを解説します。これから物件を購入してマンション経営を始める方は、物件を見極める際の参考にしてください。

▼この記事の内容

●マンション経営の利回りには「表面利回り」「実質利回り(NOI)」などいくつかの種類があり、それぞれ意味が異なる。表面利回りは経費が含まれておらず、実際の利回りと乖離がある可能性が高い

●マンション経営の利回りは「新築・中古か」「どの地域にあるか」「1棟マンション・区分マンションか」などの条件によって異なる

●1棟マンションの場合、新築の利回り平均は5〜6%ほど、中古物件の利回り平均は6~8%ほどが目安

●区分マンションの場合、新築の利回り平均は3〜4%ほど、中古物件の利回り平均は4〜10%ほどが目安

●利回りを参考に物件を選ぶことも大切だが、ほかの条件も含め総合的に判断することが重要。マンション経営の利回り算出で悩んだらプロに相談するのがよい

■参考記事

【マンション経営入門】失敗から学ぶマンション経営成功のポイント

投資用マンションの基本! 保有戸数別の収益と不動産投資の成功ポイント

【事例付き】マンション経営のリスクと対策!不動産投資に欠かせない考え方とは

【事例付】中古マンション投資のメリットとリスク!注意点と対策まで徹底解説

目次

マンション経営の利回りの種類

マンション経営を含む不動産投資の利回りには以下のような種類があり、それぞれ意味や計算方法が異なります。

●表面利回り
●実質利回り(NOI)
●投資収益率(ROI)
●総収益率(FCR)
●自己資本利回り(CCR)

まずは、それぞれの利回りについて詳しく紹介します。なお、1棟マンション経営における利回りの指標や、実際の計算シミュレーションについては以下の記事・事例もあわせて参考にしてください。

■参考記事

【徹底解説】不動産投資の利回り計算! 賃貸経営を成功に導く指標とは

マンション一棟買いの成功ポイントと指標にする利回り!メリット・デメリットや注意点

■参考事例

区分・一棟マンションの購入事例

ファミーユ船橋の購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

ライオンズマンション川崎第15の購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

中央区1Rの購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

表面利回り

マンション経営における「表面利回り」は、不動産投資で最も多く用いられる数値で、「グロス利回り」と呼ばれることもあります。計算が簡単ですぐに数値を把握できるため、利回りを大まかに把握するときに使用します。表面利回りの計算方法は以下のとおりです。

表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

表面利回りは不動産会社の広告やチラシなど、主に物件の販売図面に掲載されています。物件を購入するとき、不動産会社の担当者が紹介する利回りは一般的に表面利回りであると考えてよいでしょう。

表面利回りの注意点は、物件を購入するときに支払った諸費用や税金、経営に必要な経費などが加味されていないことです。実際の利回りよりも数値が高く出るため、「表面利回りが高い」という理由だけで物件を購入するのはおすすめしません。

なお、鎌倉という立地特性にありながら、表面利回り8.76%を叶えた1棟マンションの事例もあります。詳しくは事例を参考にしてください。

■対象の事例:鎌倉デザイナーズマンションの購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

年間収入/2,130万円
表面利回/8.76%
自己資金(EQ):2,800万円
融資額 (LB):2億3,000万円
潜在総収入(GPI):2,130万円
実行総収入(EGI):2,023万円
運営費(Opex):283万円
営業純利益(NOI):1,740万円
年間負債支払(ADS):1,153万円
手取金額(CF):587万円
純収益率(FCR):6.74%
自己資金配当率(CCR):20.96%
負債支払の安全率(DCR):1.51

実質利回り

マンション経営における「実質利回り(NOI)」とは、年間の家賃収入から諸費用や経費、税金などを差し引いて算出される利回りです。現実的な収支イメージと近い数値を算出できるため、不動産投資では実質利回りが最も重要視されます。実質利回りの計算方法は以下のとおりです。

実質利回り(%)=(年間家賃収入-賃貸経営にかかる諸経費)÷物件価格×100

マンションを含む不動産を購入するときは、表面利回りだけでなく実質利回りを把握することが大切です。表面利回りの数値が高く一見優良に見える物件でも、築年数が古く修繕費がかかりやすいなどの理由から、思うように収益が得られないケースも少なくありません。

しかし、物件の購入前に諸経費を詳細に把握するのが難しいケースもあります。金額がわからない場合は、年間家賃収入の20%程度を経費として計算するとよいでしょう。

営業純収益(NOI)

営業純収益(NOI)とは、満室時の賃料から管理費や空室期間の損失などを差し引いた手取り収入を指します。主に物件の収益力やキャッシュフローを把握するときに用いられ、計算式は以下のとおりです。

営業純収益 (円)= 満室時の賃料-空室損・未回収損-賃貸経営にかかる諸経費

営業純収益の注意点は、実際に支払ったお金のみが計算されており、会計上の処理や金融費用などが含まれていない点です。例えば、ローン返済額や減価償却費、修繕費の積み立て、金利の支払いなどは加味されていません。「金利変動で月々のローン返済額が膨らんだ」など予想外の支出が発生する場合もあるため、ほかの指標もあわせて参考にするとよいでしょう。

総収益率(FCR)

マンション経営における「総収益率(FCR)」とは、投資に使ったすべての費用を含めて収益率を算出する方法です。マンションを購入するときにかかった手数料など、物件購入時の諸費用を含めた投資総額を用いて利回りを算出します。総収益率の計算方法は以下のとおりです。

総収益率(FCR)(%)=営業純収益(NOI)÷投資総額×100

総収益率の特徴は、実質利回りよりも正確な利回りを求められることです。不動産投資にかかる初期費用・維持費用の両方を含めて計算するため、賃貸経営を開始した後の実際のパフォーマンスを把握できます。

事例は、鎌倉にあるデザイナーズマンションで、表面利回り8.76%に対し、総収益率6.74%を実現しています。自己資金や融資額などの詳しい金額にも触れているので、あわせて参考にしてください。

自己資本利回り(CCR)

マンション経営における自己資本利回り(CCR)とは、物件購入時に用意した自己資金に対して、どれくらいのキャッシュフローを得られるのか表す数値です。

多くの場合、不動産投資を行うオーナー様は、少ない自己資金に金融機関から借り入れたローンを加えて物件購入の資金とします。自己資本利回りを計算することで、投資に対するレバレッジ効果の大きさを把握できます。自己資本利回りの計算方法は以下のとおりです。

自己資本利回り(CCR)(%)=(年間家賃収入-賃貸経営にかかる諸経費-ローンの返済額)÷自己資本×100

自己資本利回りは、目標の年間キャッシュフローを得るために、自己資本をいくら用意すべきかを判断する重要な指標となります。「金融機関からいくら融資を受けるべきか」「自己資本と融資の割合はどれくらいが適切か」などを把握するために、投資収益率とあわせて計算しておきましょう。

事例では、自己資金2,800万円、融資額2億3,000万円で鎌倉の1棟マンションを購入しています。自己資金利回りは20.96%となっており、借入によって高いレバレッジ効果が得られていることがわかるでしょう。

投資収益率(ROI)

マンション経営における「投資収益率(ROI)」とは、手元に残るお金であるキャッシュフローを用いて収益率を算出する方法です。

表面利回り・実質利回りの計算では、不動産投資ローンの返済額は考慮されていません。投資収益率を算出することで、投資金額に対してどの程度のキャッシュフローを得られるかを算出できます。投資収益率の計算方法は以下のとおりです。

投資収益率(%)= (年間家賃収入-賃貸経営にかかる諸経費-ローンの返済額)÷投資総額×100

なお、投資総額とは、物件購入時の諸費用を含めた金額を指します。

投資収益率は、目標の年間キャッシュフローを得るためにどれくらいの融資を受ける必要があるのかを判断する重要な指標となります。不動産を購入するときは投資収益率をもとに、月々の返済額や金利タイプなどを検討することが大切です。

マンション経営における収入と支出

利回りを正確に把握するには、マンション経営における収入と支出の種類を知っておく必要があります。特に、支出は物件の管理費や修繕費だけでなく、減価償却費や税金、保険料なども含まれる点に注意しましょう。

ここからは、マンション経営における収入・支出の種類に触れながら、収入・支出の発生時期、相場などについて詳しく紹介します。なお、マンション経営で計上できない経費については、以下の記事も参考にしてください。

■参考記事:【マンション経営入門】失敗から学ぶマンション経営成功のポイント

マンション経営の主な収入

マンション経営で、オーナー様が得られる収入は家賃収入だけではありません。マンション経営の主な収入は以下のとおりです。

●家賃
●更新料
●礼金
●駐車場代

なお、不動産経営の収入を上げる方法については以下の記事を参考にしてください。

■参考記事:不動産収入とは? 不動産所得と手取りの違い・収入を上げる方法も解説

家賃

毎月入居者様から回収する家賃は、収入の大半を占める重要な項目です。賃貸管理会社に家賃回収を任せている場合、毎月決まった日にオーナー様の指定口座へ家賃が送金されるのが一般的です。

通常、入居者様が多いほど多くの家賃を得られることになります。家賃収入をアップするには空室を減らす、家賃滞納リスクに備えるなどの対策が必要です。また、物件の築年数が経過するほど家賃の下落が発生しやすくなるため、修繕やリフォームなど賃料を維持する対策も求められるでしょう。

更新料

入居者様が契約期間を更新する場合、更新料が支払われます。ただし、地域によって更新料の有無や金額が異なり、関西では更新料が0円の物件も珍しくありません。関東では更新料を設定しているケースが多く、徴収割合は比較的高い傾向です。

更新料の金額は、基本的にオーナー様が自由に設定できます。例えば契約期間が2年間の普通借家契約の場合、「2年目の期間満了時に家賃の1ヶ月分を支払う」といった条件が一般的です。

礼金

礼金は、賃貸借契約をするときに入居者様からオーナー様へ支払われるお金です。元々は戦後の時代、物件を貸してくれたことへの感謝を表すためにお金を包んでいた慣習が由来となったとされています。したがって、オーナー様は敷金とは異なり入居者様へ礼金を返還する必要がありません。

礼金の相場は家賃の1〜2ヶ月分です。例えば家賃が10万円の場合、礼金は10万〜20万円程度に設定するのが一般的でしょう。ただし、礼金を0円に設定している物件もあるため、近隣の物件は礼金をいくらに設定しているか、地域の相場はいくらか、近隣の競合物件との優位性などを調査したうえで金額を決定することをおすすめします。

駐車場代

敷地内や近隣に入居者様専用の駐車場がある場合は、駐車場代も収入に含まれます。駐車場を利用する入居者様のみから徴収し、相場は周辺にある一般的な月極駐車場と同程度と考えてよいでしょう。

都市部では1ヶ月あたり2万〜4万円ほど、郊外では1ヶ月あたり5,000円〜1万円ほどが一般的です。周辺にある月極駐車場の相場とあわせて、競合物件の駐車場代も調査したうえで金額を決定しましょう。

マンション経営の主な支出(経費)

マンション経営では、物件の修繕費や管理費に加えてさまざまな経費がかかります。減価償却費や保険料、ローンの利息なども忘れずに計上するようにしましょう。マンション経営でかかる主な支出は以下のとおりです。

●減価償却費
●税金
●修繕費
●マンションに関する保険料
●管理費
●ローン利息分

マンション経営の初期費用や節税の方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。

■参考記事

不動産所得を節税するには?減価償却費など代表的な経費【一覧表】

マンション経営に必要な初期費用の目安|事例で知る費用経費や注意点

減価償却費

減価償却費とは、築年数の経過とともに減少していく建物や設備の価値を経費として計上する仕組みのことです。取得時の費用を一定期間にわたって経費計上していくため、減価償却期間で実際にお金が出ていくわけではありません。減価償却費はマンション経営の費用の中で大きな割合を占め、節税対策としても効果的です。

ただし、減価償却費の計上が可能なのは建物や付帯設備などで、土地は対象とならない点に注意しましょう。減価償却費の金額は、国税庁が定める法定耐用年数によって決定します。法定耐用年数は建物の構造によって異なり、木造は22年、鉄筋コンクリート造は47年です。法定耐用年数超過後の物件を購入した場合、減価償却費を経費計上することは難しいと考える方も多いですが、期間を短くして経費計上できます。

税金

マンションを取得すると、さまざまな税金が発生します。取得時や運用時に支払う必要がある税金は以下のとおりです。

●印紙税
●不動産取得税
●固定資産税・都市計画税
●登録免許税
●個人事業税

上記の税金は、すべて経費として計上できます。ただし、経費として認められるのはマンション経営に関連する税金のみで、私的使用で発生した不動産取得税などの税金は経費の対象外となる点に注意しましょう。

修繕費

経年劣化を防ぐ修繕費や、入居者様の退去時に発生する原状回復費用などは経費として計上できます。ただし、対象となるのは「マイナスをゼロの状態に戻す」ためにかかる工事費用のみです。間取り変更をともなう大掛かりなリフォームや、マンションの価値を向上させるリノベーションなどは「資本的支出」とみなされ、修繕費として計上できません。

あらかじめ修繕を行う時期を決め、計画的に修繕費を計上することで、節税効果を高められます。マンションの修繕費についての詳しい内容は、以下の記事・事例も参考にしてください。

■参考記事

マンションの修理・修繕内容とは?賃貸経営におけるトラブル防止の対応方法

【事例付き】マンションの原状回復工事で収益改善!相場と工事内容を解説

■参考事例

マンションの設備管理の改善事例

マンションに関する保険料

マンションにかけている火災保険や地震保険などの保険料は、経費として計上できます。マンション経営で経費になる保険は、以下のようなものが挙げられます。

●地震保険
●火災保険
●施設賠償責任保険
●家賃補償保険
●賃貸住宅費用補償保険 など

ただし、保険料を数年分まとめて支払った場合でも、経費となるのは計上する年にかかった保険料のみです。また、オーナー様が同じマンションに住んでいる場合、オーナー様の部屋にかかった保険料は経費として認められないので注意しましょう。

管理費

管理費は、賃貸管理会社に管理業務を委託する場合に発生する費用です。管理をどの程度任せるか、どの会社に依頼するかなどによって費用は変わるものの、一般的には家賃の5%ほどが管理費の目安となります。

管理費は経費として計上できますが、月々発生する固定費であるため「できるだけ安く済ませたい」と考えるのが一般的です。しかし、管理費の安さを重視して賃貸管理会社を選んだ結果、管理がずさんで空室が埋まらないといったトラブルが発生するケースもあります。対応している業務範囲や得意な分野なども考慮したうえで、信頼できる賃貸管理会社に依頼しましょう。

ローン利息分

マンション購入時に借り入れたローンの利息も、経費計上が可能です。ただし、経費になるのは利息分のみで、元本は経費として計上できない点に注意が必要です。

また、不動産所得が赤字になった場合でも、ほかの所得から赤字分を差し引ける損益通算という制度を利用できます。土地の取得にかかった借入金の利息分は、損益通算の対象にならないため注意しましょう。

【種類別】マンション経営における利回り平均

利回りの計算方法がわかったら、次は算出した数値と利回り平均を比べてみましょう。利回り平均は新築・中古なのか、1棟マンション・区分マンションなのか、また地域などの条件によって異なります。以下では「新築マンション」「中古マンション」「地域別マンション」に分けて、利回り平均を紹介します。

新築マンションの利回り平均

購入価格が高額な新築マンションは、一般的に利回りが低くなりやすいといわれています。区分マンションと1棟マンションでも利回り平均は異なり、1棟マンションのほうが利回り平均が高くなる傾向です。以下ではそれぞれの利回り平均について、数値やその理由を紹介します。

区分マンション

新築の区分マンション1室を経営する場合、利回り平均は3〜4%程度です。先述のとおり、新築マンションは物件の取得費が高いため利回りが低い傾向があります。

区分マンションは1棟マンションに比べて戸数が少なく、回収できる家賃収入も限られています。1棟マンションよりも利回りが低くなりやすいでしょう。

1棟マンション

新築の1棟マンションを経営する場合、地域によって異なるものの、利回り平均は5〜6%程度です。1棟マンションは複数の入居者様から家賃を回収できるため、まとまった家賃収入を得やすい特徴があります。

1棟マンションは区分マンションよりも取得費が高額であるものの、空室が埋まればその分収益を獲得しやすいでしょう。地域にもよりますが、新築の物件は人気があり空室リスクは比較的低いといえます。

中古マンションの利回り平均

中古マンションは、新築マンションよりも利回りが高くなりやすい特徴があります。新築と同様に、区分マンションと1棟マンションでは利回り平均は異なり、1棟マンションのほうが利回り平均が高くなりやすいでしょう。以下でそれぞれの利回り平均について、数値やその理由を紹介します。

区分マンション

中古の区分マンション1室を経営する場合、利回り平均は4〜10%程度です。中古マンションは取得費が比較的安いため、高利回り物件が多くあります。

ただし、区分マンションは戸数が少ないため、空室が発生すると家賃収入がゼロになるリスクがあります。中古マンションは築年数の経過とともに空室が発生しやすいため、利回りが高くても必ずしも安定した収益が得られるわけではない点に注意が必要です。

1棟マンション

中古の1棟マンションを経営する場合、利回り平均は6〜8%程度です。1棟マンションは取得費が高額になりやすいものの、中古の物件であれば初期費用を抑えて物件を購入できます。

ただし、中古マンションは購入費用が安い一方で、管理費や修繕費がふくらみやすいリスクがあります。築年数が経過するにつれて、収支が悪化する可能性がある点にも注意が必要です。

地域別マンション利回り平均

利回り平均は地域によっても異なります。区分マンション・1棟マンションともに首都圏が最も低く、東北や信州・北陸、中国・四国などの地方で利回り平均が高くなる傾向があります。以下では、区分マンション・1棟マンションそれぞれの利回り平均を地域ごとに詳しく紹介します。

区分マンション

「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや ) 」の調査によると、2024年における区分マンションの利回り・物件価格・築年数の平均は以下のとおりです。

 利回り(%)価格(万円)築年数(年)
全国6.762,06831.5
北海道12.101,01037.5
東北12.731,90633.2
首都圏6.252,40732.3
信州・北陸16.3949836.6
東海9.341,47329.7
関西6.891,53429.0
中国・四国13.0270535.4
九州・沖縄9.321,12129.8

引用:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )

区分マンションを経営する場合、2024年における全国の利回り平均は6.76%です。2016年から2023年までは7%台をキープしていましたが、年々下落し2024年は7%を切る結果となりました。

区分マンションで最も利回り平均が高いのは、信州・北陸の16.39%です。一方、首都圏が6.25%と最も低く、物件価格が高額であることが利回りに大きく影響を与えていることがうかがえます。

1棟マンション

続いて、2024年における1棟マンションの利回り・物件価格・築年数の平均は以下のとおりです。

 利回り(%)価格(万円)築年数(年)
全国7.7417,93529.8
北海道8.7614.77324.3
東北10.6114,79631.9
首都圏6.8320,34429.3
信州・北陸12.5510,53132.1
東海9.3113,57731.7
関西8.1114,76732.0
中国・四国11.7712,14032.3
九州・沖縄9.0117,53829.4
引用:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )

1棟マンションの全国の利回り平均は7.74%です。2023年における全国の利回り平均は7.71%となっており、前年よりも0.03%の増加が見られます。

1棟マンションで最も利回り平均が高いのは、信州・北陸の12.55%です。一方、首都圏が6.83%と最も低く、区分マンション・1棟マンションどちらも同様に、物件価格が利回りに影響を与えやすいことがわかります。

マンション経営で収益を生む指標となる利回り

マンション経営ではより多くの収益を得ることはもちろん、安定して収益を生み続けることが重要です。マンション経営における「理想の利回り」「最低ラインの利回り」を知り、物件の良し悪しを図る指標とするとよいでしょう。指標となる利回りの具体的な数値は以下のとおりです。

 理想の利回り最低ラインの利回り
1棟マンション(新築)6~8%程度5%程度
1棟マンション(中古)8~10%程度7%程度
区分マンション(新築)4~5%程度3%程度
区分マンション(中古)6~8%程度5%程度

ここからは、1棟マンション・区分マンション、新築・中古それぞれの理想の利回りと、最低ラインの利回りに触れながら注意点を紹介します。

理想の利回り(表面利回り)

地域によって異なるものの、1棟マンションにおける理想の利回りは以下のとおりです。

●新築:6~8%程度
●中古:8~10%程度

一方、区分マンションにおける理想の利回りは以下のとおりです。

●新築:4~5%程度
●中古:6~8%程度

オーナー様の中には「利回りは高ければ高いほどよい」と考える方もいるでしょう。しかし、不動産に限らず投資では、利回りが高い商品ほどリスクが高いといわれています。

例えば、相場よりも大幅に価格が安いマンションがあったと場合、利回りが高く一見すると優良物件に思えるかもしれませんが、実際には「空室が埋まらない」「多くの修繕費がかかる」など、問題を抱えているケースも珍しくありません。

これからマンションを購入するオーナー様は、理想の利回りを基準としつつも、周辺環境や修繕履歴、地域の賃貸ニーズなどを調査したうえで総合的に判断することをおすすめします。

最低ラインの利回り

1棟マンションにおける最低ラインの利回りは、以下のとおりです。

●新築:5%程度
●中古:7%程度

区分マンションにおける最低ラインの利回りは、以下のとおりです。

●新築:3%程度
●中古:5%程度

これからマンションを購入する場合、物件の利回りが最低ラインを超えていれば、投資を検討する価値があるといえます。しかし、投資額に対して十分なリターンを得られない可能性があるため、リスクを十分に検討する必要があるでしょう。

また、副業として不動産投資を始める場合は、本業での収入があるため必ずしも高利回り物件にこだわる必要はありません。「マンション経営でどれくらい収入を得たいのか」など不動産投資の目的によって、利回りの許容範囲を決めておくとよいでしょう。

利回りと投資リスクの関係についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

■参考記事

【徹底解説】不動産投資の利回り計算! 賃貸経営を成功に導く指標とは

現金購入で始める!区分マンション投資のメリットとデメリット

マンション経営の収益シミュレーション

利回りの計算方法や基準値がわかったら、実際の物件を使って収益シミュレーションを行ってみましょう。

ここからは、資料が読みやすい中古マンションの事例を参考に、利回りのシミュレーションを紹介します。解説する事例は以下のとおりです。

●首都圏の中古区分マンション(1戸)の利回り
●首都圏の中古区分マンション(バルク)の利回り
●埼玉県の中古1棟マンションの利回り
●神奈川県の中古1棟マンションの利回り

それぞれの計算式に触れながら、利回りを算出する際のポイントをまとめました。

首都圏の中古区分マンション(1戸)の利回り

神奈川県にある中古区分マンションの利回り事例です。63戸ある部屋のうち区分所有分は1戸のみで、詳細は以下のとおりです。

物件区分マンション
地域神奈川県川崎市
年間収入82.4万円
物件価格648.8万円
営業純利益(NOI) 55.7万円

表面利回りと実質利回りを計算すると、以下のようになります。

【表面利回り】
82.4万円÷648.8万円×100=12.70%

【実質利回り】
55.7万円÷648.8万円×100=8.59%

表面利回りは12.70%、実質利回りは8.59%となりました。先述のとおり、中古区分マンションの理想の利回り(表面利回り)は6〜8%程度です。理想の利回りを大きく上回る結果となり、収益性が見込まる物件であるといえるでしょう。

■参考事例:TOP川崎第15の購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

首都圏の中古区分マンション(バルク)の利回り

東京都にある中古区分マンションの利回り事例です。総戸数26戸の中古マンションで、10戸を保有した場合の利回りシミュレーションを紹介します。詳細は以下のとおりです。

物件区分マンション
地域東京都板橋区
年間収入776.4万円
物件価格7,890万円
営業純利益(NOI)567.5万円

表面利回りと実質利回りを計算すると、以下のようになります。

【表面利回り】
776.4万円÷7,890万円×100=9.84%

【実質利回り】
567.5万円÷7,890万円×100=7.19%

表面利回りは9.84%、実質利回りは7.19%となりました。中古区分マンションにおける理想の利回り(表面利回り)を超える結果となり、投資を検討する価値があるといえます。

■参考事例:ジョイフル常盤台第三の購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

埼玉県の中古1棟マンションの利回り

埼玉県にある中古1棟マンションの利回り事例です。総戸数29戸の中古マンションを1棟保有した場合の利回りシミュレーションを紹介します。詳細は以下のとおりです。

物件区分マンション
地域埼玉県川口市
年間収入2,076万円
物件価格22,250万円
営業純利益(NOI)1,681万円

表面利回りと実質利回りを計算すると、以下のようになります。

【表面利回り】
2,076万円÷22,250万円×100=9.33%

【実質利回り】
1,681万円÷22,250万円×100=7.55%

表面利回りは9.33%、実質利回りは7.55%となりました。先述したように、中古の1棟マンションにおける理想の利回りは8〜10%程度です。乗降者数15万人を越える川口駅から徒歩6分という好立地にあり、表面利回り・実質利回りともに良好な優良物件であるといえるでしょう。

■参考事例:川口一棟マンションの購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

神奈川県の中古1棟マンションの利回り

神奈川県にある中古1棟マンションの利回り事例です。総戸数19戸の中古マンションを1棟保有した場合の利回りシミュレーションを紹介します。詳細は以下のとおりです。

物件区分マンション
地域神奈川県鎌倉市
年間収入2,130万円
物件価格24,315万円
営業純利益(NOI)1,740万円

表面利回りと実質利回りを計算すると、以下のようになります。

【表面利回り】
2,130万円÷24,315万円×100=8.76%

【実質利回り】
1,740万円÷24,315万円×100=7.15%

表面利回りは8.76%、実質利回りは7.15%となりました。表面利回り・実質利回りともに良好な数値で、鎌倉という立地的に希少性が高い物件だといえます。また、2007年7月に建築された物件であることから、空室リスクも比較的低いと考えられます。

■参考事例:鎌倉デザイナーズマンションの購入事例|不動産投資・投資用不動産・収益物件

利回り算出!区分マンションの売却事例

「保有している物件を売却したい」と考えるオーナー様は、物件の利回りを算出し、数値を確認したうえで出口戦略を検討する必要があります。利回りがあまりよいとはいえない物件でも、マンションの売却を得意とする不動産会社に依頼することで、納得のいく条件で売却することが可能です。

以下では、保有していたマンションを売却し、成約となった事例を紹介します。

【売却実績】終活に向けた最初の一歩!ワケあって相場よりも安い賃料で貸している区分マンションの一室を売却しました!

東京都中央区の区分マンションを経営するオーナー様の売却事例です。オーナー様は終活のために、保有しているマンションを手放すことを決意しました。

物件を調査したところ、旧耐震のマンションであることや、相場よりも賃料が安く利回りがあまりよくないことなど、いくつかの問題を抱えていることがわかりました。しかし立地がよく需要が見込める物件だったため、オーナーチェンジ物件としてすぐに販売を開始。予想を超える反響があり、オーナー様が納得する金額で売却が成立しています。

■事例:【売却実績】終活に向けた最初の一歩!ワケあって相場よりも安い賃料で貸している区分マンションの一室を売却しました!

当社自慢の投資家さんへターゲットを絞りメルマガで成功した売却事例

埼玉県川口市の区分マンションを経営するオーナー様の売却事例です。オーナー様がこれまで保有していた、分譲マンションの1室を売却したいと相談を受けました。

物件を調査すると、想定利回り9.5%を見込めることがわかり、投資家のお客様にメールマガジンを一斉送信。すぐに多くの問い合わせが入り、オーナー様が希望する条件で無事に売却が成立しました。

■事例:当社自慢の投資家さんへターゲットを絞りメルマガで成功した売却事例

マンション経営の利回りで注意するポイント

マンション経営では購入する物件を比較したり、出口戦略を検討したりするときに利回りが重要な指標となります。単に高利回りであればよいというわけでなく、以下のポイントを参考にするとよいでしょう。

●表面利回り・高利回りだけで判断しない
●利回りに影響するあらゆるリスクを考慮する
●イールドギャップも考慮する

ここからは、それぞれの注意点について詳しく解説します。

表面利回り・高利回りだけで判断しない

賃貸経営では修繕費や管理費、減価償却費などさまざまな費用が発生します。先述のとおり、表面利回りは諸経費が差し引かれていないため、実際の利回りよりも数値が高く出る傾向があります。実際の利回りと乖離が大きく「思うように収益が得られない」といったトラブルにつながるケースも少なくありません。

特に価格の安い中古マンションなどは、高利回りの物件が多くありますが、実際にはランニングコストが多くかかり実質利回りとの差が大きかったり、空室が目立つ物件で想定利回りになっていたりする可能性があります。

築年数の古い物件や人口が少ない地方の物件などは、そもそも賃貸需要が少なく満室稼働が難しいかもしれません。利回りだけで判断せず、ほかの条件についてもしっかり確認したうえで、物件を比較検討することが大切です。

利回りに影響するあらゆるリスクを考慮する

利回りは、あくまで一時的な状況を表す数値です。マンション経営では、空室リスクや家賃滞納リスク、家賃下落リスク、金利上昇リスクなど、さまざまなリスクが考えられます。「この先どのようなリスクが発生するのか」「収益にどのような影響を与えるのか」といった予測までは、利回りに考慮されていません。

例えば、賃貸経営を始めたものの空室が埋まらず、経営が悪化した場合は当初利回りとは収益が異なる可能性があります。またトラブルで突発的な支出が発生し、想定よりも経費が膨らむケースもあるでしょう。

物件取得時の利回りが継続するとは限らないため、長期的な収支シミュレーションを行い、起こり得るリスクを想定しておくことが大切です。

イールドギャップも考慮する

マンション経営を行う場合は、利回りだけを重視するのではなくほかの指標も参考にしましょう。不動産投資では、投資効率を判断するイールドギャップという指標があります。マンション経営におけるイールドギャップとは、物件の利回りからローン金利を差し引いた数値のことで、計算方法は以下のとおりです。

イールドギャップ=実質利回り−ローン金利

例えば実質利回りが7%、ローン金利が3%の場合、イールドギャップは4%です。イールドギャップはマンション経営の安定性を示す基準となり、数字が大きいほど高いレバレッジ効果が期待できます。中古マンション・新築マンションともにイールドギャップ3%以上を1つの目安とするとよいでしょう。

以下では、利回りや自己資金、借入額などの具体的な数字に触れながら、マンション購入の事例を紹介しています。より詳しい購入事例を知りたい方は、以下をご覧ください。

■参考事例:マンションの購入事例

まとめ マンション経営の利回り算出で悩んだらプロに相談しよう

マンション経営は、投資を行う物件選びから始まっています。利回りの数字を安易に捉えず、どの利回りが何を目的としているのか、どのような視点で考えるべきかを理解しておくと、マンション経営の成功確率が高まるでしょう。

リロの不動産】は多数の不動産取り扱い実績があり、収益を生み出す物件の具体的な条件を熟知しています。マンション経営を始める際のお困りごとを、お気軽にご相談ください。

なお、賃貸経営を成功に導くさまざまなノウハウや事例を公開しています。マンションの保有を検討しているオーナー様は、下記の記事・事例もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。