マンション経営に必要な初期費用の目安|事例で知る費用経費や注意点
2025.01.12マンション経営を始めるには、初期費用にあてる資金を準備しなくてはなりません。余裕を持って準備を進めるためにも、どのくらいの金額が必要なのか、具体的にどんな費用に充てられるのかなど、事前に把握しておくことが大切です。
さらにマンション経営を行う間は、継続的な維持費や税金も発生します。初期費用だけでなく、維持費用も意識しておくことが、マンション経営を成功させる鍵といえるでしょう。
本記事では、マンション経営にかかる初期費用や維持費、税金について詳しく解説します。マンション経営を成功に導くために重要なポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
▼この記事の内容
●マンション経営にかかる初期費用は、新築か購入かで異なる
●新築は建築費の5~7%、購入は物件価格の10%程度が初期費用の目安
●初期費用を少なく抑える方法もあるが、先々の収支に影響することも
●マンション取得~賃貸管理~売却までサポートしてくれる賃貸管理会社に相談するのがおすすめ
目次
マンション経営にかかる初期費用
マンション経営の初期費用の目安は以下のとおりです。
【初期費用の目安】
既存マンションを購入:物件価格の10%前後
マンションを新築:建築費の5~7%程度
初期費用には以下のような費用が含まれます。マンション経営には区分と1棟の2種類がありますが、どちらのケースでもマンションを所有する際に一般的にかかる費用です。
●仲介手数料
●登記費用
●印紙税
●損害保険料
●固定資産税・都市計画税
●不動産取得税
●ローン事務手数料、保証料(ローンを利用する場合)
なお、所有あるいは購入した土地にマンションを建てる場合は、地盤調査など土地に関する費用が加わります。まずは、各費用の概要やかかる金額の目安などを押さえていきましょう。
以下ではアパート・マンションの売買事例の一部を紹介します。
■参考事例:購入の改善事例
マンション購入費用および取得費用
マンションの取得費用は以下のとおり、パターンによって異なります。
●土地を購入してマンションを新築:土地代+本体工事費+付帯工事費
●所有する土地にマンションを新築:本体工事費+付帯工事費
●既存マンションを購入:販売価格(新築および中古)
建物の建築にかかる本体工事費は、構造によって坪単価が変動します。例えば木造の場合は、坪単価50万~70万円程度が相場ですが、主にマンションで採用される鉄筋コンクリート造は、約80万~120万円と坪単価がぐっと上がります。なお、建設工事を行うにあたり、着工金として建築費の10%ほどの現金が必要です。
付帯工事費は、本体工事費の約20%が目安になります。付帯工事とは、外構工事やインフラ(電気・ガス・水道)引き込み工事など、建物本体とは別に必要となる工事を指し、後述する既存建物の解体工事や地盤改良工事なども含まれます。
マンションの取得には高額な費用がかかるため、ローンを組むのが一般的です。頭金として、上述のマンション取得費用の10~30%程度の現金を用意しておくとよいでしょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、既存マンションや土地の購入時に、仲介を行った不動産会社に支払う手数料です。仲介手数料は不動産会社への成果報酬であり、売買契約が成立した時点で発生します。以下のとおり、宅地建物取引業法で上限額が定められており、この範囲内で価格交渉することも可能です。
【計算式】
物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税(物件価格400万円超の場合)
物件価格については、不動産公正取引協議会連合会の表示規約施行規則により、消費税込みで記載するよう定められています。ただし、土地は非課税のため、建物部分の価格から消費税を差し引いたものが税抜き物件価格です。
測量・地盤調査・解体費用
所有する土地に建造物がある場合、更地にするために解体工事を行います。解体費用の相場は、木造であれば床面積1坪あたり約3万~5万円、鉄骨造の場合は床面積1坪あたり6万~8万円程度です。
次に、地盤調査を行います。建築基準法施行令第38条ならびに第93条により、建物を建てる前には地盤調査を行うことが義務付けられています。
調査の結果、地盤に問題があると判断された場合は、地盤改良工事が必要です。地盤調査にはいくつかの方法がありますが、マンションを建てる際に用いられるのは「ボーリング調査(標準貫入試験)」と呼ばれるもので、費用は20万~30万円程度かかるのが一般的です。
測量は法的に義務付けられているものではありませんが、その土地の状況を正確に把握できなければ、建物の設計ができません。また、隣地との境界が曖昧だと先々トラブルになる可能性があるため、測量を行い、きちんと登記しておく必要があります。土地の広さや形状によって異なりますが、事前調査から登記までにかかる費用の目安は、30万~45万円ほどです。
※出典:建築基準法施行令
登記費用
マンション経営に関連する登記は、主に以下の3つです。
●所有権移転登記:土地または既存マンションを購入した場合
●所有権保存登記:マンションを新築した場合
●抵当権設定登記:物件取得にローンを利用した場合
登録免許税の計算方法は以下のとおりで、税率は登記の種類によって異なります。
【計算方法】
物件の課税標準額×税率
【税率】
土地の所有権移転については2026年3月31日まで、そのほかは2027年3月31日まで軽減税率が適用されます。
登記の種類 | 本則税率 | 軽減税率 |
所有権移転登記(土地) | 2.0% | 1.5% |
所有権移転登記(家屋) | 2.0% | 0.3% |
所有権保存登記(家屋) | 0.4% | 0.15% |
抵当権設定登記 | 0.4 % | 0.1 % |
上記の登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的で、報酬の目安は5万〜10万円程度です。
ローン事務手数料・保証料
アパートローンを利用してマンションを購入する場合、金融機関にローン事務手数料を支払います。ローン事務手数料には、借入金額に対して一定の割合を手数料として支払う「定率型」と、借入金額に関係なく一定額を支払う「定額型」があります。
金額の目安は金融機関によって異なりますが、定率型は借入金額の1〜3%、定額型は3万~6万円程度です。定額型のほうが初期費用は抑えられるものの、金利が高めに設定されるため、最終的な総支払額が高くなる可能性があります。
保証料とは、契約者がローンを滞納したときに弁済を行う保証会社に支払う手数料です。借入時に一括で支払う方法と、金利に上乗せして支払う方法があり、一括支払いの目安は借入金額の1~2%程度です。金利上乗せの場合は、年0.2~0.3%ほどが返済時の金利に上乗せされます。
アパートローンについては以下の記事で詳しく紹介しているので、あわせてご確認ください。
■参考記事:アパートローンを上手に利用するコツと注意点|住宅ローンとの違いは?
団体信用生命保険料
団体信用生命保険は、契約者が死亡または高度障害になったときに、アパートローンの残債を保険金で返済する生命保険の一種です。
住宅ローンでは原則として加入必須ですが、アパートローンでは必須ではありません。返済の原資が家賃収入であり、契約者にもしものことがあっても返済が継続できるためです。
団体信用生命保険に加入した場合、保険料は0.1~0.2%程度の金利上乗せで支払います。はじめから金利に組み込まれているケースもあるので、確認してみましょう。
損害保険料
火災や自然災害への備えとして、火災保険への加入を欠かすことはできません。保険料は、物件の所在地・構造・規模・特約・補償内容などで異なります。火災保険は契約期間を長期にするほど、保険料が割安です。
一括払いであれば最長5年までの契約期間を選べるので、資金に余裕がある場合は検討をおすすめします。アパートローンの契約時に金融機関おすすめの火災保険に加入するのが一般的ですが、自分で保険会社を選んで加入することも可能です。
なお、地震保険は火災保険のオプションであり、単独での加入はできません。そのほかにも、マンション経営では次のような特約をつけておくと安心です。詳細の内容は各保険会社にご確認ください。
施設賠償責任特約 (賃貸建物所有者賠償特約) | 配管からの水漏れなど、建物の管理不備による事故の損害を補償する |
家賃補償特約 | 災害発生時に、火災保険の基本補償の範囲内で家賃の損失を補償する |
家主費用特約 | 室内で孤独死などの死亡事故が発生した際、原状回復費用や家賃の損失などを補償する |
固定資産税・都市計画税
固定資産税は、土地や建物などの不動産に課される地方税です。毎年1月1日時点の所有者に対して、所在地である市区町村が課税します。都市計画税は、都市計画区域内の土地に課される税金で、都市計画の促進や公共施設整備のために使用されます。
【計算方法】
課税評価額×税率
【税率】
固定資産税:1.4%(標準税率)
都市計画税:0.3%(上限税率)
なお、2026年3月31日までに建てられた新築マンションについては、固定資産税が5年間、2分の1に減額されます。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得した際に所在地の都道府県に納める地方税で、取得後に送付される納付通知書で支払います。
【計算方法】
課税標準額×税率
【税率】
土地・家屋ともに4%(2027年3月31日までは軽減税率3%)
不動産取得税の計算例など、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
■参考記事
不動産取得税はどうやって計算する?新築・中古別シミュレーション
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書や工事請負契約書、金銭消費貸借契約書(アパートローン契約書)に貼り付ける印紙によって納めます。税率は取引価格によって変動し、2027年3月31日までに作成される契約書は軽減税率の対象です。
例えば、2億円のマンションを購入した場合、本則税率では10万円の印紙が必要ですが、軽減税率が適用される場合は6万円です。詳しくは国税庁のホームページにてご確認ください。
入居者募集費用
入居者募集にかかる費用も準備しておく必要があります。例えば、不動産会社に募集を依頼して、成約となった際に支払う仲介手数料がこの費用にあたります。
賃貸の仲介手数料は、「家賃の1ヶ月+消費税」です。宅地建物取引業法に定められた上限で、貸主・借主それぞれの負担割合に決まりはありません。オーナー様が全額負担して、入居希望者様に「仲介手数料無料」をアピールするのも1つの戦略です。
また、優先的に部屋を紹介してもらうために、不動産会社に広告料(AD)を支払うこともあります。その場合、家賃の1~2ヶ月分が相場です。
以下の記事では、入居者募集の流れや注意点などを解説しています。マンション経営をスムーズに始めるために、ぜひご一読ください。
■参考記事:入居者募集のコツとは?契約形態別のメリット・デメリットを解説!
マンション経営で初期費用以外にかかる費用
マンション経営を始めるにあたり、購入時の初期費用に加えて月々のランニングコストや長期的な維持費も考えておく必要があります。
区分か1棟かで異なりますが、毎月かかるランニングコスト・維持費の目安は家賃収入の20~30%程度です。どのような費用が必要なのか、目安はいくらくらいなのかなど、あらかじめ把握しておきましょう。
ローン返済費用
マンション取得にローンを利用した場合、毎月の返済は家賃収入から支払うのが一般的です。返済期間が長くなるほど金利が高くなる傾向にありますが、返済期間が短いと月々の返済負担が重くなる可能性があります。
できるだけ余裕を持って返済を続けられるよう、事前にシミュレーションを行い、家賃収入と返済額のバランスを考慮した返済計画を立てることが大切です。
共用部の光熱費
共用部の光熱費は、アパートやマンションの共有部分で使用される電気や水道料金で、毎月発生する費用です。具体的には次のようなものに充てられます。
電気代 | ●エントランスや駐車場、駐輪場などの電灯 ●オートロックドア ●エレベーター など |
水道代 | ●植栽への水やり ●清掃 など |
上記の費用はオーナー様が全額負担するのではなく、入居者様から徴収する管理費や共益費に組み込まれるのが一般的です。区分マンションの場合は、管理組合に毎月支払う管理費に含まれます。
リフォーム・修繕費
修繕費は、退去後のクリーニングや原状回復費用、給湯器など設備の突発的な故障に対応する費用です。リフォームや修繕にかかる費用は原則としてオーナー様が負担します。
ただし、入居者様の故意・不注意によるキズや故障は、入居者様に請求することが可能です。また、設備機器は約10~15年で寿命を迎えるため、空室になったタイミングでリフォームを行います。
1棟マンションの場合、共用部の不具合に対する修繕もオーナー様負担です。リフォーム・修繕については、以下の記事も参考にしてください。
■参考記事
マンションの修理・修繕内容とは?賃貸経営におけるトラブル防止の対応方法
【大家さん必見】補助金活用する賃貸物件のリフォーム! 改善事例も紹介
【事例付き】マンションの原状回復工事で収益改善!相場と工事内容を解説
修繕積立金
修繕積立金は、12~15年に1度のペースで行う大規模修繕に備える費用です。大規模修繕は建物の資産価値を維持するために必要な工事で、高額な費用がかかるため、計画的に積み立てておく必要があります。
なお、区分マンションのオーナー様は、管理費とともに管理組合に毎月支払うため、個人で積み立てを行う必要はありません。
大規模修繕をより効果的に実施するために、以下の記事も参考にしてください。
■参考記事:賃貸アパート・マンションの大規模修繕!長期計画策定と出口戦略を解説
管理委託費
建物管理や入居者管理を賃貸管理会社に依頼する場合、管理委託費を支払います。賃貸管理会社の業務内容は後述しますが、相場は家賃の3~5%程度です。
区分マンションの場合、建物管理については管理費として管理組合に支払うため、入居者管理のみ依頼するとよいでしょう。
損害保険料(火災保険・地震保険)
上述のとおり、火災保険は最長5年間の契約が可能です。アパートローンの返済期間が5年以上ある場合は、自動継続の特約を付けておくとよいでしょう。
ただし、損害保険会社によっては1年契約しか選べないこともあります。その場合は毎年の更新が必要です。
所得税・住民税
所得税と住民税は、個人の所得に課される税金です。マンション経営で発生した家賃などの収入から必要経費を差し引いた額を不動産所得と呼び、不動産所得が年間20万円を超える場合は確定申告で所得税を納付します。
住民税は、課税所得をもとに計算される所得割と、一定以上の所得がある方に一律でかかる均等割を合わせた額が課税されます。
【所得税の計算方法】
課税所得金額×税率-税額控除
【所得税の税率】
5~45%(所得金額によって異なる)
賃貸経営では必要経費として計上できる費用が多いため、正確に申告することが節税につながります。詳しくは以下の記事にてご確認ください。
■参考記事:家賃収入の確定申告は必要?必要経費を計上して節税対策を実施しよう
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税は、毎年5月頃に郵送される納付書で支払います。
上述のとおり、1月1日時点の所有者に納税義務があるため、年の途中に売却などで所有者が変わる場合、売主と買主の間で日割り計算にて清算するのが一般的です。
マンション経営で押さえておきたい初期費用以外の重要なポイント
マンション経営を始めるにあたり、初期費用を考慮することは重要です。さらに、適切な管理方法を選ぶことや、さまざまなリスクへの対策を講じることが、マンション経営の成功につながります。
ここからは、マンションの管理方法とリスクヘッジについて解説します。
マンション経営を成功させたいオーナー様は、ぜひ下記記事もあわせてご一読ください。
■参考記事
マンション投資を徹底解説!成功のポイントとメリット・デメリット!
収益物件の買い方!不動産投資の物件購入は目的設定と情報収集が重要な理由
【保存版】不動産投資の損益分岐点で着目するポイントは運用と売却!
【種類別】収益物件からみた不動産投資の特徴!購入時の確認ポイント
管理方法
マンションの管理方法は、主に「自主管理」と「委託管理」の2種類に分かれます。
1棟マンションについては、「サブリース」という管理方法を選択することも可能です。それぞれの特徴とメリット・デメリットを簡単に把握していきましょう。
管理方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
■参考記事
賃貸経営を成功に導く不動産管理とは? 信頼できる管理会社の選び方を解説
【必読】賃貸管理会社の選び方!運用益と出口戦略を見据える賃貸管理
賃貸管理会社の選定基準は手数料の安さか、収益性を高める管理か
【賃貸管理会社】大手と地域密着型のどっちがおすすめ?選び方とは
賃貸管理会社の探し方と6つのポイント!賃貸経営の収支を握る管理とは
不動産は「自主管理」と「管理委託」のどっち?メリット・デメリット
自主管理
自主管理とは、オーナー様自らが建物・入居者管理を行う方法です。賃貸物件の管理業務には、以下のような内容が含まれます。
建物管理 | 入居者管理 |
・日常的な清掃 ・共用部の修繕 ・業者手配 ・大規模修繕の計画実施 など | ・入居者募集 ・家賃回収 ・退去時の対応 ・トラブル対応 など |
上記のように管理業務は多岐にわたり、時間と労力がかかります。また、賃貸管理の知識や経験が欠かせません。自主管理はマンション経営の経験があり、所有する物件数が比較的少ないオーナー様におすすめの管理方法といえます。
管理委託
管理委託とは、上述の管理業務の一部または全般を専門の賃貸管理会社に委託する方法です。毎月家賃の5%程度の管理委託費がかかりますが、賃貸管理のプロに任せられるので安心です。
マンション経営の初心者はもちろん、多くのオーナー様が管理委託を選択しています。プロに委託することでどのようなメリットが得られるのか以下の事例で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
■参考事例
サブリース
サブリースとは、賃貸管理会社がオーナー様からマンションを一括借上し、転貸する管理形態です。管理業務や修繕、入退去手続きなどは賃貸管理会社が行うため、オーナー様は手間がかかりません。
また一定の家賃保証があり、空室や家賃滞納があっても収入が安定することがメリットです。
ただし、家賃の10~20%程度を手数料として引かれるため、ほかの管理方法に比べて収入が下がる可能性があります。更新時の条件変更、修繕費用の負担など注意点も多いので、契約前には慎重に検討することが大切です。詳細は以下の記事にてご確認ください。
■参考記事:サブリースとは?不動産経営や賃貸経営で損しないサブリースの注意点
リスク
マンション経営など不動産投資を行う際は、投資である以上いくつかのリスクがともなうことを理解する必要があります。ただし回避可能なケースも多いので、どのようなリスクがあるのかを把握し、しっかりした対策を行うことが重要です。
ここからは、マンション経営で注意したいリスクと対策を簡単に紹介します。より詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
■参考記事
【初心者向け】不動産投資のメリット7選! リスクと対策を徹底解説
賃貸経営の成功法を伝授!代表的なリスクと6つの成功ポイントとは
【保存】不動産経営の種類や収支を学ぶ!リスク回避する成功の秘訣とは?
収益物件購入時の注意点とは? 収益物件の種類とリスクへの対策を解説
失敗しない中古アパート経営とは? メリット・リスク・対策方法を解説
不動産投資のリスクとは? リスクを正しく認識すればヘッジはできる
空室リスク
空室リスクとは、空室が長期間続いて家賃収入が得られない状態のことを指し、不動産投資において最も注意したいリスクです。
家賃の減収が続いても、ローンの返済や管理費などの負担は変わりません。ローン返済費用などを自己資金から捻出することを避けるためにも、空室を長引かせない対策が求められます。
満室経営を維持する方法として有効な『4つの空室対策』の詳細や、空室の改善事例については以下をご確認ください。
■参考記事:空室の原因を解決する『4つの空室対策』とは?14種類の手法を徹底解説!
■参考事例:空室対策の改善事例
老朽化リスク
老朽化リスクとは、時間の経過とともに建物や設備が劣化し、修繕やリフォームのコストが増加するリスクを指します。マンションの老朽化を放置すると、退去の増加につながります。新たな入居者様を募集する際には賃料の値下げが必要になり、経営状態の悪化を招きかねません。
老朽化リスクを軽減するためには、定期的にメンテナンスを行うことや、大規模修繕計画による長期的な視点での資産価値の維持が重要です。以下では修繕やリフォームによる改善事例を紹介しますので、参考にしてください。
■参考事例
災害リスク
災害リスクとは、地震や台風、大雨などの自然災害によって建物が損壊し、入居者様が退去を余儀なくされるリスクのことです。修繕費用がかさむだけでなく、空室が増えると家賃収入の減少につながり、キャッシュフローが悪化します。
災害リスクに備えるためには、耐震強化や防災設備の整備など災害対策を充実させる必要があります。また、火災保険や地震保険などに加入し、災害時の損失を最小限に抑えることが重要です。
家賃滞納リスク
家賃滞納リスクとは、入居者様が期限どおりに家賃を支払わないことによる収益減少を指します。滞納が続くと、オーナー様は予定していた家賃収入を得られず、資金繰りの悪化を招くことになりかねません。
滞納リスクを減らすためには、入居時の審査を厳格に行うことや、家賃保証会社の利用、滞納時に迅速に対応する体制を整えることが効果的です。
滞納家賃の回収は賃貸管理のプロに任せるのが一番です。以下の記事にて賃貸管理会社の取り組み・改善事例をご確認ください。
■参考事例:滞納家賃回収の改善事例
金利上昇リスク
金利上昇リスクとは、ローン金利が上昇することによって借入金の返済負担が増加することをいいます。特に変動金利型ローンを利用している場合、注意が必要です。
金利が上昇すると月々の返済額が増え、利益が減少します。キャッシュフローの悪化により、最悪の場合、返済困難に陥る可能性はゼロではありません。
金利上昇リスクを避けるためには、金利が低いうちに固定金利に切り替えたり、返済計画を柔軟に見直したりなどの対策が必要です。
売却リスク
売却リスクとは、市場の低迷や需要の変動により、希望どおりの価格で物件を売却できないことです。不動産市場の状況や物件の立地、状態によっては、売却価格が購入時よりも大幅に下がることもあります。
特に売り急ぐ理由がある場合は相場より安くすることが多いため、期待する価格で売れない可能性が高いといえるでしょう。
売却リスクを軽減するためには、市場動向を注視し、適切なタイミングで売却することが重要です。適切な対応によって売却リスクを改善した事例は、以下からご確認ください。
■参考事例:売却の改善事例
マンション経営で初期費用を安く抑えるコツ
不動産投資を検討する際、初期費用の高さに壁を感じる方は多いのではないでしょうか。特に1棟マンション購入となれば、かなりの金額を用意しなくてはなりません。
ここからは、マンション経営で初期費用を安く抑えるコツを紹介します。ただし、メリットばかりではなくデメリットもあるので、実践の前に慎重に検討するようにしてください。
手数料の交渉や支払い方法の変更を行う
不動産会社に支払う仲介手数料と司法書士に支払う報酬は、値引き交渉が可能です。とはいえ、過度な値引きを要求すると適正な対応をしてもらえなかったり、取引を断られたりする可能性があります。適正な範囲内での値引き交渉を心掛けましょう。
ローン事務手数料は金融機関によって異なります。複数の金融機関を比較し、最も有利な条件を選ぶことが大切です。
損害保険は補償が充実するほど保険料も高額になります。内容を吟味して最適な商品を選ぶようにしましょう。
不動産取得税は一度に全納が原則ですが、合理的な理由がある場合には分納を認めてもらえる可能性があります。分割回数は自由に設定できますが、期限は最長6ヶ月以内です。どうしても払えないといった場合は、管轄税務署に問い合わせてみてください。
外観や設備をシンプルにする
間取りや外観、設備はシンプルで実用的なデザインを選びましょう。複雑な間取りや過度な装飾、ハイグレードな設備などは、建築コストを高める要因です。マンションの建築には多額の費用がかかるため、デザインや設備のこだわりを抑えるだけで大きな節約につながります。
また、シンプルなデザインは飽きにくく、入居者様に受け入れられやすい傾向にあります。年代や性別、ライフスタイルの違いにも対応しやすいため、長期間にわたって安定した入居率を保つ効果が期待できるでしょう。
新築の建築費用や中古のリフォーム費用は複数の見積りを取って検討する
新築マンションの建築費用や中古マンションのリフォーム費用は、複数の建築会社から見積りをとって比較検討することが大切です。
建築会社の多くは、設備の大量仕入れや建材の自社加工などで単価を下げるよう、企業努力を行っています。同じようなプランでも、より安く工事できる会社が見つかるかもしれません。
見積りの内訳や単価を見ることで、価格が適正なものかどうかを確認しやすくなるという効果もあるため、少なくとも2~3社に相談することをおすすめします。
自分で登記を行う
自分で登記を行うのも、マンション経営の初期費用を抑える1つの方法です。通常、登記は司法書士に依頼しますが、自分で申請・手続きを行っても問題ありません。その場合、登記にかかる費用は登録免許税のみになり、司法書士に支払う費用を節約できます。
ただし、不動産登記は大切な権利関係の手続きです。申請書類に誤りがあると修正に手間がかかるだけでなく、大きなトラブルにつながりかねません。安全かつ確実に手続きを進めるためにも、専門家である司法書士に任せるのが無難です。
補助金制度を活用する
住宅の新築・リフォームにはさまざまな補助金制度が設けられていますが、マンション経営で利用できる制度は多くありません。ただし、一定の条件を満たす場合は、補助金を受けられる可能性があります。
具体的には、良質な共同住宅の供給を促進することを目的としたマンション建築で、「地域優良賃貸住宅制度」や「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」などが一例です。
上のような制度には申請条件や期限があるため、利用を検討する場合は早めに申請方法を調べておくことをおすすめします。
マンション経営の初期費用を安く抑える際の注意点
マンション経営での初期費用を安く抑える方法を紹介しましたが、将来的に不都合が生じる可能性もあるため、長期的な視点でお得になるかどうかを考えることが大切です。
ここからは、初期費用の節約方法を選ぶときに押さえておきたい注意点について解説します。
ローンの返済額が増える可能性がある
マンション経営の初期費用を抑える際、支払い方法を変更できる項目には注意が必要です。例えば、ローン事務手数料を一括で支払わず金利上乗せにすると初期費用は安くなりますが、長期的には金利が高くなり返済総額が増える可能性があります。
また、頭金を少なくして借入を多くすると、返済額が増え、総支払額が膨らむことになります。
初期費用を抑えることが短期的には有利に見えますが、長期的な視点で見た場合にお得かどうかを慎重に考慮し、最適な支払い方法を選ぶことが大切です。
リスクが高まる
初期費用を抑えることにより、さまざまなリスクが増加する可能性があります。例えば、建築コストを抑えるためにグレードやデザインを簡素化すると、入居者ニーズに合わず空室が増え、修繕頻度も高くなる恐れがあります。
さらに、市場の物価変動や建物の老朽化で家賃が下がると、収支計画がずれ込み、ローンの返済に行き詰ってしまうかもしれません。安価な土地やマンションを購入したために老朽化が早く進み、売却時に希望どおりの価格が得られないリスクもあります。
リスクを最小限に抑えるには、適切な対策を講じることが大切です。マンション取得時は長期的な視点を持って、賢い選択をすることをおすすめします。
マンション経営に必要な自己資金
ここまでマンション経営を始める際の初期費用について解説しましたが、そもそも自己資金がどれくらい必要かを把握することが重要です。
必要な自己資金の目安は、一般的にマンション取得費の10~30%程度とされ、ローンの頭金や諸費用が含まれます。
自己資金が多いほどローンを組みやすくなり、好条件の融資が引けるかもしれません。また、自己資金に余裕があるとリスクにも対応しやすくなるため、安定したマンション経営の継続が期待できます。
自己資金ゼロでも始められる?
自己資金がない場合でも、頭金なしでローンを組む「フルローン」という選択肢があります。ただし、借入額が大きくなるため、返済計画や突発的な出費への備え、空室時の対策など、慎重なリスクコントロールが必要です。
近年は金融機関の審査が厳しくなっており、フルローンを組むことが難しくなっています。フルローンが可能だとしても、自己資金が残らない状態は避けるのが無難です。
マンション経営の資金調達方法
不動産投資ローンには、アパートローンとプロパーローンの2種類があります。アパートローンの審査基準は、主に物件の収益性や価値、契約者の属性などです。
一方のプロパーローンは事業性を重視するため、アパートローンに比べて審査は厳しめで、融資期間も短めに設定されるケースが少なくありません。
ただし、事業の収益性が認められれば、アパートローンよりも低い金利で借りられます。ある程度の自己資金が必要ですが、金利を抑えたい方におすすめです。
安定したマンション経営を行うための7つの方法
ここからは、安定したマンション経営を行うために留意したい7つのポイントを紹介します。マンション経営で成功をつかむために、以下の記事もぜひご一読ください。
■参考記事
アパート購入と賃貸経営の流れ! アパート経営成功のポイント【保存版】
投資用マンションの基本! 保有戸数別の収益と不動産投資の成功ポイント
マンションオーナーで成功するには?仕事内容とメリット・リスクを確認!
賃貸マンションの一棟買いはあり? アパート経営・区分マンション経営との徹底比較
アパート一棟買い・マンション一棟買いを数字で判断!一棟投資成功に向けたポイントを解説
【事例付】中古マンション投資のメリットとリスク!注意点と対策まで徹底解説
自己資金を十分に用意しておく
安定的なマンション経営を目指すためには、慎重な資金計画と十分な備えが重要です。初期費用としてマンション取得費全体の10%、頭金を含めると20~30%程度の自己資金に加え、予備資金を確保しておくことで、修繕費用や金利上昇などに柔軟に対応できます。
また、自己資金が多いほどローン審査に有利に働き、低金利での融資が受けられる可能性が高まります。ローンの返済負担を軽減することで、安定したキャッシュフローを維持することが可能となり、成功へと近づくでしょう。
キャッシュフローを意識して資金計画を立てる
安定したマンション経営を行うためには、想定外の出費や空室の可能性を考慮した余裕のある資金計画が重要です。
また、キャッシュフローを意識して収支のバランスを正確に捉え、経営状況をリアルタイムで把握し続けることも大切です。収益性が低下した際に早期に対策を講じることができ、リスクを最小限に抑えることが可能となります。
利回りだけで判断しない
安定したマンション経営を行うには利回りを意識することが重要ですが、高利回りだけを理由に物件を選ぶのは得策ではありません。表面利回りだけでなく、実質利回りを確認して購入するかどうかを判断しましょう。
マンションの管理状態をチェックすることや、周辺環境が変化する可能性などを考慮することも大切です。現在は高利回りだとしても、同じ状況がずっと続くとはかぎりません。利回りを悪化させないためにも長期的な視点で計画を立て、リスクを軽減しながら安定した収益を得ることを目標にしましょう。
利回りについての詳細は、以下の記事を参考にしてください。
■参考記事
マンション一棟買いの成功ポイントと指標にする利回り!メリット・デメリットや注意点
【マンション経営入門】失敗から学ぶマンション経営成功のポイント
【徹底解説】不動産投資の利回り計算! 賃貸経営を成功に導く指標とは
マンションの価値を高める
安定したマンション経営を行うためには、物件の資産価値を維持・向上させることが重要です。定期的なメンテナンスや日々の清掃・管理を徹底し、必要に応じて入居者ニーズやトレンドを押さえたリフォームを行うようにしましょう。
空室のない継続した満室経営は、収益物件としての価値を高めます。周辺環境の動向を察知してターゲット層の設定を変更するなど、適切な施策を講じることにより、長期的に安定した収益を確保することが可能になるでしょう。
出口戦略を考えておく
マンション経営をはじめとする不動産投資は、長期間継続するほどメリットが大きくなるといわれています。しかし、経営状態が思わしくない場合、売却が損失を最小限に抑える手段となることもあります。一方で、不動産市場が活発なときに有利な条件で売却することにより、より大きな利益を得る可能性もゼロではありません。
インカムゲイン(家賃収入)を重視するか、キャピタルゲイン(売却益)を重視するかによっても、出口戦略は異なります。最適なタイミングで売却するために、以下の記事にてポイントを押さえておきましょう。
■参考記事:投資用マンションの売却時期は?出口戦略を見据える高値売却ポイント
相続対策を考えておく
マンションは相続時に評価額が下がり、ローンが債務として財産から差し引かれるため、相続税対策となります。ローンを完済すれば収入が増加し、不労所得としてのメリットも得られます。また、損益通算が可能であり、土地のままよりも固定資産税を減額できる点も大きな利点です。
ただし、節税のみを目的とすると将来の運営や管理に支障が出る可能性があるため、慎重な判断が求められます。相続税対策としてマンション経営を検討している方は、以下の記事も参考にしてください。
■参考記事:ご生前に行う相続税対策とは? 賃貸不動産の認知症・遺産分割・節税・納税資金対策
信頼できる賃貸管理会社を見つける
安定したマンション経営を行うためには、賃貸管理会社との良好な関係を構築することが重要です。賃貸管理会社はマンション経営のパートナーとして、管理業務だけでなく、仲介や工事対応など幅広いサポートを提供してくれます。
特にマンション経営初心者にとっては、専門的な知識と経験を持つ賃貸管理会社の支援が欠かせません。信頼できる賃貸管理会社から適切なサポートを受けることで、マンション経営の安定と成功を実現できるでしょう。
賃貸管理会社選びでお困りのオーナー様は、ぜひ以下の記事をお役立てください。
■参考記事
賃貸経営サポートとは? 不動産投資の成功を左右する管理会社の実力
収益物件をできるかぎり早く・高く売る秘訣|パートナー選びのポイントは?
まとめ 長期的な観点でローンとキャッシュのバランスを考えよう
マンション経営を始めるにあたって、手元に資金を残すために初期費用を抑えると、かえって後々の支払いが増える可能性があります。キャッシュとローンのバランスを考慮し、適切なサポートをしてくれるパートナーがいると、長期的に安定した経営が続けられるでしょう。
【リロの不動産】では、購入・管理・修繕・売却・相続など賃貸経営の最適化をサポートしており、経営の安定を図るお手伝いをします。マンション経営についての不安は、ぜひお気軽に【リロの不動産】へご相談ください。
関連する記事はこちら
【マンション経営入門】失敗から学ぶマンション経営成功のポイント
マンションオーナーで成功するには?仕事内容とメリット・リスクを確認!
マンションの修理・修繕内容とは?賃貸経営におけるトラブル防止の対応方法
【事例付き】マンションの原状回復工事で収益改善!相場と工事内容を解説
アパート経営に必要な自己資金はいくら? 成功に導く出口戦略と資金計画
不動産投資で不労所得を得るには?初心者が始めるときに注意すること
アパート経営とマンション経営の違いとは? メリット・リスクと投資戦略
【アパート経営・賃貸経営入門】メリット・リスク・成功の秘訣をわかりやすく解説!
マンション投資を徹底解説!成功のポイントとメリット・デメリット!
【必読】不動産投資・賃貸経営の目的が明確なほど成功確率が上がる理由
マンション一棟買いの成功ポイントと指標にする利回り!メリット・デメリットや注意点
おすすめのサービス
おすすめのお役立ち情報
この記事を書いた人
秋山領祐(編集長)
秋山領祐(編集長)
【生年月日】昭和55年10月28日。
【出身地】長野県上田市。
【趣味】子供を見守ること。料理。キャンプ。神社仏閣。
【担当・経験】
デジタルマーケティングとリブランディングを担当。
分譲地開発のPMや家業の土地活用などの経験を持つ。
リノベした自宅の縁の下に子ども達の夢が描かれている。