アパート経営の事例で解説!収益物件の賃貸管理会社を選定する方法と委託業務

2025.11.16

アパート経営で安定的な収益を上げるには、適切な運営管理を行うことが求められます。オーナー様による自主管理も可能ですが、多大な労力と時間がかかるため、賃貸管理会社に委託するのが基本です。そのため、賃貸管理会社の選定が、アパート経営の成否を決めるといっても過言ではありません。

この記事では、そんな賃貸管理会社の具体的な業務内容、賢い選び方から契約・費用のことまで、アパートのオーナー様が知るべきあれこれを詳しく解説します。

▼この記事の内容

●賃貸管理会社と近い存在に不動産仲介会社がある。賃貸管理会社は、オーナー様から依頼を受けマンションやアパートなどの収益物件の維持管理を専門に行う会社。不動産仲介会社は、物件の売買や賃貸借契約の仲介を専門に行う会社。

●自主管理と比較して賃貸管理会社を利用するメリットとしては、オーナー様の自由な時間が創出できる、賃貸経営のノウハウを活用できる、法的リスクへの対策とトラブル解決になる、などが挙げられる。

●自主管理と比較して賃貸管理会社を利用するデメリットとしては、管理手数料が発生する、質の良い賃貸管理会社を選定する必要、などがある。

●賃貸管理会社への委託管理には、一般管理契約とサブリース契約がある。サブリース契約には、空室リスクや家賃滞納リスク低減するメリットがあるが、オーナー様側からの契約解除が極めて困難というデメリットもある。

●サブリース契約の契約解除が難しいのは、借地借家法において、賃貸人からの契約解除には「正当事由」が必要とされているため。一般的に正当事由として認められるのは、物件の老朽化、経済的理由、オーナー様自身または親族の居住、立退き料の支払い、などがある。

●賃貸管理会社選びのポイントとしては、豊富な実績と経験を見極める、入居者募集力と空室対策を見極める、トラブル対応力と解決実績を評価する、顧客対応とコミュニケーション能力を確認する、などがあり、大手企業と地域密着企業のハイブリッドがおすすめできる。

●信頼できる賃貸管理会社は、物件の売買をサポートしてくれる。出口戦略においても、買い増しにおいても情報ネットワークにもとづいてデータドリブンな提案をしてくれる。その際に、融資・法務・税務のサポートもしてくれる。

●アパート経営をワンランクアップする方法として、資産管理会社の設立がある。メリットとしては、節税効果の最大化、相続・事業承継対策の円滑化、社会的信用の向上と融資機会の拡大がある。一方、設立には手間と費用がかかる、不動産の名義変更の際の税金の取り扱いなどに注意が必要となる。

目次

アパート経営の賃貸管理会社とは

最初に、賃貸管理会社とはどのようなもので、不動産仲介会社とはどのように違うのか、アパート経営においてどのような役割を担うのかといった基本を解説します。賃貸管理会社の詳細は、以下の関連記事や改善事例も合わせてご参照ください。

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賃貸管理会社と不動産仲介会社の違い

賃貸管理会社とは、マンションやアパートなどの収益物件のオーナー様から依頼を受け、物件の維持管理に関わる業務を行う専門会社です。あとで詳しく解説しますが、賃貸管理会社の業務は大きく「入居者管理業務」と「建物管理業務」の2つに分けられます。

賃貸管理会社は、入居者の募集・契約・管理・退去から建物のメンテナンスに至るまで、収益物件の運営管理業務全般を担うのが特徴。中でも、入居者募集後の物件管理が主な業務となります。

賃貸経営においては、賃貸管理会社のほかに不動産仲介会社が関わるケースもあります。不動産仲介会社は、その名のとおり、物件の売買や賃貸借契約の仲介を専門に行う会社です。賃貸仲介の場合、入居者募集と契約のサポート業務が主な業務内容となり、物件の管理業務は行ないません。

このように、賃貸管理会社と不動産仲介会社では業務範囲や得意とする業務分野が異なるため、オーナー様のニーズに合わせて両者を使い分ける必要があるでしょう。

アパート経営における賃貸管理会社の役割

収益物件の運営管理業務を専門的に行う賃貸管理会社ですが、アパート経営においては、主に次のような役割を担います。各業務の詳細については、「賃貸管理会社の具体的な管理業務」の章で詳しく解説します。

・入居者募集(リーシング)
・入居希望者様の内見対応、顧客フォロー
・入居申込者の入居審査対応、賃貸借契約の手続き
・契約更新、退去、原状回復の手続き
・毎月の家賃回収業務
・家賃滞納発生時の督促、請求手続き、法的対応
・入居者様からのクレームやトラブルへの対応
・共用部の日常清掃
・建物設備の管理、定期点検
・緊急時対応
・大規模修繕計画の立案
・リフォームやリノベーションの提案、工事の手配・管理

賃貸管理会社はこうした幅広い業務を行うことで、オーナー様の多岐にわたる業務負担を軽減するとともに、専門知識をもとに収益の安定化と資産価値の維持に貢献するのです。日常的な管理業務全般を賃貸管理会社に任せられるため、オーナー様は自らの本業やプライベートに集中できます。

アパート経営における賃貸管理会社の役割については、以下の関連記事や改善事例もご参照ください。

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賃貸管理会社を利用するメリット・デメリット(自主管理との比較)

アパート経営は、オーナー様による自主管理でも運営可能ですが、賃貸管理会社に委託することで多くのメリットを得られます。一方で、注意しなければならないデメリットも存在します。

ここでは、自主管理と比較した場合、賃貸管理会社の利用にどのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。

アパート経営で賃貸管理会社を利用するメリット

アパートの運営管理業務は多岐にわたるため、賃貸管理会社へ業務全般を委託すれば、オーナー様にとって多くのメリットが期待できます。アパート経営に必要な時間や知識を割く必要がなくなることから、リソースが限られるオーナー様にとっては大きなメリットとなるでしょう。以下では、具体的なメリットを2つご紹介します。

オーナー様の自由な時間創出

アパート経営において賃貸管理会社を利用するメリットとして大きいのが、管理運営業務にかける時間や労力を大幅に削減できることです。入居者募集や入居時・退去時の対応、家賃回収、クレーム対応、設備・内装の修繕手配など、アパート経営では日常的に数多くの業務が発生します。自主管理だと、こうした業務のすべてをオーナー様で対応しなければなりません。

賃貸管理会社に業務委託すれば、煩雑な管理業務の多くを代行してもらうことができます。オーナー様は自分の時間を自由に使えるようになり、充実した生活を送れるでしょう。会社員やほかの事業を手がけている方であれば、本業に集中できるのも大きな魅力です。

賃貸経営ノウハウの活用

賃貸管理会社は、過去に数多くの収益物件の運営管理業務を手がけています。長年の経験から培った空室対策や適正な家賃設定、入居者審査などの専門ノウハウを持っているのが賃貸管理会社の強みです。このようなノウハウや専門知識をアパート経営に活かせるのも、賃貸管理会社に業務委託するメリットといえるでしょう。

自主管理では解決が難しいことも、賃貸管理会社であれば解決に導けるかもしれません。その結果、アパート経営が安定しやすくなるのです。入居者様からのクレームや修繕依頼などにもスピーディで的確な対応が期待でき、入居者満足度向上や入居者様の定着にもつながります。

法的リスクへの対策とトラブル解決

アパート経営を含む賃貸経営には、民法や宅地建物取引業法(宅建業法)、借地借家法などのさまざまな法令が関係します。自主管理だと、数多くの法令に関する知識をオーナー様が把握しておかなければならないうえ、何か問題があったときもオーナー様がすべて対応しなければなりません。

賃貸管理会社に業務委託すれば、法令に則った正しい対応が期待できます。法改正があった場合にも、改正内容にそって迅速に対処してもらえます。万が一、家賃滞納や入居者間のトラブルなどが発生した際には、適切な法的措置も含めてトラブル解決に向けて対応してくれるので、より一層安定的なアパート経営を実現できるでしょう。

アパート経営で賃貸管理会社を利用するデメリット

アパート経営で賃貸管理会社を利用することには数多くのメリットがありますが、オーナー様が気をつけなければならないいくつかのデメリットも存在します。アパート経営を成功させるには、次に紹介する2つのデメリットも十分に理解したうえで賢く選択することが大切です。

管理手数料が発生する

賃貸管理会社にとっての収入源は、アパート経営を委託するオーナー様から受け取る管理手数料です。管理手数料は、アパートの運営管理業務の代行に対して支払う対価であり、一般的に家賃収入の5%程度が相場とされています。ここでいう家賃収入には、純粋な家賃に加え、入居者様から徴収する管理費や共益費なども含まれるケースが一般的です。

例えば、家賃9万円・管理費1万円、総戸数10戸のアパートで入居率80%だったとすると、1ヶ月あたりの家賃収入は「10万円×10戸×80%=80万円」。管理手数料は家賃収入の5%とした場合、「80万円×5%=4万円」を賃貸管理会社に支払うことになります。

このように、管理手数料は経営費用の一部となり、収益に大きな影響を与えます。

信頼できる賃貸管理会社を選定する必要がある

賃貸管理会社に委託したからといって、必ずしもアパート経営が円滑になるとはかぎりません。サービス品質やコストパフォーマンスは会社によって異なり、信頼性や対応力に劣る会社を選んでしまうと、かえって運営管理業務の質が下がってしまう可能性もあるからです。

入居者様への対応の質が悪いと不満につながり、入居率の低下から収益の悪化を招いてしまうでしょう。管理手数料を支払っているのに、収入が下がってしまっては元も子もありません。一度評判の下がった物件の収益力を再び上げるには、大きな労力がかかります。

良質で信頼できる賃貸管理会社を選ぶことが、アパート経営成功の大きなカギといえます。

一般管理契約とサブリース契約

アパート経営を賃貸管理会社に委託する際、契約形態としては大きく「一般管理契約」と「サブリース契約」の2種類があります。ここでは、それぞれの契約について詳しく解説しましょう。

一般管理契約

一般管理契約は、オーナー様が賃貸管理会社に、アパート経営に関連する管理業務の一部またはすべてを委託する契約形態です。一般管理契約は、すべての管理業務を賃貸管理会社に委託する「一括委託型」と、一部の業務のみを委託する「一部委託型」の2種類に分けることができます。

一括委託型(包括管理)

一括委託型(包括管理)は、アパート経営にまつわるすべての管理業務を賃貸管理会社に委託する契約形態です。賃貸管理会社が代行する業務は、入居者募集から毎月の家賃回収、日常的な入居者様からのクレーム対応、退去発生時の精算や原状回復の対応、清掃や点検などの建物管理に至るまで、多岐にわたります。

一括委託型の場合、オーナー様の日常的な業務がほとんど発生しないため、負担を最小限に抑えられるのが魅力で、多くのオーナー様が契約する契約形態になります。

一部委託型(特定業務委託)

管理業務のすべてを委託する一括委託型に対し、毎月の家賃回収代行のみ、トラブル発生時の対応のみなど、オーナー様にとって必要性の高い特定の業務だけを賃貸管理会社に委託するのが一部委託型(特定業務委託)です。

一部の業務だけを選定して委託するため、一括委託型に比べて、オーナー様のアパート経営に対する関与度が高いという特徴があります。管理手数料も安く抑えられます。ただし、オーナー様の業務量は多くなり、すべて自己責任となるため、賃貸経営に慣れたベテラン向きの契約といえます。実際に、自主管理や格安の手数料で管理していた結果、修繕積立金やリフォーム代金を十分に準備できずにご相談をいただくケースもあるため、注意が必要です。

サブリース契約(一括借上契約)

サブリース契約(一括借上契約)とは、賃貸管理会社がオーナー様から物件を一括して借り上げ、自らが賃貸人として入居者様に転貸する契約形態をいいます。オーナー様は、賃貸管理会社から毎月所定の賃料を受け取ることができます。

サブリース契約では、管理業務のすべてを賃貸管理会社に委託できるうえ、一定の家賃保証を受けられるのが一般的です。空室や家賃滞納によるリスクを賃貸管理会社が負うため、オーナー様にとってはリスクヘッジになります。

ただし、賃貸管理会社の要望による将来的な家賃減額リスクがあるほか、オーナー様からの中途解約に制約があること、賃貸管理会社の倒産リスクがあることなどに注意が必要です。

サブリース契約の種類ごとの違いやメリット・デメリットについては、こちらの記事も合わせてご覧ください。

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パススルー型

サブリース契約のうち、入居率に応じて、管理会社がオーナー様に家賃を支払う契約形態をパススルー型といいます。空室発生時にも一定割合の家賃保証を受けられることに加え、空室率が下がったり、市場の家賃相場が上昇したりしたときの増収分が、オーナー様の収益にも反映される点がメリットです。このあと紹介する家賃保証型に比べると、管理手数料も低めに設定される傾向にあります。

空室率の上昇局面や市場相場の下落局面では、オーナー様の受け取れる家賃収入も低くなる点は要注意です。

家賃保証型(定額保証型)

賃貸管理会社がオーナー様に対し、毎月定額の家賃を保証するのが家賃保証型(定額保証型)と呼ばれるサブリース契約です。空室や家賃滞納の有無にかかわらず、一定の家賃保証を受けられるため、アパート経営の収益が最大限に安定するのは大きな魅力といえます。

ただし、保証額は市場の家賃相場よりも低めに設定されます。

サブリース契約のメリット

アパート経営には特有のリスクがいくつかありますが、中でも気をつけなければならないのが、空室の発生により収益が悪化する「空室リスク」と、家賃滞納者がいることで期待した収入が入らなくなる「家賃滞納リスク」です。サブリース契約では、この2つのリスクを賃貸管理会社が負うため、オーナー様の収入を安定させられる点が最大のメリットといえるでしょう。

家賃保証型のサブリース契約は、空室や家賃滞納の状況に関係なく一定の家賃が保証されるため、アパート経営の安定性を重視するオーナー様には最適です。

サブリース契約では、入居者募集から契約に関する手続き、日常的な清掃や点検などのすべての管理業務を賃貸管理会社に任せることができます。さらに、オーナー様は空室率や家賃滞納の発生を気にせずにすむため、心理的なストレスも軽減されるでしょう。

本業で忙しい会社員の方が安定的な副収入や節税を目的としてアパート経営を行うケースなどでは、サブリース契約が有力な選択肢となります。

サブリース契約のデメリット

アパート経営の安定化に効果的なサブリース契約には、注意すべき点もあります。まず、気をつけなければならないのが、賃貸管理会社からの賃料減額請求によって、保証料が減額されるリスクがあることです。

サブリース契約における賃貸人はオーナー様、賃借人は賃貸管理会社となります。賃貸借契約の根拠法である借地借家法は、賃貸契約において賃借人を保護することを目的としているため、サブリース契約では賃貸管理会社の立場が強く保護されます。そのため「正当事由」がないかぎり、オーナー様から契約を解除することができません。

賃貸管理会社から賃料減額を請求されたとしても、オーナー様からは減額を拒否することも契約を解除することもできず、収益悪化を招くおそれがあります。サブリース会社の業務内容に不満があったとしても、簡単に契約を切り替えられない点もデメリットといえるでしょう。

契約期間中に賃貸管理会社が倒産した場合、入居者様から賃貸管理会社へ支払われた家賃の回収に時間がかかったり、回収そのものが難しくなったりするリスクもあります。

契約解除の正当事由について

前述のとおり、サブリース契約には、賃貸人であるオーナー様から契約解除するのが難しいという問題があります。これは、借地借家法において、賃貸人からの契約解除には正当事由が必要とされているためです。一般的に正当事由として認められるのはどのようなケースなのか、具体例を紹介しましょう。

物件の老朽化

築古のアパートにおいて老朽化が著しく進んでおり、維持修繕が困難であったり、安全上の問題が生じたりする場合、正当事由として認められる可能性があります。

このときポイントとなるのが、建て替えや解体の緊急性が高いかどうかということです。現行の耐震基準を満たしていないために大地震で倒壊のおそれがある物件、給排水管の老朽化が進行していて単なる修繕では対応ができない物件などは、現況のまま放置すると安全性に関わるため、正当事由として認められる可能性が高いでしょう。

一方、一部を補修すれば住み続けられる程度の老朽度合いであれば、正当事由としては認められないかもしれません。

経済的理由

オーナー様に経済的な理由がある場合も、正当事由として認められる可能性があります。例えば、オーナー様の経済状況が著しく悪化し、アパートローンの返済が困難になったケースなどが考えられます。この場合、ローンを完済するためには物件を売却せざるを得ないと見なされれば、サブリース契約を解除して、物件を第三者へ売却することが認められる可能性があるでしょう。

また、再開発事業などで物件売却の必要性が生じた場合なども、契約解除の正当事由に該当します。

オーナー様または親族の居住

オーナー様や親族が居住するため、物件の使用を希望する場合も、正当事由として認められることがあります。ただし、どのような場合でも正当事由となるわけではなく、賃借人(賃貸管理会社)よりも「物件を必要としている度合いが高い」と判断されなければなりません。

具体的には、ほかの不動産を所有していないオーナー様が自宅としての使用を希望する場合や、オーナー様の親や子の住む場所を確保する必要がある場合などが該当するでしょう。

立ち退き料の支払い

上記の正当事由を補完する要素として、オーナー様が賃貸管理会社に対して、「契約解除にともなう立ち退き料を支払う意思があるかどうか」というのもポイントになります。借地借家法第28条では、次のように定められています。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

(引用)e-Gov法令検索「借地借家法

条文にある「建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して」という部分が、立ち退き料に関して定めている箇所です。

サブリース契約の場合、妥当と考えられる額の金銭を支払うことが前提となります。妥当な金額がいくらかは、物件や契約内容によって異なるため、あらかじめ弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

賃貸管理会社の具体的な管理業務

アパート経営において賃貸管理会社が行う具体的な管理業務は、大きく「入居者管理」と「建物管理」の2つに分けられます。ここでは、それぞれの業務内容について詳しく解説します。

入居者管理

入居者管理は、入居者募集や賃貸借契約、退去・原状回復の手続き、家賃回収・家賃滞納に関する業務、日常的なクレームへの対応など、入居者様に関わる業務全般を指します。いずれもアパート経営の収益を直接左右する重要な業務です。

入居者募集(リーシング)

入居者募集は、入居者管理の中でもとりわけ収益に直結する業務の一つです。賃貸管理会社は、周辺地域の賃料相場や賃貸ニーズなどを調査し、適正な家賃を設定します。ターゲット層に効果的な物件情報の作成、広告戦略の検討などを行い、住宅情報サイト(SUUMO・HOME‘S・at-home)や提携する不動産仲介会社の店頭、物件情報雑誌、チラシなどに物件広告を掲載します。

単に広告をたくさん出稿すればいいわけではなく、ターゲットが興味を持ってくれるような内容を検討し、コストパフォーマンスの高さが求められるのです。

募集開始からしばらくしても入居者様が決まらない場合、家賃設定や広告戦略に誤りがある可能性があります。こうしたとき、迅速に戦略を変更し、客付けを進められるかどうかも賃貸管理会社の腕の見せ所といえるでしょう。

入居者募集や空室対策の詳細については、以下の関連記事や改善事例も合わせてご覧ください。

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内見対応と顧客フォロー

入居を希望する方が現れた際、その方をいかに契約まで導けるかというのも、賃貸管理会社の実力が試されるところです。入居希望者様から内見希望があったときには、内見をスムーズに手配し、丁寧に案内することが求められます。また、内見後もフォローアップを迅速に行い、入居希望者様の疑問や不安を解消したうえで、契約へとつなげます。

このフェーズにおける賃貸管理会社の質次第で、入居可能性が大きく変わってくるでしょう。ご案内した方が実際に入居した場合、入居者様との最初の接点にもなるため、非常に重要な業務といえます。

入居審査と賃貸借契約

入居の申し込みがあったら、申込者の収入や勤務先、連帯保証人、過去の居住履歴、信用情報などを審査します。審査の目的は、「家賃を安定的に支払える能力があるか」「滞納や入居者トラブルを起こすリスクはないか」といった点を確認することです。家賃滞納や入居者トラブルはアパート経営上の重大なリスクとなるため、問題を引き起こす可能性のある申込者を、審査で的確に洗い出す必要があります。

審査に通過したあとは、申込者に対して重要事項説明を行い、法令に則って賃貸借契約の締結を行います。契約書や重要事項説明書、その他契約時に必要な書類の準備も、賃貸管理会社の業務範囲です。

賃貸借契約時に敷金などの初期費用も預かります。初期費用のうち、敷金は、家賃滞納や原状回復費用など借主が負う債務を担保するために徴収されるものです。そのため、賃貸管理会社がオーナー様に代わって適切に管理するケースもあります。

更新と退去、原状回復手続き

多くの場合、入居者様と締結する賃貸借契約は2年ごとの更新となっています。アパートで一般的な普通建物賃貸借契約は、借主側から解約の意思表示がなければ、更新するのが基本です。そのため、基本的に契約期間満了の数ヶ月前に、賃貸管理会社から入居者様に対して契約更新の意思確認を行います。契約内で更新料の支払いや火災保険の更新が定められているときは、必要な手続きを滞りなく進めることも賃貸管理会社の業務です。

入居者様が退去する場合は、担当者が退去の現場に立ち会い、物件の損傷状況をチェック。国土交通省のガイドラインにもとづいて、損傷状況に応じた原状回復工事の見積もりと手配、敷金からの精算を行います。敷金の残額は、退去後なるべく早めに返還しなければなりません。

家賃回収業務

毎月の家賃が入金されているかどうかをチェックし、オーナー様へ確実に送金することも賃貸管理会社の業務です。家賃収入はアパート経営における収益の柱であり、毎月の締日が来たら迅速にチェックし、家賃未払いの入居者様がいたときには、速やかに適切な対応をとらなければなりません。

このとき、入金チェックを担当者の目だけで行っていると、確認が遅れるだけでなく、入金漏れを見逃すなどのミスにつながりやすくなります。賃貸管理会社には、効率的な入金確認システムで収益の安定性を確保することが求められるでしょう。

家賃滞納発生時の対応

すべての入居者様から期日どおりに家賃が入金されていれば問題ありませんが、中には、何かしらの理由で家賃を滞納する入居者様もいます。入金確認の結果、家賃滞納が明らかになった場合には、滞納者に対する電話や書面での督促を迅速に行わなければなりません。入居者様本人から支払ってもらうのが難しい場合には、連帯保証人への請求も行います。

入居者様に家賃保証会社への加入を義務づけている物件では、契約している保証会社が滞納者への督促を行います。

度重なる督促を経ても滞納が続く場合には、必要に応じて法的措置を検討する段階です。訴訟手続きには専門知識が求められますが、賃貸管理会社は弁護士とも連携して手続きを進めます。

クレーム・トラブルへの対応

漏水、設備の故障、騒音、近隣トラブルなど、入居者様からのクレームや相談は24時間365日寄せられます。オーナー様だけでこれらの声すべてに対応しようとすれば、その労力は計り知れません。

賃貸管理会社に管理業務を委託すれば、こうした入居者様のクレームやトラブルにも対応してもらえます。窓口は24時間体制のケースがほとんどで、入居者様から連絡が入れば、迅速な初期対応を実施。解決に向けていち早く動いてくれるでしょう。

問い合わせに対して迅速に対応してくれるという安心感が、入居者満足度の向上につながり、入居者様の定着や入居率の向上に寄与します。

オーナー様への報告義務

業務の委託者であるオーナー様に対して、業務や物件の状況を定期的に報告するのも、賃貸管理会社の重要な業務です。具体的には、入居状況、家賃の入金・滞納状況、トラブルの発生状況、修繕状況などを報告します。ポイントを押さえた的確な報告により、オーナー様が経営を行ううえでの判断材料を提供するのも、賃貸管理会社の役割といえるでしょう。

報告の頻度や内容はある程度自由に決められるため、契約時にしっかりと認識を合わせておくことが肝心です。うまくいっていることだけでなく、リスクや課題も隠さずに報告してくれる賃貸管理会社は信頼に値するといえます。

建物管理

アパートの資産価値を維持したり向上させたりするためには、適切な建物管理が欠かせません。賃貸管理会社は、共用部の清掃から設備の点検、修繕の手配、大規模修繕計画の策定まで、建物管理に関する業務にも幅広く対応します。以下では、具体的な業務内容を見ていきましょう。

共用部の日常清掃

賃貸管理会社に業務委託すると、アパートのエントランス、廊下、階段、ゴミ置き場、駐輪場といった共用部を定期的に清掃してくれます。共用部の美観や衛生状態を維持できていれば、入居者様の満足度が高まるだけでなく、入居者募集時に内見者の印象を良くすることにもつながるでしょう。

日常清掃に加え、数ヶ月に1回程度の頻度で、ポリッシャーや高圧洗浄機などを使った定期清掃を行うこともあります。植栽の水やり、剪定なども実施し、アパートの資産価値の維持にも貢献します。

設備の管理と定期点検

エレベーターや消防設備、給排水設備、防犯設備など、アパートの各種設備を適切に管理するのも、賃貸管理会社が行う建物管理業務の一つです。これらの設備は建物の機能性や安全性に直結するため、法定点検の実施が義務づけられている場合があります。法定点検を決められた頻度で実施するのはもちろんのこと、任意点検を適宜実施し、故障や不具合を未然に防ぐのも大切な役割です。

賃貸管理会社がこまめに設備を点検していれば、何か問題があったときもいち早く発見でき、入居者様が不満を感じる前に手を打つことができるかもしれません。クレームになる前の迅速な対応が、入居者満足度のさらなる向上につながるでしょう。

緊急時の対応

水漏れ、停電、火災などの緊急事態の際には、賃貸管理会社が迅速な初期対応と専門会社や消防などの手配を行い、入居者様の安全確保と被害の拡大防止に努めるのが基本です。

日頃どれだけ点検や修繕をしっかりしていたとしても、緊急事態が発生する可能性はあります。だからこそ、いざ起きてしまったときの対応力が重要です。緊急事態の発生により入居者様が不安を覚えたとしても、スピーディかつ適切な対応を取ってくれることが分かれば、入居者様から大きな信頼を得られるでしょう。

賃貸管理会社を選ぶ際は、日常の管理業務に長けていることに加え、緊急時のサポート体制が充実しているかどうかも重要な判断基準となります。

大規模修繕の計画立案

どんな建物でも経年劣化するものです。築年数の経過による家賃や資産価値の低下を緩やかにするには、適切なタイミングでの修繕が欠かせません。

標準的な木造アパートの場合、12年から15年に1回程度の周期で大規模修繕を行う必要があります。大規模修繕では、外壁塗装、屋上防水、共用部の塗装などを実施するため、まとまった費用を負担しなければなりません。そのため、長期的な修繕計画を立て、必要な資金を計画的に積み立てることが求められます。

修繕の適切な時期の検討と大規模修繕計画の立案、予算の検討、資金管理なども賃貸管理会社の業務です。

リフォーム/リノベーションへの対応

築年数が経過すると、新築アパートなどと比較して競争力が落ちていきます。空室リスクの軽減と物件価値の向上を図るためには、適切なタイミングでのリフォームやリノベーションも必要になるでしょう。リフォーム/リノベーションの実施に向けた計画を立てるのも賃貸管理会社の役割です。

リフォームは、悪い状態を改良・改善し、設備の入れ替えや建物の修繕を実施します。いわば「マイナスをゼロにする」行為です。一方、リノベーション(賃貸経営リノベーション)は、部屋の間取り変更や大規模な工事を行って居住空間の性能を向上させ、価値を高めます。これは「マイナスをプラスにする」行為です。

精度の高いマーケティングにより、ターゲットのニーズに合ったリフォーム/リノベーションを適切なタイミングで実施することが、長期的な収益の安定化につながります。

設備・工事対応力については、以下の改善事例も参考にしてください。

収益物件のリフォーム改善事例

収益物件のリノベーション改善事例

賃貸管理会社選びのポイント

賃貸管理会社が行う入居者管理業務と建物管理業務は、どちらもアパート経営の収益に直結する重要な業務です。それゆえに、どの賃貸管理会社を選ぶかがアパート経営の成否を大きく左右します。

ここでは、賃貸管理会社選びで押さえておくべきポイントを5つ紹介します。

豊富な実績と経験を見極める

実績が豊富な賃貸管理会社は、これまでの経験にもとづいたノウハウが蓄積していると考えられます。賃貸管理会社を選ぶ際は、各社の管理戸数や創業年数を確認してみるとよいでしょう。

実績や経験を確認するには、その会社のホームページをチェックするのが最も手軽な方法です。管理戸数や管理物件の平均入居率、物件事例などを数多く掲載している賃貸管理会社は、自社の実績に自信を持っていると判断できます。

会社によって得意とする分野や管理物件の種類が異なります。入居者募集を強化したいなら客付けを強みとする会社、建物管理に注力したいなら管理に定評のある会社といった具合に、注力したい部分に強い会社を選ぶのがおすすめです。オーナー様が所有している物件の種別や地域での実績が豊富な会社を選ぶと、安定した収益を得られる可能性が高まるでしょう。

入居者募集力と空室対策を見極める

入居率を高い状態で維持できれば、安定した収益を確保できます。アパート経営の賃貸管理会社選びでは、会社ごとの入居者募集力や空室対策を見極めることが重要です。これらの能力を見極めるには、次のような項目が参考になります。

1.住宅情報サイト(SUUMO・HOME‘S・at-home)を有効活用できているか

見栄えのする画像を多数掲載している、詳細な情報を記載している、情報をこまめに更新しているなど

2.法人契約の実績があるか

法人によるまとまった戸数の契約が期待できる

3.具体的な空室対策の事例が公開されているか

精度の高いマーケティングにもとづく家賃設定、リフォーム提案など

トラブル対応力と解決実績を評価する

アパート経営の収益安定化のためには、なるべく早めの客付けとともに、既存の入居者様の定着を図ることが欠かせません。入居者様に長く住んでもらうには、満足度を高める取り組みが必要となります。その一つとして重要なのが、賃貸管理会社のトラブル対応力と解決力です。

具体的には、設備故障や近隣トラブルなどが生じた際の対応スピードが求められます。緊急時対応を含め、入居者からの要望やクレームに素早く適切に対応できる会社を選べば、入居者様の信頼を獲得できるでしょう。対応の良さが評判になると、客付けにもプラスの影響が期待できます。

トラブル対応力の高さを見極めるには、連絡先の掲載の有無、24時間365日対応可能なサポート窓口の設置有無などを確認するのが有効です。

また、家賃滞納時の対応、法的措置が必要になった場合の弁護士との連携体制なども、評価すべきポイント。ホームページなどで、過去の解決事例などをチェックすることをおすすめします。

顧客対応とコミュニケーション能力を確認する

どれだけ優れた会社であっても、窓口となってオーナー様とやりとりするのは担当者です。そのため、担当者の質も賃貸管理会社選びの重要な基準となります。

アパート経営に関する専門知識やサポートの経験が豊富なこと、説明が分かりやすく会社にとって不都合なこともしっかり説明してくれること、問い合わせに対するレスポンスが速いことなどを材料に、担当者の顧客対応能力を見極めましょう。実際に管理運営を委託したときのことも考え、定期報告の頻度や内容についても事前に確認しておきたいところです。

オーナー様の疑問や不安に親身になって寄り添い、的確なアドバイスを提供してくれる会社や担当者が、アパート経営のパートナーとして理想的といえるでしょう。

おすすめは大手企業と地域密着企業のハイブリッド

賃貸管理会社には、全国規模でサービスを提供する大手企業と担当する地域の情報に詳しい地域密着企業の2つがあります。それぞれのメリット・デメリットを簡単にまとめたものが次の表です。

 主なメリット主なデメリット
大手企業・全国的な知名度とブランド力により高い集客力を誇る
・賃貸仲介業務も手がけているケースが多く、客付けに強い  
・管理実績が豊富で、さまざまなノウハウを持っている
・大企業で業務がマニュアル化されているため、イレギュラーな対応が難しいケースもある   ・担当者が異動することがある
・赴任したばかりの担当者だと、地域の情報に詳しくない場合がある
地域密着企業・地域密着ならではのローカルな情報に詳しく、地域のネットワークや地域特性をベースにした空室対策が期待できる
・担当者との距離が近く、何かあったときでもすぐに駆けつけてもらえる可能性が高い
・大手企業に比べて管理手数料がリーズナブルな傾向にある
・担当者の裁量が大きいため、担当者次第で管理や対応の質が大きく変わってしまう
・中小規模の企業がほとんどなので、将来の倒産リスクがある
・情報量の多さ、最新技術の導入などで大手企業に劣る傾向がある

このように、大手企業と地域密着企業は異なる強みを持っています。委託先として理想的なのは、地域密着企業のようなきめ細やかさや柔軟性を持ちつつ、大手企業としての高い集客力と安定性を持った「ハイブリッド型企業」です。

大手企業と地域密着型の比較や選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【賃貸管理会社】大手と地域密着型のどっちがおすすめ?選び方とは

賃貸管理会社を変更する際の注意点

アパート経営に際して賃貸管理会社を選定したものの、日々の対応や管理内容に納得できない場合、途中で会社を変更することも可能です。運用中のアパートの賃貸管理会社を変更するときには、次に挙げる4つの点に注意しましょう。

賃貸管理会社の変更を考えるべきケースや変更手順などは、こちらの記事も合わせてご参照ください。

管理会社の変更はあり?賃貸経営安定化のためにオーナー様がなすべきこと

入居者様への家賃振込先口座変更のお願い

家賃回収業務を賃貸管理会社に依頼している場合、入居者様の家賃振込先口座は、賃貸管理会社指定の銀行口座となるのが一般的です。この場合、賃貸管理会社が変更になれば家賃振込先口座も変わるため、あらかじめ入居者様に通知しておかなければなりません。金融機関の変更によって、振込手数料負担が新たに発生する入居者がいる可能性もあるため、丁寧に説明することが求められます。

もし、賃貸管理会社変更後、入居者様が以前の口座に誤って振り込んでしまうと、旧賃貸管理会社に対して組み戻しを依頼する必要が生じます。余計な手間がかかるうえに、振込手数料も支払わなければならないでしょう。

口座変更の通知漏れを防ぎ、入居者様への丁寧な説明を行うためにも、新たな賃貸管理会社の担当者と相談し、入居者様へのあいさつ周りをしてもらうのが効果的です。

家賃保証会社との契約の確認

賃貸管理会社の変更時には、家賃保証会社との契約状況も確認しておきましょう。家賃保証会社との契約は、多くの場合、オーナー様・賃貸管理会社・家賃保証会社の三者間契約となっており、仮に賃貸管理会社が変更になったとしても、契約自体は継続する仕組みとなっています。

しかし、中には、家賃保証会社との契約が旧賃貸管理会社の名義になっていて、賃貸管理会社との契約終了にともない、家賃保証会社との契約も終了するケースが見られます。万が一、家賃保証契約が切れたことに気づかず放置していると、家賃滞納が発生したときに損害を被るおそれがあるでしょう。

賃貸管理会社を変更する際は、現行の家賃保証会社との契約を新しい会社に切り替えられるのか、あらためて契約を結び直す必要があるのか、確認しておくことが大切です。新たな契約を締結しなければならない場合、余計な手間や時間、費用が発生することも認識しておきましょう。

金融機関に事前に連絡する

アパートローンを利用しているケースでは、賃貸管理会社の変更について、金融機関へ事前に連絡しておく必要があります。

金融機関は、アパートローンを融資するにあたって物件の収益性を考慮して、融資額や返済期間を設定しています。物件の管理業務全般を担う賃貸管理会社は、収益性を大きく左右する要素であり、変更するとなれば金融機関にも影響を及ぼす可能性があるのです。事前に連絡することなく勝手に変更してしまうと、金融機関との信頼関係が崩れるおそれもあります。

また、アパートの返済口座が家賃入金口座と連動している場合、金融機関へ事前に口座変更の届出も行いましょう。滞りなくローン返済が継続されるよう、どのような手続きが必要なのか、金融機関へ早めに確認しておくことをおすすめします。

旧会社への対応

旧賃貸管理会社は契約解除が決定しているため、切り替えまでの管理業務に力が入らなかったり、契約解除手続きに非協力的だったりするケースも考えられます。契約解除と新会社への切り替えがスムーズに進むよう、しっかりと準備しておくことが重要です。

まず、旧賃貸管理会社が余計な不満を抱くことがないよう、契約にある解約予告期間は必ず守りましょう。なぜ変更するのか、理由も明確に伝えることが求められます。未精算金もお互いに確認しておき、トラブルを未然に防ぐよう心がけましょう。

旧賃貸管理会社に解約を通知し、新賃貸管理会社と管理委託契約を締結したら、両者間での引き継ぎが行われます。引き継がれるのは、入居者様から預かっている敷金、賃貸借契約関連書類、管理書類、物件の鍵などです。また、注意すべき入居者様がいるなど、特別な事情がある場合には、情報が引き継がれているかも確認しておきましょう。

トラブル防止のカギとなるのは、新会社との協力関係です。旧会社への解約通知送付や引き継ぎに関して、新会社と緊密に連携しながら、粛々と手続きを進めましょう。

アパート経営を強くする『4つの空室対策』とは

『4つの空室対策』とは、アパートの管理運営を数多く手がけてきた【リロの不動産】が提唱する、アパート経営における空室対策のフレームワークです。物件の状況に応じて、各対策の優先度やバランスを考慮することにより、安定的なアパート経営が可能となります。ここでは、4つの対策の内容と重要性について見ていきましょう。

『4つの空室対策』について詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご参照ください。

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【募集対応】入居者募集力

空室対策で大切なのが、入居希望者様の集客力です。空室発生時、より多くの入居希望者様を集め、早期に入居を決めることが空室率の低下につながります。

2024年度「住宅市場動向調査」によれば、賃貸住宅の入居希望者様が物件を探した方法のうち、「インターネット」が全体の55.8%を占めています。次いで多かったのが「不動産業者(44.7%)」でした。この結果からも、集客力を高めるには、インターネットの活用が重要であることが分かります。

特に、住宅情報サイト(SUUMO・HOME‘S・at-home)に掲載する物件情報の充実度は、集客力を大きく左右する要素です。アパートの魅力を最大限に引き出す物件写真や動画の撮影、ターゲットのニーズに的確に応える説明文の作成を心がけましょう。また、SNSを活用したり、駅に設置される賃貸情報誌に出稿したりと、多様な募集媒体に掲載することで、より多くの方の目に触れる可能性があります。

ときには、フリーレントなどのキャンペーンで集客を強化しながら、着実に入居者様を獲得するのが賃貸管理会社の役割です。

出典:国土交通省 令和6年度住宅市場動向調査 報告書

【仲介対応】仲介の対応力

賃貸管理会社の仲介の対応力によって、入居希望者様の成約率が大きく変わります。お問い合わせに対して迅速にレスポンスし、知りたい情報を的確に提供することで、入居希望者様の信頼を得られるのです。

そのためには、賃貸管理会社が提携する不動産仲介会社との連携を密にし、物件情報を積極的に提供する必要があります。地域に強い不動産仲介会社と緊密に連携していれば、確度の高い入居希望者様にアプローチできる可能性が高まるでしょう。

入居希望者様を成約に結びつけるには、担当者の人柄や丁寧な対応も重要です。内見時には、物件の強みだけでなく弱みも含めて正直にお伝えし、入居希望者様の悩みや不安を解消することが求められます。その後の契約手続きも迅速かつ丁寧に行うことで、入居後の信頼感や安心感にもつながるのです。

賃貸管理会社の仲介業務の質は、入居希望者様の成約率を高めるためだけでなく、入居後の信頼関係構築にも大きく影響します。

【管理対応】入居者満足度を高める賃貸管理

賃貸管理会社の管理の質が良ければ、入居者様の定着につながります。入居者様の入れ替わりが多いほど、空室で家賃収入の入らない期間が長くなるうえ、入居者募集や原状回復工事のための費用がかさみます。質の高い管理で入居者満足度を高め、既存の入居者様になるべく長く住んでもらうことも重要な空室対策なのです。

「近隣住民がうるさい」「ゴミ出しのマナーが悪い」といった入居者様のクレームや、住宅設備の故障、水漏れといった設備トラブルには、迅速に対応しなければなりません。クレームは、入居者様が一定期間我慢したうえで寄せられている可能性もあり、対応が遅れると信頼を失うことになりかねません。何か問題があった場合にすぐ伝えてもらえるよう、日頃から入居者様と密なコミュニケーションを取ることも、賃貸管理会社に求めるべき役割といえるでしょう。

共用部の清掃やメンテナンスを徹底することも大切です。美観や安全性に関わる業務の質が高いと、入居者様の満足度が高まるだけでなく、内見時の入居希望者様の印象も良くなります。その結果、成約率のアップにも効果を発揮するのです。

【設備・工事対応】原状回復/リフォーム・リノベーション

どれだけ魅力的なアパートでも、いずれは入居者様の退去のタイミングが訪れます。退去後には原状回復を実施し、新たな入居者様を迎え入れる準備をしなければなりません。原状回復工事をスピーディかつ適切な費用で行えば、入居者募集のフェーズへ速やかに移行することができ、空室期間を短く抑えることができるでしょう。

必要に応じてリフォーム/リノベーションを実施することも、空室対策につながる大切な要素です。建物は経年劣化するうえ、時代によって住まいのニーズも変化するため、築年数の経過とともに競争力が落ちていきます。築年数が経ったアパートの資産価値や競争力を維持するには、適切なタイミングでリフォームやリノベーションを実施し、最新のニーズに対応できるようアップデートすることが求められるのです。

収益物件におけるリフォームやリノベーションについては、以下の関連記事や改善事例も合わせてご覧ください。

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物件売買をサポートする賃貸管理会社

信頼できる賃貸管理会社は、アパート経営の入口・出口における物件売買も強力にサポートしてくれます。どのようなサポートを期待できるのか、具体的な業務内容を見ていきましょう。

データドリブンな出口戦略を提案

賃貸管理会社というと、所有物件の入居者管理・建物管理を専門的に行う会社というイメージがあるかもしれません。

しかし、数多くの収益物件を管理しているからこそ、地域の賃貸マーケットを詳しく把握しているのも賃貸管理会社であり、物件価格や適正家賃の動向など、賃貸経営のカギとなるさまざまな情報を内部に蓄積しています。こうしたことから、賃貸管理会社は、収益物件の売買についても高い提案力を有している場合があるのです。

物件売却などの出口戦略は賃貸管理会社に相談するのがおすすめです。賃貸管理会社は、実際に物件を管理しているため、当事者として周辺のマーケットや物件のリアルな競争力・ニーズを把握しています。賃貸管理会社に相談すれば、数多くの物件を管理してきたデータの蓄積と、その物件の管理を通して得た最新のデータをもとに、経験や勘だけに頼らないデータドリブンな出口戦略の提案が期待できるでしょう。

物件情報ネットワークで効率的な買い増し

前述のとおり、賃貸管理会社は物件の管理を通して、地域の賃貸マーケットを熟知しています。社内に蓄積されたマーケットデータは、物件購入の際にも大いに役立つでしょう。

賃貸管理会社は不動産仲介会社やオーナー様など、収益物件に関する幅広いネットワークを構築しています。物件購入を賃貸管理会社に相談すれば、こうしたネットワークを活用していち早く物件情報にアクセスできるため、優良物件を購入できる可能性も高まるでしょう。

新たに買い増した物件の管理業務を任せることも可能なので、資産拡大を効率的に進められます。

融資・法務・税務へのサポート

賃貸管理会社はオーナー様のアパート経営が軌道に乗るよう、不動産の専門家として融資・法務・税務などのサポートを全力で行ってくれます。

自主管理だと各専門家に個別で相談しなければなりませんが、信頼できる賃貸管理会社をパートナーに迎えた場合、「何かあったらまずは賃貸管理会社に相談すればいい」という安心感を得られるのも魅力です。

物件取得時であれば、金融機関と融資交渉に当たったり、弁護士や税理士などの専門家と連携して課題を解決したりといった具合に、オーナー様が安心して取引できるよう取り計らってくれるでしょう。

融資・法務・税務のサポートに関しては、以下の関連記事や事例も合わせてご参照ください。

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アパート経営をワンランクアップする資産管理会社の設立

アパート経営が軌道に乗ってきたら、資産管理会社の設立を検討するのも一つの手です。法人化することで、アパート経営をワンランクアップさせることができます。アパート経営の法人化によるメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

アパート経営法人化のメリット

アパート経営の法人化には、単に個人で所有するのに比べて多くの利点があります。税制面・資産承継・事業継続性の3点において、大きなメリットを享受できるでしょう。

節税効果の最大化

アパート経営を法人化するメリットとして第一に挙げられるのが、アパート経営による節税効果を最大化できることです。

個人でアパート経営を行う場合、家賃収入から必要経費などを除いた不動産所得に対し、所得税が課されます。所得税は、所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税制度を採用しているため、一定以上の所得がある場合、最大45%の税率が適用されます。一律10%の住民税を含めると、実に最大55%(復興特別所得税を除く)もの所得税を納めなければなりません。

法人でアパート経営を行う場合、不動産所得に対して法人税が課されます。法人税は所得税と異なり、企業の種類や規模ごとに一定の税率が設定されており、中小企業の場合の実効税率(法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などを合計した、実際に課される税率のこと)は約30%です。

一定以上の所得があるオーナー様であれば、法人化したほうが節税になります。アパート経営による所得が増えるほど、法人化による節税メリットが大きくなるというのもポイントです。

ほかにも、家族への役員報酬や給与という形で所得を分散させたり、個人では認められない経費を法人の経費として計上したりといったことも可能になるため、さらなる節税効果が期待できます。

相続・事業承継対策の円滑化

アパート経営の法人化は相続対策としても有効です。

不動産は金融資産に比べて相続税を安く抑えられるため、相続対策としてアパート経営に取り組む方も多くいます。しかし、実物資産である不動産は、相続人が複数いる場合に分割しにくいのが難点です。公平な分割が難しいからといって、複数の相続人による共有名義となれば、売却や建て替えなどに際して意見がまとまらず、相続人間のトラブルに発展するおそれもあります。

これに対し、設立した資産管理会社の名義でアパートを所有すれば、相続・贈与する資産は会社の株式となります。株式は公平に分割しやすいため、不動産そのものを分割するよりも円滑に資産を継承することが可能です。

このように、アパート経営の法人化は相続税の節税になるだけでなく、次世代への円滑な引き継ぎにも寄与します。

社会的信用の向上と融資機会の拡大

次なる物件取得に向けた融資を受けやすくなるというのも、アパート経営を法人化するメリットの一つです。というのも、個人事業主よりも法人のほうが信用力が高いと見なされる傾向にあり、金融機関からの社会的信用も得やすいのです。そのため、個人事業主では借入が難しい条件であっても、法人化すれば融資を受けられる可能性があります。

新たな融資を受けやすくなることで、物件取得に向けた資金調達が容易になります。結果として、個人でアパート経営を行うよりも、効率的に資産を拡大できるかもしれません。

大規模修繕費用などを有利な条件で借り入れられれば、所有物件の資産価値の維持向上にもコストをかけられるようになります。結果として、長期にわたる収益の安定化にもつながるでしょう。

アパート経営法人化のデメリット

アパート経営の法人化には多くのメリットがあると紹介しましたが、必ずしもいいことばかりではありません。設立検討にあたっては、次に紹介する2つのデメリットも理解したうえで、総合的に判断する必要があります。

設立には手間と費用がかかる

資産管理会社はいわゆるペーパーカンパニーですが、設立にあたっては、登録免許税や登記手続きを依頼する司法書士への報酬などの初期費用がかかります。株式会社の設立にかかる費用の目安は20万円〜30万円程度です。運営している間も、税理士への報酬や法人住民税など、個人事業主ではかからないランニングコストが発生します。

前述のとおり、中小企業の法人税の実効税率は約30%です。単純に考えれば、個人の課税所得が900万円以上(所得税33%+住民税10%)なら法人化したほうが節税になりますが、法人の設立や運営にかかる費用を加味すると、課税所得1,800万円以上が判断基準になるでしょう。

不動産の名義変更に注意

もともと個人所有だった不動産を、新たに設立した資産管理会社の名義に変更する場合、所有権移転にともなう譲渡所得税や登録免許税、不動産取得税などの税金が発生する点にも注意が必要です。また、個人で借り入れたアパートローンの残債がある場合、法人化によって金融機関との再契約が必要となるケースもあるため、慎重な検討が求められます。

上述のように、個人で始めたアパート経営を法人経営に切り替えるには、手間と費用がかかります。近いうちに法人化することを想定しているのであれば、最初に資産管理会社を設立したうえで、アパート経営に取り組むのがおすすめです。

アパート経営の法人化について詳しく知りたい方は、こちらの関連記事も合わせてご覧ください。

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まとめ

アパート経営には、入居者募集から契約対応、入居者様とのコミュニケーション、退去時の対応、原状回復、共用部の清掃・点検、大規模修繕計画の立案と実行など、多岐にわたる管理業務が存在します。いずれも安定的な収益を確保するために欠かせないものばかりですが、オーナー様が自主管理するには限界があります。だからこそ、賃貸管理会社選びと活用がアパート経営の成否を大きく左右するのです。

今回解説した内容を参考に、賃貸管理会社の役割、業務内容、契約形態、メリット・デメリットなどを正しく理解し、自分の経営スタイルに適した信頼できるパートナーを見つけましょう。

【リロの不動産】は、多種多様な賃貸経営と管理業務を手がけてきた経験をもとにした、データドリブンな賃貸経営サポートを強みとしています。収益物件の購入からリーシング、入居者管理、建物管理、大規模修繕・リフォーム・リノベーション、出口戦略としての物件売却に至るまで、アパート経営のすべてをトータルで支援可能です。

アパート経営の最適なパートナーとして、ぜひ【リロの不動産】をご活用ください。気になる方は、以下の関連記事や改善事例もご覧ください。

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この記事を書いた人

秋山領祐(編集長)

秋山領祐(編集長)

【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。